番外編はキリアスユイが全員そろってからにします。
さあ、シンとの戦いだ!
シン。スピラの災害。親父の今の姿。
船の乗組員が慌ててそれぞれの作業を開始する。
乗組員の一人が俺達がいる場所のすぐそばにある砲台に手をかけた。
その照準をシンに向ける。
「そりゃワイヤーフックだろうが!」
ワッカが慌てて止めようとする。
「そんなもん撃ち込んでどうするよ! 船ごと海に引きずり込まれるぞ!」
だが、彼らは止めない。
「シンはキーリカに向かっている! あいつの注意を引き付けたい!」
「キーリカには、俺達の家族がいるんです! 召喚士様、お許しを!」
ユウナは少し迷うそぶりを見せたが、頷いた。
そして、2本のワイヤーが撃ち込まれる。
ワイヤーのフックが当たった場所からコケラくずが飛び散った。
当然のごとく引っ張られる船。
そして、シンの背びれからコケラくずが射出される。
俺達はそれを迎え撃つ。
「ブリザガ! サンダガ!」
「ウォタガ! ファイガ!」
ルールーとユイちゃんが放つ上級魔法がシンやコケラくずに炸裂する。
「うおりゃっ!」
ワッカの投げたボールが次々とコケラくずに当たり倒していく。
「はっ!」
キマリは槍で突いたり斬ったりしてコケラくずを葬る。
「リジェネ! プロテス! ホーリー!」
ユウナは仲間たちに補助をかけ、たまにシンを攻撃。
そして俺は、
「ヘイスガ!」
仲間たちに体感時間加速の補助魔法を使い、
「はぁっ!」
フラタニティでコケラくずを切り捨てていく。
更に、
「「「――――オーバードライブ」」」
俺、ワッカ、ルールーが同時にオーバードライブを発動。
「ワッカ、肩借りるぞ!」
「おう!」
屈んだワッカの肩を踏み台にして飛び上がる俺。
俺が飛び上がった直後、ワッカは自分のボールにエネルギーを込める。
ルールーは目を閉じて集中力を高めている。
――――さあ、親父、喰らえ!
「《エナジーレイン》!」
「《エレメントリール》!」
「《テンプテーション・ファイガ》!」
絶大な威力の攻撃が、シンを襲う。
ワイヤーが切れ、船とシンが切り離される。
そして、そのままシンは進んで・・・いや、潜っていく。
――――やるようになったじゃねぇか。
「――――っ」
親父の声・・・。
シンは去って行った。俺だけに聞こえたメッセージを残して。
・・・やるようになった、か。
「そりゃあ・・・そうッスよ」
あんたが思ってるより戦いを経験してるんだから。
「何がそうなの?」
ユウナにはバッチリ聞かれてたようだ。
「別に。なんでもないッスよ。ちょっと疲れただけ」
その時、再び船を揺れが襲った。
「今度は何だ!?」
ワッカの疑問に、俺は船の下を見る。
・・・拙いな。
「シンのコケラだ! この下にいる!」
あれは前回もいた奴だ。
「水中か。よしティーダ! 行くぞ!」
「おう!」
ワッカと二人で飛び込んだ。
そういえばさっきシンとやりあったときにオーバードライブ使ったな。
少しきつい戦いになるかもしれない。
それでも・・・やるしかない。
そういう意味を込めて俺達は頷きあう。
先制してワッカがブラインアタックを決めた。
ポルト・キーリカ。
俺達はシン、シンのコケラと連続で戦い、疲れ切った状態(特に俺とワッカが)で村へと迎え入れられた。
正直かなりきつい。
それでも前回はこの後に更に仕事が待っていたからな。
異界送りに村の復旧作業。
今回はそれが無いからゆっくり休める。
ただ、船がボロボロだったからいろいろ訊かれ、船員が俺らの戦いぶりを誇張気味に話したため、話をまとめる方に労力を費やすことになってしまった。
とりあえず、疲れもピークに達していたため、日がまだ沈まないうちに休ませてもらった。
・・・なぜかユイちゃんだけがピンピンしていたことを追記しておく。
翌日。俺達は寺院へ行くことになった。
ワッカと俺を含むオーラカは大会の必勝祈願。
ユウナは祈り子との対話。
俺達オーラカはいったん集合して気合を入れる。
ちなみにユウナ達には先に森の入口まで行ってもらってる。
「目標は?」
「「「「「優勝だ!」」」」」
俺の掛け声にみんなが答える。うん、やっぱこれ最高!
ところで、昨日村の老人(長老ではなかった)から気になる話を聞いた。
「いやはや、シンを撃退なさるとは。あなた方と言いあの剣士といい、つわものは存外多い物ですなぁ」
「剣士?」
「ええ、数日前、ここに流されてきたんです。その方がとてつもなく強いそうで」
「強い
「私が見たわけではないのですがキーリカ寺院への階段の途中にシンのコケラが潜伏しておったそうで。剣士の方がその邪魔なコケラを1人で倒してしまったとか。それも数秒で」
「コケラを数秒!? めちゃくちゃ強いッスね」
「あなた方もシンと戦って大怪我を負うこともなく撃退なさったのでしょう? 私どもからしてみれば剣士の方もあなた方も雲の上の存在ですよ」
その剣士は今寺院にいるそうだ。
前回はそんなのなかったし、その剣士ってまた日本から来た人?
ただ、この推測を誰かに言うわけにはいかない。
絶対理由を追及される。
ちなみにその時この話を聞いたのは俺一人。
他のみんなはそれぞれ別の人と話をしていた。
キーリカ寺院へ向かう途中の森、その入り口。
ユウナ、ユイちゃん、ルールー、キマリの4人が待っていた。
ただ、ユウナは少し顔が赤くなってるような気がする。
ついでにユイちゃんが何だかニヤニヤしてるような。
ルールーは思い詰めたようになってるしキマリは相変わらず無表情。
「どうかしたのか?」
気になったのかワッカが訪ねた。
すると、ルールーが訪ねてきたワッカにではなく俺に言う。
「ユウナがね、」
と、そこでルールーはユウナに先をその促す。
それを受け近づいてきたユウナが、
「ガード、お願いしちゃ駄目かな?」
と訊いてきた。
前回と同じだな。と、懐かしむように表情を変えた俺。
それをどう勘違いしたのか、ユウナが慌てだした。
「あ、ガードじゃなくてもいいの! そばにいてくれれば・・・」
「う゛え゜!?」
それを聞いたワッカが、変な声を上げた。
「ちょ、落ち着くッスよユウナ。俺がいつ断るって言ったんスか」
俺がそういうと、ユウナの表情が一気に明るくなった。
「じゃ、じゃあ・・・」
「もちろん、喜んで受けるッスよ。これからよろしく、ユウナ」
「うん! こちらこそよろしく!」
固く握手をする俺とユウナ。
前回よりも早く、俺は正式にユウナのガードになった。
キーリカ寺院へ向かう途中の森。
この森は結構な数の魔物がいるはずなのだが。
前回より少ない。だいたい半分くらいしかいない。
たぶん例の剣士が倒していったんだろう。
コケラを数秒で倒せるのならこの森の魔物なんて屁でもないはずだ。
日本って凄い人が多いんだなあ。
いやまだ日本の人って決まったわけじゃないじゃないか。
でも、そいつがキリトだってことは無いだろう。
だってあいつ剣持ってなかったし。
前回居たオチューは居なかった。
それにオチューが居ないせいか、そこを警備していたルッツとガッタもいない。
やっぱあの剣士が倒したのかな。当然のごとく一人で。
森を抜け、階段の前まで辿り着く。
と、ここでワッカが、
「ふふふふふ・・・」
みんなの前に立っていきなり腕を組み、笑い出した。
「ワッカさん!? 急にどうしたんですか!?」
ユイちゃんが慌てだした。
ワッカはそれを無視して続ける。
(まさか思いやりの件を根に持っていたりしないよな?)
「この石段はな、由緒正しき石段なのだ」
俺以外のオーラカのメンバーたちが腕を組み頷く。
ワッカが続ける。
「オハランド様が現役時代にここでトレーニングしたのだ!」
「「「「ふふふ・・・」」」」
オーラカ一同も含み笑い。
ただしこちらは準備運動をしながら。
「お、勝負ッスね」
俺の言葉を皮切りに選手一同が一列に並ぶ。
「俺に勝てると思ってんの?」
「「「「「ふふふふふふ・・・」」」」」
俺の挑発に含み笑いで答えるワッカ達。
「ユウナ、頼む」
ワッカの頼みでユウナが合図を・・・おっとこの展開は前にもあったぞ?
「よぉい!」
その直後、合図をせずに笑いながら駆け出して行ったユウナ。
「あ!? ずっこい!?」
だが読めてたぜ!
ワッカ達はユウナと同時に俺が駆け出してたことに、一瞬遅れて気付いたようだ。
だが遅い!
「ふっははははははぁ! おっ先ぃ!」
「「「「「んなぁ!?」」」」」
キーリカ寺院に到着。
と、寺院から複数の男達が出てきた。
記憶にある通りの服装。ルカ・ゴワーズだ。
「お前たちも、オハランド様に必勝祈願か?」
「祈願だぁ?」
ワッカの問いに対して向こうは明らかに馬鹿にした口調。
「我らルカ・ゴワーズは常勝だ! 祈願など必要ない!」
「じゃあ、なんでここにいる」
「もっと強いチームが現れるように祈ったのさ。どのチームも弱いったらないぜ」
さて、そろそろだな。
「お前んとこは今回も『精一杯頑張る』ってやつか? そんなチンケな心構えじゃ今年も初戦敗退確実だな」
来た、俺の出番!
「いや、今年は優勝狙いだぜ」
僅かだが殺気を放ちながら言い放つ俺にオーラカメンバーが賛同する。
「お~狙え狙え。狙うだけなら誰でもできる」
「甘いな! 今年のオーラカは今までとは違う!」
「はぁ? 何が違うってんだ?」
「俺がいる! 俺の実力はあんたら全員を纏めたよりも遥かに上だぜ!」
「は、雑魚一人増えた程度で何ができるってんだ。お前なんざ俺の足元にも及ばないだろ」
その顔は明らかに見下している。
親父とは比べ物にならないくらい酷い。
その時、ユイちゃんが突然前に出てきた。
「そんなことありません! ティーダさんの実力は本物です!」
ユイちゃんにはたびたび驚かされる。
「ほう、生意気なガキだな。年長者に対する礼儀ってもんを教えてやろうか?」
今のが相当気に障ったらしいゴワーズのリーダーがユイちゃんに詰め寄り、手をかけようとする。
が。
次の瞬間、キマリの槍がそいつの首筋に突き付けられた
「これ以上は許さん。何も言わずにここから去れ」
「っ。ロンゾには勝てねぇか。仕方ねぇ」
そうして、ゴワーズは去って行った。
「ユイちゃん、大丈夫だった?」
ユウナに撫でられているユイちゃんはさっきのせいか少し震えていた。
「大丈夫です。それより、早く行きましょう」
そう言って駆け出そうとした矢先に転んでしまう。
ユイちゃんには怖いだけのことだったし、無理もないだろう。
「ユイちゃん、俺がおぶってやるよ」
ワッカの申し出に、
「いえ、大丈夫です!」
きっぱり断ったユイちゃんは『迷惑をかけたくない』という顔をしていた。
寺院の中に入り、大召喚士オハランド像の前に行く。
「オハランド様・・・なにとぞ、お力を」
オーラカ一同と俺は、像の前に座り、祈りを捧げた。
と、試練の間から現れたのは一人の召喚士と一人のガード。
ドナとバルテロだな。
「あなたも召喚士?」
ドナがユウナに訊いた。
「はい、ビサイド島より参りました。ユウナと申します」
「ドナよ。貴女が大召喚士ブラスカ様の娘ね。血統書付きの召喚士様でしょう?」
血統書、という言い方が獣に言っているようでイラつく。
「あらあらあらあら・・・この人たち、全員貴女のガード?ぞろぞろとみっともないわね」
ユイちゃんが嫌そうな顔をするのが見えた。
「ブラスカ様のガードは二人きりだったはずよ。ガードは質より量。数に頼るなんて浅はかね」
「そんなことないです!」
再びユイちゃんが叫んだ。
真剣に驚いた顔をするドナ。バルテロは無表情のままだ。
「ルールーさんもワッカさんもキマリさんもティーダさんも! みんな強い人なんです! 数が多いからって質が悪いなんてことは無いです! このメンバーでシンを撃退したんですから!」
「・・・」
黙り込むドナ。バルテロは眉一つ動かさない。
流石にドナは子供に当たるほどの屑ではないようで、
「・・・お互い、頑張りましょう」
と、先ほどまでの嫌味を引っ込めて去って行った。
「う・・・」
「ユイちゃん、本当に大丈夫?」
具合が悪そうなユイちゃんにユウナが声をかける。
「すみません、大丈夫じゃなさそうです」
ユイちゃんは精神ダメージがそのまま体に出たように疲れ果てている。
いや、実際その通りなのかもしれないな。
とりあえず、ダット達にユイちゃんを預け、俺達は試練の間へと向かった。
ユウナがイフリートとの契約を完了させ、全員で寺院の外に出る。
ちなみにユイちゃんはワッカの背中で寝ている。
無理して自分で歩こうとしていたため皆で説得し、こういう形で落ち着いてもらった。
それでも無理して起きていようとしたが、結局眠気には勝てなかったようで。
外に出ると、老人と青年が話していた。
ちょうど話が終わったところのようで、老人は森の方へ引き返し、青年は寺院へ、つまり俺達の方へ向かって来る。
その顔に見覚えがあった。
「キリト! 無事だったんスね!」
「! ティーダ! お前も無事だったか!」
再会を喜び合う俺達。
「んぅ・・・?」
その声に、ユイちゃんが目を覚ました。
「あ、ユイちゃん、起きた?」
ユウナが声をかける。
その言葉を聞きつけたキリトの目がワッカの背中に向かう。
次の瞬間、その目が大きく見開かれた。
「ユイ!?」
「え・・・?」
キリトがユイちゃんの名前を呼び、それに反応したユイちゃんの目も見開かれた。
「・・・ぱ・・・」
その口が動き、
「なに?」
と、ユウナが確かめようとしたとき、ものすごい速さでユイちゃんがワッカの背から飛び降り、ユウナを押しのけて、
「パパ~~~!!」
キリトに飛びついた。
・・・ん?・・・ぱ、ぱ?・・・え゜?
『ええええぇぇぇぇぇぇ~~~~!!?』
その場に居合わせた全員の驚愕の叫びが響き渡った。
今回も長かったぜ。
水中のコケラ戦はブラインアタックとディレイアタックの連続ハメ。
バスターではなくアタックなのは直前のシン戦で疲労していたからです。
割愛してすみません。
ティーダが老人から聞いた剣士はキリト。
コケラはスターバーストストリームで神速撃破。
詳細については次回で。
ユイちゃんはメンタルケアプログラムの力である程度感情がわかります。
これはユイちゃん専用のトリップ特典だと考えてください。
ALO編以降では消失していた能力です。メンタルモニタ能力。
ユイちゃんの疲労に対するティーダの推測は正解。
普通に疲れることは無いけど精神の疲労がそのまま体にも出てしまう。
この疲れには回復魔法は効きません。なにせ心の疲れなので。
ワッカのおぶってやるという申し出を断ったのは決して彼が嫌われているわけではないです。
ただ迷惑をかけたくなかっただけなのです。
もっとも、みんなは迷惑だとは思ってませんが。
試練の間は割愛。
キリトがパパなことに驚いた理由?
そりゃキリトが若すぎるからでしょ。
ちなみに何人かの現地人もその場にいました。
次回はようやくキリトサイドの予定。
長らくお待たせいたしました!
それではまた次回!