転生地球人が宇宙最強になるまで   作:桐山将幸

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第四十五話:転生地球人が戦隊で戦うまで

 「教えてくれと言っているんだッッ!!」

 

 「教えん!!!」

 

 「教えてくれ!! 貴様の実力と見識ならばわかるはずだッッ!!」

 

 「教えんと言っている!!! きさまこそ、あの『兵器』はなんだっ!! 隠したままは男らしくないぞ!!!」

 

 「教えるも何も俺はそれを知らんッ!! 俺が知りたい、それは俺が聞いている『第三勢力』かもしれんのだッッ!!!」

 

 この俺、アエ・ソシルミと、フリーザ軍の隊長ギニューは互いに猛烈な剣幕をぶつけ合い、押し問答にふけっていた。

 

 「……ソシルミ、そろそろ、諦めたらどうだ?」

 

 「隊長~、さっさとやっつけちゃいましょうよ~」

 

 「ソシルミさん! そんな連中に懇願することはありませんよ! 捕虜にして堂々と尋問すればいいんです!!」

 

 プリカ、ジース、サイボーグまでもが半ば呆れた感じで遠巻きに俺達を見る……が、譲ることはできん。

 何故ならばこの問答の争点である情報、奴が兵器と呼び、俺が第三勢力と呼ぶそれ。

 かつて地球上で魔族やラディッツ、ベジータ戦における月に干渉したかもしれないその存在に関する情報は、この地球の、いや、多元宇宙の命運までもを左右するからだ。

 目的のためには危険を顧みず敵と語らい、手を結び、情報を聞き出す覚悟が、俺にはあった。

 ……しかし俺も、俺の相棒も、紫の侵略者もその部下も。

 殴り合いやエネルギーのぶつけ合い以上に苛烈な戦いの運命を知るよしもなかったのだ。

 

 

 

 

 ソシルミとギニューの会話よりしばらく前のこと。

 ギニューは口元に手をあて、普段の楽しげな、あるいは残虐な笑みを一切思わせぬ顔で空を睨んでいた。

 

 「いや……こんな……この星にそんな、しかし……」

 

 眼はせわしなくぎょろぎょろとあたりを見回し、角はふらふらとアンテナのように大気をかき混ぜる。

 部下の赤い男が、上司の焦りを感じ取って叫んだ。

 

 「ど、どうしたんですギニュー隊長!!」

 

 「黙れジース!!! ……いや、すまん、だが……」

 

 再びぶつぶつと言い出すギニューを見て、特戦隊の三人はおののき、三人だけでひそひそと話だした。

 

 「隊長、一体どうしちまったんだろう……」

 

 「あの人はオレたちにもわかんねえ力を持ってるからな、何かを感じ取ったのかもしれねえ」

 

 「おいおいグルド、おまえにも分からないんだったら、もうお手上げじゃねえか」

 

 スカウターを"原因不明の故障による爆発"で失い、索敵手段、そしてはぐれた味方との合流手段を失った特戦隊たちは、周囲を警戒しながらもわざとらしくおちゃめに耳を貸し合う。

 だが、それも長くは続かなかった。

 彼らの隊長が、頭上に白熱灯を浮かべて面を上げ、喜色満面に叫んだからである!

 

 「わかったぞ、兵器だ!! 兵器がある!! それも強力だが周囲に影響のない、小型高出力の機動兵器だ!!」

 

 「「「は!?」」」

 

 部下たちは一斉に疑問符を浮かべ……。

 

 (……機動兵器……ロボットのことか? 何を言っているんだあいつは……、わが軍にそんな優秀なロボットは、いや、第三勢力でもいると言いたいのか?)

 

 聴力において只人を遥かに上回るサイボーグが、遠くでやはり、疑問符を浮かべていた。

 ソシルミがちょうど、スピニッチ荒野を発った頃の出来事である。

 

 

 

 荒野での戦いをロボット軍団にまかせ、俺達は一直線に北エリアのツルマイツブリ山麓へと向かう。

 プリカは目的地を確認してから、仕切りに首を捻り、唸っていた。

 

 「うーん、ツルマイツブリ……なんだっけ、聞いた気がするけど」

 

 「Dr.ウィローの研究所の所在地だ」

 

 「あ! そうか、あれか!! ロボのやつ!」

 

 Dr.ウィロー。

 科学技術だけで気候を変動させ、(おそらく)ベジータ級の戦闘力を持ったロボットを作る事ができるほどの高い技術力を持ったマッドサイエンティスト、映画『ドラゴンボールZ この世で一番強いヤツ』のラスボスだ。

 助手であるDr.コーチンとともに活動していたが、あまりのエゴイスティックな考えに世間からつまはじきにされ、その上、ツルマイツブリ山にある決して溶けぬと伝えられる氷の壁、名もそのまま『永久氷壁』に飲み込まれて消息を絶った。

 その後、復活した彼が自らは機械の体に移植し、次のボディとして地球最強の男の体を求めて機械兵士や洗脳したピッコロに悟空を襲わせる……、というのが映画『ドラゴンボールZ この世で一番強いヤツ』の筋であり、映画はDr.コーチンが永久氷壁を排除し、彼を復活させるところから始まる……のだが。

 

 「……たしか、ドラゴンボールがないと、Dr.ウィローは氷から出られないはずだ」

 

 「その通り、永久氷壁はサイヤ人襲来時のピッコロ程度の出力では破壊できんほどの強度を持つ、ドラゴンボールでなければ、解凍はできん」

 

 「映画だと、たしか手下の博士がドラゴンボールを集めたんだよな、そのドラゴンボールはオレたちが抑えてるし、安心ってことか?」

 

 「ああ、それに永久氷壁の監視と補強は俺と神様とミスター・ポポで全力で行ったからな」

 

 プリカが軽く疑問符を浮かべ、すぐに『ああ、そっか』と納得の表情に変えた。

 Dr.ウィローの研究所が永久氷壁に飲み込まれたのは天罰……というのが地上の言い伝えだが、それは実際、危険すぎる科学力と野心を警戒した神による封印措置だったのだ。

 俺まで封印の強化に加わったのは……念には念を、というやつである、ドラゴンボールは抑えていても、この世界の科学者は底が知れん。

 

 「じゃあ、Dr.ウィローってことはないのか……、なら一体……」

 

 「わからん、あの地にはギニュー特戦隊の5人以外、強力なパワーはないはずだ」

 

 顔をしかめた俺の額に汗が滲み、風に溶けてゆく。

 あまりに不可解な状況だ、Dr.ウィローが復活したのであれば、エネルギーを感じさせずフリーザ軍兵士を屠るくらいのことはできるが、やつにはそんなことをする理由はない、同じく天才科学者のDr.ゲロもそうだ。

 一体何が起きている?

 

 「何にしろ急がなくては、サイボーグも死に、手がかりも逃すではせっかく戦場を預けた意味がないッッ……!!」

 

 俺ははやる気持ちのままに速度を上げようとして、はるか後方を飛ぶ鳥が大きく姿勢を崩したのを感じ、緩める。

 俺達は生身で安全に飛べる限界の高度にいるが、これ以上加速しては、ソニックブームその他の悪影響が地上を襲うだろう。

 そんな心配を裏付けるように、差し掛かった荒野の地面が大きな土埃を上げた。

 

 「これ以上は出せんかッッ……!!」

 

 そんな焦りを見せた俺に、プリカはとんでもない提案をしてくる。

 

 「ソシルミ、大気圏外に出るぞ!!」

 

 しかし、そのとんでもなさに対して、理屈はわかりやすい……なにしろ、大気がない宇宙空間でなら、速度は出し放題になるからだ。

 だが……。

 

 「駄目だ、どれだけ体を強化しても、酸素が持たん!!」

 

 「違うって、これがある!!」

 

 プリカは少し呆れ気味のような感じでそっと近づいて、俺の手にカプセルを握らせてきた。

 これは……!

 

 「変身型のカプセルだ、わかるだろ?」

 

 「……ああ、グレートサイヤマンと同じ、ホイポイカプセルの機能を利用した瞬間的に衣服を装備できる技術だな?」

 

 「そうだ、さっさと使え」

 

 俺は促されるままにカプセルを起動する、すると、またたく間に、俺の衣服とカプセルに保管されていた装備が入れ替わった。

 

 「思い出した、大分前に採寸したやつかッ!!」

 

 「やっと思い出したか……、行くぞソシルミ!!」

 

 プリカもまた同じ装備をして、勇ましく気勢を上げた。

 装備とは、大気圏外脱出用の対環境スーツだ。

 スーツを纏ったプリカの体は、頭はヘルメットに、体は戦闘服に近いラバー質によってしっぽまでご丁寧に包まれていた。

 ……身長、骨格、それに肉付き(この場合は筋肉だけではない、女性らしい脂肪もだ)、全てがあの日とは違う。

 それを見る俺の心には、愛おしさと同時に……それ以上のある大きな感情が浮かぶ。

 

 「なんだ、ジロジロ」

 

 「……前の時は地上と体を気遣ったせいで、危うく鶴仙人と桃白白を殺しかけた、だが今は違う、それが嬉しいんだ」

 

 たとえそれが即物的なものであれ、当たり前の改善であれ、進歩がある。

 それが嬉しい、あってはならぬとはいえ、次につながる進歩がある、俺達は進歩できる。

 

 「さあ行こう、謎を解き明かし、俺達の仲間を救うために!!!」

 

 「おう、ソシルミ!!」

 

 俺達は進路を斜め上方へと切り替え、空が見えた。

 高高度の空、味気なく言えば濃紺……だが今の感想を言えば、宇宙の黒が滲む空だ。

 いつか本当に行きたい場所だが、今はただ、この星を守るために。

 

 

 

 サイボーグ軍人にとって、恐ろしく強大な戦力を前にしながら密かに情報を収集する行動は、生身時代からのお家芸だ。

 今回の戦いでは当初頼られる大戦力側であった彼だったが、この『降格』にも腐ることなく物陰に潜み続けていた。

 彼が見つめる空では、4つの影が北国の空にゆっくりと浮かび、ひそひそと大声で会話している。

 

 「いいかっ、まんべんなくやるんだ! 隙間を残せば敵は必ずそこにひそんでしまうからな!!」

 

 「しかし隊長、こんなことであぶり出せるんでしょうか……?」

 

 「ロボットだろーがなんだろーが、地球の兵器なら地球人を守ろうとするはずだぜ!! 隊長の言うことに間違いはねーよ!!」

 

 「ひっひっひ、何にしろ、こういうのはオレの大得意だぜ!」

 

 大声での密談という奇っ怪な行為を続けるギニュー特戦隊は、浮かび上がったことによって必然的に集中砲火を受けているが……全く意に介さない。

 それどころか、グルドはその砲撃、銃撃に手をかざし、それらをすべてピタリと止めた。

 銃弾、砲弾、ミサイル、光線、そのすべてだ。

 その瞬間、サイボーグの掠れた動物的直感が、その肉体を失った日のことを唐突に思い出す。

 

 「伏せ――――いや、隠れろ!! 遮蔽を……違う、建物か、地下に逃げるんだ!!!」

 

 自身が隠れていたことすらを忘れ、付近の兵士たちに避難を求めるサイボーグ、その頃には彼の理性にも何が起こるかは明白だった。

 そして……特戦隊は、空高く掲げられた()()()()()を見て、コメディチックに、不満げにつぶやく。

 

 「こんだけか? もうちょっとできるだろ」

 

 「ん~、もうちょい追加するかな!」

 

 簡単な事務仕事でもやっているかのようなやり取りとともに、瓦礫や地球人の兵器をこともなげに持ち上げていくグルド。

 その言葉を聞いて不気味さにおびえているのはサイボーグだけだったが、ここまで来れば何が起きているかは誰の目にも明らかである。

 敵超能力兵はこの大量の質量とエネルギーを叩きつけるつもりなのだ!

 サイボーグは事態の把握に努めながらも、仲間の兵士たちを必死に逃がそうとする。

 

 「来るぞ、早く! 早くしろ!!!」

 

 彼の助言を受けた者を中心に、兵士は顔をひきつらせ全力で建物や戦車の影へと隠れてゆく……が、手遅れだった。

 グルドと三人が嘲りの笑みを浮かべた直後、浮遊した物体とエネルギーは一瞬静止する。

 その瞬間だけ、全ての戦闘音が止み……地球人兵士たちの絶叫だけが戦場に響いていた。

 

 「退避!! 退――――」

 

 「きええええい!!!!」

 

 超音速で戦場を飛び回る残骸とエネルギーの暴風がグルドの視界内にとどまった全ての兵士、兵器を破壊してゆく。

 一方……残る三人は、地上の様子を監視していた。

 ギニューは全身全霊で、他の二人は懐疑的な姿勢のまま、なおざりに、だが。

 

 「……動き、ありませんね」

 

 「どうすんだよ隊長!」

 

 「待て、われわれの意図を察して隠れているのかもしれん……」

 

 地上を包み込んだ嵐は、地球人、宇宙人、建造物を区別せず薙ぎ払う。

 それを見た特戦隊員たちは……何も意に介していない、殺すのは当然、破壊するのも当然、フリーザ軍兵士を巻き込んでいることにすら、一切後ろめたさはない。

 せいぜい『お小言を言われるかな、でも、弱いやつらが悪いんだぜ』という程度。

 嵐が収まり静かになった戦場の中、嵐をなんとか乗り切ったサイボーグは脅威など伴わぬその事も無げな態度を前に、この戦いにおいて幾度目かの戦慄を覚えた。

 

 (フリーザ軍にはいくつかの精鋭部隊がいて、とんでもないやつらだとは聞いていたけど……まさかあんな連中だったなんて……!!)

 

 サイボーグは一人の軍人として強い恐怖と憤り、異質感を特戦隊に覚える。

 侵略者として虐殺を行いながら、この余裕溢れる態度、殺しに一切の躊躇を見せず、人殺しを人殺しとして味わうわけですらなく、ただ子供のようにうきうきと破壊行為を楽しむ姿勢!

 自分たちをヒーローかなにかと思いこんでいるかのような意味不明なポージングといい、名乗りといい、あれが侵略者の決定的な力と脅威を示すための行いなら、満点と言うほかは――――

 

 「見つけたぞ、サイボーグ!!」

 

 「はっ……!!」

 

 一瞬思考にふけったサイボーグを、紫の男、ギニュー隊長が見咎めた。

 と、サイボーグが認識したとき、既にギニューはサイボーグの目の前にいる。

 

 「きさま……何にしろ情報を知っていそうだな、さて……」

 

 「どうします? サイボーグなら拷問ってのも難しいでしょうが」

 

 「なに、こういう劣った星の軍人にはよく効く方法がある」

 

 (一体こいつは何を言っているんだ? オレが何を知っているだと? まさか、オレがフリーザ軍兵士が消え続ける原因だと思ってるのか?)

 

 混乱に包まれるサイボーグの頭脳。

 だが、それは長くは続かなかった。

 ギニューはサイボーグの目の前に立ったまま、左拳を水平に掲げたのだ。

 そして力を込めて手のひらを開けば……もう、サイボーグにも何が起きるか明らかだった。

 

 「ま、さ、か……」

 

 「はーっはっはっは!! そのまさかだ、どうだ、きさまが吐かねば――――」

 

 ギニューは広げた手のひらに、気弾を作り上げ……それは、またたく間に膨れ上がり始めた。

 すぐに手のひら、胴、足を超え、アスファルトとコンクリートを削りながら膨らむ気弾の持つエネルギーは、サイボーグの持つスカウターの計測能力を上回り、更に上昇してゆく。

 

 「こ……こんな……!!」

 

 「――――ふん、これでも吐かんか、しょうがないやつだなあ」

 

 ギニューは、心底呆れた顔と声――――まるで、わがままな遊び友達に向けるかのようなそれで――――サイボーグをちらりと見て。

 それから、その同胞たちを、自らの同輩もろとも抹殺するべく、巨大なエネルギー弾を……ごく軽く、ぽんと押し出した。

 

 「やめろーっ!!!」

 

 サイボーグは跳ね上がる心臓も、思わず息を吐き出す肺もないことも忘れて叫び、止める手段もない気弾へと駆け出す……。

 ……ことすらできず、肌色の大男に腕を引っ張り込まれ、尻もちをついた。

 

 「あ、ああ……」

 

 砲弾どころか、RPGにも劣るゆっくりとした速度で向かう気弾は、何かに衝突すれば即座に爆発し、町の半分を消滅させるだろう。

 武道ファンとしての知識と経験が、それを直感させたことで、サイボーグの絶望は更に深まる。

 同胞であり、戦友であり、機械の体に変わった自分を受け入れ、部隊名にまで取り入れてくれた友たちが、今。

 

 「く……!! わ、わたしは何も――――」

 

 「ま、いいんだいいんだ! どーせおまえたちは皆殺しだし、こんなちんけな町の一つや二つ、フリーザ様も要らんからな!!」

 

 「へっへっへ、さっすが隊長!!」

 

 気弾はのろのろと飛んで、壊れかけたビルの一つへ激突する。

 瞬間、炸裂した閃光が――――

 

 「ヂイイエエエエッッッッッ!!!」

 

 ――――炸裂した閃光そのものが、直前に滑り込んだ存在によって全て上空へと弾き飛ばされた。

 驚愕するギニュー特戦隊とサイボーグ、だが、ただただ唖然とする特戦隊に対し、サイボーグは心のどこかで事態を理解していた。

 

 「!!!? な、なんだと!!!」

 

 「隊長のパワーボールを……」

 

 「おい、爆発したあとでぶっ飛ばさなかったか!!?」

 

 「見間違いだろ!!」

 

 滑り込んだ存在、男は、エネルギーによってえぐられた地面から覗く埋設管に両足を揃え、不敵に四人の敵、そして一人の戦友を見上げる。

 サイボーグはたまらず叫んだ。

 

 「…………ソシルミさん!!!」

 

 「作戦目的は救援ではないが、流石に見過ごすこともできんからな」

 

 突き放すような言葉が示すのは、戦友としての一線を引いた姿勢。

 そう、彼の目的はこの星を幾度も危機に陥れた影を倒すこと。

 そのために、彼は自ら破壊した円盤が降り注ぐ町で、にこりと笑って敵に歩み寄る。

 

 「さあギニュー隊長、話をしよう、議題は……この戦場で何が起こっているか、ってところでどうかな」

 

 

 

 

 「ハァ……ハァ……」

 

 「ふぅ……ふぅ……」

 

 大声を張り合った俺とギニューは、長い押し問答に疲れつつも、次なる言い争いに揃えて息を整える。

 

 「な、なあソシルミ……もうよそう、素直に戦った方がマシだって」

 

 「あいつの言う通りですよ隊長! ここは正々堂々、男らしく雌雄を決しましょう! あっち女居ますけど!!」

 

 プリカと、ギニューを除く三人の特戦隊員たちが口々に俺を止める。

 (ギニュー特戦隊は五人だが、一人はこの街の別の場所にエネルギーを感じる)

 俺は飛び込んだ状況やエネルギーが放つ感情、その他諸々の要因から、ギニューが『何か』を既に掴んでいると直感し、聞き出そうとしたのだが……。

 俺が戦場に潜む『第三勢力』について聞けば、奴は『兵器』について聞き返してくる。

 それらがどうやら同じものだというのは分かっても……あいつも手練だ、兵器という考えにたどり着いた材料などは、頑なに口に出さないのだ。

 停戦に関する提案も同じ、まったくの押し問答……。

 そして、俺達を中心に渦巻く気まずさ、脱力感!

 ……というか、いい加減恥ずかしくなってきた。

 

 (プリカ、ギニューは何かに気付いている、それは確かなんだ)

 

 (わかったけど、あれはもう意地になってるし、そもそもギニューは忠誠心があついんだ、情報漏らしたりするわけないだろ……それに)

 

 (……それに?)

 

 (オレもいい加減はずかしいぞ、ソシルミ)

 

 皆まで言うな……。

 その情報を聞き出すことすらできれば、問題への対処は容易になる上、共闘に持ち込めれば和平の緒すらつかめるのだ。

 ……が、もう、潮時らしい。

 

 「もはや、戦うしかないのかッッ!?」

 

 「ソシルミさん、やっと戦う気になってくれたんですね!!」

 

 サイボーグまで言うか!

 ――――加速のために飛び出した宇宙空間は、俺に新たな技のヒントを与えた。

 大気をより高度に操作し、飛行の速度とキレを格段に向上させるその技を使った俺は、スーツを解除しながら戦場に飛び込み、街を救ったのだ。

 そこまでは、よかった。

 ギニューは俺を忌々しげに睨んで、当然のように物騒な台詞を吐く。

 

 「ちっ……兵器の情報はおしいが、殺すしかないらしいな」

 

 「こちらも……フリーザ軍兵士を殺している何者かを排除したいと言っているのに聞かんとは、文字通り話にならん」

 

 情報を聞き出し、あるいは同盟を結ぶことができれば殺し合うことはないはずの相手。

 それも、協力な肉体とパワーを持っている有望な戦士であり、……正直に言えば、正体の分からない影よりも彼らの方がずっと俺にとって『仲間』な気がしていたのだ

 わかりあえないのは、残念でならない。

 ……と、回想していると、それを読んだのか、何らかのチャンネルから思考が漏れたのか、プリカがすごく既視感のある視線を向けてきた。

 

 「……おまえが結構天然ボケだっての、忘れてたよ」

 

 「皆まで言うな」

 

 少し凹む。

 が、凹んでいる場合ではない。

 ギニューはいきり立ち、今にも戦闘を開始する気だ。

 

 「ふん、余計な手間を取った分、すぐに仕留めてやる、行くぞおまえたち!!」

 

 「はっ!!!」

 

 (プリカ、ここは俺に任せて貰おうか)

 

 (どうする気だ?) 

 

 俺はプリカの問いへの答えもまともに出さぬまま、自らのエネルギーを練り上げる。

 ……今からやるのは、なるべく、取りたくはなかった手だ。

 だが、やらねばならない、奴らから情報を引き出せないのならば、もはやこうするほかない。

 そのために、俺はゆっくりとギニュー達に歩み寄った。

 

 「お相手しよう、ギニュー特戦隊……我ら、『白亜戦隊ギル』が!!」

 

 「なに、戦隊だと!!?」

 

 「ソシルミ?」

 

 ギニュー達はわざとらしくのけぞって驚き、プリカはジト目で声を低く俺をにらみ、俺は胸を張ってギニュー達を指差す。

 

 「ソシルミさん、一体何を? はくあ……?」

 

 「わがギニュー特戦隊のマネをしようというのか!!?」

 

 「我らは古代より存在する戦士、貴様らこそ新参者と知れ」

 

 「おい、ソシルミ、なんでスーパーヒーロータイム始めようとしてるんだ」

 

 完全に事態についてこれない二人を恥ずかしさごと振り切って、俺はゆっくりと足に力を込める。

 そして、頭の毛を数本毟り取り……。

 

 

 

 ――――爆音とともにコンクリートが砕け散り、土煙と家庭用ガスタンクの破裂による爆煙が周囲を包む。

 

 「むっ!!? 目くらましか、姑息な手を……!」

 

 「「「我ら、大白亜より来たりし、星の守護(まも)りてなり!!」」」

 

 「ナニっ!!?」

 

 「「「我ら、神の意によって滅び、星のため、人の願いによって蘇らん!!!」」」

 

 3つの声が叫ぶと、そのおたけびに呼応するかのように起きた爆風が一挙に戦場の煙を押し流し始める。

 未だ残った煙に包まれてそこに在るのは、声と同じ3つの影!

 まず飛び出したのは、今までギニュー達に捕らえられていた男の声を発する中肉中背と言った影。

 全身を紫のヘルメットとスーツに包んだそれは、両腕を翼のごとく広げ、次に、片腕片足をそれぞれ上下に構えた!!

 

 「疾き刃の翼、プテラ!!!」

 

 次に出たのは、小柄な女の声、それが更に体を低く低く構え、両腕と頭を揃えて突き出す、それは、その矮躯に反し巨大肉食獣の角のようで……。

 

 「重き力の角、トリケラ!!!!」

 

 最後に大きく体を揺さぶりながらまろび出た大男は、斜めに構えた両腕を引き絞る音を幻聴するほどに大きく、力強く広げ、大顎と為した。

 

 「鋭き技の牙、ティラノ!!!!」

 

 「地球人が変身しただと!!?」

 

 「い、いや、あれは衣装を変えただけだ! どうやったのかはわからんが……!!」

 

 驚く特戦隊員たちを意に介さず、三人は三者三様のポーズを取ったまま位置取りと向きを合わせ、続けて声を上げた!

 

 「「「我ら、白亜戦隊ギル、大白亜の怒りに触れた愚か者よ、化石も残らず消え去るべし!!!」」」

 

 「く……! なんという強敵だ!! どうします隊長!!」

 

 ジースが焦りのあまりギニューを見ると、彼もまた冷や汗を流していた。

 

 「まさかこんな星で、ここまでイカしたファイティングポーズを取る者たちがいるとは……!!」

 

 「われわれもファイティングポーズを……」

 

 「駄目だ!! 不完全なスペシャルファイティングポーズで対抗できるはずがない!」

 

 ギニュー特戦隊の要はスペシャルファイティングポーズ、それに高いプライドを持つからこそ、一人を失ったままのファイティングポーズを敵に見せることはできないのだ。

 焦ったグルドが問う。

 

 「対抗する手段はないんです!?」

 

 「一つだけ……ある!」

 

 忌々しげに歯を食いしばったギニューの決断は重く……しかし、明確だった。

 

 「たたんでしまえ!! こうなれば実力行使あるのみ!!!」

 

 「うおお!!!」

 

 「よっしゃああ!!!」

 

 「けええええ!!!」

 

 かくして、4人と3人、ギニュー特戦隊と白亜戦隊ギルの戦いが幕を開けたのだった!

 

 

 

 

 「ソシルミ……なにあれ……」

 

 「あれは一体……」

 

 隣で飛ぶプリカと、俺の抱えたサイボーグが眉を潜め、口々に困惑を顕にする。

 …………。

 

 「素で引くんじゃあないッッ!! ……ハァ……ハァ……!」

 

 「いや、時間稼ぎするのはわかってたけど、なあ……」

 

 プリカの言う通り、あいつらを相手にするには時間も余力も足りない。

 情報を聞き出せないなら、撤退が現実的だった。

 

 「ええと、あれは強烈なキャラクター性に従っている敵に対して、同様のやり方に従う素振りを見せることで時間稼ぎの精度を上げる試みなのでしょうか、どういう手段で分身したのかまではわかりかねますが……」

 

 「丁寧な解説ありがとうございますッッ!! 全くその通りです!!」

 

 もう若干恥ずかしいが、解説といこう。

 今回俺が行ったことはシンプル……ではない、かなり複雑だ。

 まず、足に蓄積した衝撃波エネルギーと物理的な踏み込みで地面を破壊しつつガス管を爆発させる。

 次に、その炸裂した爆風に乗じて、サイボーグを救出。

 そして……。

 

 「えっと……あれは、四身の拳なんですか?」

 

 「その通りですが、オリジナルとは異なり……ふぅ……まず、生成手段から……」

 

 「毛をむしってたっけ……毛……分身……あ!!」

 

 その瞬間、プリカがはっとした顔になってから若干ニヤつき、困惑しているのはサイボーグの人だけになった。

 確かにこれは、俺達にしかわからないことだな。

 

 「どういうことです?」

 

 「多分ソシルミは、毛という自分の体の一部を核にして気の分身を作ったんだ、気を吹き込む手段は多分……息じゃないか?」

 

 そう、俺がやったのはこの歴史にも元の歴史にもいない、カカロットよりはるかに先に孫悟空と呼ばれた石猿のそれを参考とした分身術だ。

 毛を使い、息吹によってエネルギーを吹き込んで作った分身は、同じく息吹を用いる『スーパーゴーストカミカゼアタック』より頑丈で、四身の拳ほどハデに弱体化することもないが……。

 

 「大丈夫か? やつらとやりあえる分身を作って変身までさせるなんて、気を……」

 

 「…………界王拳のちょっとした応用だ、前借りってやつだよ、多少……疲れはしたがな」

 

 俺がそう言うと、プリカとサイボーグは俺の顔を覗き込み、自らの顔を心配げに歪めた。

 これが俺以外の戦士なら、エネルギーの搾りすぎで活動困難になるところだが……俺は範馬でヨガの達人だ。

 それを信じて、よろけそうになる飛行を整える。

 

 「ちょっとには見えません、どうしてそんな戦術を……」

 

 「また、戦争がイヤになったか、ソシルミ」

 

 「……ッッ……!!」

 

 サイボーグとプリカの指摘を前に、俺は息を飲む。

 プリカの言う通りかもしれない、俺が特戦隊を撒くためだけにこんな大掛かりな技を使ったのは、本当に受けるダメージと時間を惜しんでのことなのか?

 まさか、重要な危機に関しての情報を聞き出すというのも名目だけで、よく知る歴史のキャラクター、優秀な戦士を前にした時の『殺したくない』という感情のままに語りかけ、アホらしい対話をただただ楽しんでいただけ……だとしたら。

 

 「謎の存在への対策を取るにしても、奴らの脅威を排除し、やられた兵士達の仇を取る方が優先すべき――――」

 

 「――――違います、ソシルミさんっ!!!」

 

 サイボーグが俺の言葉を遮って、周りには聞こえぬ大きさで……しかし、しっかりと叫んだ。

 

 「あなたは、望むがままに戦う人だ……そうであるべきです、それがわたしたちの憧れたあなたという武道家で、戦士として支持したあなたなのですから」

 

 「……軍人さん」

 

 俺はサイボーグの視線に、呼びかけだけで返す、普段はプリカとだけ行う静かなコミュニケーションが、ここでも成立した。

 そうだ、俺は……。

 

 「負けたなソシルミ、……さあ、次はどうする? 時間稼ぎするからには、策もあるんだろ?」

 

 プリカが急かすようにまくしたてた言葉に、俺は笑みをもって返す。

 

 「お前こそ、この距離ならジャミング源の特定くらいできるんじゃないか?」

 

 今度はプリカが笑みを返し、通信機を突きつけてきた。

 

 「当然だ、こんなこともあろうかと、このマシンには考えうる限りの観測装置を積み込んであるんだ」

 

 「……ジャミングなんて仕掛けたのが失敗だったと、ヒントを与えただけだと、思い知らせてやろう」

 

 作戦目標はジャミング源、目的は兎にも角にも『奴』の目的をくじくこと、それを通じて、できればヒントを得ること、そして、この町を救うことだ。

 三人は意思を一つにすると、それから、抱えて飛び続けるのはまずいので、サイボーグを再び戦いに戻すことにした。

 崩壊した小さなビルの影でサイボーグを降ろし、プリカの誘導のもと更に突き進むんでいると、遠くから俺の分身達がギニュー特戦隊と戦う音と、楽しげな笑い声が響いてくる。

 

 「分身共め、楽しみやがって」

 

 「……オレたちもオレたちの仕事を楽しもう、だけどソシルミちょっと困ったぞ、ジャミング源の場所が搾りきれない!」

 

 プリカの声を聞いた俺が装置を覗き込むと……数種の波形と数値が表示されているだけだ。

 (各データの意味は分からんでもないが、示してる内容はさっぱりである)

 プリカはゆっくりと速度を下げ、装置を睨んだまま立ち尽くした。

 

 「ぶれる範囲はでかいのか?」

 

 「……正方形に4区画くらい、しかも、ジャミング源そのものが一つじゃないみたいだ、多分……三つか」

 

 俺が眉をひそめると、プリカも冷や汗を流した。

 分身では、虱潰しにするだけの時間は稼げない。

 消し飛ばせば余計な被害が出るし、一つ破壊しただけで特戦隊にバレる。

 

 「どうするプリカ、ここはどうやら防衛軍の制圧下のようだが……」

 

 「……そうだ! ソシルミ!!」

 

 プリカの提案により、俺達はすぐさま生き残りの防衛軍が詰めた陣地へと向う。

 陣に入ると、軍人達は突然の闖入者である俺達にむしろ歓迎の色を示してくれた。

 

 「まさかあのソシルミ氏にお会いできるとは!!」

 

 「機械ヤローの言ってた通り、ナマで見るとすげえ筋肉だぜ!」

 

 ……あのサイボーグ軍人の影響もあるようだった。

 

 「――――皆さん、我々は現在、この戦場を包むジャミングについて調査、対処を行っています、つきましては……」

 

 「了解っ!!!」

 

 「何でも言ってください、やってみせます!! ……これで本部と連絡が取れる!!!」

 

 暑苦しいまでのやる気、人気!!

 これが地球の救世主が背負うべき重圧という奴なのか、多数の武道家に分散されていてこれとは、サタンはよくシラフで楽しんでいたものだ。

 プリカなどは目を回しかけている。

 

 「人酔いも久しぶりだな、とにかく指示を出せ、俺達は急がねばならん!」

 

 「あ、ああ……、まず――――」

 

 軍人達は戦場に散り、俺達もまたジャミング源の捜索へと向かう。

 

 「……ジャミング源の発見が、ジャミングを行った者の特定に繋がればいいのだが」

 

 飛び回ってジャミング源を探す俺の言葉に反応したのは、前提条件を共有したプリカではなく、近くの軍人の一人だった。

 俺は彼の視線に何かを感じ、焦りを振り切って彼と情報を共有することにした。

 

 「そ、それって、誰かフリーザ軍以外のやつがジャミングをしてるってことですか?」

 

 「ほぼ間違いないと思っている、誰かは分からんが……」

 

 「まさか、Dr.ウイロー!!!」

 

 「知ってるのか、だが奴らは既に氷の中のはずだろう?」

 

 俺が問うと、軍人は忌々しげな顔をして答えた。

 

 「オレは生まれてませんが、地元ですし。噂じゃ手下のコーチンの目撃情報もあるとか……」

 

 軍人は続けて、同じく狂科学者であったDr.ゲロの研究所もこの地域だと教えてくれた。

 確かに、その二人の科学者とその勢力は滅んだとは言えないが、奴等にこんな行動をする理由はないはずだ。

 そう思った俺が可能性を振り切って会話を終えて捜索に戻ろうとすると、プリカが後ろから飛んできて俺の腕を掴んだ。

 

 「ソシルミ!! ジャミング装置が見つかったぞ!!!」

 

 「おおッッッ!!!」

 

 プリカに誘導された先は路地裏で、その奥の朽ちた金網の向こうに、妙に新しげな装置が鎮座していた。

 

 「こいつで間違いあるまい」

 

 「ヤツの仕業だ、ヤツは高い科学力まで持っていたんだ」

 

 ついにプリカも、影の存在を認めた

 

 「何が仕込まれてるのか分かったもんじゃない、これは破壊する、いいか?」

 

 「うん、そうしてくれ」

 

 俺は衝撃波エネルギーで遠距離から装置をチリにするが……手応えからすると、こいつの硬さは相当なものだ、歩兵の火器では破れるかどうか。

 次の瞬間、プリカはハッとした様子で通信装置を見る。

 

 「ソシルミ!! ちょっとだけど、通信が戻ってる!」

 

 「何ッッ!!」

 

 『……ますか、こ……パイヤ……! 戦線は安…………、バクテリ………ギラン選手の活躍がめざ……、特に……リアン選手の……あ…………私語で…………すいま…………』

 

 これは……!

 天下一武道会の島、パパイヤ島から放たれる無線通信だ。

 状況の混乱からか内容がおかしいが、どうやらバクテリアンはこの局面で大活躍している!

 

 「……ソシルミ、キモい笑顔が帰ってきたな」

 

 「プリカも、かわいい笑顔が帰ってきたじゃないか」

 

 蹴られた。

 通信が通ったのはどうやら一つ装置を破壊されてジャミングが一時的に不安定になったからでしかなく、すぐに戻ってしまったが……これで光明は確実になったというわけだ。

 ジャミング装置の数は三つ、今一つ壊して……次の一つも、すぐに見つかった。

 

 「よし、今度はオレがやる」

 

 プリカがエネルギを叩きつけ破壊すると、同時に光と熱が吹き出し――――

 爆発!!

 煙が引くと、吹き飛んだマンホールから光が流れ込んできた。

 しかし……こんなトラップを仕込んでくるとは……!!

 

 『……ンジシティ防衛隊です、孫親子……程、ピンクと青……太った……敵将軍を撃…………た、ピッコ……参戦もあり、敵軍は全滅間……わが軍は陣地の転換準……行って…………』

 

 ……そうか、悟飯は戦い続けているのか。

 俺は数日前、ベジータの遺言を聞いた翌日のことを思い出す。

 

 『ぼく、みなさんといっしょに戦うことにしたんです!! 地球のみんなが死んじゃうかもしれないって時に、じっとしてられません!!』

 

 ――――結局、孫悟飯という少年はサイヤ人の末裔で、とびっきりの正義漢なのだ。

 俺やプリカを含めた皆も、今からでもやめにしていいと繰り返し説得したが、悟飯の意思は揺るがなかった。

 

 「でも、地球の戦士がこんなだからこそ……、悟飯も戦いを選んでくれた、オレはそう思う」

 

 「……そうかもな」

 

 俺達は胸に抱いた覚悟と喜びと苦痛とともに、次の装置のある領域へと向かおうとして……決定的な瞬間がやってきた。

 

 「ソシルミ!!」

 

 「分かってる、分身がやられた!!」

 

 分身の全滅は同時に『白亜戦隊ギル』というふざけたペテンの正体が露見したことも意味していた。

 四人の怒り狂ったエネルギーが都市を駆け巡り、各軍兵士を殺しまくっているのを感じる!!

 まずい、このままでは……装置を他の軍人達が壊せる保証もない、それどころか犠牲すら出る可能性もあるというのに!!

 

 「来るぞッッ!!」

 

 その言葉通り追ってくる彼らから逃げるため、俺とプリカは全速力を出す、俺達でなければあの装置は破壊できないのだ。

 が……追いつかれた!

 超高速で飛び込んでくる連中のうち、ギニューは情報を聞き出したであろうフリーザ軍兵士の首まで持っている!!

 

 「……久しぶりだな、ギニュー特戦隊!!」

 

 「くっくっく、面白いものを見せて貰ったよ、だが、今度はきみ自身と遊びたいな!!」

 

 その言葉と共にギニューは首を投げ捨て、四人で一斉に手を前に出し、構えを取った。

 同じ軍隊に所属する仲間に対してこの仕打ちとは……なんて連中だ!

 俺のそんな嫌悪と裏腹に、連中の戦闘意思は最早爆発寸前!!

 避けるか……いや、防ぐしかない!!

 思い思いの雄叫びによって発射された攻撃を前に、俺はプリカの盾となる。

 

 「ソシルミっ!!」

 

 「お前だけでも離脱できれば、装置の破壊が――――」

 

 次の瞬間、飛び込んでくる、エネルギー弾、瓦礫、ビーム!!

 俺は両手にそれぞれ輝きと衝撃波を備え、歪め、砕き、弾く!!!

 だが、防ぎきれない、プリカの離脱時間を稼ぐにもこれでは……。

 

 「シィィィィッッッ!!!!」

 

 「戦闘力で劣るくせに、なかなか鋭い技を使う……だが、いつまで持つかな!!?」

 

 ギニューの言う通り、俺の強度と技術力では攻撃を完全には無力化できないし、未だ分身技から回復せぬ体力は更に消耗が続いていた。

 俺はたまらず言い返す、それは減らず口ではなく……。

 

 「ギニューッッ!! 今からでも俺と話せ、このエリアは正体不明のジャミングに覆われていた、それは俺達も知り得ぬ何者かによるものなのだ!!!」

 

 「問答無用!!」

 

 強まる攻勢を前に、ふさがりかけていた傷が破れ、火傷が更に焼けていく。

 いくつもの区画を越えて駆け抜ける中、ふと、プリカの懐の装置が声を上げた。

 聞いたことのない壮年男性の声だ。

 

 『こちら、守備隊の……そうだな、名もなき整備士だ!! 例のマシンは分解したぞソシルミさん、プリカさん!! さあ、思う存分ぶちかましてくれい!!』

 

 「な……出来たのか!!? 被害もなしに!!」

 

 通信はすぐに向こうから切られてしまい、プリカの言葉に答えるものは誰も居なかった。

 だが、雄弁と物語るのは、通信機だ!

 

 『……北エリア通信回復です! 聞こえますか、こちら東の都防衛隊! 鶴仙流門弟の参戦により戦況は安定、繰り返します、戦況は安定!!』

 

 『こちらメンタンピン村、天津飯だ、うちの門弟が各地で戦闘を開始した、これから楽になるから安心して構えていろ、鶴仙流は地球最強を越え、宇宙最強だと見せてやる!!』

 

 『シュラだ、魔族魔族と恐れられながら戦闘中、なに、慣れっこだ、気にするな』

 

 ……ジャミングの解除によって各地から届く声は、地球の優勢を示していた。

 俺とプリカは必死に攻撃を防ぎながらもそれに喜びを感じ、気をみなぎらせ――――

 

 『タンドール王国軍カンドゥ絶対防衛戦特別大将、チャルクだ、師しょ……国王陛下と食客のピラフ氏の参戦により戦線は安定している、……ソシルミ!! 安心していいぞ!!!』

 

 ――――唐突に飛び込んできた俺個人への呼びかけに面食らって、俺は目を見開く。

 そうか、タンドール王国は無事なのか。

 

 「チャルク先輩、師匠、ピラフ…………ッッ……」

 

 「泣くなソシルミ! もう装置が大丈夫なら、応戦するぞ!!」

 

 「泣いてなど」

 

 泣いてなどいない、そう言おうとして、汗が飛び去り乾いた頬を撫でる雫を感じ、何も言えなくなった。

 だが、特戦隊はそんな俺の感傷を許しはしない!!

 緑の小さな男、グルドが俺の涙を嘲り、エネルギーを高める!

 

 「泣かせるねえ、へへ、へへ、そんなにお仲間が好きなら……」

 

 グルドが、経路に居た防衛軍兵士を超能力で掴む。

 まさか。

 

 「ほれっ!!」

 

 「クッッッ!!!!」

 

 俺は投げつけられた兵士の速度を殺してキャッチし……次の瞬間には、彼の重要臓器がいくつかねじ切られて死んでいるのを理解した。

 この戦闘中に死体を抱えている余裕はない、だが、投げ捨てるなんてことをはできな――――

 

 「ほれほれほれほれほれっ!!!!」

 

 「―――――」

 

 小さな音を立てて、俺の頭と顔の筋骨が引き締まり、歯が欠けかねないほどに食いしばられた。

 俺は投げつけられる兵士の死体を無視し、地面に衝撃波を叩きこむ。

 土煙を全身に浴びてギニュー特戦隊は止まり、ジースがわめいた。

 

 「げーっふ!! げふ! げふ!! くそっ! またこれか、姑息な手を……」

 

 「ふん、今度はどんな術を仕掛けてくる気だ?」

 

 「どんなうまい小技でも、パワーがなくっちゃね!!」

 

 「へっへっへ、見つけ次第ぶっ殺し」

 

 グルドの声が止み、それと時を同じくして土煙が消え始める。

 

 「お、おいグルド、どうし……し、死んでやがる!!」

 

 「なにっ!!」

 

 外道は喉と頭、胴体にそれぞれ一直線の、十数センチの切り傷を作って死んでいた。

 手段は簡単、術で作り出したチャクラムだ。

 俺はハデな運動をしたわけでもないのに息を荒くし、汗を流して、今しがた作り上げた死体を睨む。

 

 「ハァ……ハァ……ッッ!!!」

 

 「ソシルミ……」

 

 「プリカ……昔、お前がやられたとき、俺はこんなことをしたな……あの時は殺さなかったけど、今は殺す、プリカ……いいだろ?」

 

 見ず知らずでも戦友だった、守るべき地球人の一人だった軍人の死が、前世から知る異星の超戦士への想いを、武道家としての好奇心を遥かに上回ったのだ。

 殺した悲しみよりも、殺された怒りの方が、既に遥かに大きい。

 でもそれすらも、俺が悔やむべきことではないのかもしれない、ギニュー特戦隊は殺し合いを平然とやってのけて、恨みっこなしな奴らだ。

 俺は最初から、戦うべきだったのか……そうすれば、少なくとも今の犠牲はなかった。

 これは、俺が俺であることに執着した結果だ。

 

 「おまえのいいところは、そうやってなんでも考え込んじゃうとこだよ、戦いと世界が大好きな地球人だ」

 

 「……ありがとう」

 

 俺が感謝を告げると同時に、プリカは特戦隊へと向き直り、顔をしかめ冷酷な声を上げた。

 

 「これでご自慢のポーズもできないか、でもすぐに五人そろってできるようになるよ……あの世でだけど」

 

 「ぐぬ……ふん! 殺されるなら所詮ふさわしくなかったということだ、ポーズは新しく練り直すとするさ、きさまらを殺した後でな!!」

 

 俺は、あえて冷酷な台詞を吐いて見せたプリカに心の中で再びの感謝を告げ、ギニュー達との戦いに集中する。

 

 「こんな手は二度と通用せん、行くぞ、ジース、リクーム!!」

 

 「「はい!!」」

 

 「……やるぞプリカ」

 

 「ああ」

 

 二組の戦士は、戦いのゴングを待ってじっとにらみ合い――――

 

 『――――こちら総司令部!! こちら総司令部!! 複数の地域で新たな敵兵力を観測した!!』

 

 「ッッッッ!!!?」

 

 敵戦力だと、上空の反応はもうない、後はフリーザを残すのみであったはず――――

 

 『敵に生命力反応なし、繰り返す、敵に生命力反応なし!!!』

 

 「き、機械なのか!?」

 

 「機械……いや、まさか……そんなことはッッ!!!」

 

 『全軍は奇襲攻撃に警――――』

 

 音が途切れた、否、装置が破壊されたのだ!

 下手人は……ギニュー!!

 

 「ここまで熱心に誘っておいて、今更よそを見ることもあるまい、オレたちだけで決着をつけようじゃないか」

 

 「へっへっへ、そうだぜ、お二人さん……」

 

 「――――ッッッッ!!!!」

 

 二人と三人は、こうして再び向かい合う。

 戦いを恐れる心は既になく、しかし……仲間を憂う心をそのままに。

 

 「さあ、やろうか……ギニュー特戦隊ッッッ!!!」

 

 

→つづく




お久しぶりです、桐山です。

投稿遅れ申し訳ありません、終盤ゆえ、色々と気を使うことも多く……というのは毎回言っていることですが、今度は特に強くそれが出た形です。


さて、謎の存在が作り上げたジャミング装置を破壊したソシルミとプリカ。
彼らがギニュー特戦隊と対峙するのと時を同じくして全世界に迫る危機は、ずばり『気のない兵士』。
それは一体何なのか、そして、ついにその気配を増した影の正体とは、ギニュー特戦隊との戦いの行く末は。
そして、地球はフリーザ軍を、宇宙の帝王フリーザを撃退できるのか。

次回からもお楽しみに!
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