ムシャクシャして書いた、後悔はしていない。
狭くて小汚い部屋。
外側の壁は潮風のせいで錆びて余計に汚さを増している。
そこのリビングにて、一人の男がテレビを見ていた。
戦車道関連のニュースだった。
テレビに映っているのは最近そこかしこで話題を呼んでいる日本の学校、確か大洗と言ったか。
まぁそいつらはニュースに拠れば数々の強豪校を破り、勝利を手にしていると言う。
こちらにはあまり関係の無いニュースだが、情報源がこれとラジオしかないのだから、大人しくテレビを見るしかない。
アンテナがあるのでテレビは見られるのだが、WiFiの契約はしておらず、ネットは使えない。
テレビをつけっぱなしにしながらハンガーに掛けてあったTシャツと黒のバイカージャケットを身に付け、冷蔵庫を開ける。
中にあったサンドウィッチを取り出し、そのまま食べる。
やっぱり冷たい。
暖かい飯が食べたくなるがコンロも電子レンジも無いのでしょうがない。
「……
「まだそんな事を言ってるのか? いい加減慣れろよ、兄弟」
突然上から声が聞こえて来たかと思うと天井のハッチが開き、梯子が降りてきた。
そこから降りてきたのはダボダボのツナギ姿の女だった。
この光景にはもう慣れているので今更何を言うまでもない。
ツナギ姿の女、ケティはズカズカと俺の家に踏み入り、薄汚いソファに座っていた俺の隣に座った。
ケティの方を見やると何やら意味深な笑みを浮かべている。
こういう顔をしている時は、大抵ろくな事を考えていない。
「で、何の用だ」
「
「だからそれは無理だって言ってるだろう。 そもそも車両が無い」
「最後まで話を聞けって!その事だが、手に入ったんだよ!車両が!」
その言葉を聞いた瞬間、俺は立ち上がってケティに詰め寄る。
金を手っ取り早く稼ぐ方法にはメタルストームへの参加があったが、如何せん車両が無かったせいで今まで選択肢から外していたのだ。
メタルストームは取り敢えず車両さえあれば参加は可能だ。
車両が手に入っただけでも大きな進歩と言える。
「本当か!?何両だ?」
「三両だ。 ウチの野郎共をかき集めれば搭乗員はちょうど足りると思うぜ」
「一応確認するが三両とも動くんだろうな?」
「安心しろ、どれも損傷が少なく綺麗な状態だったから少し修理しただけで動いたぞ」
何たる僥倖か、と俺は内心歓喜した。
まともに動く車両が三両も見つかったのだ。
これ程の幸運はそう起こるものではない。
そこら中を探したとしても見つかるのはジャンクヤードに積み上げられているような鉄屑しかない。
早速手に入れた車両を確認したいとケティを急かす。
「まぁ落ち着けって。 これからお前を連れて見に行く所だったんだ」
「なら善は急げだ。 行くぞ」
家の扉を開け、外に出る。
ドアを開けた瞬間に吹き込んでくる潮風が心地よい。
天気は晴天。
外出するにはうってつけの天気だ。
俺の家はここの端っこに建てられているため、家を出て直ぐに海が見える。
景色がいいのは結構だが潮風で建材が傷むのは少し困る。
ケティを連れ、俺は三両を保管しているガレージへと急いで向かった。
住宅街を抜け、商店街を抜け、更に暫く歩くと着いたのはケティとその仲間達が営んでいる修理屋の工房だった。
とはいえ店の業績はあまり良くはないが。
精々来るのは中古車の修理の依頼位だ。
「こっちだ」
ケティの後に着いていき、店の裏手にある大きなガレージの前に立つ。
「俺達が手に入れた戦利品はこれだ!」
そう言いながらケティはシャッターを開き、俺にその中を見せた。
外から日光が差し込み、その全容を顕にした車両を見て俺は感嘆の声を漏らした。
「確かに、これは凄いな……」
目の前に鎮座する三両の戦車。
どれも新品同様に綺麗で日光に照らされた緑の塗装が輝いている。
そこら辺で拾って来たとは思えない程の状態の良さに言葉が出ない。
感動する俺をよそにケティは一番左にある車両から順番に説明していく。
「一番左にあるコイツは『PT-76B』。 スタビライザーは健在だ。 サーマルと暗視装置は無いがな」
「で真ん中のコイツは今回の主役といっても過言じゃねぇ。 『T-55AM1』だ!コッチはスタビライザーだけじゃなくて他の電子機器等の装備品も全部生きてる」
「そして最後のデカブツはObject 120だ!砲身はデカすぎてガレージに収まりきらなかったから外してある」
ケティが車両の解説を行っている中、俺は既に自分が乗る車両を決めていた。
勿論T-55AM1だ。
メタルストームでは俺は隊長になるだろう。
ならば一番性能の安定しているこれに乗るべきだ。 そう思った。
日常では触れることのなかった戦車が目の前にある。
それだけでも充分感動モノなのにそれに乗って戦えると来たもんだ。
幸福感に満たされながらT-55AM1に歩み寄り、正面装甲に手を触れる。
冷たく、そして頼りがいのある装甲だ。
まぁ現代の戦車の砲弾からは守ってくれないだろうが。
装甲に手を触れながらケティの方を向き、俺は言った。
「それじゃあ、俺達の戦車道を始めるとするか」
「おう、もう部隊登録の手続きは終わらせておいたから安心しろよ。 勿論お前が隊長だ!」
全ては、この三両から始まった。