とあるモブ死神だった奴の話 作:ピューレッド
東流魂街七十六地区 逆骨。
あまり治安のいい所ではなく古びた家が立ち並び貧しい人々が暮らす所だが俺が育ってきた土地だ。
少しは愛着が湧くのは当然であろう。
俺にとっては貴族のボンボンが集まる学校よりかは居心地が良い。
ミミハギ様とかいう訳わかんない神様がまつられたりしているがそんなこと俺は一寸も信じてはいない。
昔に病が和らいだなんて話があったらしいが、本当かどうかは定かではない。
神に祈る暇があったら鍛練でもしてた方がよっぽど気休めになる。
今にも雨が降りそうで時より雷が一瞬閃めいては数秒遅れでゴロゴロと地響きのごとく音を鳴らす今日、死神として、護廷十三隊の一員としてこのさびれた土地から旅立つ。
真央霊術院を卒業し、正式に与えられたまだまだ綺麗な斬魄刀を左腰に居心地悪そうに携え、目の前の小さく可愛らしい老婆の頭より深く頭を下げる。
「ばあちゃん。今日までお世話になりました」
ばあちゃんは親のような存在で俺の死神としての才を見抜き真央霊術院へ行くことを薦めてくれた。
別に俺は死神になりたかった訳ではなかったが、死神になってばあちゃんの暮らしを楽にしてやりたかった。
だから入学試験を受けそれに見事合格したが、戦うことは怖いし死ぬのも怖い。
所謂臆病者である俺は、命の危機なく金が欲しかったのだ。なので四番隊に入隊を志願した。
なぜなら、四番隊は護廷十三隊唯一の救護を主とする所だからだ。
これを知った時はここしかないと思いひたすら鬼道に打ちこみ、そのおかげで鬼道の成績は一番だった。
また、念のため虚などの危険から逃げるために歩法に磨きをかけ学校では一番瞬歩が早かった。
更に、四番隊以外から目を付けられても困るため斬術と白打はわざと手を抜き悪目立ちしないようにした。
そう偉そうに手を抜いたと言っても元々成績が良い訳ではなかった。
なので上の2つに関しては落第すれすれを攻めていた。
ここまでする必要ないと思うが、念には念をである。
おかげで十一番隊志望の奴らからは完全に腑抜け扱いである。まあ、あながち間違いではないけど……
全ては四番隊に入るため。危険なく安全に金を稼ぐため。ばあちゃんに楽させるため。
その甲斐あってか見事四番隊に入隊を果たすことができた。
「茜二、こんなに立派になって。気をつけて行ってくるんだよ。なにかあったらいつでも帰ってきなさいね」
俺の親代わりとして育ててくれたばあちゃんのためになんとしてでも恩返しがしたい。
「うん。さっさと席官に昇格してお金いっぱい稼いで必ず戻ってくるよ。」
そうして俺は瀞霊廷へと歩みを進める。
「あんな小かったのに本当に立派になって。」
老婆は新品の死覇装に包まれた大きくなった背中を見て消えるような息でつぶやく。
老婆の心の中に嬉しいような寂しいような、はたまたほっとしたような複雑な感情が蠢く。
そういえば茜二と初めて出会った時もこんな雷が鳴った日だった。
老婆は今の空模様を見て不意にそんなことを思いだし懐かしむ。
「貴女との約束は確かに守りましたよ。後はあの子次第、見守ってあげて下さいね。」
老婆は誰もいない虚空へとつぶやく。
まだ頼りなく緊張して強張った、しかしやる気に満ちた後ろ姿を見えなくなるまで眺めていた。
--------ー--------ー--------
今俺は貴族街のある屋敷の前にいる。何回来てもやはり落ち着かない。流魂街の七十六地区と比べれば天と地ほどの差だ。当たり前のことだろう。こんな居心地の悪い場所にいるのはちゃんと理由がある。門の前で待つこと30分やっと戸が空いた。間新しい黒い着物の間からたわわな胸を覗かせる。スタイルが無駄に良く品のある香りが辺りにふわっと立ち込める。その人物は俺を見つけなんとも偉そうな口調で言う。
「おはよう茜二。昨日は良く眠れたかしら?」
「はぁー、遅いよ純連、30分も遅れてる。」
共に四番隊に入隊する真央霊術院の同級生、坂上純連に文句を言う。
「うるさいわね。女の子は準備に時間がかかるのよ?そんなちっさいこと言ってたら彼女なんて一生できないわよ。」
「やかましいわ。ほっとけ!」
純連は真央霊術院を主席で卒業した秀才である。特に剣術は天才的であり、当たり前の如く飛び級してきた。俺より2歳下であるが年上にも物怖じせず接するところに毎回関心する。色々な隊から引く手数多で、あのエリート集団の一番隊からも推薦が来ていたほど。何故四番隊なのかは謎だが彼女にも事情があってのことだろうと気を利かせ詮索はよしている。
「早く行きましょ?初日から遅刻なんて私嫌よ?」
「いや、もう、色々ツッコミどころあるけど時間ヤバいし行こうか・・・」
早々にツッコミを放棄した俺は隣の上級貴族のお嬢様と急ぎ足で四番隊舎へ向かう。純連といると退屈しないのでこんな何気ないやりとりも好きだったりする。
「アンタなににやけてんのよ、気持ち悪いわね。私のつてで良い医者紹介するわよ。あたまの。」
「はいはいお気遣いどーも。」
「なによ、もう少しのってくれたっていいじゃない」
横でプンスカ怒る純連は頬を膨らませる。あざとい。しかし可愛い。無駄にスペックが高いのがムカつくが文句を付けられないのも事実。もっとブサイクだったら絡みやすいのに突き抜けて美人なもんだから友達が少ないらしい。世の中の美人やイケメンも思いの外大変なのかもしれない、と俺の右側で優雅に走っている頬を膨らませても尚美しい横顔に哀れみな感情を向け前に向き直る。
「今失礼な事考えたわね?」
「いえいえとんでもございません。さっ、純連お嬢様、先を急ぎますよ。」
「まあいいわ。今回は流してあげる。」
ジト目で見られながら俺はスピードを上げて先を急いだ。
しばらくして四番隊舎が見えてきた。四番隊は仕事柄、一番給料が低いらしいが想像よりも立派な建物が建っている。
「ふ〜ん。思ったよりまともね。小さくて古臭かったらどうしようかと不安だったけれど、まあ許容範囲ね。」
「そうでございますか.・・・」
俺は予想通りの言葉を聞いても尚こいつの地位の高さに呆れた。
「なによその目は。なんか文句でもある訳?」
「なんでもないよ。」
俺は少々呆れ気味に言う。もう大抵のことは慣れている。いちいちこんなんで驚いてられない。そんなやりとりをする間に四番隊舎に到着した。やっと実感が湧いてきて少しドキドキする。しかし、純連は澄ました顔で門の前に立っている隊士へ向かって淡々としかし上品に話しかける。
「おはようございます。本日より四番隊へ配属となりました、坂上純連です。」
「おはようございます。同じく本日よりこちらへ配属となります東雲茜二です。」
俺も純連に続き慌てて挨拶する。門の前にいた隊士はさっきまで強張っていた顔を綻ばせる。
「ようこそ、四番隊へ。君が坂上君か。話には聞いているよ。これから入隊式があるから第三隊舎へ移動してもらう。ついてきてくれ。」
さらっと俺はスルーされたのに少し傷つきつつも先輩隊士について行く。いくつかの建物を過ぎ、これまでで見た一番小さな建物へと入ってゆく。小さいと言っても中は十分な広さがあり中にはもう既に何人かの新入隊士が集まっていた。
「君達で最後だ。もう少しで始まるはずから少し待機していてくれ。」
そう言って先輩隊士は第三隊舎を後にする。そして俺たちが建物の中心へと
歩を進めると純連に気がついたのか新入隊士がざわつきだす。
「なんで剣姫様がこんなところにいるんだよ」
「一番隊じゃなかったのか?」
「キャー!剣姫様!今日も麗しいわ!」
「はぁはぁ、すみれたんに踏まれたいぉ。はぁはぁ」
チョロっとヤバそうな声が聞こえてきたりするが、ほとんど皆驚きの声をあげていて、意外にも女性人気もあり甲高いキャーキャーとした声を発している女性隊士も多い。
その後、入隊式は何事もなく進み今日は解散となって俺は純連と帰路についている。これから数ヶ月間研修期間に入るが先は不安だらけである。
「じゃ、俺の宿舎はあっちだから」
「あら、すっかり忘れていたわ。普通は宿舎で生活するのよね。また明日ね。」
純連は貴族のため自宅から通うことが許されているのでそのまま家に帰るのだ。何かあるたびにつくづく家の格の違いを見せつけられる。
「そうだよ。じゃあな。」
そう短く言葉を告げ俺は宿舎へ向かい歩き出す。
「私がいなくても寂しくて泣いちゃダメよー」
「うっせぇー!早く帰れバカ純連!」
振り返ると純連が俺をバカにしたような顔でニシシとにやけていたので、ムカついて足を早める。空を見上げると朝の曇天がすっかりと晴れ渡りなんだかいい気持ちになった。
主人公の名前は読みにくいと思いますが(しののめ せんじ)です。
初めての二次創作なのであんまり期待しないでみてくださいね
一応完結まで大まかなストーリーは完成させているのでぼちぼち投稿していきやす。
感想まってます。