キリトサイドです!
「あ~、ここで前回の記憶より一つ」
シンの体内を進む俺達。
その途中、ティーダが発言した。
一体何なんだ?
「何?」
ユウナの問いにティーダは答える。
「前回と同じなら、この先にシーモアが居る」
それを聞き、俺を含む全員がうへぇ、というような顔になった。
「しつこ~い!」
リュックの言葉にアスナも続ける。
「ほんとだよ・・・半殺しじゃなくて消し飛ばしたほうが良かったんじゃない?」
「だよなぁ。あの後エリュシデータで追撃しておくべきだったな・・・」
そうすれば幻光虫ごと消去できたのに。
「もしかして、さっきシンが幻光虫を集めた時に入り込んだのでしょうか?」
「ユイちゃん、正解」
ユイの推測をティーダが肯定した。
「全く、ジェクトももう少し選んで集めればいいものを・・・」
アーロンが溜息をついた。
「でも結局行くしかない」
キマリが溜息交じりに言った。
「ま、当たって砕けばいいんだよ。な!」
ワッカが皆を励ます。
「それもそうね」
ルールーがそれを肯定した。
「とっとと行ってとっとと潰そう」
俺の言葉に全員が頷き、先へ進む。
「ふふふ・・・」
シーモアが不敵に笑う。
弱いくせに何を笑うことがあるのか。
『しつこい!』
俺たち全員の言葉に、シーモアは言う。
「シンは私を受け入れたのだ。私はシンの一部となり、不滅のシンと共に行く・・・永遠にな」
え~。
「吸収されただけじゃん」
ティーダのツッコミにもシーモアは動じない。
「いずれ内部から支配してやろう。時間は・・・そう、無限にある」
シーモアの体が魔物に変化していく。
「お前たちがユウナレスカを滅ぼしてくれたおかげで究極召喚は永久に失われ、シンを倒すすべは消えた。もはや誰もシンを止められん」
はい時代遅れ乙。
「止める方法ならある。シンは俺達が必ず止めてみせるさ」
ティーダの言葉にシーモアは言った。
「ならばシンを守らねばならんな。感謝するがいい。私はお前の父親を守ってやるのだ」
「ふざけんな。俺達は親父をシンから解放するんだよ!」
ティーダがシーモアに向かって叫んだ。
俺は皆に向かって言う。
「ティーダ、一旦下がってろ。皆も下がってくれ。
俺自身にスプリガンの姿を投影する。
「姿が変わった!?」
これを初めて見るシーモアが驚愕した。
「《セアー・ウラーザ》・・・」
俺が始めた詠唱にアスナとユイが慌てた。
「ちょ、キリトくん、あれをやるつもり!?」
「み、皆さん! 急いで離れてください!」
「・・・《ノート・ディプト》!」
幻影魔法、発動。
その効果は、自身の外見をALOのモンスターに変化させるもの。
変化する姿は本来ランダムだが、魔術ではランダム要素は排除可能である。
俺が選んだのは・・・SAO74層フロアボス《ザ・グリームアイズ》の姿。
「ゴアアアァァァァァァァ!」
悪魔の姿となって吼える俺。
「・・・冗談ですよね?」
シーモアが呆然としている。
後ろではアスナとユイ以外の皆が口をあんぐりと開けて呆然としている。
「言っておくが、お前みたいに魔物になったわけじゃないぞ。
投影するは、巨大化サイズの夜空の剣と赤薔薇の剣。
「ま、まさか・・・」
魔物化している口を引き攣らせたシーモア。
「《スターバースト・ストリーム》!」
二刀流16連撃ソードスキルを発動。
星のような光を放つ剣が次々とシーモアに叩き込まれる。
「ぐおおおぉぉぉぉぁぁぁ!?」
悲鳴を上げ、吹き飛ぶシーモア。
更に、奴の背後の円盤4つも砕け散った。
「止めだ・・・
エリュシデータを投影しなおして完全支配。
シーモアを幻光虫ごと消し飛ばした。
「キリト・・・もうお前一人でいいんじゃねぇか?」
ワッカが言ってきた。
「いや、流石に無理だって」
そう否定するが皆は苦笑。
どうやら満場一致で俺一人で十分だという意見のようだ。
いくらなんでも無理だろうに・・・。
「ここはいろいろと面倒なんスよね」
ティーダが溜息交じりに言った。
今俺達がいるのは、少し広い空間のようなもの。
いたるところの地面から光の槍か柱が突出しては消えていく。
「あの柱に当たらないように偶に出てくる結晶を10個集めないといけないんだよ」
確かに面倒だな。
「当たるとどうなるの?」
リュックがティーダに訊いた。
「面倒なモンスターが出てくる。で、戦闘中にまた当たってまたモンスターが・・・」
『うわぁ』
思わずそんな声を漏らす俺達。
「前回はそんな中で最後の一つをゲットできて、おかげで助かったけどな」
大変だったんだなぁ。
とりあえず、やるしかないんだよな。
光の柱に当たらずに10個の結晶の回収に成功。
その途端、俺達は何かに吸い寄せられるように上へ。
「今度は何!?」
ユウナがティーダに訊く。
「シンの中に再現されたザナルカンド。そこに親父が居る」
そして俺達は、何かに飲み込まれた。
気付いたら、そこは街。
「ザナルカンドそのままじゃないけど、ここはかなり似てるんだぜ」
ティーダが言った。
そして通路を進んでいく俺達。
すると、道の先の広場らしき場所の中央に一人の男の姿が。
沈黙が辺りを包んだ。
やがて、男が口を開いた。
「おせぇぞ、アーロン」
「・・・すまん」
今まで俺達に背を向けていた男がこちらに向き直る。
「よぉ」
「あぁ」
男とティーダがそんな短いやり取りを交わした。
「へっ! 背ばっか伸びて、ヒョロヒョロじゃねぇか! ちゃんと飯食ってんのか、ああん?」
なるほど、確かに不器用だ。
そんな苦笑を浮かべる俺とアスナ、そしてユイ。
「俺はあんたと違って太りにくいんだよ」
「おいおい、俺は太ってんじゃねぇ。これは筋肉だ! ・・・でかくなったな」
そんな男の言葉にティーダは静かに笑顔を浮かべる。
「そうだな・・・でもまだ親父の方がデカイ」
「はっはっは! なんつっても俺は・・・」
「シンだから、とか言うなよ。流石に笑えねぇ」
「かーっ! 先に言われちまったぜ」
男――――ジェクトがそう言い、頭を掻いた。
「じゃあ、まあ、なんだ、その・・・ケリつけっか」
ジェクトの言葉にティーダが頷く。
「そうだな・・・親父、一つだけ言っていいか?」
「なんだ?」
「・・・この、馬鹿野郎」
「はははは・・・」
ジェクトは乾いた笑いを浮かべる。
再び沈黙が訪れる。
やがて、ジェクトが言った。
「もう、歌もあんまり聞こえねぇんだ。・・・もうちっとで、俺は心の底からシンになっちまう。間に合って助かったぜ。んでよ、始まっちまったら、俺は、壊れちまう。手加減とか、できねぇからよ。・・・すまねぇな」
「親父のせいじゃない! 全ては・・・シンのせいだ」
「そうか・・・」
「始めよう・・・親父」
「おぅ」
そして、ジェクトは下の光の渦へ飛び込む。
その体から飛び出たいくつかの幻光虫が飛び回り、街に明かりがついた。
光の渦の中からジェクトが魔物と化して現れた。
・・・いや、あれはおそらく、究極召喚獣としての姿か。
「もうすぐ終わるんだ。悲しみも、死の螺旋も。だから、少しでも早く終わらせる!」
ティーダのその言葉を合図にするように、俺達は臨戦態勢に。
「だから! 待ってろよ、親父!」
ティーダの心の叫びを合図に、戦いが始まった。
「「ウオオオォォォォォ!」」
グリームアイズモードの俺と究極召喚獣モードのジェクトの拳がぶつかり合う。
互いに弾き飛ばされる俺達。
そうしてできた隙にティーダがオーバードライブを放った。
「エナジークラッシュ!」
光弾がジェクトの皮膚を破裂させた。
更にアスナ、ユイ、ルールーによる魔法の追撃。
「メテオラ!」
「ブリザジャ!」
「ファイジャ!」
ジェクトが苦しみからか咆哮を上げた。
その隙にユウナが俺に回復魔法をかけてくれる。
「ケアルガ!」
片手を上げることで礼の代わりとし、再び俺はジェクトとぶつかり合った。
そんな俺の肩に飛び乗る誰か。
いつもの細剣を抜いたアスナだ。
「キリトくん、そのまま維持お願い!」
アスナの言葉に頷く俺。
拳をぶつけ合わせた状態から、俺は手を開き、向こうの拳を掴んだ。
俺の腕を伝い、ジェクトの腕に飛び移る。
アスナの体を水色の光が包んだ。
「フラッシング・ペネトレイター!」
アスナの突進ソードスキルが発動し、その剣はジェクトの右目に突き刺さる。
悲鳴を上げて仰け反るジェクトにアスナは追撃。
「マザーズ・ロザリオ!」
更にジェクトの左目にも剣を突き立てる。
その後ジェクトの肩から飛び降りたアスナを、俺が左手で受け止め、広場に降ろす。
両目を潰され苦しむジェクトにワッカとリュックがオーバードライブ。
「エレメントリール・トライ!」
「ライトニングボルト!」
ジェクトはそれに構わず自分の胸から剣を出現させ、それを引き抜いた。
「
俺はエリュシデータを投影し、ジェクトの剣と打ち合わせた。
再び互いにはじかれる俺達。
アーロンがそこに突撃。
「アバランシュ! 流星! サイクロン!」
ソードスキルとオーバードライブを連続で放つ。
「ハイパーエレメントブリッツ!」
ワッカのボールが直撃した隙にアーロンが離脱。
「テンプテーション・ウォタジャ!」
「ハイパースペルミクス《エレメジャ》!」
「ダブルエンシェントマジック《トルネド&フレア》!」
ルールー、ユイ、アスナの順にオーバードライブ魔法の波状攻撃。
「ウィンターストーム!」
リュックもオーバードライブを放つ。
そこに俺もソードスキルを発動。
「デットリー・シンズ!」
7連撃ソードスキルでジェクトの体勢が崩れた。
「キリト! 肩借りるぞ!」
俺の返事を待たずに俺の肩によじ登り、そこから飛び上がるティーダ。
「ヴォーパルストライク!」
ティーダが放ったソードスキルが轟音と共にジェクトの額に突き刺さった。
断末魔の悲鳴を上げ、ジェクトの身体が霧散した。
先ほどと同じ場所に、元の姿に戻ったジェクトが立つ。
そして倒れていくジェクトを、駆け寄ったティーダが受け止める。
「泣くぞ、すぐ泣くぞ、絶対泣くぞ、ほら泣くぞ・・・なんだ、泣かねぇのかよ」
この期に及んでまだ皮肉を言うジェクトにティーダが微笑を浮かべた。
「もう、十分泣いたさ」
「そうか・・・強くなったな」
「ああ」
笑いあう親子。
だが、二人の表情はすぐに真剣なものとなる。
「後は、わかってるよな」
「もちろんだ」
そこに、ユウナが進み出た。
「ジェクトさん・・・」
「駄目だ、ユウナちゃん。もう時間がねぇ。やるべきことは、わかっているな」
「・・・はい」
ユウナが頷き、それにジェクトは満足そうに微笑む。
俺も進み出る。
「あんたとはもう一度本気の勝負がしたかったな」
「俺じゃどう足掻いても勝てねぇよ。・・・ティーダ達を助けてくれて、ありがとうな」
「ああ」
最後にもう一度ティーダが言葉を紡ぐ。
「親父・・・ありがとう。お疲れ様」
「ははは・・・俺とは真逆に、素直に育ってくれて俺は嬉しかったぜ・・・じゃあな」
最期にそう言って、ジェクトは息を引き取った。
その体が幻光虫となり霧散した。
大きな揺れ、そして気づいたらさっきのジェクトの剣の上。
「ユウナ!」
ティーダの声にユウナが頷く。
ユウナがヴァルファーレを召喚する。
そこにエボン=ジュが乗り移り、その身体が黒く染まった。
「行くぞ!」
ティーダの声に俺たちは剣を構えた。
ヴァルファーレ、イフリート、イクシオン、シヴァ、バハムート、ヨウジンボウ、メーガス三姉妹、アニマ・・・。
彼らをユウナが召喚するたびにエボン=ジュが乗り移り、それらを倒していく俺達。
せめて彼らが少しでも苦しまないようにと、全て秒単位で倒していく。
「レイジスパイク!」
「フラッシング・ペネトレイター!」
俺とアスナの突進ソードスキルが、最後のアニマを葬った。
「・・・いよいよか」
「そうだね。ここからが正念場なんだよね」
そんな会話を交わす俺とアスナ。
エボン=ジュが、ダニのようなその姿を現した。
「準備はいいか?」
アーロンが皆に問いかける。
「あったりまえでしょ!」
リュックが元気よく答える。
「そうじゃなかったらここには居ないですよ」
ルールーが当然のように言った。
「シンの中に突入する前に準備は万端だぜ!」
ワッカも自分に気合を入れつつ言う。
「キマリもいつでも行ける!」
キマリが叫んだ。
「全てはこの時のために、ですよね!」
ユイがそう言い切った。
「うん! シンを倒したって、もうシンは復活しないって、生きて帰って、皆にそう伝えたい!」
ユウナが決意を言葉にした。
「そうだね! その後のごちゃごちゃしたことなんて、後でゆっくり考えればいいんだから!」
アスナが言った。
「誰一人悲しませない! 前回よりも、もっと! 今度は俺も消えたりしない! 生きて、前へ、未来へ進みたい! これが俺の願い! 俺の、俺達の物語なんだ!」
ティーダが叫ぶ。
「そうだ・・・ここが分岐点だ・・・。だからこそ、最初から最後まで本気で、全力で奴を倒す! このスピラの恐怖の時代を、俺達の手で終わらせるんだ!
投影するのは、エリュシデータとダークリパルサー。
更に、背中にもう一つ、この時の為だけに作り上げた剣。
命名・・・《サモナーブレード》
3つの剣を携え、俺は叫んだ。
「行くぞ、最後の戦いだ!」
まずはシーモアフルボッコ。
ここでキリトの更なる力披露です。
幻影魔法によるグリームアイズモード。
この状態でもキリトはちゃんと喋れます。
ジェクト戦では同じ姿だけど更に大きくなっていますよ。
戦闘描写って難しいですね。
でも、キリト(悪魔モード)とジェクト(究極召喚獣)の戦いを想像してもらえたら嬉しいです。
戦闘後の親子のやり取り。
「なんだ、泣かねぇのかよ」はこの小説の初期から考えていたセリフです。
ティーダは二度目なので泣くことはないだろうと。
さて次回!
FF10編最終回です!
これまでキリトサイドとティーダサイドのみでやってきました。
しかし次回は三人称視点でお送りいたします。
エボン=ジュ戦から始まります。
もう一度言うけれど三人称視点です。
それでは、次回もお楽しみに!