転生地球人が宇宙最強になるまで   作:桐山将幸

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第四十四話:転生地球人がその敵を見出すまで

 ツルマイツブリ山麓の小さな町は、宇宙最悪の兵団の攻撃を受け、今まさに滅亡しようとしていた。

 

 『――――住民の避難は――――はい、概ね、ですが食料が何者かに――――』

 

 『食うもんなんかどうとでもなる!! さっさと――――』

 

 仲間達の通信を――無駄に――高音質な内蔵型通信機で聞きながら、兵士は敵を見据える。

 敵は強大だ。

 なにせ、パワーだけなら、十年前に世界を滅ぼしかけたピッコロ大魔王の数倍以上というのだから。

 

 「へっへっへ、ポンコツが一体か、こりゃあラクでいいが、手柄にはなんねえかなあ」

 

 「…………」

 

 最も突出したフリーザ軍兵士が放つその言葉を前に、男の頭脳は冷静に……しかし、『宇宙ではメジャーな煽りなのだろうか』などと、とぼけたことを考えていた。

 とぼけた考えを反映するように、男の体はのゆっくりと、まっすぐ前に向かう。

 

 「脳みそまで改造しちまって言葉も出ねえか!!」

 

 ゆっくり、まっすぐ。

 まっすぐ、……即ち、一切正中線をぶらさずに進む男に踊りかかった一人のフリーザ軍兵士は。

 男がゆっくりと掲げた腕に貫かれ、その生命を終えた。

 

 「……は!?」

 

 「お、おい……別に早くも……」

 

 男の右腕は、その手首ほどから生やした爪形の刃で一人の兵士を貫き、続けて、左手からも刃が飛び出す。

 

 「なんだ!? こ、こいつ――――」

 

 「――――っっっ!!!!」

 

 左腕からも刃が飛び出し、男は敵群へ飛び出す。

 戦闘力、パワー、スピード、尋常の戦場を支配するそれらにおいて、遥かに劣るその男を前に、フリーザ軍兵士達は翻弄され、切り裂かれ、命を絶たれてゆく。

 格闘技……それも、この地球における極上の格闘技だけを専門とするマニアならば分かっただろう。

 その流麗な動きは、『チャルク』というカラリパヤット使いによるカッターラ術のそれであった。

 

 「…………」

 

 男は黙して語らない、男は武道家ではなく軍人であるからだ。

 男は息を上げない、男は人でなくサイボーグであるからだ。

 サイボーグ軍人は、血まみれ、瓦礫まみれの周囲を見回し……否、各所のカメラで観測し、司令部へと報告する。

 あちこちに映るのは、フリーザ軍の死体、現地兵士の死体、同僚の死体。

 更に、戦いの爆炎と、時折空を裂く光線……未だに空を覆う敵、敵、敵。

 うちにソシルミさんが来てくれたら。

 サイボーグはそんな言葉を必死に飲み込み、声帯ではなく内蔵通信機に直接声を送信した。

 

 『こちら――――司令部へ報告します、――地区の戦線は押し返しました、しかし、内蔵型生命力測定器のデータによればわが方の劣勢はゆるがず、敵の測定器兼通信器、はい、スカウターが破損していることが唯一の……ですが、このままでは……はい、ノイズ? 撤退……いえ、戦闘を続行します』

 

 スカウター、宇宙よりもたらされた『生命力を測定する装置』は、なぜだか、本来の持ち主であるフリーザ軍からは失われ、地球人が僅かに複製していたものだけが動き、戦場を支えている。

 そのおかげもあって、ツルマイツブリ山麓の戦線は、()()()()()()()()()()()()()()()()強力な武術家の助力がないとは思えないほどに安定していた。

 

 (でも、今地球が攻められてるのもサイヤ人ベジータが宇宙船に置き去りにしていたっていうスカウターが原因だって言うし……正直あれも納得はしてないけど、禍福はあざなえる縄の如しってことなのかね)

 

 電子的に加速された思考の中で僅かに物思いにふけったサイボーグは次に行うべきことを考える。

 弾幕を形成し飛来するフリーザ軍を遠ざけんとしている通常部隊に加勢するべきか、地上のフリーザ軍を襲撃する格闘戦部隊に加勢すべきか、あるいはこのまま遊撃を続けるか――――

 

 (――――くっ……! 駄目か!! せめてもう少し巻き返してから迎えるつもりだったんだけど…………)

 

 そして、その者たちは、やはり遅れてやってきた。

 紫の、角の男を先頭に、赤肌に銀髪の男、青の異形、黄色人種に似た大男、青い異形の小男。

 ポッドから抜け出した彼等は、自分達が作ったクレーターを一息に飛び出し、手で作った望遠鏡をかざして町を眺め、朗らかな声を上げる。

 

 「……なんだ、まだ制圧が済んでないじゃないか、せっかくの大規模作戦だというのに、一体何をやっているんだ?」

 

 「隊長、しかもここってサイヤ人も武道家もいないって地域ですよ、スカウター壊れちゃったんで、わかりませんけど」

 

 「うむむ……」

 

 角の男が、おどけたように首をひねる。

 『ヤバい』と、サイボーグは残った生身で、否、機械ですら理解した。

 

 「ま、他の任務は来てないし、ちょっとくらいゆっくり遊んでもよかろう! じゃあみんな、やるぞ!!」

 

 「「「「はいっ!!」」」」

 

 この不真面目な男達の生命力は、ほとんどがベジータ以上。

 そして、間違いなく――――

 

 「リクーム!!!」「バータ!!!」ジース!!!」「グルド!!!」

 

 「ギニュー!!!」

 

 「「「「「みんな揃って」」」」」

 

 ――――これまで出会ってきたどんな魔族より、異星人より、邪悪なのだ。

 

 

 

 

 「ギニュー特戦隊ッッッ!!!!」

 

 「や、やっぱり来るのか……!」

 

 ギニュー特戦隊!!

 隊長のギニューを筆頭に、ベジータ以上の戦闘能力を誇る五人の精鋭戦士!!

 強力なパワーに加え、隊長であるギニューと最も戦闘力の弱いグルドは、戦闘力差を無視するほどの超能力を抱えている!

 フリーザ軍……いや、この宇宙において活動中の戦士の中では最強と言っていいその彼等の出現は、フリーザの本気と、地球の危機的な状況を端的に表していると言っていいだろう!

 

 「ど……どうする!?」

 

 「救援に――――行くわけにはいかん、ここを死守しなくてはッッ!!!」

 

 ……死守、というほど俺達は辛い状況に追い込まれてはいない。

 だが、理性によってこの場に縛り付けられた心は、つい、そんな言葉を念じた。

 その間にも、俺達の一挙一動がフリーザ軍兵士の命を断ってゆく、……それでも、失われゆく命に払う敬意さえ霞む、焦燥感が。

 

 「っがああああ!!! ごがあぐがあ!!!!」

 

 「プリカッッ!! 叫んだってどうにもならん!!」

 

 「でも、力を入れれば、ちょっとは!!」

 

 ちょっとはエネルギー弾が大きくなる、ちょっとは腕の振りが早くなる。

 だが、そのためにこの長過ぎる戦いに使う体力を消耗するのでは意味がない。

 どうすればいい、どうすれば、プリカを……そう思ったとき、腰に差した小型通信機が音を立てた。

 

 『……こちらツルマイツブリ山麓、フリ……軍の精鋭部隊と交戦中です、わが方……劣勢……』

 

 「軍人さんッッ!」

 

 「あのサイボーグの人かっ!!」

 

 サイボーグの人、サイボーグ軍人。

 ピッコロ大魔王による中の都侵攻によって大怪我を追った対魔族部隊の精鋭兵士であり、その怪我をカプセルコーポレーションの技術力で救われ、サイボーグの体を得てからは、武道ファン、そして対異星人戦線の重要人物として俺達と深く関わってきた男だ。

 俺はその声がプリカの動揺を掻き立てないかと心配しながら、希望も持ちながら通信に応じる……だが、どこか様子がおかしい。

 その声の背後には、戦場の音が響いているのだ。

 普通なら、それは当然なのだが……。

 

 「どうしたのですッッ!! 何故内蔵の通信機ではなく、普通の通信機を!?」

 

 『……通信妨害が……しく…………本来なら司令部に…………ですが、やはり……ミさんにお伝え……』

 

 「ありがとうございます、しかし、通信妨害なんて手段をフリーザ軍が使うとは」

 

 『ええ、もっ……力押しの軍隊かと……しかし、違和感は……』

 

 確かに、フリーザ軍に搦手のイメージはない、だが、軍隊であるからには様々な科学技術を使うのが当然とは言えるだろう。

 特に、今は自軍の通信装置が破壊されているのだ。

 ……しかし、サイボーグが言いたいのはそれだけではないらしい。

 

 『違……は……、……ザ軍が……減……本来な……ここ…………たえ……』

 

 「待ってくれ、通信が……!」

 

 ひどいノイズの中、サイボーグが何かを言おうとしている!

 この通信のついでということならば、もしかしたら単なる戦闘報告なのかもしれないが……。

 俺はなぜだか、サイボーグへの義理や戦闘のための情報収集の意味以上に、サイボーグの語る言葉を聞きたい!

 

 「オレに回せ、こちら側で調整する、防御頼む!!」

 

 「応ッッッ!!!」

 

 作業のため足(舞空術)を止めるプリカを守るため、俺はエネルギーのセーブをとき、気合を入れた。

 空気と衝撃波を用いた防御、そしてそれを転用した同士討ちで敵を仕留め、一歩も動かぬままに敵を仕留める技術も、最早慣れたものだ。

 

 「プリカ、どうだ!?」

 

 「い、いけそうだ……」

 

 『……回復しましたか、こちらも多……音質が……続けます……』

 

 「頼む」

 

 今度は守りに回るべく動き出したプリカが『スター・ブラック・バイナリー』で敵を掃討する中、俺はじっとサイボーグの話に耳を傾ける。

 何かを感じるのだ。

 俺が持つ幾多の能力、幾多の属性のうち、どれが何を感じているのかまでは分からない。

 だが、何かがある。

 

 『……敵が……フリーザ軍が、われわれの預かり知らぬ形で減ってい……です』

 

 「フリーザ軍を倒すやつが居るのかッッッ!!?」

 

 『生命力、熱源反応、ともに異常値は…………ません、ですが……その可能…………』

 

 俺の感覚も、そんなやつは捉えていない。

 だが、消えているというのならば、殺されているか、もっと高度な何かが起こっているはずだ。

 そんな強大で、しかも得体の知れない存在を、俺は一つしか。

 

 『……ミさん、ソシルミさん!! 大丈……ですか!!』

 

 「あ、ああ……大丈夫です、ありがとうございます、対処については検討するつもりです」

 

 『とにかく報告は……こちらも……線に戻……ご武――――』

 

 「――――待ってくれ!!!!」

 

 出し抜けに、プリカが手持ちの通信機にあらん限りの、悲鳴にも似た大声を叩きつけた。

 

 『……!!?』

 

 「お……おい、そこから逃げろ!! スカウターがないなら捕まらない!! 散って逃げれば少しはマシだ! そのままだと全滅する!!!!」

 

 『プリ……さん……それは……出来ない相談、です』

 

 ノイズまみれの通信の中、拒絶する声だけが、はっきりと響いたように感じた。

 

 「撤退も戦略だ、あんたらじゃギニュー特戦隊には勝てない!!」

 

 『わかって…………も、実はおれ……ち……みんな、ここ………出身な……よ……』

 

 ずっと前に覚え込んだこの星の軍事事情を、やっと思い出した。

 サイボーグ軍人の原隊は、北の都周辺の出身なのだ。

 

 「プリカ、止められないぞ」

 

 泣き出しそうに歯を食いしばって、目を見開いたプリカが、すがるように俺を見る。

 あいつが尊敬している俺なら止められるだろう、そう言いたいのだろうが……。

 違う、できっこない。

 なぜなら、あいつが尊敬した俺は、命を賭して戦う俺なのだから。

 テレパシーでなくとも伝わる、アイコンタクトは一瞬、その一瞬でプリカはすべてを諦め、その失望をパワーに変えるように、巨大な『ウエスト・モーニング・サンシャイン』をいくつも作り出し、フリーザ軍へと投擲した。

 

 「…………がああ!!! ぐがああああ!!! どがあああああ!!!!」

 

 「健闘を祈ります、どうかご無事で」

 

 『ありが…………す……』

 

 通信は、ちょうど断絶した。

 プリカは未だに怒りと嘆きの中にあり、フリーザ軍兵士達を盛んに消し去っている。

 俺もまた、同じ感情は抱いている、だが俺は、その濁流よりも更に大きな流れ、何か根源的な直感によって突き動かされつつあった。

 

 「地球人が地球を守る、北の人間が北を守る……そして、地球に受け入れられたサイヤ人もまた、地球を守るために宇宙人と戦う」

 

 ならば、俺達は。

 俺達は何のために、何と戦う?

 すべての戦士がこの星を守るためにその戦意を滾らせているときに、俺達の役割はなんだ。

 成さねばならぬことがあるはずだ、たとえそのために、さらなる痛みを支払おうとも、返さねばならぬ借りを増やしてでも。

 

 

 

 

 迷彩と茶色のコート、背広、そして僧衣。

 

 「バケブ山地の敵超戦士部隊、なおも前進!!」

 

 「航空戦力はまだか!?」

 

 「それが、ラバーシュ回廊で高速円盤群に阻まれ、現在交戦中です!!」

 

 「トニール空軍はどうした! …………全滅だと!!? あの間抜けどもめ、このままでは王都カンドゥまでもが……!!」

 

 いずれも並々ならぬ威厳を滾らせた男達が声を荒げ、あるいは静かに練り歩き、瞠目し、瞑目する。

 ここは、タンドール宇宙センター……否。

 タンドール王国軍臨時司令部。

 

 「……ふぅ、チャパよ、北エリアの……件の精鋭部隊が向かった地域から、大規模かつ極めて多種の通信妨害が観測されておる、このままでは通信は全面的に不可能になるぞ……!!」

 

 青い肌をした初老の男、ピラフは、全身から汗を流しながらガタガタとキーをタイプし、盛んにレバーやスイッチを動かし、時にはスパナを取り出して装置を開いてゆく。

 

 「手を考えるほかあるまい……! わがタンドール王国軍もすでに限界が近いが……」

 

 同じく初老に差し掛かった色黒の、僧衣の男チャパ王はいまいましげに歪んだ顔のしわに冷や汗を伝わせしつつも、ピラフの後ろでじっと仁王立ちを決め込んでいる。

 ピラフ大王とチャパ王が、静かに、冷静に、しかし何より強い危機感を持って話し合っていた。

 

 「連中が北エリアに注力する理由……わしは思いつかんのだが、ピラフ、おまえはどうだ?」

 

 「わたしも…………ないな、せいぜい北の都があるくらいだが、同規模の都市はまだ4つもあるし、この戦争において地域の占領が大きな優位を生むとも思えん」

 

 チャパ王はピラフが作った小さな『間』がわずかに気になったが、信頼する友が口に出さなかったことをわざわざ問いただそうとは思えなかった。

 代わり口をついたのは、混迷を極めた戦場に沈み、激務に悩まされる心のなぐさめだ。

 

 「……これが終われば、おまえも王者に返り咲くのだろう? ちょうど全世界を眺めておるのだ、品定めせんとな」

 

 「ああ、無事で済めばの話だがな、わたしと、タンドール王国と、シュラのところで戦っとる国民候補たちが……」

 

 「だがもしわたしが死んだら、この国を頼む……ソシルミはあれで権威と恩義に弱い、せがめば王位を受け入れるだろう、やつを担げば……」

 

 「やめんか!! 縁起でもない!!! ただでさえここには道場のやつらがおらんというのに……!!」

 

 ラパータ、チャルク、ケララ、パタラを筆頭とした門下でも有力な者はすべてタンドール王国や近隣国の防衛のために出動し、二軍とも呼ぶべき名もなき高弟たちもまたタンドール王国軍精鋭とともに戦いに出ている。

 各地で続く戦いは、最新兵器の釣瓶撃ちを武道家による防衛と襲撃で支える単純な戦法を基本戦術とし、軍の体力と武道家の命をすり減らしながらも小康状態に入っていた。

 

 「ラパータ……あいつらめ、生き返れんというのに無茶をしおって……ソシルミも、どうせ敵の大将とやると言うのだろう!!? 勝てるのか!? 数値で言えば、やつの全力の数十――――」

 

 その時、甲高いビープ音が響いた。

 チャパ王は一瞬首をかしげたが、ピラフはその音色を正確に記憶しており、対処に迷うことはない。

 ボタンを押し、受話器を取る。

 

 「――――なんじゃ! おまえたちの戦線は異常なく……何!!?」

 

 「どうした、ピラフ」

 

 「あれを出せだと!!? きさま、あれが虎の子だと分かって……」

 

 「どうしたというのだ、ピラフ!」

 

 チャパ王が問いかけるのと、電話の向こうの存在がチャパ王に替われと言うのは同時だったらしく、ピラフはさっと投げやりに受話器を突き出した。

 

 「誰だ、ピラフが何やら騒いでおったが……」

 

 『師匠、私です』

 

 「……ソシルミか、何の用だ」

 

 『予備兵力のロボット兵団をこちらによこして欲しいのです』

 

 柄にもなく、チャパ王は電話越しに目を見開いた。

 ロボット兵団――――かつて鹵獲・改造したメタリック軍曹やプリカと共同開発した『鉄人拳』シリーズなどを統合してさらなる改良、大量生産を施した独立戦闘部隊。

 ……タンドール王国が保有する最後にして最強の兵力だ。

 

 「安定したその戦域への援軍ではなかろう、理由はなんだ」

 

 ――――チャパ王は、あっけなく、それを手放す算段を整え始めた。

 

 「お、おいチャパ!!」

 

 『……北エリア、ツルマイツブリ山麓の戦域では不可解な事象が多発しています、私はそれを調査したい』

 

 「故に、予備戦力を補填としてよこせと……わがタンドール王国軍の有様は、把握しておるのだな?」

 

 『感じております、危機的状況です』

 

 むちゃくちゃだ、チャパ王が凡夫であれば、あるいはこの関係なくしてはそう叫びちらしてしまいそうな内容を、ソシルミは戦いの最中にあって息を乱さず、静かに、一言一言丁寧に語ってゆく。

 チャパ王にとってそれは、聞き覚えのある――――

 

 「――――懐かしいな、弟子入りの時も、あの免許皆伝の試合を申し出る時も、おまえはそんな声だった」

 

 『……師匠』

 

 チャパ王は、ソシルミが連絡してきたと知った時、いつもの神がかりかと思った。

 あの強力な気は額面以上に危険な存在だ、救援に向かいたい、と。

 だが……ソシルミはこの戦いに挑む上で、そんな甘さは捨てているとも、信じていた。

 故に、問う。

 

 「聞かせろ、今度のはただの神がかりではないな? おまえにとって、これはなんだ」

 

 『――――戦うべき敵との出会い、運命との対峙、宿命の得心』

 

 チャパ王は、そっとほほえんだ。

 

 「よろしい、ピラフ……すまないが出撃準備だ」

 

 「チャパっ!!!」

 

 困惑を怒りにも似た驚愕へと変えたピラフが叫ぶのを手で制し、チャパ王は弟子に命令を下す。

 

 「ソシルミ、兵団の到着までそこで戦え」

 

 「お、おい!! この国の防衛はどうするつもりだ!!?」

 

 その時通信機越しに、ソシルミとプリカは感じた。

 穏やかに笑っていた己の師の口が、とてもよく見た形へと、歪むのを

 

 「なに、戦線の一つくらい、わたしのチャクラムさばき次第でどうとでもなるさ」

 

 『……感謝します、師匠、どうかご無事で』

 

 「弟子の行き先を見るために戦う、自ら刃を振るいたいから戦う、ただそれだけ……きさまらと同じだ、なに、きさまらの子を見るまでは死なんさ」

 

 チャパ王がそう言って通信を終えたとき、すでにピラフはロボット兵団発進用の装置のスイッチを手元に用意していた。

 

 「ほ……本当にいいんだな……?」

 

 「すまない、わたしのワガママに答えてくれて」

 

 「バカにするなよ、出会いこそ小心ゆえの情けないものだったが、わたしはきさまとの友情にひとかけらも貸し借りなど感じておらんわ!!」

 

 「小難しいことを、ソシルミが感染ったと見える……いや、お互い様か……くく、はっはっは!!!」

 

 「ん? は、は……はーっはっはっは!!!」

 

 王は笑い出し、大王がそれに続く。

 転生地球人と転生TSサイヤ人が混沌との決戦地へ赴いたのは、その数十分後のことだった。

 

 

 

 「ソシルミ!! あんな……鉄人拳やメタリックたちは、あの国の最後の砦なんだぞ!!?」

 

 「そうだ、だが、『奴』の暗躍をこれ以上見逃すわけにはいかん」

 

 「ヤツっておまえ、そんなに、確信があるのか……!?」

 

 ソシルミは舞空術の速度を変えぬままくるりとプリカを向いて、じっと見つめた。

 

 「ある」

 

 「…………わかった、やるならとことんだ、急ぐぞ」

 

 プリカは納得のそぶりを見せ、目を瞑り……そして、開く。

 そのまなざしを受けたソシルミは、たまらなくなって、言葉を続ける。

 

 「プリカ、大丈夫、師匠と皆とピラフは、立派に国を守ってくれるさ……俺にとって、あの道場は心の底から安心できる、そんな場所なんだ」

 

 今度はソシルミが目を瞑る番だった。

 瞼の裏に映るのは、青々と茂る草木、キューポラの付いた壮麗な建築物、熱気溢れる半地下の道場……。

 

 「……もし死んでしまっても、きっとあの世で笑って俺に襲いかかる、そんな人達だからな」

 

 ソシルミは優しく目を瞑ったまま、今ここに居ない、もしかしたらこの世にもいないかもしれない人々を想って笑う。

 

 「オレにとってもあそこは大事な場所で、皆は大事な人たちだ、だから……」

 

 「……ああ、勝つぞ」

 

 二人は、あらゆる戦いで誓う必勝を、更に数倍にまで高める。

 ツルマイツブリ山は、まだ遠い。

 

 

 

 「くらえ必殺、ただのエネルギーボール!!」

 

 「ひっひっひ!!」

 

 「た、退……ひ……ぐ、ぐぎ!? ぎゃあーっ!!!」

 

 赤い肌、白い髪の異星人が放つ凶弾から逃れようとした地球兵士が、不自然につるりと転げ、そのまま命を絶たれる。

 

 「遮蔽……いや、とにかく視界から逃れるんだ!!」

 

 「逃さないぜ……! リクーム…………キック!!」

 

 「せいがでるなあ、みんな!!」

 

 地球人と見分けの付かぬパイナップルヘアーの男の蹴りが兵士の体を粉微塵にする。

 紫の男が、笑いながら戦士の刀をへし折り、そのまま頭を握りつぶした。

 

 「スカウターがないとこざかしい不意打ちが面倒だ、なあリクーム」

 

 「へっへ、オレは楽しいぜ、どーせこいつらの兵器なんてまともに効きゃしないんだからよ」

 

 「超能力も面白いくらいにかかりやがる、カスの相手もたまにはいいな」

 

 ツルマイツブリ山麓は地獄だ。

 戦闘力数万の存在は、一般的な地球人が持てる最先端兵器の水準を遥かに上回っている。

 しかも、敵は残虐ながらも抜け目なく戦術を見抜いては破壊の限りを尽くす殺戮のエリートばかり。

 

 「む、ムリだ、勝てない!! ここは引いて、武道家が来るのを――――」

 

 ……まともに技の通じない敵を前に挑んでは殺される兵士達が挑み続ける理由は一つ。

 

 「オレたちが逃げればこの街が、北の都が……オレたち全員のふるさとが!! 逃げた人たちが殺されるんだ!!」

 

 「やるぞ!! 突撃だ! 何度でもだ!!!」

 

 たとえ、敵を楽しませる生贄となるだけだとしても。

 奇跡を二度望むことなど出来ぬとしても。

 戦い続けねば、守るべきものが失われる。

 ただその一点のためだけに命を捨てる戦士達を前に、侵略者は笑う。

 

 「はっはっは!! まともに宇宙にも出れねえやつらが、星の一箇所をなんとかなんとかって、いつまでたっても飽きねえジョークだぜ!!」

 

 「おーおー、またイキのいいのが来たぜバータ! ……ん? あいつどこ行ったんだ?」

 

 「どーせどっかを飛び回ってるんだろうぜ、もう別の街をぶっ潰してたりするかもな」

 

 「隊長! こりゃあ、今日のディナーはあいつのおごりですね!!」

 

 「…………」

 

 「隊長?」

 

 だが、紫の男、ギニューだけは、小さく冷や汗を垂らす。

 

 「あ、ああ……よかろう」

 

 彼は、ほんの少しだが……『気』を操作できるタイプの人類だった。

 

 

→つづく




またしてもの投稿遅れ申し訳ありません、桐山です。
ということで、フリーザ編前哨戦は更に続いてゆきます……その存在感を増した、不穏な影を孕みながら。

当面のプロット、最終回までのタイムラインはすでに存在し、それを書き上げることへの望みも十分……なのですが、いかんせん終盤故の難しさや誘惑が多く……。
ネトフリ範馬刃牙とか宇宙戦艦ヤマト2205とか!!
あとドラゴンボール最新映画の予告とか……。
レッドリボン軍絡むとか美味しすぎる……出したかった……。

ということで残り短くも前途多難なSSですが、今後ともお付き合い、ご応援よろしくお願いします。
地球の運命は、そして、彼等が対峙するべき敵とは。
不気味にうごめく影、そして、不気味に静止した帝王……。
物語はさらなる局面へと進行してゆくことでしょう。

次回もお楽しみに!!
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