黒のスピラ冒険記   作:通りすがりの熾天龍

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ティーダサイド。
グアドサラムでの話になります。


結婚とは何なのか

グアドサラム、到着。

向こうから一人のグアド族が歩いてきた。

「お待ちしておりました、ユウナ様。ようこそグアドサラムへ」

確か、トアメルだったか。

「ささ、ユウナ様、こちらへ」

と言って、いきなりユウナの腕を掴もうとする。

流石に許容範囲外の行動だ。だからワッカが止めた。

もちろん、その場で俺を含めた全員が警戒する。

「何なんだ、あんた」

「これは失礼。わたくしトワメル=グアドと申します」

トワメルか。一字違った。

「グアドの族長、シーモア=グアドの身内の者でございます」

そう、シーモアが族長なのだ。

「シーモア様がユウナ様に大切なお話があるそうで・・・」

「私に、ですか? どんなお話でしょう?」

結婚の話、だろう。

さて、ここからが大変だ。

「ともあれ、まずはあちらのお屋敷へどうぞ。シーモア様のお屋敷でございます。もちろん皆さんも、歓迎いたしますよ。では、ご案内いたします」

トワメルの先導に、皆が着いていく。

「なんか、強引だよね」

リュックがボソッと言った。

 

 

 

 

屋敷の中の大広間に通された俺達。

「シーモア様をお呼びしてまいります。しばしお待ちを」

そう言って奥へ行くトワメル。

「・・・解析開始(トレース・オン)

キリトが置いてある食べ物を次々と手に取り、解析していく。

毒とか薬を警戒して、か?

「ここにある食べ物には何も仕込まれていないな。食べていいぞ」

キリトが解析を終え、そう言った。

「警戒しすぎじゃないのか? シーモア様のお屋敷だぞ。そんなことできないんじゃないのか?」

ワッカが言った。

薬毒を仕込むような不審者は入ってこれないだろうって意味で言っているんだろうが・・・。

「警戒を怠るなよ。何が起こるかわからないからな」

俺はそう釘を刺しておいた。まあ、俺は知ってるんだけど。

 

 

 

 

「ようこそ、みなさん」

シーモア登場。

「あの、お話とは何でしょうか?」

ユウナが問いかける。

「そう結論を急がずに、ごゆるりと」

「ユウナは先を急ぐ身だ。手短に済ませてもらいたい」

シーモアの勧めをアーロンがきっぱりと断る。

「失敬。久方ぶりに客人を迎えたもので、つい」

さて、ここからが本題になる。

「ユウナ殿、みなさん、こちらへどうぞ」

 

部屋の中央、天井から下がっている巨大スフィアの下に集まる。

そして、部屋に映し出される幾つもの光景。

「これは異界を漂う死者の思念から再現した貴重なスフィア」

そう言いながら、ユウナの脇に近づこうとするシーモア。

とりあえず俺がユウナの傍に立ち牽制している。

何度か光景が変わり、ザナルカンドが映し出された。

更に変わる。今度は室内。

ベッドに腰掛けている女性は、

「ユウナレスカ様!」

「確か、最初にシンを倒した召喚士・・・」

数歩前に出ながらのユウナの声に、キリトが思い出すように言う。

「その通りです。ですが、彼女は御一人で世界を救ったのではありません」

と、部屋に一人の男が入ってきた。

男とユウナレスカが抱擁を交わす。

そこで、シーモアがユウナに耳打ちをした。

・・・来たか。

今回の俺の選択。

まず、あえてシーモアに求婚させる。

ユウナは考え、一度断ることに決めていた。

それを覆したのがジスカルのスフィア。

だから、ユウナがそれを拾う前に俺が見つける。

全員でそれを見れば、ユウナが勝手に結婚を選択することを誰も承諾しないはず。

そもそも見せないって手もあるけど、うまくいくかどうか。

 

部屋が元に戻る。

ユウナは真っ赤になり、テーブルにあったコップから水を飲んだ。

「ユウナ、顔真っ赤だよ?」

「大丈夫ですか?」

リュックが興味深そうに、ユイちゃんが警戒心をにじませながら訊く。

「・・・結婚を、申し込まれました」

それを聞き、アーロンがシーモアに訊く。

「ユウナの使命を知っているはずだが?」

「もちろん」

前回と同じ回答をするシーモア。

「ユウナ殿の、いえ、召喚士の使命はスピラに平和と安定をもたらすこと。しかし、シンを倒すことだけが全てではありますまい。シンに苦しむ民の心を少しでも晴れやかに・・・。それもまた、民を導く者の務め。私はエボンの老師としてユウナ殿に結婚を申し込んだのです」

本当の目的はユウナを利用することだけどな。

でも、まだそれを言うわけにはいかない。

「政略結婚ってわけか?」

キリトが警戒しながら問う。

「それは違います。私は権力のことを考えているわけではありません。この結婚そのものが、民の心を晴れやかにするためのもの」

そのシーモアの回答に、今度はアーロンが言った。

「スピラは劇場ではない」

その声には、少しだけ、怒りがにじんでいる。

「ひと時の夢で観客を酔わせても、現実は変わらん」

「それでも舞台に立つのが役者の務め」

「本当にそれで良くなると思っているのか?」

今度はキリトが言った。

「・・・どういう意味ですか?」

「中身のない結婚では当人たちが幸せにはなれない。民衆はそういうのに敏感だ」

「・・・なるほど」

ナイス、キリト。俺にはそんなの考えつけないぜ。

「今直ぐに答える必要はありません。どうかじっくり考えてください」

さて、次はユウナの説得だ。

「何のために留まっているのです?」

シーモアがアーロンに問いかけた。

「これは失礼。我々グアドは異界の匂いに敏感なもので」

アーロンは死人。俺達のためにスピラに留まってくれている。

そもそも、俺のザナルカンドに行けたのは死人になったからである。

 

 

 

 

屋敷の外へ。

「大召喚士の娘ユウナとグアドの族長シーモア・・・その二人がエボンの名のもと種族の壁を越えて結婚、か。確かにスピラにとって明るい話題になるわね」

ルールーの言葉に、キリトが反論する。

「さっきも言ったがそんな形だけの結婚はすぐにバレる。そうなりゃ反動で落ち込むだろうな」

「そんなことは無いんじゃないかしら?」

そこは難しい問題だな。

俺が見た感じキリトは形だけの結婚が許せないんじゃないかと思う。

「余計なことに巻き込まれちまったよな・・・」

ワッカの言葉に、ユウナが、

「余計なこと・・・なのかな」

え~、さっきのキリトの言葉じゃまだ駄目なのか?

「私が結婚することでスピラ中の人達が少しでも明るい気持ちになれたら、そんな風に役に立てたら・・・それも素敵だなって思うんだ。こういうことって今まで想像したことなかった」

「ナギ節より短いその場しのぎのために犠牲になりたいってか?」

キリトの声が凄く冷たい。

「そ、それは・・・」

ユウナも若干怯えてるくらいだし。

「何~、やき・・・むがっ!?」

むくれながら空気を読まない発言をしかけたリュックの口を慌ててふさいだ。

い、今そんなこと言ってみろ。キリトにフルボッコされるぞ!

「旅はどうするつもりだ? 受ける受けないの前にそれを決めておけ」

アーロンがユウナに問う。

「旅は・・・続けます。結婚しようと、しなかろうと。・・・シンを倒すって決めましたから」

「・・・なんで迷ってるんですか?」

ユイちゃんが言った。

「え・・・?」

「ユウナさん、結婚はちゃんと好きな人としないと駄目です! 好きでもない人と結婚するなんて、後悔しか残りません! そんな事、誰も喜ぶわけないじゃないですか!」

流石親子って言うべきか?

ユイちゃんもキリトと全く同じ考えなんだな。

「私、異界へ行く。それで、ちゃんと考えてみる」

その言葉にキリトとユイちゃんが疑問符を浮かべた。

 

 

 

 

「ここが異界?」

「その入り口だ」

キリトの質問にアーロンが答えた。

「死んだ人が行く場所ですよね? ここに入ったら死んじゃうんですか?」

ユイちゃんが怯えながら訊く。

「ううん、私達がいけるのは異界の入口近くだけ。そこに死んだ人の魂が来るだけだよ」

ユウナが教える。

「でも、行きたくないです。なんだか怖い・・・」

そんなユイちゃんの頭を撫で、キリトが言った。

「まあ、そういうわけで俺とユイはここに残ってる。できるだけ早く戻ってこいよ」

「わかったッス」

俺が答え、皆は異界へ。

キリトとユイちゃんの他に、アーロンとリュックは前回と同じく残った。

 

異界の人は何も言わず、何の反応もしない。

入り口近くの人の願いで現れる死者に限って言えば、リュックの言うとおり幻なのだろう。

ワッカはチャップに話しかけている。

俺に似てるらしいけど、目の前で見ても実感は湧かないな。

ユウナは両親を見て、話しかけ、考えている。

 

「決めたよ」

「そっか、どうするんだ?」

もう知ってるけど、もし前回と違う答えが出たりしたらって思ってしまう。

「10年前、父さんがシンを倒したときのこと、思い出した。その時、私はベベルに居たんだけど、街中が大騒ぎだった。皆笑っていて、とっても楽しそうで嬉しそうだった。・・・シンを倒すのが一番の明るい話題、だよね? あれもこれも、なんて欲張れないし。それに、形だけの結婚をして後悔したら手遅れだし、皆私に気を使っちゃう。そんなんじゃ明るくなんてなれないよね」

「そっか、それがいいと思う」

とりあえず一安心。

「ねえ、ジェクトさん呼んでみない?」

「え?」

べ、別に忘れてなんかいないぞ? ただちょっと忘れてただけで・・・。

って何言ってんだ俺!?

とりあえず、親父はシンだからここには来ません。

そういえば、前回ここに来たときは母さんが出てきたんだっけ?

・・・あ。考えちゃった。

当然、目の前に母さんが出てくるわけで。

「この人、ティーダのお母さん?」

「ああ、つい考えちまった」

「きれいな人だね。それに私のお母さんより若く見える」

「見た目だけじゃなくて心も若いっていうか幼いって感じだった。親父が行方不明になった後、何も食べずにどんどん衰弱していってさ。死ぬときなんか俺のことは眼中にないって感じで親父の名前ばっか呼んでた。なんというか・・・母親になっても親父に恋する少女みたいな感じかな」

「そう・・・なんだ」

「親父が現役だったころは、親父が帰ってくると母さんは俺を放っておいて親父にベッタリ。親父はさ、俺の相手をちゃんとしてやれって・・・口は悪かったけどさ」

「なんか・・・ごめんね。嫌なこと思い出させちゃって」

「そんなことないッスよ」

 

「もうちょっと考えてくか?」

自分の用事を済ませたワッカがユウナに訊く。

「ううん、大丈夫」

 

 

 

 

「お待たせしました」

「みなさん! 生きてますよね! 死んだりしてませんよね!」

ユイちゃんが涙目でお出迎え。

「大丈夫だって。皆ピンピンしてるじゃないか」

キリトが苦笑しながら宥める。

と、後ろで呻き声が。

・・・来たか。

振り向くと、半透明の人影が異界の入口から出てきていた。

「異界に入って死んじゃった人ですか!?」

ユイちゃんがまた怯えだした。

「違う、既に死んだ人が異界送りされていないんだ!」

ワッカがそれを訂正した。

「あれは・・・ジスカル老師!?」

ルールーが驚愕の声をあげる。

「・・・迷っているようだな」

アーロンの言葉に皆が驚く。

「ユウナ、送ってやれ」

その言葉に頷き、ジスカルの前に立つユウナ。

アーロンが膝をついた。

ユウナが異界送りをし、ジスカルが何かを落として消えた。

間違いなくスフィアだな。それを拾うユウナ。

アーロンが苦しみながら立ち上がる。

「話は後だ。ここを出るぞ」

 

 

 

 

「さっきの、どういうことだ? なんでジスカル様が?」

ワッカが言う。

「ジスカル様程のお方が送られずに亡くなるなんて・・・」

「なあ、ユウナ。さっき、ジスカルが何か落としてたよな?」

「え? あ、これ・・・」

俺の問いにそう言ってユウナが取り出したのは、やっぱりスフィア。

「後で見るか?」

キリトが言う。

「ジスカルのことはグアドの問題だ。俺達が気にすることではない」

アーロンが言った。

「じゃあ、グアドの人に返す?」

リュックが問いかける。

「それがいいと思います。そういう干渉ってロンゾやグアドの人達は嫌うんですよね?」

ユイちゃんが言う。

「じゃあ、シーモア老師に返事をするときに返しましょうか」

ルールーが結論を出した。

 

 

 

 

「シーモア老師なら、先ほど御出立されましたよ」

途中で会ったシェリンダが俺達に言った。

「行き違い、か」

「そうなりますね。老師はマカラーニャ寺院へ向かわれたそうです。シーモア老師は、あの寺院の僧官長でもありますから」

「よし、俺達も行くぞ。・・・ユウナ、ジスカルのスフィアは俺が預かる。異論は認めないぞ」

「は、はい」

ナイス、アーロン。

ユウナが持ってたらこっそり見るだろうしな。

いざ、雷平原へ・・・とりあえずリュック、頑張れ。




ティーダの計画はユウナに心変わりさせない方針。
ユウナも最初は断るつもりだったんだから。
それに、ここでシーモアの求婚を阻止しようとしたら不審ですからね。

結婚は幸せなものであるべき、というのは作者の願望です。
キリアスは幸福過剰のせいで周りが避けるレベルですけどね。
でも俺はむしろ喜んで見ますよ。ニヤニヤしながら。

アスナの強制見合いを後から知る羽目になったキリトは形だけの結婚が許せない。
ユイちゃんもママであるアスナと引き離されそうになった(未遂以前)のでそういうのは嫌がるかと思います。

ジスカルのスフィア没収。
これでユウナが見れないね。
つまり、心変わりフラグは折った!
マカラーニャでは少しオリジナル展開入るかもです。

次回は雷平原ですね。・・・とりあえずリュック、頑張れ。
キリトサイドか、もしくは連続のティーダサイドですね。
それでは!
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