模擬戦が始まってからもうそれなりに時間が経った。
撃破されたPT-76Bは既にこの場から離れているので今は俺達とObject 120だけの場所となっている。
戦況が動く気配は無く、俺達は何処にいるかも分からない敵と睨み合いを続けていた。
この気を抜きたくても抜けない状況に仲間達も焦りが顔に出てきている。
「……そろそろ動いた方がよくないか?」
ケティの提案に俺は決心してようやく頷いた。
「一か八かだ、あそこにある左の道を通ってその先にある小さな丘の上に向かう」
指示通り、イーライは車両を動かし、山道を通って分かれ道を左に曲がる。
右側の森の中から撃たれないように祈りながら辺りに目を凝らす。
無限軌道が時々小石を踏んで砕ける音にすら過敏に反応してしまう。
車内は終始無言で聞こえて来るのはエンジンと無限軌道の駆動音と吹き付ける風の音だけだった。
人間そう長く集中力を保つのは容易ではない。
注意力が散漫になり、索敵が杜撰になってきた。
あの長きに渡る睨み合いで気付かない間に疲労を溜め込んでいたのが仇となったようだ。
だが、そんな俺でも見つけられた異変があった。
「……!イーライ!停車しろ!」
「どうした?」
車両が止まると俺は先程異変が発生した場所を注意深く見る。
あの時、確かにあそこにある木の一本が不自然に揺れたのだ。
風によるものではない。
まるで何かがぶつかったような揺れ方をしていた。
間違いない、あそこにいる。
そう確信し、より目を凝らすと遂にそれは姿を現した。
遠くからでハッキリとは見えず、時々木々の間に隠れるが確かにそこにいる。
「見つけたぞ!ケティ、2時の方角だ!見えるか?」
「どれどれ……いた!見えるぞ!」
「良し、撃て!」
森の中を走る敵に向かってT-55AM-1に搭載された100mm D-10T2SからAPFSDSが放たれた。
高初速のAPFSDSはあっという間に遠くにいたObject 120を捉え、着弾する。
しかし、敵車両に模擬弾が着弾した様子は無かった。
もう一度双眼鏡でよく見てみると、砲弾は僅かにズレて敵車両を通り過ぎて奥の地面に着弾していた。
「仰角を上げすぎちまった!」
自らが犯した致命的なミスにケティは頭を抱えて唸る。
こうなってしまった以上、逃げようとしたところで奴の的になるのは想像に難くない。
現に、こちらの発砲炎に気付いた敵は砲塔を回転させて反撃しようとしている。
「こうなったらもう突撃だ! 一気に間合いを詰めるぞ!」
最早正攻法などかなぐり捨てて、被弾覚悟の突撃を敢行した。
全速で突撃し、蛇行運転をしたり、岩場を盾にしたりと被弾率を少しでも下げながらどんどん距離を詰めていく。
敵が撃ってきた152mm砲弾がすぐ傍に着弾する度に土が舞い上がり、顔に降り掛かってくる。
砲塔の旋回が追いつかない程のスピードで接近し、後方からの攻撃を試みる。
全速で回り込み、奴の後部装甲が照準器に収まったその時だった。
突然の衝撃、激しく揺れる車内。
「何があった!?」
「岩を思い切り踏んづけちまったみたいだ! 多分履帯が切れたぞ!」
岩に乗り上げたことで傾いた車内で怒鳴る。
「だったらもうここで撃て!どうせ相手は紙装甲だ!」
だが、ケティが主砲を発砲する気配は無い。
焦燥感に囚われていた俺はまた怒鳴る。
「何をしている!今しかないんだぞ!?」
そう言ってケティに指示を出すが、ケティは歯切れの悪そうに喋り出す。
「あぁ……悪い、岩に乗り上げたせいで俯角が足りなくなった」
「……は」
抵抗する力を失った俺達を嘲笑うかのように敵車両の砲塔はゆっくりと回転する。
そしてObject 120の砲口がこちらの正面装甲を捉える。
俺達の負けだ。
「チキショオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
森の中に一発の砲声と咆哮が鳴り響いた。
毎話4000文字とか書く人いるけど自分には無理ゾ……。
モチベーションを保つのがキツすぎるってはっきりわかんだね。(なろうエタり常習犯並感)