ビギンズナイトの一件ではファングジョーカーにカラダヲボドボドにされながらも何とか施設を脱出した。
さすが暴走フォーム……今のレベルでは手も足も出なかった。
回収した鳴海荘吉の遺体はミュージアムで保管している。
今後の為の利用方法はまだ思いつかないが、持っていて損はないだろう。
あぁ、ダメだ…俺も人を物扱いしている。これでは琉兵衛と同じ穴のムジナだ。……これもドーパントになった影響か?
ドーパントに変身すると言うのは案外気持ちが良いものだった。
お酒を飲んだ感覚と似ている。
ドライバーで毒素を抑制しているため、まだ理性を保つことが出来るが……少しだけ、ガイアメモリを強く求める人間の思考が理解できた。
ビギンズナイトからかれこれ一年経過した。
だが、俺の人生目標に1つだけ訂正したい事がある。
園咲霧彦を“仮面ライダーナスカ”にしたいという計画を練ってきたが…
それを改めたいと思う……何故なら。
「やぁ流牙君、調子はどうかな?今度冴子さんをディナーに誘いたくてね、彼女の好みとか教えてくれると嬉しいな。最近できたビルの最上階のレストランに予約を入れようと思うんだがどうだろうか?あそこから見る風都タワーは絶景でね彼女にも見せてやりたいんだ。今度君も足を運んでみるといいよ…何だったら今度僕と一緒に行くかい?あ、これは差し入れだ風都名物『風都饅頭』だ、きっと君も気にいるよ。部下の皆んなと一緒に食べてくれ。…そう言えば最近研究室に篭ってるそうじゃ無いか…駄目だよそんなんじゃ、たまには外に出て風都の風に当たりなさい。風都の風の心地よさはきっと君を癒してくれる。…あぁそうだ!今度君に会ったらプレゼントしようとしてたものがあって…はい限定品のふうと君ストラップだ。なにお礼は要らない、君はいずれ僕の義弟になるからね、もっと義兄に甘えて良いんだよ。そういえば若菜ちゃんにもプレゼントしなくては…今度予定を……。」
「あーはいはい、うんうんそうねー(棒読み)」
未来の義兄がめちゃくちゃ媚びを売ってウザい件について。
いや、まさかここまで絡んでくるなんて思わなかった。
男友達として立ち回ろうとしたが、どうも彼のお兄ちゃん属性が発動してしまい、ウザいほどに俺に絡んでくる。
毎日の様に俺の研究所に立ち寄っては、僕に気に入れられようと馴れ馴れしく接してくる。
彼を仮面ライダーにする為、脳をフル回転させてして研究に打ち込んでいるが、彼がウザ絡みして集中できない……
まさか本人が計画の一番の障害になるなんて…。
「あぁ…疲れた。」
霧彦の一方的な長話が終わり、自分の机に塞ぎ込む。
「変な人に目を付けられましたな?」
昆布茶を啜る部下の研究員に肩を叩かれた。
「ええ…まぁ悪い人では無いのですが。」
「ディガル・コーポレーションの幹部ですよね確か?何でもガイアメモリの販売業績が社1位だとか…。」
ちょっと頼りない顔の研究員も会話に入ってくる。
そうこの二人…あのネット版に出てくるガイアメモリ研究所の2人
なまくらな刑事のそっくりさん『真倉助手』と
なだぎのような刑事のそっくりさん『刃野博士』
刑事の方とは同姓同名の別人だと確認は取れている。
まさかネット版の2人が、本編の世界でも存在しているなんて、思ってもいなかった。
二人は俺の部下で、俺は次世代ガイアメモリ開発研究部の主任を務めており、差し詰め風都署における照井の様な立ち位置だ。
「実はここだけの話、近日にも園咲家に婿入りするんだよ彼。」
「えぇ!?マジっすか!」
「冴子姉様が気に入ってね…で、それで霧彦さん舞い上がっちゃって姉様に気に入られるために僕や若菜姉様にああやって媚を売ってるんだ。」
「へぇー。」
「唯のセールスマンが名家に婿入りを果たす…なかなか出来ることじゃないよ努力の結果かな。」
「そこは認めていますよ。ただあの人露骨なんだよなー。」
ため息を吐くと研究室の扉が再び開く
「そう言えば流牙君、話忘れた事が有るんだけ…」
「ちょっと黙っててケツ!!」
「け…ケツ?」
おっと、思わず悪態をついてしまった……いけない、いけない。
だがまぁ、当初の予定通り、彼を仮面ライダーにする事を目標に、
今後の立ち振る舞いを考えようと思う。
ある実験をしようと、特殊な装置のセッティングをしている時
真倉助手が思い出した様に喋りだす。
「そう言えば知ってますか?最近噂されているドーパントを倒す謎の戦士の事。」
「んあぁ…都市伝説になってるアレか…一部じゃぁ『仮面ライダー』と呼ばれているとか何とか。」
「主任は知ってますか?」
そうか…その都市伝説が出始めたと言う事はもう翔太郎と来人がバディを組んで、探偵業の傍らダブルとして戦い始めた頃か。
「あぁ良く知ってるよ…俺が研究してる物の完成形と呼べる物を、その人達が持ってる。」
「え!?そうなんですか!!」
「詳しい話はまた今度だ。実験を開始するぞ。」
装置のセッティングを終え、装置にデバイスを繋げる。
「これより第6回ガイアメモリ浄化実験を開始する。」
Wドライバーの様な黒い特殊な装置には二つのメモリが刺さっており
正面から見て左側にはドーパントメモリ、右側にはWが持つメモリと同型の無色透明の『ブランクメモリ』と呼ばれる物が刺さっている。
『ブランクメモリ』は俺が開発した『記憶』が入っていない
この装置はガイアメモリの毒素を抜く浄化装置で
ドーパントメモリから記憶だけをコピーし抽出、片側のブランクメモリに保存する事によって次世代メモリを生成する事ができる仕組みだ。
まだ試作段階だが。
装置のボタンを押しイニシャル『A』のドーパントメモリの『記憶』が抽出されブランクメモリに保存される。
メモリに内包された『記憶』の量は膨大で、保存するだけでもかなり時間を食う事になった。
地球上に存在しえる細かな情報が全部入っている訳だ、そりゃ時間かかる。
無色透明な“ブランクメモリ”は徐々に色を変え青紫のガイアメモリに変色…そして一時間程経つと”ブランクメモリ“は新たなガイアメモリとして生まれ変わり、装置から完成のアラームが鳴る。
「おぉ!今回はうまく行きましたね!!」
完成に喜ぶ真倉助手…いやまだだ。
「…問題は性能だ。」
装置から青紫のガイアメモリを引き抜き観察する。
Wが使うガイアメモリと同型だが多少異なる部分があり
本体は不透明で端子が赤くなっている。
これは俺が差別化出来る様にデザインしたからだ。
前回前々回の実験で上手く保存出来なかったのか、イニシャルが薄くなった例があったが、今回はハッキリとイニシャルが浮かび上がってる。
あとはメモリの性能、変身した時のスペックだ。
「よし、真倉助手…ちょっと手伝え」
「え?」
俺は返答を待たず、真倉助手にビギンズナイトで手に入れた”ロストドライバー“を巻きつける。
『アノマロカリス』
「レッツメモリトライ!!!」
ネット版の如く、俺は無理やりメモリをドライバーに装填し展開させる。
『アノマロカリス』
不協和音と共に真倉助手が仮面ライダー(?)へと変身する。
「なんじゃこりゃぁあーーーーー!!」
「んー…これは。」
…控えめで言って、すごくグロテスクなデザインのライダーだった。
いやライダーと呼べるのか?
一応ドライバーを使っている事からライダーの定義に入るのか…。
100歩譲って擬似ライダーに近い感じ…
いや、今はそこを考察している場合じゃない。
背中からヒレが無数に生えており頭部はダブルに似ているが、アンテナが無く口元から二本のアノマロカリス特有の触手が伸び、複眼は赤く飛び出ている。
見れば見るほど、不細工でアンバランスな姿だ。
同じ生物的なデザインでも”仮面ライダーギルス“はあんなにかっこいいのに…どうしてこうなった。
「ふーむ通常のアノマロカリスドーパントとは見た目が全然違いますな。」
刃野博士が興味深そうに仮面ライダーアノマロカリス(?)を観察する。
俺はデンデンと同じスコープ型のガジェットを用いてライダー(?)のスペックを測るが、期待していた数値よりかなり低かった。メモリと使用者の相性を差し引いても、これは実用化は難しい。
「やはりスペックが落ちてる…これだったら通常のドーパント体の方が強いか…やはり原因は保存不足か…あるいは。」
かの”井坂深紅郎“の考えも理解は出来るが、俺の求めている仮面ライダーの力ではない。
さらなる改良が必要だ。
俺は仮面ライダー擬きのドライバーからアノマロカリスメモリを引き抜き、真倉助手の変身を解除させる。
「あ、戻った。」
「今回も失敗だ。」
俺が作ったこのメモリは差し詰め『劣化メモリ』と呼べるべき物だ。
対して価値のないゴミメモリ。
俺は劣化メモリを握り潰し、それをゴミ箱へ捨てる。
「あぁ!勿体ない。」
「今日は此処までにしよう。後片付けを頼んでいいですか?」
「もう終わりで宜しいのかな?」
「はい、この後実家で晩餐会があるので早めに帰宅します。遅れると冴子姉様がうるさいし。」
俺は後片付けを部下の二人に任せ、身支度を済ませると実験室を後にする。
やはり、細かな調整をしようにもデータ不足している。部下2人を相手に人体実験をし続けても、出来上がるにはいつになる事やら。
……まぁ、命を落とす可能性がある人体実験を繰り返し行えば、一気に計画は前進するが……、一応大切な部下にそんな危険な目に合わせる訳には行かない。
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風都でも1位2位を争うほどの、豪華な豪邸である園咲家。
現在此処では家族が集う晩餐会が開かれていた。
食堂には3人と一匹
園咲家の家長にして、ミュージアムの支配者である『園咲琉兵衛』
その愛猫である『ミック』
琉兵衛と談笑しているIT企業ディガル・コーポレーションの若き女社長。長女である『園咲冴子』
そして二人の会話に入らず、出される料理を黙々と平らげる、若くしてミュージアム内で一目置かれる研究員 長男の『園咲流牙』
晩餐会が始まって一時間後、最後の一人である園咲家の次女である『園咲若菜』が到着し、ようやく一家が揃った。
「遅刻者はクビよ若菜、私の会社なら。」
長女である園咲冴子が遅れてきた若菜を咎める。
「…っ。だって渋滞でしたのよ。本当に腹立たしかったわ久々の晩餐会でしたのに。」
若菜は影で舌打をし、心の中で冴子に対して悪態をつきながら、自分の席に座る。
彼女は風都で高い知名度を有する人気アイドル。風都のラジオ局で『園咲若菜のヒーリングプリンセス』という冠番組を持っており若者からは『若菜姫』という愛称で親しまれている。
今回遅刻してきたのはラジオの収録後に起きた事故による渋滞。
自分は悪くないと言い訳をする。
「ビルが溶け人が死ぬ、この町ではよくあることだ。まぁ、我々の仕事のせいだがな。」
園咲琉兵衛は抱き抱えている愛猫のミックに餌を上げながら薄ら笑いをする。
「あれはマグマのメモリでしょ?一体誰が売ったのかしら。」
「最近非常に販売業績の良い若手が居ると聞いたが、何か知っているか流牙?」
琉兵衛はずっと黙っていた流牙に話をふる。
流牙はフォークとナイフを置き、ナプキンで口元を拭きながらその男の顔を思い浮かべる。
「あぁ、あの人。よく知ってますよ…最近仲良くなりましたし。」
「ほぉ。」
「お父様?」
冴子は席を立ち、メモリを取り出す。
「何だね冴子?」
「実は私…_」
『タブー』
『_結婚したい人が見つかったの。』
タブードーパントに変身し例の男と婚姻の許可を求める。
琉兵衛はその問いに対し、高笑いで答える。
そんなシリアスな雰囲気の中、流牙は…
(何で変身したんだろう冴子姉様…て、言うかこれ第一話のシーンじゃん)
登場してほしい平成2期、令和ライダー(外伝執筆の参考にします)
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