Persona4 THE NEW SAKURA WARS   作:ぺるクマ!

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今連載中の作品が行き詰ったしまい、息抜きに別作品を書いてみようと思って執筆した作品です。色々不自然な点があると思いますが。よろしくお願いします。


#1「新たなる2つ物語 1/2」

────ようやくだ……

 

 

 その者はそう呟いた。

 

 

────ついに、ここまできた……ついに! 

 

 

 待ち望んでいた。待ち望み、一度は失敗した望みがついに手が届くところまで来た。もはや誰にも止められない、止められるものか。その者はそう言うと、空を仰いで邪悪な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

────私はこの世界で……皇となるのだ!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫~♫♩~♩~♫~♫♩~♩~

 

 

 

 

(ここは……?) 

 

 

 ピアノの華麗なメロディーで目を覚ますと、悠は別の場所にいた。床も天井も全てが群青色に染め上げられている、まるでリムジンの車内を模した空間。ここは一体どこだろうか。

 

 

「ようこそ、我がベルベットルームへ」

 

 

 誰かの声が聞こえたかと思うと、そこに奇怪な老人がいた。特徴的な長い鼻にピシッとしたタキシードに身を包んでいる。この老人は一体誰だろうか? 

 

「私の名はイゴール。ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所。本来は、何かの“契約”を果たされた方のみが訪れる部屋。フフフ……お客人はもうお分かりになられているやもしれませんが、ここはこう言うべきでしょうな……()()()()()()()()()()

 

 どうやらこの老人は自分のことを知っているようだが、今の自分には思い出せない。この老人と自分の関係は一体何だったろうかと頭を振り絞っている最中、目の前の老人はその様子を面白そうに見ながら話を続けた。

 

「さて、彼の地で二度の苦難を乗り越え、平穏な日々を過ごされている貴方様に再び災難が訪れると、占いに出ましてな」

 

 イゴールという老人がテーブルの上で腕を払う。すると、瞬く間に複数のタロットカードが出現した。

 

「……近い未来は"塔"の正位置、その先の未来は"月"の正位置……フフ……これは初めてお客様を占った際の結果と同じでしたな。フフフ……これから何が起こるのか……それはお客様自身の目で確かめるのがよろしいかと。では、またお会いする時まで、ご機嫌よう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタンゴトンガタンゴトン

 

 

「うっ……」

 

 目を開けると、眩い明かりが目に入った。見ると、そこは電車の中でちょうどトンネルの中を抜けている最中だった。

 

 

「ああ……」

 

 

 どうやら長く眠っていた故か寝ぼけていたようだが、ようやっと思い出せた。

 自分の名前は【鳴上悠】。さっき夢で迷い込んだあの青白い部屋はベルベットルーム。去年、今自分が向かっている場所で起きた事件で随分と世話になった部屋だ。

 

【稲羽市】またの名を【八十稲羽】

 

 去年、両親の海外出張の都合で一年間過ごしてきた山梨県にある田舎町。初めてあそこを訪れる最中にベルベットルームに入って、イゴールに"災難が降りかかる"と予言された。そして予言の通り、自分は八十稲羽で発生した連続殺人事件に巻き込まれることになる。しかも、それは普通のものではなかった。【マヨナカテレビ】・【テレビの中の世界】・【シャドウ】、そして今でも使役している心の力【ペルソナ】。こういうのもなんだが、とにかく常識はずれなことばかり降りかかった。

 

 しかし、そこでかけがえのない出会いを経験することになる。共にペルソナの力を得て、共に悩み、戦って災いに立ち向かった、花村陽介・里中千枝・天城雪子・巽完二・久慈川りせ・クマ・白金直斗の【特別捜査隊】の仲間たち。彼らと出会わなければあの事件を解決出来なかったし、今の自分も居なかっただろう。辛いこともあったが、彼らとあの街で共に過ごし、笑いあったり喧嘩したりして、事件の謎を追いかけた日々は忘れられない大切なものとなっている。

 

 

 あの事件からを経てGWに起きたP-1Grand Prix、東京で起こったマヨナカステージの事件から数か月後、大学受験を終えて新生活を始める前に稲羽で束の間の休日を過ごそうと東京を発って数多くの乗り換えの末、稲羽行きの電車に乗り込んでいる訳なのだ。

 

 しかし、あの事件は解決してからベルベットルームを訪れることはなかったのに、今再び訪れたということはどういうことだろうか? また、あの場所で何か起こるのだろうか。少し確認してみようと稲羽にいる相棒である陽介に連絡をしようと携帯を取り出そうとすると、

 

 

「あれ……? 稲羽行きの電車って、こんな感じだったっけ?」

 

 

 だが、それよりも気になることがある。今自分が乗っている電車の光景は眠る前のものと全然違う気がするのだ。それに、あの古めかしい稲羽行きの電車が何故かひと昔の蒸気機関車の車内のような風景になっている。まるで、タイムスリップしたような違和感。更におかしなことに、ここまで自分は私服を身に着けていたはずなのに、いつの間に八十神高校の学ランになっていた。それもボタンを全止めで。

 おかしな状況に頭を傾げていると、トンネルを抜けて広がる景色に悠は目を見開いた。

 

 

「えっ!?」

 

 

 目に入るのは見たことがない、自分の知らない街の光景だった。まるで明治か大正時代を思わせるような建物が多く建ち並び、更には街のあちこちから白い蒸気が立ち昇っている。

 見たことない光景に唖然とする間もなく、電車……もとい汽車は駅へと到着。その駅名は【上野】となっていた。

 

「嘘だろ……?」

 

 おかしい。自分は東京から稲羽へと向かう方向で進んでいたはずなのに、いつの間にかとんぼ返りしている。それに、この駅は自分の知っている東京の駅ではない。ついていけない状況にパニックになるが、汽車はここで終点なので降りて下さいと車掌らしき人に注意されたので、慌ててプラットフォームに降りる。そして、ふと地面に落ちていた新聞を拾い上げると、更に混乱の底へ陥れる事実が書かれていた

 

 

()()……()()()!?」

 

 

 そこに明記されていた年号は太正三十年。これを受けて、自分は激しく動揺してしまった。年号もそうだが、自分の知る大正は15年のはずだ。しかし、この新聞は本物でどこも偽造されている箇所はない。つまり、この状況から導き出される結論は一つだ。信じがたいことだが、自分はタイムスリップしたのではないか。もしくは……自分の知らない別の世界線に飛ばされたのではないか。

 

「なんてこった……」

 

 先ほどのベルベットルームのことでイゴールが言っていたことを思い出す。災難に巻き込まれるとあの老人は言っていたが、冗談じゃない。もうすでに災難に巻き込まれているではないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これから、どうしよう」

 

 

 今自分が置かれている状況は把握したのは良いが、まずはこれからどうするかだ。おそらくここは自分の知っている世界とは違う、いわゆる異世界みたいなものだ。当然鞄に入っている紙幣や硬貨は使えないだろうし、携帯も電波がこの時代にはなさそうなので使えない。最悪稲羽の皆にと思って買ったお土産で何かできるかもしれないが

 

「きゃああっ!」

 

 駅内を徘徊していると、エントランスから女性の悲鳴らしきものが聞こえた。何事かと駆け付けてみると、なんと大柄の男がか弱い女性から鞄をひったくりしている現場だった。

 そこには何人かの野次馬がその現場を傍観していた。女性は何とか踏みとどまっているが、男は何とか力づくで女性の鞄を奪おうとしている。野次馬は誰か助けろだの、警察を呼べだの声を掛けるだけで自ら動こうとはしない。

 

「……!」

 

 だが、そんな中で悠だけは思わず身体が動いていた。困っている人を見過ごせない悠はすぐにひったくりへ鋭いタックルをかます。強烈なタックルにひったくりの男は思わず鞄から手を離して地面に倒れた。だが、男はすぐに体勢を立て直したと思うと、一瞬辺りを見渡し今度は悠が置いたボストンバッグを盗んだ。

 

「あっ……」

 

 気が付いた時には既に数歩先に離れていた。すぐに追いかけようとするが、タックルした後の反動で悠は反応が遅くなってしまい身体が動かない。代わりに誰か追いかけていないかと辺りを見渡すが、野次馬たちは誰も追いかけようとしない。このままでは逃げられてしまうと思ったその時、

 

 

「待てっ!!」

 

 

 囲っていた野次馬を押しのけて誰かがあのひったくり犯を目掛けて疾走する誰かの姿が見えた。足が速く徐々にひったくりとの距離を縮めているので、心配ないかもしれない。それはともかく被害に遭っていた女性の安否が気になったので、声を掛けた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「は……はい……ありがとうございます。えっと……その……」

 

「俺の荷物のことは心配しないで下さい。とにかく、あなたが無事でよかったです」

 

 被害に遭いそうになった女性は申し訳なさそうに悠にそう声を掛けるが、本人は心配かけないようにそう返答する。女性の鞄が盗まれることを防ぐことはできたので、それで十分だ。女性は何度も頭を下げて謝罪を述べると、連れらしき人物の手を取ってどこかへと行ってしまった。

 

 さて、あちらの方はどうなっただろうか……

 

 

 

 

 数分後……

 

 

 

 

「すまない、君の荷物を取り返せなかった」

 

 申し訳なさそうに謝る男性に悠はいたたまれない気持ちになる。どうやら相手の逃げ足が予想以上に早かった上に街の地形を上手く使われて見失ってしまったらしい。取り返せなかったのが悔しいのか、拳をわなわなと震わせている。

 

「気にしないで下さい。俺も悪かったですし」

 

「いや、君は悪くない。君はあの女性を守ろうとしたんだろ。その行いは尊ぶべきものだ。悪く思う必要はない」

 

「…………」

 

 男性のその言葉に思わず何故か悠は呆然としてしまった。自分の知る東京では人助け自分が損したら周りは“馬鹿なやつ”だの“放っておけば良かったのに”という人が多かったせいかもしれない。稲羽の仲間や家族はそんなことはなかったので、ここでもこういう人はいるのかと改めてこの時代の人たちの認識を改めた。

 

「何度も言うが本当にすまなかった。一応警官たちに伝えて再度あの犯人を捜してもらっているが、君はこれからどうするんだ? どこか、行くところがあったり」

 

「実は……行く当てがなくて」

 

「えっ……?」

 

 そう言うと悠はここまで経緯を全て男性に話した。流石に未来から来たというのは伏せた上で、記憶が曖昧で気づいたらこの場所に辿り着いていたと説明した。

 

「なるほど……それは災難だったな……」

 

「ええ……」

 

 そう、荷物も奪われてしまい身一つだけになってしまったこの状況は悠にとって最も最悪の事態と言ってもいい。こんな状態でどう衣食住を見つければいいのか。

 

「……なあ、ちょっといいか?」

 

「??」

 

「君を連れて行きたい場所があるんだ。俺の職場なんだが、何かできることがあるかもしれない。良かったら来てくれるかい?」

 

「えっ?」

 

 男性からのまさかの提案に悠はきょとんとしてしまう。確かに今の悠にとってその提案は有難いものだが、安易に乗ってしまって良いのかと思ってしまった。だが、何も関係のない自分にこれほど親身になってくれたこの男性を悪い人物だと思えなかった。

 

「……お願いしてもいいですか?」

 

「ああっ、もちろん! おっと、自己紹介がまだだったな。俺は【神山誠十郎】。宜しく」

 

「【鳴上悠】です。よろしくお願いします」

 

 互いに自己紹介し合った2人は信頼の証に固い握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ、君は幼い頃から苦労してるんだな。ご両親の都合で……」

 

「ええ。でも、忙しい中でも自分には良くしてくれたので、別に何とも思わないんですけど」

 

「そうなのか……実は俺も」

 

 男性……もとい神山に付いていく道中、2人は互いの身の上話で盛り上がっていた。どうやら両親の仕事の都合で何度も転校したという共通点があってか、そこから趣味や特技などと言った親密な話へと広がった。

 

「神山さんは20歳なんですね。とてもしっかりした方に見えるので、20代後半の人に見えました」

 

「ははは、誉め言葉として受け取っておくよ。そう言う鳴上は18歳だろ。となると、さくらと一緒か」

 

「さくら……?」

 

「ああ、俺の大事な人でな……っと、着いた。ここだ」

 

 言われるがまま神山に付いていき辿り着いた場所に思わず仰天してしまった。

 

 

「大帝国……劇場?」

 

 

 辿り着いたのは看板に大帝国劇場と書かれた大きな劇場だった。見るからに年季が入っており、人の行き来も多い。神山の恰好や腰に差してある刀から軍隊関係の場所ではないのかと思ったが、これは予想外だった。

 

「ああ、ここは俺の職場だ。今から支配人に事情を説明して……」

 

 神山が何か悠に言おうとした時、突然立ち眩みを感じた。唐突だったので悠は思わず頭に手を当てて痛みを和らげようとする。その時……

 

 

 

我は……汝……汝は我……

 

 

 

「!!っ……」

 

 一瞬のことだったが、頭の脳に重々しい誰かの声が響いた。それを認識した途端、痛みが嘘だったかのように静まった。

 

「どうした……? 立ち眩みか?」

 

「え、ええ……大丈夫です」

 

「そうか」

 

 今の声は何だったのだろう? 神山には聞こえなかったらしいが、以前にもこのようなことがあった気がするが、気のせいだろうか。しかし、あの声は……

 

 

 

「誠十郎さーん! お帰りなさーい!」

 

 

 

 すると、劇場の入り口から誰かがこちらに向かってくるのが見えた。頭に可愛らしいリボン、桜の刺繍がある水色の着物に小豆色の袴。如何にもこの時代らしい衣装に身を包んだ美少女だ。

 

「ああ、さくら。ただいま」

 

「はい! ところで、その人は……?」

 

 神山と一言話すと、さくらと呼ばれた美少女は視線をこちらの方に移した。

 

「ああ、実は」

 

 

 

 

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!! 

 

 

 

 

 神山が何か言おうとした瞬間、思わず耳を塞ぎたくなるようなかん高い獣の声が鳴り響いた。一体何なのかと辺りを見渡すと

 

 

「あ、アレは……」

 

 

 それは瞬時に姿を現した。まるでおとぎ話に登場するドラゴンを彷彿とさせる大きな翼と鋭い牙、それから発せられる禍々しオーラにおぞましさを感じさせる醜悪な色をした怪物。こいつは一体……

 

 

 

 

「「こ、降魔っ!?」」

 

 

 

 

 神山とさくらがその怪物の名を叫んだと同時に、こちらに目を向けた降魔と呼ばれた怪物が声を上げてこちら襲い掛かってきた。

 

 

 

 

ーto be continuded

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