「次のニュースです。太平洋沖に、巨大な未確認生命体が出現したという情報が、昨日に引き続き・・・」
8月。ほとんどの学校は休みであろう月。
最近はよくこのニュースが流れる。1ヶ月程前からだろうか。
全く、あれは何なんだ?
最初は北極海に出現したらしいが次の日には地中海に出たらしいし。
ネットでは「リヴァイアサン出現か!?」という話題で盛り上がってる。
「お兄ちゃん、もう起きたの? 体大丈夫?」
妹の直葉が降りてきた。
「おいおい、もうあれから1ヶ月以上たってるんだぞ? 大丈夫だって」
俺の名前は桐ヶ谷和人。
1ヶ月半前、死銃事件の犯人の一人に襲撃され、治療のついでにある冒険をした。
STLのおかげで、後遺症もなく現実世界に復帰できたから心配ないのにな。
直葉は心配しすぎなんだよ。
「今日は明日奈さんとのデートなんでしょ? しかもレジャーランドで」
「ああ、だから早くから起きて準備してるんだよ」
今日は小遣いも多めに用意している。
「昨夜明日奈さんに絶対に無理させるなってメールしといたから!」
「ちょ!?」
「ユイちゃん、今日は絶対にパパに絶対に無理させちゃだめだからね!」
「了解です!」
「おいおい・・・」
今の声は娘のユイ。
SAO生まれのAIで、ALOでは俺のナビゲーションピクシー。
普段は俺の据え置き機の中にいるが、俺や明日奈の携帯に入ることもできる。
よし、忘れ物もないな。電車の中での暇つぶし用のトランプとウノもある。
「じゃあ行ってくる。スグ、留守番頼んだぞ」
「え、ちょ、まだ7時だよ!? 朝ご飯は?」
「おにぎりを作ってある。電車の中で食べるさ」
玄関を飛び出して愛用のバイクにまたがる。
「え、あ、い、行ってらっしゃーい!」
少し慌て気味の直葉の声を背に出発した。
待ち合わせ場所に着いた。
同時に、向こうから彼女が走ってくるのが見えた。
「あ、キリトくん! 待たせちゃった?」
「いや、ちょうど今来たところだ」
彼女は結城明日奈。俺の彼女だ。
初めて会ったのはSAOの中。そこで過ごした2年間の最後の方で、彼女とは結婚していた。
そして、ユイは俺と明日奈の娘ということになっている。
「キリトくん、走ってきたりしてないよね?」
明日奈も心配しすぎだ、と言いたいのを苦笑で堪える。
「大丈夫、普通に歩いてきたから。それにもう俺は大丈夫だって」
「どうだか。キリトくんいっつも無茶するから」
「勘弁してくれ・・・」
それはさておき、と明日奈は俺の手を握る。
「そろそろ行こうよ。あそこは混むって聞いてるし、早くいかなきゃ」
入場のために並んでいるとき、ユイが言った。
「パパ、例の未確認生命体が東京湾に現れたようです」
え、それって拙くないか?
「ここって東京湾のすぐ近くだよな? 津波とか大丈夫なのか?」
あのUMAは波一つたてないという噂だがそれが本当なのか俺は知らない。
「そこは大丈夫みたいです。今まで通り何も起こってないですよ」
とりあえず良かったみたいだ。
「あ、開いたみたいだよ、行こっ」
「いや、しばらく待たなきゃダメだろ」
「あ・・・」
「いや~、怖かった~」
「そうは見えなかったけど?」
今、ジェットコースターに乗ってきたところである。
「ママはALOで慣れてますからね。次はお化け屋敷なんてどうです?」
「ちょっと、やめてよユイちゃん」
明日奈はホラー系がまるで駄目だからな。
「じゃあ、そこにするか」
「うぅ、キリトくんまで~」
いつも通りの笑い声。笑顔。
しかし、それは途絶えてしまう。
そう、「ソレ」は突然現れた。
最初は、大きな振動。
「うおっ!? な、何だ?」
「地震!? でも、これは・・・」
次いで、爆発音。
発生源は、この施設で最も大きな建造物、つまり、観覧車。
その方を見ると、とてつもなく巨大な、怪物。
「キ、キリトくん、あれってテレビでやってた・・・」
「例のUMAか! あいつ、飛べるのか!?」
そう、その怪物は宙に浮いていた。
ゆっくりとした動作は、間違いなく泳いでいる動作だ。
そしてそいつは突然向きを変え、地面に向かうように進み始め・・・。
「おい、こっちに向かってきてないか!?」
「え、えぇぇ!?」
拙い! このままだと危険だ。
だったら・・・。
「駄目だよキリトくん! あれはキリトくんの体が持たないよ!」
あれ・・・つまり、魔術。俺の大きな秘密。
「大丈夫だ。強化使って逃げるだけだから!」
そう言いながら魔術回路を呼び起こす。
途端、強烈な痛みが全身を走る。
「がっ・・・ぐ・・・ぅ・・・」
「キリトくん!」
「大丈夫だ、明日奈。俺はまだ大丈夫だ」
その言葉に泣きそうな顔をする明日奈。
「
明日奈を抱きかかえ、全速力で疾走する。
入口のところまで走り、そこで明日奈を下ろす。
「はぁ・・・ここまでくれば・・・」
「キリトくん! 後ろ!」
明日奈の慌てる声に後ろを向く。
見えたのはこっちに向きを変えた怪物。
「おい、嘘だろ!?」
「ど、どうしようキリトくん。このままじゃ・・・」
こうなったら・・・。
「
「キリトくん! 無茶しちゃダメ!」
「大丈夫だ、これくらいなんとも・・・がぁっ」
「キリトくん!」
痛みに耐えながら、投影するのはアンダーワールドでの俺の剣。
名称、《夜空の剣》・・・ギガスシダーの力。
その力を解放し、あの怪物を倒す。それしかない。
アンダーワールドのシステムコマンド。
本来は長い術式を必要とする武装完全支配術。
だが、魔術としてのそれは、一言で使える。
剣を向かってくる怪物に向け、解き放つ。
「エンハンス・アーマメント!」
黒い刀身から闇が吹き出し、槍となって怪物に突き刺さろうとする。
しかし、漆黒の槍は怪物の体に当たり弾かれる。
いや、少しずつだが表皮を削っている。
「明日奈、今のうちに逃げろ!」
俺の言葉に明日奈が一瞬硬直した。
「そんな、駄目だよキリトくん! キリトくんも一緒に・・・」
「・・・あいつが俺を追ってきてるんだとしたら俺が此処に居れば明日奈は追われない。仮に明日奈を追ってきていたとしても俺が時間を稼げば明日奈がこのことを誰かに伝えられるんだ。だから・・・」
「でも! どっちにしろキリトくんが!」
悔しいけど、俺にはこれくらいしか言えない。
「無理・・・だよ。わたし、キリトくんを置いていけない」
「明日奈・・・」
「キリトくんが死んじゃったりなんかしたら、わたし、生きていけないよ。キリトくん一人だけが死ぬくらいなら・・・せめて・・・一緒に・・・」
泣きながら、明日奈が訴える。
「解ってる。俺も、その気持ちは身をもって解ってる。でも・・・俺と・・・俺と一緒に死んでくれなんて・・・言えるわけ・・・言えるわけないだろっ」
「キリト・・・くん・・・」
その時、魔力が尽きたのか剣が砕けた。
進行の妨げになっていたものが無くなり、再びゆっくりと突進を始める怪物。
体の力が一気に抜け、膝をつく俺を明日奈が抱きしめる。
「わたし・・・キリトくんとずっと一緒に居たい。たとえ死んでも、ずっと・・・」
「明日奈・・・ごめんな」
「違うでしょ。謝るんじゃなくて」
「あぁ、ありがとう。明日奈」
そこで限界が来たのか俺の意識が途切れた。
最後に感じたのは倒れこむ俺を抱きとめる明日奈の声だった。
「お疲れ様、キリトくん」
アンダーワールドでのキリトの剣、通称「黒いやつ」。名称に関しては作者の勝手な想像です。誰か正しい名前を知っている人がいたら教えてください。
(追記:PAIPOさん、ありがとうございます)
さて、キリトの魔術に関して。
キリトは「魔術師」ではなく「魔術使い」です。詳しくはFate/シリーズを参照してください(作者もにわかですが・・・)。
STLの治療が終わった後、1ヶ月程全く魔術を使用していないため、体に負荷がかかり、全身に激痛が走ったということになっています。
キリトの魔術、某弓兵のような投影特化型(但し剣に限らず)です。
「
更に上を行く「
これらは「エリュシデータ」などにも用意しています。
魔術回路との相性が悪いためFF魔法は一切使えません。
但しFF魔法が使えないのはキリトだけという設定。
魔術回路を覚醒させていなければFF魔法も使えることにしています。
キリトが魔術を使えることはごく一部の人しか知りません。
VRワールドでは魔術は使えません。
理由はナーヴギアやアミュスフィアが魔力を感知するわけがないからです。
キリトが魔術に目覚めたのは彼が10歳くらいの時。
パソコンいじっていたら家族関係の事実を知っちゃった前後くらいですね。
とりあえず、こんな感じでしょうか。
次回はティーダサイドの予定。
キリトは出てきますが空気です。というかずっと気絶してます。