とあるモブ死神だった奴の話   作:ピューレッド

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身分不相応

 

 

 「閃け、九泉雷公」

 

 刹那、俺の体に青白い稲妻が走ると思いっきり地面を蹴る。地面が抉れるほどの出力が発生すると、俺の体は弾丸のように虚に向かって弾け飛ぶ。

 

 「っ!」

 

 俺はあまりのパワーに動揺するがもう止められない。覚悟を決めると虚を見据え通りざまに左腰から右肩へ、斜め上に一閃。雷を纏った斬魄刀はいとも容易く虚の体を大きく切り裂く。思いっきり振り上げたので思わず体が捻れて体勢を崩す。全く抵抗を感じなかった俺は心中で叫ぶ。

 

 (こんなに切れるなんて聞いてねえ!というかどうやって止まるのこれ、このままじゃ木に激突しちゃう!やばいよ、どーすればいいの!)

 

 『残念じゃがこのままぶつかるしかないのう。分かっていると思うがわしの力は、雷を利用して主の筋肉を強制的に伸縮させて身体能力を引き上げること。いきなり全開で行くとは、当然体が持たんじゃろ。現に主様よ、主の両脚の筋肉はボロボロ。腱に至っては全部切れておるぞ?』

 

 無情にも淡々と答える九泉雷公さん。いつも通りのやれやれといった感じが目に浮かぶ。

 

 そんな中、超高速で体勢を崩しながら吹っ飛ぶカオスすぎる状況の俺は覚悟を決める。

 

 「縛道の三十七!つりぼしぃ〜!!いけ〜!お前だけが頼りなんだよ!絶対に破……」

 

 俺はなけなしの霊力を使って木々の間に吊星のネットを張ると、言葉の途中で勢いよく頭からの突っ込む。ビヨーンと木々もろとも大きくしなると衝撃に耐えられなかったのか木は根元から折れる。さらに俺は吹っ飛び続け数メートルの木に頭をぶつけてようやく止まる。

 

 吊星が消えて俺は仰向けのまま目を開ける。どうやら命拾いしたらしい。もう霊力は正真正銘の空だ。頭も痛いし脚だって動かせない。どうやら、脚だけではなく意外と全身に負担がきているようだ。今は指一本動かせる気がしない。しかし俺は右手に握られた斬魄刀を持つ力だけは緩めない。

 

 「にしてもすごい能力だなあ、これ。俺にこいつは勿体ないくらいくらいにすごい」

 

 俺は斬魄刀に目玉をむけながら呟く。彼女曰く、俺たち生物は基本的に身体を壊さないように力をセーブしているらしい。

 

筋肉とは脳から発せられる電気信号で伸び縮みしているらしいのだが、これを脳からの電気信号ではなく、彼女の雷を使って行うことによって力の制限なく身体能力を引き出せるという仕組みだ。

 

わかりやすく言えば、感電するとよく体が勝手にビクビクと動くことがあるだろうけど、それを意図的に操作して体を動かすという感じだろうか?

 

また他にも、見えるんだけどわかってはいるけど体が動かない、もしくは体が追いつかないなんてことも無くなるということだ。

 

高速の戦闘になるにつれて、目で見て、頭が処理して、指示を送って、体を動かすということをやっていると、だんだん体が追いつかなくなる。そんな時に視覚の情報から直接行動に繋げることができる彼女が重宝されるのではないかと思う。

 

 「おいおぬし、生きておるか?」

 

 すると俺に、褐色の肌をし隊長羽織を着てまるで猫の耳のようにピョコッと外に跳ねた俺と近い髪色の女性が話しかける。そんな女性を俺は当然知っていた。

 

 「四楓院隊長?何故このようなところへいらっしゃっているのですか?」

 

 内心は驚きの連鎖で弾けているが、疲れすぎて表に出すことができない。

 

 「そうか、まだ意識がはっきりとしておるようじゃの。わしのことは後で良い。あの改造虚をやったのはお主か?」

 

 四楓院隊長は真剣な眼差しで俺を見ると地に膝をつけて俺の顔を覗き込む。

 

 「は、はい。そうです。奴は俺一人でやりました。それがどうか?」

 

 (近い!近い!かわいい!肌綺麗!近い!いい匂い!)

 

 疲れのあまり無反応でいられる俺はラッキーなのかもしれないな。と、煩悩が支配する間にも続け様に質問がとんでくる。

 

 「そうかそうか、おぬしかなり腕が立つようじゃな。おっと、言い忘れておった。砕蜂を救ってもろうて感謝する、四番隊よ。奴はまだ若いが大切な部下じゃ」

 

 砕蜂?あのおかっぱ少女のことだろうか?四楓院隊長が頭を下げるなんて、よっぽど大切なんだろうな。

 

 「いえいえとんでもない。頭を上げてくださいよ。ついでに助けただけですから。」

 

 「そうか。じゃが、この恩はいつか返させてもらおう。お主、名は?」

 

 四楓院隊長はニカっと笑うと俺に名を聞いてくる。途切れそうな意識を必死に繋ぎ止める。

 

 「俺の名は…東雲茜二です……」

 

 「茜二か、覚えておこう。っておぬし!大丈夫か⁉︎おい……!」

 

 ここが途切れた記憶の最後となった。

 

 

 

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 目が覚めると暗い天井。幾度となく使ってきたが実際寝るのは初めてのベッドから体を起こす。

 

 「イテテテ。反動で筋肉がやばいなこれ」

 

 すぐさま再び枕に頭を預ければ椅子に座って寝息を立てている奴が一人。純連は綺麗な顔を掛け布団に押しつけてヨダレを垂らしている。やっぱり子供だなと頭を撫でれば気持ちよさそうな顔をする。

 

 「カワイイやつめ‥‥‥」

 

 しばらく白い頭を撫ででいると、入り口が開いて誰か一人入ってくる。

 

 「おや?ようやく目が覚めたようですね。体調の程はいかがですか?」

 

 卯ノ花隊長は純連の隣に立つと灯りをつけて俺に問う。

 

 「だいぶ良くなりました。ご心配をお掛けして申し訳ありません」

 

 「無事に帰ってきたならばいいのですよ。私よりも彼女の方がずっと心配していたのですよ。三日間あなたは眠っていましたが毎日ここは通っていました。あなたが運ばれてきた時なんかはかなりの乱れようでした。そのくらい心配だったのでしょう。目が覚めたらお礼を言っておきなさい。任務の詳細は後ほどにしましょう。今はゆっくりとお休みなさい」

 

 そう言って再び灯りを消すと外へ出て行く。純連が起きる様子もないしもう一眠りするとしよう。

 

 しばらくして再び目が覚めると、窓からは明るい日差しが流れ込んでいる。横にいた純連は、椅子を残して居なくなっており仕事に行ったのだろうと思われる。

 

 起き上がろうとすれば何やら布団に違和感を感じる。何故か布団が盛り上がっており、かなり恐怖を感じる。恐る恐るめくってみれば、そこには俺の斬魄刀、九泉雷公さんが俺の体にしがみつき気持ちよさそうに寝息を立てているではないか。

 

 「おおぅ‥……どういう状況だこれ?」

 

 寝起きというのもあり、頭の中が混乱でグルグルしていると銀髪幼女は目を覚ます。

 

 「ん〜………おきたのか主様よ。四日も眠りこけおって、本当に心配させるのが好きなようじゃの?」

 

 寝起きの舌足らずで言うロリ鬼は、はだけた着物も改めずに俺の胸へと顔をマーキングをするかのようにグリグリと擦り付ける。

 

 「具象化までしてどうしたの?随分と態度が違うじゃないか」

 

 俺はどうしていいか分からずに取り敢えずサラサラとした銀髪を梳かすようにして撫でる。側から見れば完全にロリコンであるが俺はそれに気づくことはない。

 

 「当たり前ではないか?わしは主様だけのために力を振るいたいのじゃ。それをばあちゃんのためとかなんとかいつも主様は他人のために力を使おうとする。どれだけお人好しなのじゃ。わしの気持ちを早く理解して欲しくてあのような態度をとっていたのじゃが、主様ときたら全く気付かないではないかこのたわけが」

 

 かなりきついことを言われている俺だが全く傷つかないのは当然。俺が頭を撫でて気持ち良さそうな甘ったるい声で言われては効果がないのは明白。

 

 「それよりもうそろそろ起きたいんだけどさ‥…」

 

 「嫌じゃ!わしは退かぬぞ!やっと気持ちが通じ合ったのじゃ!何十年と待ち続けたわしの気持ちを考えてみぃ?もう少しこうして撫ででもらっても罰は当たるまいて。早う手を動かすのじゃ」

 

 幼女はぎゅっと力を入れて抱きつくと俺は思わず考える。確かに俺の至らなさ故、彼女には辛い思いをさせてしまった。今しばらくは彼女の言うことを聞いてもいいかもしれない。そう思って頭を撫でるのを再開する。

 

 「そういえば褒美が欲しいのじゃ。先の戦いで勝てたのはわしのお陰であろう?少しは褒美をくれても良いのではないか?」

 

 「確かにな……今回は完全にお前のおかげだよ。って、そんな期待の眼差しを向けられても大したことは出来ないからな?褒美に何が欲しいんだ?」

 

 そう答えてあげると鬼はニコッと本当に嬉しそうな笑顔をする。あんなに無表情だったのにこんな笑顔ができるとは……良い誤算であってよかったとつくづく思う。

 

 「そ、それじゃあのう、その、わしを抱きしめて欲しいのじゃ……」

 

 恥ずかしそうにもじもじとする様はなんとも愛らしく、態度の急変から考えるにほんとにいろいろ耐えていたんだなと申し訳なく思ってしまう。

 

 「しょうがないなお前は」

 

 膝の上の彼女の背後に手を回し優しく小さな身体を抱きしめれば、耳元で可愛い声を漏らす。しかし次の瞬間、何故かいつもの鋭い雰囲気に戻ると部屋の入り口に目を向けて俺の腕を振り解く。

 

 「茜二?やっと起きたのね⁉︎もう本当に心配したんだから……って何よその幼女は⁉︎ベットで抱き合っているなんて、は…破廉恥だわ!恥を知りなさい!」

 

 純連は泣きそうで嬉しいそうな顔から一転、九泉雷公を見つけプンスカと怒る彼女はズンズンとこちらへ歩いてくる。

 

 「いや、違うんだ。こいつは俺の斬魄刀で、決していやらしいことをしていたわけではなく、褒美をやっていたんだ!」

 

 そう言って彼女を紹介すると純連は九泉雷公を見つめて何やら敵対心剥き出しで互いに睨み合う。

 

 「そうじゃ。わしと主様は一心同体。このくらいの触れ合いはしとかねばいざと言う時に力を発揮できまいて?」

 

 「ふぅ〜ん?そう言うことなのね?でも私は茜二が小さい頃から知っているのよ?ずーっと一緒に頑張ってきたんだから!」

 

 「いやいや、過去などどうでも良いことを誇るな小娘。大切なのは今、長さではなく質なのじゃよ?」

 

 「いいえ違うわ!質ではなく量よ!長い時間こそが深い関係を築き上げるのよ!」

 

 なにやら俺を無視して言い合いになっている。いい加減静かにしないと怒られるのでは?

 

 「あの〜、二人とも。仲良いのはわかるんだけどもう少し静かに……」

 

 『アンタ(主様)は黙ってなさい(おれ)!』

 

 「ハイ……なんか……ごめん」

 

 気迫のこもった二人は再び議論を始めるが次の瞬間、二人よりももっと強大な黒の波動が言葉を止める。

 

 「あなたたち?ここは病室ですよ?元気があるのは結構ですが、これ以上続くならば私がお相手致しましょう。」

 

 卯ノ花隊長は笑っているが、目だけは笑っておらず空気がズシンと重くなる。

 

 「あ⁉︎そうだ私仕事がまだ残ってたんだった!急いでやらなくちゃ!じゃあね茜二!また来るわよ!」

 

 「フン。所詮は小娘。わしの勝ちじゃな?ではそろそろわしも戻るとしよう。続きは夜に、の?」

 

 二人とも急いでその場を去れば卯ノ花隊長がやれやれとベット横の椅子に座る。

 

 「さっきのは斬魄刀の具象化ですね?先の戦いで始解を身につけてもうそこまでいったのですか?」

 

 「はい。急にこいつの性格が変わりまして……気分屋なんですよ」

 

 「そうですか……かなり時間がかかりましたが、取り敢えずこれで一安心ですね?それではそろそろ調査内容を報告していただけますか?」

 

 「わかりました……」

 

 集落の様子。虚の強さ、違和感を事細かに説明すると卯ノ花隊長は悲しそうに頷きながら静かに聞く。

 

 「そうですか‥…大切な方を失って辛かったでしょう。現在二番隊が集落の片付けと遺体を埋葬しているところです。貴方の家族だけは四番隊で預からせていただきましたので安心なさい」

 

 「そう、ですか。お気遣いありがとうございます。これでゆっくりと最後の挨拶ができます」

 

 お礼を言うと俺は気持ちを整える。あの夜、魂に誓った決意を言わなければならない。

 

 「卯ノ花隊長。俺、四番隊を辞めます。」

 

 卯ノ花隊長は全く動じない。まるで元から分かっていたかのように。

 

 「そうですか。辞めたとして、それから貴方はどうするのですか?」

 

 「俺は、ばあちゃんが死んだ原因となった魂魄消失事件とあの改造虚の謎を追います。そして犯人を必ず捉えて俺は罪を償わせたい。俺はそう誓ったんです」

 

 卯ノ花隊長はしばらく口を開かない。

 

 「四番隊を抜けるのは構いません。しかし貴方は私の弟子です。どうしても旅立つと言うのならば私の全てを貴方に教えてからです。まだまだ貴方は弱い。始解を会得したくらいで慢心してはなりません。相手は強大、かなりの力をつけなければ到底立ち向かえない事は自明の理。私に覚悟を見せてください。話はそれからです」

 

 卯ノ花隊長に正論を言われて俺は押し黙る。確かに相手は強かった。このまま旅立ってもすぐにやられて無駄に命を落とすだけだろう。

 

 「わかりました。ではどのようにしたら認めて貰えるのでしょうか?」

 

 瞬間、卯ノ花隊長の雰囲気がガラッと変わる。穏やかだったのが息を潜め、漂うのは改造虚と戦った時に感じた獣のそれ。俺は暑くもないのにダラダラと汗を垂らす。

 

 「十年以内に卍解を会得する事。それと私が剣を教えます。それで私に覚悟を示しなさい。出来なかったら四番隊に止まってもらいますよ。いいですね?」

 

 「わかりました。お願いします。」

 

 「よろしい。では、その傷が癒えたら早速開始といきましょうか。前にも言いましたが今はゆっくりお休みなさい。話はそれからです」

 

 そうして部屋から出て行く卯ノ花隊長の背は鬼神の如き迫力だった。

 

 

 

 

 

 

 




 斬魄刀の解説難しい。
 筋肉に電気を流してその硬直を使って制限なく力を引き出します。電気治療などで身体に電気を流すとビクビクって勝手に動いてしまうアレです。ですから、思いっきり地面を蹴って高速で進むとか、思いっきり斬魄刀を振り下ろすとか、直線的動きしかできません。しかも吹っ飛んだら止まる方法がないので現段階では全力でやったりすると身体が耐えきれないし壁や木に激突してしまいますね。
 握力なども強化できたり汎用性は高いのでいろいろな戦い方ができると思います。
 説明下手ですみません。分かりづらかったら改めて説明しますので遠慮なく言ってください。
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