黒のスピラ冒険記   作:通りすがりの熾天龍

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直葉サイド。
シン打倒の1年後の話です。
この話で間章は最後になります。


間章4 出会いは新たな道しるべ

あれから1年。

皆いろいろと頑張って、でも、まだ手がかりは得られていない。

あたしはルカの人にスピラの魔法を教わり、結構使えるようになった。

 

皆のことも話そう。

士郎さんは拠点の近くで喫茶店を始め、半年経った今でもかなりの人気。

同じ時期からクラインさんが傭兵の仕事を始め、スピラでの広い情報網を手に入れた。

それまでクラインさんは魔術の修行をしながらルカでバイトをしていた。

エギルは当然のごとく商店を経営。かなり儲けている。

その店の横でリズさんが工房を始めた。

リズさんは自分にできることを徐々に増やし、今では魔術の品まで作れるようになった。

他にも武器とかアクセサリーとか日用品とか、もう何でも作れる。

シリカちゃんはスピラの生物の調査。

魔物の生態も調べたりして、彼女の出版した本が相当売れている。

ちなみに凛さんと桜さんはシリカちゃんに同行。

イリヤさんは士郎さんの喫茶店で副店長。

看板娘としても頑張っている。

シノンさんは3ヶ月ほど前、一人で旅に出た。

士郎さん達の指導の下、魔術を結構極めているから多分大丈夫だろう。

そしてレオはあたしとコンビを組んで活動中。

具体的には情報収集や魔物との戦闘など。

他の街にも出向いて交渉することもあるけれど。

そして付き合ってもいないのに周囲から結婚を勧められている。

最初に聞いたときは二人で、解せぬ! と叫んだものだ。

まあ、最近はそんなのもいいかなって思えるようになってきたけど。

 

でも、情報収集はあまりうまくいっていない。

どうしてもお兄ちゃんたちの情報が手に入らないのだ。

 

 

 

 

ついでに誰がどっちを選んだのかも言っておこう。

スピラの魔法を選んだのはあたし、シリカちゃん、エギルさん。

魔術を選んだのはクラインさん、シノンさん、リズさん、そしてレオ。

レオの才能は士郎さんが驚くほど凄い。

士郎さんやお兄ちゃんとは違う方向で異端なのだそうだ。

でも、それについてはまたいずれ。

 

キリちゃんと呼ばれるのにも抵抗がなくなってきた。

むしろ心地よく感じられるようになってきて、それがなんとなく嬉しく思う。

こんなあたしを、お兄ちゃんはどう思うだろうか。

まだ付き合ってはいないが、あたしはレオのことが好きなのだろう。

 

 

 

 

それはともかく、今日は少し遠出して活動する。

アルベドという人種の人達との交渉。

これが上手くいけば、この世界の機械(マキナ)の力を借りることができるだろう。

エギルさんの商店がアルベド人が経営する旅行公司にとっても役に立っているので交渉もある程度はうまくいくはずだ。

スピラは大きな変革を迎えているため、情報の混乱もある。

それが情報収集が上手くいかない理由の一つだろう。

シンを倒すのに飛空艇が使われたとのことなので、機械が受け入れられてきているのもあたし達が彼らに交渉を持ちかけようと決めた理由だ。

シンを完全に倒した大召喚士のガードの一人もあたし達と会ってくれるということなので、その人からの情報も期待したい。

おそらくお兄ちゃんならシンの恐怖を見過ごしたりしないだろうから。

 

「キリちゃん、そろそろ行くよ」

「うん、わかった」

 

 

 

 

アルベド人で旅行公司の経営者、リンさんに頼み、案内をしてもらう。

同じ名前の人がいるとわかりにくいが、あえてそれは言わない。

馬車に乗って約半日。

途中で魔物を撃退したりしたので少し遅くなってしまった。

「そろそろ着きますよ」

リンさんの言葉に、あたし達は降りる準備を始めた。

 

あたし達が来たのはマキナ派と呼ばれる人達の拠点、ジョゼ寺院。

ここに来たのはあたしとレオ、そして士郎さんとイリヤさん。

マキナ派はスピラの派閥の中でも中立なので、スピラの他の派閥の影響も少ない。

そしてマキナ派のリーダーはアルベド人だ。

だから会談をここで行うことにした。

そうは言っても交渉するのは士郎さんとイリヤさんなのだが。

 

 

 

 

寺院に着き、あたしとレオは別の部屋に通される。

その部屋では一人の女の子があたし達を待っていた。

年齢はあたし達と同じくらいだろうか。

その女の子があたし達に気づいて立ち上がる。

「チイ達が話を聞きたいって言ってた人達だよね?」

その言葉にあたし達は頷く。

「ああ。俺はレオだ。で、こっちが」

「直葉です。よろしく、リュックさん」

この人はリュックさん。

士郎さん達の交渉相手であるシドさんの娘で、大召喚士のガードの一人。

本来、この交渉は士郎さんとイリヤさんの二人で行くことになっていた。

手紙でやり取りをしている最中に、こちらが地球から来たと伝えると、大召喚士のガードの中に地球出身を名乗る人がいたという情報を教えてくれたのである。

その情報を知り、交渉ついでにその話を聞かせてほしいと手紙で伝えると、娘のリュックがガードをやっていたから交渉の場に連れて来ようと言ってくれた。

で、あたしとレオが士郎さん達に同行すると伝え、士郎さん達の交渉とは別の部屋であたし達とリュックさんが話す場を設けてくれることになったのだ。

 

「さん付けは要らないよ。あたしのことは普通にリュックって呼んで。それと敬語も要らないからそれはともかく、よろしく、レオ、スグハ」

あたし達はリュックさん・・・じゃなくてリュックと握手を交わす。

「じゃあ、まずはリュックと一緒にガードをしていた地球の人について聞かせてくれないか?」

レオの言葉にリュックは頷いた。

「わかった。あたし達と一緒に旅していた地球から来た人は3人で、それぞれの名前がキリト、アスナ、ユイ・・・って急にどうしたのスグハ!?」

リュックが慌てた声を出したのはあたしが突然泣き出したことだろう。

「やっと・・・やっとだよ、レオ」

「ああ、そうだな・・・でもさ、とりあえずキリちゃん、泣き止んでくれ」

「そんなこと言ったって無理だよ。涙が止まらないんだもん」

そんなあたし達にリュックが戸惑いの声をあげる。

「え、えっと・・・知り合いが居たの?」

ようやく涙が止まったあたしがそれに答える。

「キリトくんは、あたしの兄です」

「・・・え、えええええぇぇぇぇぇ!?」

 

少しあたし達の家族関係を説明し、その後リュックが言った。

「スグハはキリトの妹かぁ。で、今オヤジと話している男の人がキリトの師匠?」

あたしはそれに頷く。

「師匠ってことはキリトより強いんだよね? あんな規格外より更に強い人が居るなんて、やっぱり信じられないなぁ・・・ははは・・・」

リュックが遠い目をしている。

いやぁ、スピラでも相当暴れたんだね、お兄ちゃん。

「あ、そうだ! 二人は第三魔法って知ってる?」

思わぬ言葉を聞き、あたしはレオと顔を見合わせた。

「それって・・・」

「イリヤさんの専門分野だよな?」

あたしの言葉にレオが続けた。

「知ってるんだね?」

「知ってるも何も俺達と一緒に来たもう一人の女性がそれの使い手だけど?」

リュックの期待を込めた眼差しにレオが戸惑いながら答える。

「凄い! こんなところで見つかるなんて!」

「えっと・・・どういうことか説明してくれないかな?」

なにやら喜ぶリュックにあたしは声をかける。

「あ、ゴメン。えっとね・・・」

軽くあたし達に謝り、リュックは話し出した。

 

 

「・・・やっぱりお兄ちゃんだなぁ・・・」

あたしの呟きに、レオが苦笑。

今のは別にリュックの言うキリトがお兄ちゃんだとやっと理解したというわけではない。

相変わらずいろいろと無茶苦茶だなぁ、という意味。

「うん、キリトはいろんな意味で規格外だよね」

こちらも苦笑気味に言うリュック。

「で、そのティーダっていう人とキリトさん達は今どこに?」

レオの質問にリュックが難しい顔をする。

「それがね・・・」

 

 

「渦に飲み込まれた、か・・・」

あたしが思い出しているのは1年前に自分達が巻き込まれたあれ。

きっとレオも同じことを思い出しているはず。

だって苦い顔をしているから。

「まぁ、お兄ちゃんならどこかでひと暴れして帰ってくるよ」

「あはは、アスナも同じこと言ってたよ」

そう言って笑うリュック。

「で、そのアスナさんとユイちゃんは今どこに?」

あたしの質問にリュックは答える。

「ベベルの隠し図書館に居るらしいよ」

「「隠し図書館?」」

「何でも、誰も知らない秘密の図書館だとか。アスナも顔が知れてるからそこで暫くやり過ごすってさ。キリトと連絡を取るための研究もするって言ってたよ」

「二人に会うことはできる? よければ案内してほしいんだけど」

あたしの言葉に再びリュックが難しい顔をする。

「それがね、行き方を知っているのはキリト達とそこの管理人を除けばユウナだけなんだ。そのユウナも今はいろいろと忙しくて身動きが取れないし・・・それにアスナ達と連絡をとる手段もあたしは持ってないんだ。ごめんね」

「ううん、それは仕方ないよ。リュックのせいじゃない」

あたしの言葉に同調するようにレオも静かに頷いた。

「ありがとう、二人とも・・・ねぇ、一つ提案があるんだけどさ」

「「?」」

リュックが一つの提案をあたし達に持ちかける。

「あたしは今スフィアハンターをやっているんだ。カモメ団っていう名前なんだけどね、よかったらスグハとレオも入らない?」

 

 

 

 

「どうしようかな・・・」

ひとり呟く。

少し迷っている。

情報的には大きく踏み出せたが、結局お兄ちゃんの居場所はわからないまま。

というか余計わからなくなってしまっている。

リュックがカモメ団へ誘ってくれたこと。

それはチャンスかもしれない。

新たな手がかりを探すことの。

スフィアハンターの目的は大昔のスフィアを探すこと。

エボンージュがお兄ちゃんを飛ばした先がそれでわかるかもしれない。

でも、皆はなんて言うかな。

「・・・俺達が決めること、だろ?」

レオがそう言ってくれた。

「うん・・・そうだね」

そこに、士郎さんたちが出てきた。

「二人とも、交渉はうまくいったぞ。そっちはどうだ?」

士郎さんがあたし達に尋ねてくる。

「えっとですね・・・」

レオが話し始めた。

 

 

「そうか。二人はどうしたい?」

「あたしは、チャンスかなって思ってます。カモメ団に入るのもありかなって。でも・・・」

「行って来い、キリちゃん」

「え・・・?」

レオを見ると、彼は真剣な表情をしていた。

「キリトさんの手掛かりが見つかるかもしれないんだ。カモメ団に入れ」

レオの言葉にあたしは頷いた。

「・・・うん、わかった」

士郎さんがレオに訊く。

「レオ君、君はどうするつもりなんだ?」

「俺は・・・旅に出ようと思う」

「「「旅・・・?」」」

あたしと士郎さん、イリヤさんの声が重なった。

「あぁ、自由にスピラを見て回りたい。そうすることで初めて得られる情報もあるだろうし、なにより、いろんな人に会ってみたい」

レオの言葉に士郎さんが頷いた。

「そうか・・・レオ君ならシノンちゃんと同じように一人で旅しても大丈夫だろう」

「士郎、この後はどうする?」

イリヤさんが士郎さんに訊いた。

「そうだな・・・直葉ちゃんはここでリュックちゃんと一緒に行き、俺達はルカに戻る。レオ君は一度ルカに戻って必要なものをそろえてから出発。これでいいだろうと思う。二人はどうだ?」

士郎さんの言葉にあたしとレオは頷く。

「はい、それで大丈夫です」

「俺もそれで構いません」

「よし、決まりだな」

 

 

 

 

「と、いうわけで! 今日からカモメ団のメンバーになるスグハだよ!」

リュックがあたしを紹介する。

「直葉です。これからよろしくお願いします、皆さん」

そうあたしが言うと周りから拍手が。

皆の歓迎の笑顔に、あたしも自然と笑顔になる。

今この時、あたしは新たな一歩を踏み出した。




もう思い切って現時点で直葉がレオを好きだということにしました。
オリ×スグ、誕生。
でも正式にはまだくっつかない。
まずキリトが帰ってこないと話になりませんし。

レオの魔術は特殊。
しかしこれはまたいずれ。
でも実はまだ考えてないという(笑)

シドとの交渉&リュックとの会談。
大人同士と未成年同士の会話ですね。
そして直葉がカモメ団に入りました。
で、レオは一人旅スタート。
これからの話に誰がどう関わるかもお楽しみに。


これにて間章は終了です。
次回はいよいよ10-2編スタート!
暫くキリトサイド&ティーダサイドはお休みです。
まずはユウナサイドから。
お楽しみに!
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