今回はかなり長いです。
前回の予告はしっかり守ったつもりです。
どれくらい気絶していたか。
目が覚めた俺は、すぐさま上に向かって泳ぐ。
なぜなら目覚めた場所が海中だからだ。
このままでいれば窒息死してしまうのは幻光虫が少ないから。
ちなみにこれも前回と同じ。
「来たか、ビサイド」
ここから、俺の旅は始まる。
・・・そういえばあの時、キリトも船から投げ出されていたような・・・。
あわてて辺りを見回し、下の方に居ないかも確認。
魚は居るが人影は全く見当たらない。
ここの海底は砂だから何かの影に隠れるなんてことはないだろう。
「・・・キリトの奴、大丈夫か?」
と、
「あてっ」
ボールが頭にぶつかった。ブリッツボールだ。
「おーい!」
声がする方には、ワッカがいた。
「それとってくれー!」
懐かしい。なら、ここも前回と同じように・・・。
いったん潜り、ヘディングでボールを打ち出す。
すぐさまジャンプ、そして、オーバーヘッドシュート。
そういえばザナルカンドの最後の試合ではこれを決めようとしてたところに光弾を喰らったんだよな・・・。思い出したら腹が立ってきた。親父め。
ちなみにワッカ達オーラカは慌てながらも大喜びしている。
さて、行きますか。
「なあ、さっきワザのもう一回やってみてくれねぇか?」
顔をあわせたワッカのセリフ。
これも前回と同じで、そう考えると自然と笑顔になる。
「いいッスよ」
再び、オーバーヘッドロングシュート。
オーラカのメンバーも歓声を上げている。
「おまえ、素人じゃないよな? どこのチームだ?」
当然こう来るよな。なんて言うべきか・・・。
「ちょっと前まであるチームのエースやってた。どこのチームかは内緒ッス。
少なくともルカの大会には出てないかな。今はフリーッスよ」
それを聞いたワッカは期待に目を輝かせる。
と、ここで、盛大に俺の腹が鳴った。
「ははは、悪ぃ悪ぃ。村でなんか食わしてやる、こっちだ。あ、お前らは練習つづけとけよ」
「「「「はい!」」」」
村に行くまでに自己紹介を済ませ、到着。
「ここがビサイド村だ。で、あれが俺の家」
「飯は?」
「今食わせてやる。ついて来い」
そういえば前回は飯抜きのままあちこち連れまわされ、ビサイド村では飯はまだだから昼寝でもしてろと言われ、起きたらワッカがいなくて、試練の間に飛び込んでいって、出たら召喚獣観賞。結局夜まで何も食べずに終わってしまった。
今回はそんなことになる前に飯にありつけたぜ。
「ちょっといいか?」
昼食を食べた後、何処かに行っていたワッカが声をかけてきた。
「お前さえよけりゃ、この辺りを案内してやるよ。どうだ?」
お、いいね。
「いいッスね。頼む」
「あそこは討伐隊宿舎。そこの家は雑貨屋だ。で、あれがビサイド寺院だ」
「この村には召喚士は居るのか?」
前回と同じなら今頃ユウナが祈り子と対話中のはずだ。
「ああ、今寺院で従召喚士が祈りを捧げてる。これがうまくいけば召喚士が誕生、ということになるな。お」
「ワッカさーん!」
寺院から走り出てきたのは白いワンピースを着た少女。
「ユイちゃんか。どうした」
「たった今ユウナさんが召喚士になって出てきました!」
「お、成功したのか!」
「はい! でも今は疲れているそうなので寺院の中で休んでいます」
「そうか、じゃあ後で実際に召喚してもらうからしっかり休んでおけってユウナに伝えてくれ」
「はい!」
ユイと呼ばれた少女は寺院に戻っていった。
「今の子は?」
「ああ、シンの毒気にやられた子だ。かわいそうになぁ、あんなに小さな子が」
「流れ着いたのか?」
「おとといな。でも凄い才能のある子だ。なにせたったの1日で幾つもの魔法をマスターしたんだからよ。それももう上級まで扱えるほどにな」
「マジッスか。そういえば、なんでシンの毒気にやられたってわかったんすか?記憶喪失だったんならシンが原因だとは限らないし」
「俺達が全く知らないところから来たって言ってるんだよ。確か・・・ニホン・・・だったかな?そんな場所、スピラの何処にもないだろ?」
「あ、あぁ・・・」
日本!? 日本だって!?
それってキリトと同じ・・・これは偶然なのか?
前回は居なかった二人、しかも同じ場所、夢のザナルカンドでもスピラでもない場所から・・・。
これは一体、どういう事なんだ?
俺が逆行してきたことにも関係しているのか?
「おい、大丈夫か? 何か顔色悪いぞ?」
「え? あ、いや、なんでもないッスよ? さ、次は村の外を案内してくれ」
「お、おう」
凄く慌てた声になってしまった。
こりゃ絶対怪しまれてるよな?
「ここは俺達ビサイド・オーラカのもう一つの練習場所だ。ほら、ここから村もみえるだろ?」
「いい眺めッスね~」
「だろ? 俺が初めてブリッツを教えてもらった場所でもあるんだ」
「いつッスか?」
「5歳の時だ。選手になったのは13歳。で、そっから去年まで、選手をやってた」
「引退したんすか?」
「ああ、で、召喚士のガードを初めてな。でも、頭の中がブリッツでいっぱいでさ・・・。だから、今度のルカでの試合では絶対に勝ちたいんだよ。今まで一度も勝てたことが無いからな」
「で、俺に入ってほしいと?」
「う・・・す、鋭いな、お前」
「ワッカは解り易すぎるんだよ」
「頼むティーダ! 一度でも勝ちたいんだ! そうすりゃ俺ガードに集中できるから・・・」
ああ、絶対に勝たせてやるさ・・・だが、
「勝つのは一度でいいのか? 優勝は?」
「いや、俺はいい試合ができればそれでいい」
「甘いな。俺が入るからには優勝以外許さねえ! 目標はただ一つ! 優勝あるのみ!」
「お、おお! 入ってくれるのか?」
「当然だ。この(ザナルカンド・)エイブスのエースに任せろ!絶対にオーラカを優勝させてやるぜ!」
あえてチーム名の前半部分は省略。
「うおおぉぉ! ありがとう! 大会まで頼むぜ!」
再びビサイド村。
これからユウナが実際に召喚をする。
舞うような動きをするユウナ。
そこから魔方陣とともに光が出現し、上空へ。
光が集まったあたりから、召喚獣が現れる。鳥のような召喚獣、ヴァルファーレ。
ユウナがヴァルファーレに歩み寄り、ぎこちない手つきでその頭を撫でる。
そして、振り向いたユウナに、ルールーとワッカが真っ先に駆け寄った。
その後すぐに他の村人達も集まっていく。
「凄いですねぇ」
その声に隣を見ると、そこにはシンにやられたという少女、ユイ。
「召喚獣、見るの初めてなんスか?」
「はい! わたしが居た場所には召喚士は居なかったので。ティーダさんって旅人なんですよね? ワッカさんから聞きました!」
「そうッスよ」
「他にはどんな召喚獣がいるのか知ってますか?」
顔に「わくわく」と大きく書いたような期待の眼差し。
「ヤギみたいな角を持っていて犬のような顔をしたやつ、変わった形の角がある馬、あとは・・・うーん、説明難しいッスね」
「会ってみたいです」
と、そこでヴァルファーレが飛んだ。
しかし前回のように飛び去ることは無く、降り立ったのは・・・、
「ちょ・・・」
「うわぁ~」
なんと俺達の目の前。
空気が、止まった。もしくは、固まった。
「ヴァルファーレさん、初めまして! ユイです!」
その中でユイちゃんだけが当たり前のようにヴァルファーレに挨拶した上に撫でていた。
ヴァルファーレも大人しく撫でられている。
と、そこでヴァルファーレが俺の方を向いた。
――――久しぶりですね
――――私たちも、『かつての未来』を知っています。
「!?」
思わず半歩下がる。
――――今度は、消えないで
「・・・なん、」
俺が言い切る前にヴァルファーレは飛び去って行った。
「で・・・」
あんたが、いや、あんた達がそれを・・・?
「ティーダさん?」
見ると、ユイちゃんが不安げな顔をしていた。
「どうかしたんですか?」
「あ、いや・・・なんでもないッス」
ユイちゃんは納得していないようだったが訊かない方がいいと思ったのか大人しく引いてくれた。
夜になった。今夜は、宴会。
「目標は?」
「「「「「精一杯頑張る!」」」」」
「違うな」
今俺は、オーラカのメンバーと顔合わせ中。
「俺達の目標は変わった」
ワッカの言葉に驚くメンバー。
「目標は優勝だ! クリスタルの優勝カップをこの島に持ち帰る!」
更に驚くメンバーをよそに、ワッカの演説は続く。
「出る試合には全部勝つ! よそのチームは全部倒す! そうすりゃ優勝できる! 簡単だ、俺達ならできる!」
「「「「「うっす!」」」」」
「なんだか、みなさん、寂しそうです」
宴会も半ば。俺の隣にはユイちゃんがいる。
とんでもないことを引き起こした張本人扱いされたため、下手に動けない。
だから俺たち二人でのんびりとはじっこにいる訳だ。
もっとも、それでも周囲の視線はキツイが。
「そうッスね」
「どうして、お祝いなのに寂しがるんでしょう」
「旅に出るからさ。そして、もう戻ってこない。召喚士の旅だからな」
「どうして戻ってこないんですか?」
しまったな、と思う。
「旅を終えて大召喚士になったら、大きな仕事がある。人生をかけた、とても大きな仕事だ」
一応嘘は言ってない。究極召喚という仕事は文字通り人生をかけたものだ。
「それに彼女は、途中で旅を止めようとしないはず。だからみんな寂しいんだよ」
「ユウナさんと話したことが無いのにわかるんですか?」
「ははは、みんなが寂しがってるってことはそういう事なんだろうって思っただけさ」
本当は、かつての未来を知っているからだけど。
そこに、ユウナがこちらに来た。
「隣、座ってもいいかな」
「いいッスよ」
「それじゃあ、失礼します」
緊張が取れていなさそうな、少しこわばった声。
なんとなく、微笑ましい。
「えっと・・・ティーダさん、だよね」
「さん付けは要らないッスよ、『ユウナ様』」
「さ、様付けは要らないよ。まだなったばかりだし」
少し頬を膨らませながら言い返された。
「ね、その胸のペンダント」
あ、隠すの忘れてた。ピアスも。
「ザナルカンド・エイブスのマークだよね」
あー、やっぱりか。
「なんで知ってるんスか」
とりあえずわからないふりをしておく。
「ジェクトさんがね、胸に同じマークを刻んでたの。ね、キミもザナルカンドから来たの?」
やっぱり出た、親父の話。
「そうッスよ。ところでそのジェクトって人、上半身裸で豪快な性格だったか?」
「うん、そうだよ。やっぱり知り合い? 同じチームに入ってるし」
「知り合いも何も、俺の親父ッスよ」
「ええぇ!?」
瞬間、全員の視線が俺の方を向いた。怖いっての。
「親子なんだ、凄いね。ねぇ、今度のルカの大会に出るんでしょ? ワッカさんたちと」
ユウナは全く気にしてないようだ。ってか気づいてもいない?
「そ、そうッスよ」
「試合、私も見るんだ。だからさ、ジェクトシュート見せてよ。できる?」
凄いはしゃいでるな。
「いいッスよ。一家秘伝のスーパーシュート、見せてやるッス」
「うん! 楽しみにしてるね!」
ところで、ユイちゃんは? と思ったらワッカとルールーのところにいた。いつの間に。
「出発は同じ船なんだよね」
「それは聞いてないけど、ワッカはガードなんだろ。オーラカは全員で同じ船に乗るべきだからやっぱり同じ船なんじゃないか?」
「そうだよね。・・・ねえ、船の中でもお話していいかな?」
「いいッスよ。むしろ喜んで」
「じゃあ、ザナルカンドの話、聞かせてね」
そういってユウナは人だかりの方に戻っていった。
「もう死んでしまったのよ!」
「・・・んあ?」
小さな叫び声で目が覚めた。
懐かしいなあ、この話も。
確かチャップと俺が似てるって話だったよな。
また聞くのもなんか悪いし、寝よ。
そういえば前回この時に見た夢、見なかったなあ。
・・・何の夢だったっけ?
「なあ、ちょっといいか?」
戻ってきたワッカの第一声。
「なんスか?」
「お前にちょっと話しておきたいことがあってよ」
OK理解。チャップのことだろ?
「俺には弟が居たんだ。名前はチャップ」
どう転んでもチャップの話は聞くことになるようだ。
「で、変なこと言うようだけどよ・・・お前に似てたんだ」
「・・・」
「あいつは、去年シンと戦って死んだ。それを俺が知ったのは大会の日だった」
「じゃあ、その試合は?」
「いつも以上にズタボロさ。勝てるチャンスではあったんだけどな」
やっぱり、二回目でも聞くのはつらい。
「だから、俺はガードになる道を選んだ。敵討ちのつもりだったんだけどな。ブリッツと敵討ち、どっちが大事なんだっての」
「ワッカ・・・」
「ルールーにとっては・・・大事な恋人だった。あいつ、次の試合に勝ったらプロポーズするって言ってたんだ。それなのに、試合には出ずに討伐隊に入るって言ってな。それっきりだ。勝てるチャンスだったんだけどな、ホントに」
本当に悲しそうだな。前回よりも。
「お前にこれを言ったのはな、俺やルールーがお前を妙な目で見ることがあるかもしれないってことだ。気を付けるつもりだけどよ、そうなっちまったらごめんな」
「気にしないッスよ。それより、明日は出発だろ? ちゃんと寝とかないと」
「ああ、そうだな。・・・明日、朝渡したいものがある」
「そッスか。じゃあ楽しみにしてるッス。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
夢の中でも考える。今日の出来事についてだ。
前回、キリトやユイは居なかった。この二人はどちらも日本という場所から来た。
周りはシンの毒気にやられたというが、違う。
なぜならシンの毒気には記憶改ざんの力はないからだ。
前回の旅では全く聞いたことのない地名。おそらく、スピラには存在しない場所。
異世界、という言葉が思い浮かんだ。
もう一つ、ヴァルファーレが言ったこと。
『かつての未来を知っている』。
召喚獣の祈り子たちも俺と同じように逆行したのか。
あるいは、繰り返され続けている中でたまたま今回の俺が記憶を引き継いだのか。
いや、後者の場合はどうやってそれを知るってのさ。
もしかすると、キリト達が来たときに俺が消えたから何らかの歪みが起こって逆行した、とか。
・・・これ以上考えてもわからないな。
旅の中でゆっくり考えよう。
更新遅くなってすみません。
ユイちゃん登場。どうでしたか?
たぶん皆さんは明日奈登場かと思ったことでしょう。
逆行してきてのは祈り子たち。
念のために言っておきますが無限ループではありません。
ティーダの推測、正解はみなさんはわかるかと。
少なくとも召喚獣の祈り子は逆行しています。
次回はまたもやティーダサイド。
それでは、次回もお楽しみに。