黒のスピラ冒険記   作:通りすがりの熾天龍

33 / 37
遅くなりました、パインサイドです。



私の知らない物語

「でさ、あの時ティーダが・・・」

「あはは、その時はキリトくんもね・・・」

・・・すごく居づらい。

まあ、それは私だけでなくリュックやスグハも同じようだ。

そんなわけで今、私たち3人は部屋の隅で縮こまっている状態。

別に私達で話せばいいと思うだろうが無理だ。

自分達の彼氏の話をしているユウナとアスナは凄く楽しそうでバックが完全にピンクだ。

その横で別の話をしようとしたら話が暗くなってしまう。

なぜならリュックとスグハが現在グレーだから。

正直言って私より年上の二人の恋バナに平然と入ってのけるユイちゃんって凄い。

「・・・二人とも、出よう」

二つの空気の板挟みに耐え切れず、沈み気味のリュックとスグハに声をかけた。

それにしても・・・なんで暗くなるのさ。

 

 

 

 

「うーん、上手く当たらない・・・」

そう呟くのは二丁拳銃を手に持ったユウナ。

彼女は元召喚士。

新しい武器として二丁拳銃を選んだユウナだが、慣れるのには時間がかかりそうだ。

一方、私はというと・・・。

「でね、さっき説明したように魔力を使うと・・・」

解説をするアスナの手に握られた剣が光り、凄まじい速度で刺突が打ち出された。

「じゃ、やってみて」

スグハと一緒にソードスキルという技術の練習。

とはいえ、スグハは動きの方が完璧なので発動の仕方だけの練習。

仮想世界の技術を魔力を使って再現したものだとか。

だからスグハは慣れている、とのこと。

リュックは発動の仕方は既に知っているそうで、ダガー二本でのソードスキルを練習中。

今は拳銃に慣れていないユウナも召喚獣をあっという間に倒す程強いそうだ。

アスナは古代の魔法を使いこなす。

スグハも魔法を剣に纏わせる超技術を使いこなす。

リュックは規格外な調合技術を持っている。

チームに入っていないユイちゃんも対極属性混合魔法を使う。

そんな中で私が一番弱い。

何せ彼女らは熟練の召喚士の使役する召喚獣を30秒かからずに倒せるレベルなのだ。

そして、その強さはアスナとユイちゃん、そして2年前から行方知れずの二人の青年によってもたらされたという。そしてスグハはほぼ最初から強い。

アスナ達の規格外っぷりに戦慄する私だったが、なんとそれすらも大きく超えるのがいるらしい。

その男には私たちユ・ア・リ・パ・スにユイちゃんを加えても歯が立たないほど強いとか。

それを聞いたときには卒倒しかけてしまった。

 

「そうそう、そんな感じ。パインもだいぶ上手くなってきたね」

アスナの言葉が今は素直に嬉しい。

だって隣でスグハやリュック、ユウナが急速にそれぞれの腕を上げているのだ。

横でそれを見ていたら焦るに決まっている。

そんな感じだったので、今はよくやったと自分を褒めたい。

「それじゃ、今日はここまでにしようか」

いつの間にかアスナが仕切っているがこの場では妥当だろう。

 

 

 

 

昼食を済ませ、私達はテーブルに座って雑談。

スグハがアスナにどうやって地球からスピラに来たのかを話している。

でも私には聞いてもさっぱりわからない。

私からすれば異世界があるなんてことに驚いたぞ。

それにしても渦に吸い込まれたとは・・・よく無事だったな。

「で、そこでリュックに誘われてカモメ団に入ったんです」

スグハの話が終わった。

私は一番訊いてみたかったことを訊く。

「訊きたかったんだけど、ユウナの旅ってどんな感じだったんだ?」

「あ、それあたしも聞きたいです」

スグハも興味があるようだ。

「ああ、それね。いろいろあったよね」

アスナの言葉にうなずくユウナ。

「うん、そうだね。えっとね・・・」

 

 

「相変わらず無茶苦茶だね、お兄ちゃんは」

スグハが苦笑しながらそう言った。

ユウナ達の旅の話はスピラの常識を根底から覆す程のとんでもない規格外だった。

私からすればそんなとんでもない話を苦笑で済ませるスグハも規格外だと思う。

「なんだか、話聞いただけで疲れてきた・・・」

そんな私の呟きに皆は苦笑。解せぬ。

「ごめん、少し休ませて・・・」

精神的な疲労だけでなく、特訓による身体的な疲労もあってもう限界。

「お疲れ~。明日の内容は今日よりキツイからゆっくり休んでね」

アスナがそう言ってきた。

「そ、そうか・・・。夕食の時間になったら起こして。それじゃ、お休み」

『お休み~』

皆の声を背にベッドに向かう私であった。

 

 

 

 

翌日も猛特訓を終え、再びベッドに入る。

しかし今日は昨日よりキツイ訓練だったのに疲れが少なかった。

無茶苦茶な話を聞いたことによる精神的な疲労が無かったからだろうが。

スグハを除いた皆で雑談。

と、そこにスグハが戻ってきた。

「明日の予定が決まったよ!」

スグハはルカにいる知り合いと連絡を取ると言っていたが・・・。

「明日は士郎さんの喫茶店に行くよ。そういうことで訓練はお休みだよ」

誰なのだろうか、そのシロウという人は。

「その人は誰なの?」

ユウナが私の聞きたいことと同じ事を訊いた。

アスナがそれに答えた。

「キリトくんの魔術の師匠だよ」

・・・今、とんでもないことを聞いた気が。

き、気のせいだよね?

更なる上が居るなんて私は信じたくない。

ああ、明日が怖い・・・。

 

 

 

 

翌日、セルシウスでルカに向かった。

目の前には、エミヤという名前の喫茶店。

小さい割になかなか洒落た店だな。

ドアについている板には貸切の文字。

昨日スグハが連絡してたのはこの為か。

スグハがドアを開ける。

「こんにちは~」

スグハのかけた声に出てきたのは一人の女性。

「あ、直葉ちゃん。久しぶりね。待ってたわよ」

気さくな人のようだ。

「他の皆さんは初めましてになるわね。私はここの店員をしているイリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ。長くて呼びにくいと思うからイリヤって呼んでね」

女性、改めイリヤさんが自己紹介。

「この人が第三魔法の使い手。ティーダさん復活のカギを握る人、かな」

確か魂の物質化だったっけ。

話を聞く限り規格外な魔法だったがこの人が使うのか。

でもいい人そうでよかった。

そこに奥から男の人が出てきた。

「ああ、直葉ちゃん、待ってたよ。明日奈ちゃんも久しぶりだね」

「はい。お久しぶりです、士郎さん」

この人が規格外の上を行くというとんでもない人か。

「リュックちゃんも久しぶり。と、そこの二人は初めて会うね。俺は衛宮士郎。スピラ風の言い方をするならシロウ・エミヤだ。よろしく」

「「よろしくお願いします」」

ユウナと一緒にそう言った。

「エギル君とリズベットちゃんももうすぐ来るから、座って待っているといい。紅茶を用意しよう。皆もくつろいでくれ」

そう言ってシロウさんは奥に戻って行った。

 

「これ、美味しい」

私の感想にスグハとアスナが笑顔を見せる。

「そうでしょ? ルカではこの紅茶、凄い人気なんだよ」

「士郎さんってなんでもできるからね。わたしも練習したけどあそこまでは無理だなぁ」

へぇ、そうなんだ。

そう言おうとしたところで入り口のドアが開いた。

「アスナ、久しぶり!」

入った来た二人の内、アスナと同い年くらいの女性が言った。

「リズ! 久しぶりだね!」

アスナが嬉しそうな顔を見せた。

「アスナ、その人達は?」

ユウナの質問に、アスナがハッとした。

「ああ、ごめんごめん。二人とも私の友人で、」

アスナの言葉を引き継ぐように二人が言う。

「あたしはリズベット。リズって呼んでね」

「俺はエギルだ。よろしく」

スグハが補足の説明を入れる。

「リズさんはルカでリズベット武具店を経営してて、エギルさんはその隣でアルゲード商店を開いてるんだ。皆は知ってるかな? 結構有名になってきたと思うけれど」

リズベット武具店の方は聞いたことがある。

「確か、その武具店って武器やアイテムを何でも製造受注しているっていう店だよね?他のどの店よりも質が高いって聞いたことがある」

私の言葉に頷いて肯定するスグハ。

「そうそう。ちなみにあたしの剣もリズさんがつくったんだよ」

「「「・・・へ?」」」

私とユウナとリュックの声がハモった。

スグハの剣ってあまり力を入れずに斬るだけで魔物の固い殻を割るバケモノスペックの・・・。

「「「えぇぇ!?」」」

またハモった。

 

再び席に着く私たち。

「そうそう、少し前からリーファの頼みで武器を作っておいたんだ。リュックにダガー二本とパインにロングソード一つ。どっちもあたしの最高傑作級よ」

「「あ、ありがとうございます」

私とリュックはリズさんから剣を受け取りつつ礼を言う。

つい敬語になってしまったのは許してほしい。

スグハの剣と同じくらいのキチガイスペックをぽんと渡されたら誰だってそうなる。

「そんなかしこまらなくていいよ。とりあえず今後とも御贔屓に、よろしく」

「相変わらずちゃっかりしてるねぇ、リズは」

リズさんの言葉にアスナが懐かしそうに微笑む。

「あはは、それを言うならアスナもいつも通りで一安心よ。聞いたよ。キリトがまたどっかに飛ばされたってね。まあ、あいつのことだしまたどっかで大暴れして突然帰ってくるでしょ。唯一心配すべきはキリトがまたどっかの女の子にフラグ立てちゃうかもってことだよね」

「もう、そんなこと言わないでよ。キリト君のことだから実際ありそうじゃない」

「そうそう、お兄ちゃんはそういう体質なんだから迂闊に言うもんじゃないですって」

「ごめんごめん。ところでユイちゃんは?」

そんなやり取りの後、そう質問するリズさん。

「ユイちゃんならわたし達の飛空艇でお留守番。いろいろとやってみたいことがあるんだって」

そう、私たちがルカに降りるとき、ユイちゃんはそんなことを言っていた。

「そっか。あの子も頑張ってるんだね。あんた達の飛空艇ってセルシウス、だっけ?」

リズさんの質問に私達は頷く。

「スフィアハンターとしての活動ってどうなの? 詳しく聞かせてもらってもいい?」

「いいですよ、えっとですね・・・」

リズさんの言葉に、スグハが話し始めた。

 

 

 

 

「いやいや、和人の方が俺よりも強いよ。俺が唯一勝るのは経験量だけさ。経験の質でいえばSAOの攻略組トップにもなったあいつの方が僅かに勝ると思うよ」

あれから、いろいろな話をし、今は士郎さんが語っている。

カズトというのはキリトさんのことらしい。

スグハもリーファって呼ばれることがあるから似たようなものだと思う。

しかし師匠である士郎さんも超えるのか、キリトさんは。

士郎さんの実力はこうして相対してるだけでも私との差がよくわかる。

私が何人集まってもこの人には絶対に勝てない。

それこそ何十人、何百人単位でもだろう。

でも、本人は実力を隠す技術を使っているそうだ。

さらに恐ろしい。

キリトさんはこの人をも超えているのか。

一体どんな人なのか。

「おっと、そろそろ日も暮れてきたみたいだな」

ふと窓の外を見た士郎さんが言った。

確かに、窓の外の景色はオレンジ色に染まっている。

今日はここまで。

明日から訓練再開だ。

リズさんにもらった剣、使いこなせるようにならないと。

 

 

 

 

後日、ルカに行っていたことが原因でユウナがスフィアハンターを始めたことがバレて広まってしまったのは余談である。

とりあえず言っておこう。ユウナ、頑張れ。




後書きが書き辛くなってきたので省略します。
疑問点があったら感想にお書きください。
誤字・脱字などの報告もよろしくお願いします。

しつこいようですが活動報告のアンケートもよろしくお願いします。


次回はいよいよ10―2編本番。
ルカでの偽ユウナのライブからスタート。
リュックサイドを予定しております。
それでは!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。