深夜、とあるビルの裏口。
真っ黒なタイツの様な、見る人が見れば『OPのルパン三世』と表現する格好の少女が、軽やかに通風孔からビル内部に侵入した。
「こちらキュート、侵入に成功しました」
『こちらサイバー、地図を端末に送信したわ。赤いチェックの付いたポイントへ向かってちょうだい、健闘を祈るわ』
「了解、通信を切ります」
その表情は、これまで幾つもの
「さて、今日もかわいいボクの華麗な潜入を見せてあげましょう!」
・・・
「……ふぅ、ここが目的のポイントですね」
時に物陰を、時に壁を、時に天井を。
持ち前の危機察知能力と技術、経験を駆使して、漸く辿り着いたのは、このビルの持ち主の、とある貿易商の社長室。
「それにしても、事前調査で資料を見ましたけど……」
普通のビルに似つかわしくない、赤外線センサーや重量センサー、極めつけは巡回する警備員の腰のS&W Mk.22。
「どうして『ごく普通の貿易商』のビルに、『特殊部隊御用達の暗殺用拳銃』を持った警備員がいるんですかねぇ…?」
答えの分かりきった自問自答の後、『サイバー』の用意したダミーで、指紋認証、虹彩認証、カードキー認証、ランダムパスコードを突破。
『サイバー』のハッキングで、セキュリティを突破した事すら、あちらは認識出来ていない。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」
・・・
翌朝のニュース番組は、阿鼻叫喚の様相を呈していた。
『世界的に有名な貿易商の真実』と題されたそのニュースは、瞬く間にネットで世界を駆け巡り、貿易商とその取引相手共々、一斉摘発、抵抗した者は即射殺される運びとなった。
「マキノさん、ニュース見ましたか? 世の中にはこんなにもあくどい人が居るものなんですねぇ」
「あら、幸子ちゃん、おはよう…確かに、人身販売どころかABC兵器まで売買してたなんて、思いもしなかったわね」
以前からグレーではと噂されていたらしい貿易商は、グレーどころか真っ黒だった。
お金になる物であれば、『何でも』売買していたらしい。
「社長なんてよく捕まったものですね…使い込んだグロック持ってましたし、警官を殺してでも逃げそうなものですけど」
「何処かの誰かさんが、自宅にいた社長とその部下、ビル内部の全ての人間を無力化して拘束していたらしいわよ?」
「そんな正義の味方のような人がいたんですか? きっとボクのようにかわいくて素敵で凄腕のエージェントですね!」
「そうね…付け加えるなら、私みたいな美人で凄腕のハッカーのサポートもあったのかしらね?」
「ふふーん、間違い無いですね!」
気が向いたら続くと思う。