偏差値79、倍率300倍超えを誇るヒーロー養成の名門、雄英高校ヒーロー科。
私やひかりんはそこへの入学を当面の目標に、中学三年生としての一年間を過ごした。一年間と言っても入試そのものは二月末だし、三年生になって最初の進路希望調査は四月の第二週辺り。それを考えれば実際の準備期間は一年もないんだ。
私もひかりんももっと早くから雄英合格、ひいてはプロヒーローになる事を見据えていたから、そのための準備を怠ってきたつもりはない。と言ってもこの一年弱、今まで以上に勉強や特訓の質も量も強化し充実させていたから、時間はあっという間に過ぎていった。
「いよいよだね、フー子」
「うん、ひかりん」
受験当日の朝。
私たちは試験会場——私たちの未来の学び舎(予定)まで、一緒に行く事にした。幼馴染みだから、同じ目標に向かってお互いに切磋琢磨してきた仲間だから。それ以上に、極めて少ない席を勝ち取るため競い合うライバルとして、まずはお互いの努力を認め合ったから。
「それにしてもフー子、ゴツくなったね。コート着てると分かりづらいけど」
「そうかな?まあ私、鍛えとかないと近接戦になった時に
「相変わらず背はちっこいけど」
「むう、気にしてるところを〜!」
ひかりんの言う通り、私は元プロヒーローであるお母さんの教えのもと筋力トレーニングに励んでいた。なんでも強くもありたいし可愛くもありたい私(や昔のお母さん)のような女の子向けに、見た目をあまり変えすぎないで力を身に付ける独自のトレーニングを開発したトレーナーがいるそうなのだ。
それでもひかりんのように昔の私を知ってたり至近距離で見たりすると分かってしまうらしいが、ただブートキャンプするよりは遥かに可愛らしさを維持できる。ちなみにこれを開発した人は『教える』という個性を持っていたそうで、既存の型に頼らず自力で編み出した技を他人に教え、その人も一回だけ他の誰かに同じ技を教えられるらしい。お母さんはその一回を私に使ってくれた。
「そういうひかりんも前より大きくなったよね。色々と…」
「まあね!って言っても、170の大台にはあと2cm足りないんだけど」
「身長だけの話じゃないんだけど…」
「なんて?」
「…ま、いいよ。これ以上は妬ましくなるだけだし」
ひかりんも特訓には余念がなかった。彼女の場合は個性を伸ばせば伸ばすだけ破壊力が増していくから、そっちを重点的に。なおかつ最低限の筋力トレーニングも欠かさず、って感じで。
私なんて背も160まで全然届かないし、別の場所だってひかりんの発育には及ばないのに…。
と、入試当日にもかかわらずこんな緊張感のない会話をしている間に雄英高校に到着した。周りには多くの受験者が歩いており、その面持ちは緊張で強張っていたり自信に満ち溢れていたりと様々だ。
「着いた。まず筆記試験で、その後実技試験だったよね」
「うん、そのはず。…ひかりん、もしかして緊張してる?」
「……さすがにね。そういうフー子だって」
「…まあ、ね。実技もそうだけど、筆記も気が抜けないんだもん」
学校の定期テストも三回実施された模擬試験も、ひかりんとはいつも点数で競っていた。計7回の点数争いの結果は、二学期の期末テストでお互い全教科100点という最高成績で引き分け。それ以外の6回も3勝3敗だったから総合的に見ても引き分け。当然最後の模試でもお互いA判定だったから、できる事は全てやってきたっていう自信の源になる。
でもやっぱり緊張するものはするじゃん!?
「あ、でもあたしの方が笑顔でいられる余裕あるから、やっぱり準備期間はあたしの勝ちって事で」
「そんなのアリ!?私だって笑顔くらい」
「さ、もう校舎内には他の受験生もいるんだし静かにね」
「〜〜〜〜!!」
ひかりんに言い返してやりたいけど「静かに」っていうのは正論だから大声出せない…!悔しい…!
こうなったら試験本番の点数では絶対勝ってやる!!
「さすがは天下の雄英、中々手応えある筆記試験だったね」
「うん…。徹底的に勉強してきて良かったあ…」
筆記試験を終えると今度は実技試験。受験生一同はその試験内容の説明を受ける為、めちゃくちゃ広い講堂のような場所に集められた。
そこで説明が始まるまでの間、私とひかりんは筆記試験の内容についてミニ反省会を開く。
「ぐったりしてるね、フー子。そんなんで実技試験は大丈夫かな?」
「大丈夫に決まってるよ!むしろ今の挑発で逆に元気もらったくらいだもんね」
「ははは、確かに重箱の隅をつつくような問題ばっかだったもんなあ。あたしも思いの外集中力使っちゃったし」
「ひかりんは集中力使い慣れてるじゃん。ほら、個性の制御で」
「それとこれとは話が別。ってか、小難しい定理だの公式だのを使わない分、個性の制御の方が楽かもね」
軽口を叩き合い、改めてお互いの士気を高める。こんな、いつも通りのやり取りを通して笑顔を取り戻すくらいには、お互いに気疲れしていたらしい。…これからは精神修行もしなきゃかな。
とはいえ実技試験の内容説明が始まる前に私たちが普段の調子を取り戻せたのはラッキーだった。受験票を見れば私とひかりんの受験会場は別。友達同士で協力する事はできないようになっていたからだ。
『受験生のリスナー諸君!今日はオレのライブにようこそ!エヴィバディセイ、ヘイ!!』
緊張感溢れる会場に突如現れたテンションの高い男性は突然トークショーか何かのノリで話し始めた。あの三日月状の金髪と短く尖った顎髭、そしてオレンジ色のサングラスは、間違いなくボイスヒーロー・プレゼントマイクのものだ。
いくら毎週放送のラジオ番組を持っている大人気ヒーローと言ってもここは名門国立高校の入学試験の場。彼のテンションについていく余裕のあるものなどいるはずもなかった。
『こいつはシヴィー!んじゃ受験生のリスナー諸君に、実技試験の内容をサクッとプレゼンするぜ!アーユーレディ!?YEAHHHHHHHH!!』
マイクさん一人で盛り上がってる。あの人なりに
『リスナーの諸君にはこれから10分間の模擬市街地演習を行ってもらうぜ!持ち込みは自由。演習場内には仮想
手元のプリントにもロボットのシルエットとポイント数が書いてある。攻略難易度が高いほどポイントも多く、他の受験生への攻撃みたいなヒーローらしからぬ行動はご法度。行動不能にした仮想敵の合計ポイントで競うっていう内容のようだ。
ん?でもプリントには…。
「質問よろしいでしょうか!!」
私がプリントの内容と口頭説明の内容の差に疑問を抱いていると、肩幅の広い眼鏡の男子がまっすぐ手を挙げた。
「プリントには4種類のロボットが記載されております。誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!我々は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!」
質問の内容は私が知りたかった事と同じなんだけど…ちょっと言い方キツくない?ひかりんと相性悪そうなタイプ…。
「ついでにそこの縮れ毛の君!先ほどからボソボソと……気が散る!物見遊山のつもりなら即刻この場から去りたまえ!」
え…っと、誰の事だろう?私の耳にはそんなうるさくしてる声は届かなかったんだけど。
私は小声で素早くひかりんに聞いてみた。
「ねえひかりん。聞こえた?そんな声」
「ううん、全然」
二人して内心でまだ見ぬ縮れ毛の子を哀れみつつ、再びマイクさんの説明に意識を集中した。
『オーケー、オーケー!ナイスなお便りサンキューな!4種類目のロボットは0ポイント!ソイツはいわばお邪魔虫!倒せなくはないが倒しても意味のないステージギミックよ!!リスナー諸君には上手く避ける事をオススメするぜ!』
なるほど。これで実技試験の内容はわかった。
要は市街地で大暴れしている敵の大群を無力化していけばいいんだ。しかも相手は仮想、もといロボット。実際の人間だったら、なんて考えずに破壊しても問題ない。
私の得意分野だ。
『最後にリスナー諸君へ我が校の校訓をプレゼントしよう!かの英雄、ナポレオン・ボナパルトは言った。真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていくもの、と。『更に向こうへ!Plus Ultra』!!それでは諸君、良い受難を」
最後の一言でいつしか弛緩しかけていた空気感を再度引き締めた。これが現役プロヒーローの貫禄…!
「じゃ、フー子。また後で」
「うん、後でね。ひかりん」
私たちも笑顔で、それでいて気を引き締めて、自分の受験会場へ向かった。
「会場はたくさんあるみたいだけど…それでも一箇所辺りにこんな人数がいるんだ」
ひかりんと別れてやってきた演習場には既にたくさんの人がいた。個性の都合か私より体の小さい男子もいれば、私より体のパーツが多い男子もいる。
ざっと見渡した感じ体格面では私が不利を取りそうだから一応前の方に出ておこう。スタートダッシュで出遅れたくない。
ゲートの前に立った私はお気に入りのジャージの裾を直し、軽くストレッチを始めた。特に脚を重点的に。この試験内容を見れば脚が重要になるのは誰でもわかるだろうけど、私の場合は戦闘スタイルの都合もあって特に大事だ。尤も脚が動かなくなった所で何もできなくなるわけじゃないけど、念は入れておくに越した事はない。
『はい、スタート!』
「…え?」
そんな事をしていたら唐突にスタートの合図が出された。あまりに唐突すぎて数瞬戸惑ったけど、スタートの単語と目の前のゲートが開かれているという事実からもう試験は始まったんだと理解する。
『どうしたあ!実戦にはカウントなんざねーんだよ!!走れ走れ、賽は投げられてんぞ!?』
制限時間は10分。モタモタしている余裕はない。
私は他の受験生より一足早く市街地の奥へ駆け抜けた。途中にも何体かロボットを見かけたけど無視無視。入り口近くは他の受験生と団子になるから巻き込みたくないし巻き込まれたくないもんね。
ある程度他の人たちと距離ができた所で足を止め、周囲を見回してみる。前方に3
…やりやすい!
『標的捕捉。ブッ殺ス!』
「物騒な物言いだねー。まあいいや」
後ろを除く三方向から一斉に仮想敵が襲いかかってきた。私はその勢いに怯む事なく右を向く。個性の訓練もお母さん監督のもと仕上げてきたんだから。
「突撃!」
叫びながら私は右にいた1P二体の裏を取った。その動きが速すぎたためか仮想敵たちはまだ私が移動した事にさえ気付いていない。一方私は両の手で二体の仮想敵を触っている。そして直線上には2P一体と1P一体、チャンス!
「突撃ぃー!!」
ドガッシャアァーン!!
凄まじい音を立てて合計四体の仮想敵はスクラップになった。この一発で5P!
「次は、そっち!」
すかさず私は残りの三体の正面に距離を取って立ち、右足の裏をしっかり地面にくっ付けた。さっきみたいに他の仮想敵を吹っ飛ばして破壊してもいいんだけど、あの方法だと思いの外
「突撃ー!」
私の掛け声に合わせて仮想敵の足元の地面が巨大な
これが私、
手や足で触れているもの、及び自分自身を対象に向かって突撃させる事ができる。地面や建物の壁みたいに大き過ぎたり固定されていたりするものは、その一部を隆起させるだけに留まる。まあ『突き』を『撃って』いるわけだから間違いじゃないよね。対象に触れている必要はあるけど、解除すればすぐ元の地形に戻せる。解除は任意のタイミングで可能。
出力次第で突撃の距離を調整できる。勢いも出力次第で調整できるけど、その最低値は距離の最低値に比べてずっと高い。発現したてでまだ弱かった頃ですら頭ぶつけて気絶するくらいだもん。
そして、個性発動の代償に体力を消耗するのがデメリット。私はそれを5歳になる前から自覚してるんだから、当然持久力は鍛えているんだけどね!
あ、ちなみに発動の度に突撃って叫ぶのは単に気分の問題。別にこれ言わなくても個性は発動できる。
さあ、まだ試験は始まったばっかり!突撃、突撃、突撃いぃー!!
『標的、捕s』
「うるさい突撃!」
試験開始から3分くらい経つと、さすがにみんな色んな所に散らばってる。ここからが本当のスピード勝負だね。時には人の獲物を横取りするくらい強欲にならないと厳しいかな。
——っていう思考で動き始めれば必然的に周りが見えてくるわけで。少し仮想敵が集まってる所にいくと背後から迫る仮想敵に気付いていない受験者も時々見かけた。
まあ私もヒーロー志望。試験の場だからって、そういう人を見て見ぬふりはできない。
「っ!危ない、突撃ー!」
ドゴォ!
「えっ!?……あ、ありがと。助かったよ」
「いいのいいの、これから気を付けてね!ひとまず今回はポイントご馳走さま!」
試験じゃなかったら敵に襲われてる人を見殺しにした事になるし、所詮試験の場だって考えても、志を同じくするライバルが助けられる位置にいたのに重傷を負ったなんて知ったら寝覚めが悪いもん。
「じゃ、その分取り返さないと——ね!」
今回助けた子は深い紺色の髪をショートカットにした子で、耳からプラグみたいな何かが垂れていた。それを一体の仮想敵に突き立てるとソイツは何やら震えだし、次の瞬間内側から弾けるような音がした後動かなくなった。動力源になっているパーツを直接壊したようだ。
「すごい個性だね!それだけ動ければ大丈夫そうだし、お互い最後までがんばろうね!」
「ああ。ありがと!あんたもファイト!」
だいぶ数は減ってきたけどまだまだ駆動音は聞こえてくる。なら私はその音を頼りに突撃していくだけ!
時に地面を、時に仮想敵を、時にビルの壁を。突撃させては破壊する。あと緊急回避を兼ねた択として、自分を突撃させてその勢いを乗せた拳を振り抜けば、1Pくらいならその一発でも破壊できる。ベストなタイミングと出力の調整が難しいけどね。
そうこうしている内に残り時間もあと僅か。もはや自分が今何ポイント持ってるか分かんなくなってきた頃、それは起こった。
「そういえば、まだステージギミックとか言うのに会ってないような…」
独り言を口にした瞬間だ。
突然地震と間違うほどの激しい振動が辺り一帯を襲い、演習場に広大な影を作った。
「っ…!これが……」
マイクさんに言われた意味がわかった。これは確かに避けるべきだ。
っていうか普通に勝てるわけない。逃げの一手が安定!
「うおおおおお!?なんじゃありゃあ!?」
「その辺のビルよりデケエぞ!?つーか揺れヤベエ!!」
「あれが0P敵ってやつかぁ!?逃げるしかねーだろこんなん!!」
周りも一様に同じ事を言って0P敵から逃げるように走り出す。私も彼らと同じようにその場を離れようとして——聞いてしまった。いや、聞く事ができたと言うべきか。
「痛っ…!足挫いたかも…!……つぅ!ダメだ、走れない…!」
巨大な0P敵がそのキャタピラのような足で市街地に侵攻を始める中、その進行方向で足を庇いながらヨタヨタと走りたそうにしながら歩いている女子が一人。
他でもない、私が助けた耳からプラグの人だ。
「危ないっ!!」
私は咄嗟にその人の方へ駆け出した。さっきまで逃げる気満々で動いていたんだから、もちろん無策だ。
私の足なら距離はすぐ縮む。もう耳からプラグの人と0P敵との間に躍り出た。さあどうする!
(どの道これが試験でなく実戦なら、街を守るためにもコイツをこれ以上進ませるわけにはいかない!私の個性で何ができる!突撃…どこへ!?下手に撃てば街は大惨事!パンチ…増強型ならともかく私のなんて効くわけない!他には、えーっと!!)
「あ、あんたは…。っ!に、逃げなよ!ウチの事はいいから!」
「それじゃあ誰が君を助けるの!?コイツに踏み潰される街は!!誰が守るの!?」
「っ…!!」
そうだ、これは試験であって試験じゃない。私に何ができるのかを見られている場……私にできる事をアピールする場!
もしも実際にこういう敵が出現したら、私はどう対処する!?
「動きを止めるなら……足だ!足を奪えば!」
耳からプラグの人が走りづらそうにしているのを見て思いつく。
0P敵の足はキャタピラ、そしてその上に乗っかっているのは鉄の塊。私の個性なら簡単に止められるはずだ。
「出力最大…角度調整…こうだ!とっつげきいいいぃぃーーーー!!」
ズドオォ!!と凄まじい轟音を響かせ、0P敵の侵攻は止まった。コアというか動力源を破壊するには至らなかったのか顔っぽい部分はまだ動いてるけど、足はもう動かない。
地面を超広範囲で突撃させ、その頂点は0P敵の足の先端ギリギリを通り背中側へ貫通するよう調整したから。
両腕はまだ動くみたいだけど、それもすぐ封じてやる!その為に今度は0P敵の足に触れた。
「……と、突!撃ぃ!」
発動に時間はかかってしまったけど、0P敵の足の一部を両腕に向かって突撃、もとい隆起させた。これで腕も足と一体になって動かせない。
そもそも0P敵は、丸ごと突撃させるには大き過ぎたんだ。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……!」
「あ、ありがと。また助けられちゃった、けど……あんたは大丈夫?めっちゃ疲れてそうだけど……」
連続で超出力の突撃を使い疲れきった私を、耳からプラグの人は気遣うように声をかけてくれる。天使だ。
「うっ、うんっ、だい、じょうぶ…。はぁ、個性のっ、反動で…はぁ、はぁ、体力、使っちゃうからっ……しんどい、けど…ずっと、ここにいる方が、はぁ……危険かも」
「じゃあ移動を」
「任せて、まだ多少はっ…はぁ、使えるから」
「え?ちょっ!」
私は足を挫いたようで歩くのもしんどそうな耳からプラグの人を両腕で抱くようにしっかり掴み、少し離れた路地裏に向かって突撃した。
そこで耳からプラグの人から手を離し、壁に背を預けて座り込む。
「足…はぁ、はぁ、だいじょうぶ…?」
「うん、ウチは大丈夫だけど…。あんたのおかげで。でも、そういうあんたは」
『標的捕捉。ブ』
「突撃っ…!大丈夫だよ。はぁっ……自衛くらいはできるし」
空気も読まず突っ込んできた2Pが
その様子を見た耳からプラグの人は呆れたようにため息を吐くと、壁に手をつきながら0P敵が通ろうとしていた方の大通りに顔を出す。
「助けてもらったお礼にさ、こっち側はウチが警戒しとくよ。その状態のあんたは放っとけないし……どっちみち、もう上手く歩けないし…」
「……。ありがとう。じゃあ反対側は私が、はぁ、はぁ、見ておくね」
「………………ふっ!」
「………………突撃!」
『終〜了〜!!』
それから1分としない内に試験は終わった。私たちが動けなくなってから襲ってきた仮想敵は二体程度、お互い一体ずつ撃破だ。最後の数分間は二人とも大して動けなかった。
「ありがとう。最後、守ってくれて」
「ああ、いいよ別に。ウチの方こそ二回も助けてもらっちゃって。もう動けるの?」
「うん。私はこれが個性の反動って分かってるから、これだけ休めば十分。でも君の怪我は…」
試験が終わってお互いの体調を気遣いあっていると、演習場の入り口の方からお婆さんのものっぽい声が聞こえてきた。
「はいはい、お疲れ様。怪我した子はおらんかね?」
「この声って…」
「ウチ、聞いた事ある。雄英がこんな危険な入試を実施できる柱だ」
「柱?」
耳からプラグの人曰く、この二〜三等身サイズのお婆さんは妙齢ヒロイン・リカバリーガール。彼女の持つ個性『治癒』は相手の治癒力を活性化させ、怪我の自然治癒を高速化させるものらしい。
「はい!こっち、怪我人います!こっちの、えっと、耳からプラグの人、足捻挫です」
「ああ、はいはい。それくらいならすぐ治せるさね。まずは怪我した所診せてみな」
耳からプラグの人が言われるがまま足を差し出すと、リカバリーガールは安心させるように小さく笑うと……。
ウニウニと唇を動かし、「チユウー!」と言いながらその唇を耳からプラグの人の足にくっ付けた。正直結構ショッキングな絵面だ…。
「あ、すごい。本当に治ってる」
「よしと。お疲れ様。さてさて、他に怪我した子はいないかい?」
治癒にも体力を使うから耳からプラグの人は俄かに倦怠感を感じているようだけど、普通に歩けるようになってとりあえず嬉しそうだ。
…無理してでも治癒される瞬間の事は忘れたいんだろうな。
「あ、そういえば。さっき『耳からプラグの人』って言われて気付いたけど」
「ん、何?」
「まだお互い名前知らないよね。ウチは
「こちらこそありがとう!私は隆野 風子だよ。また会えたら…」
やっとお互いに名乗り合ってから、私は続けようとした言葉を一旦飲み込む。そして不思議そうな顔になった響香ちゃんに、さっき言おうとしたのとは別の言葉をかけた。
「また!会おうね!」
「……うん、そうだね!」
こうして、私の雄英高校ヒーロー科入学試験は幕を閉じた。
というわけで、オリ主の個性紹介回でした。
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