Persona4 THE NEW SAKURA WARS   作:ぺるクマ!

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#4「仲間となる日 2/2」

<銀座大通り>

 

「……さて、いよいよ次の実験と行くとしましょうか…………」

 

 人が多く行き交う帝都の銀座大通り。その一角のベンチに黒いフードを被った男はブツブツとそう言いながら新聞を読んでいた。一見すれば怪しい風貌なのだが、群衆に上手く溶け込めているの故か周囲はあまり気を留めていない。

 

「今まで実験から、帝国華撃団のように霊力が高い人間は霧による症状が出ないことは分かりました。彼らは今後の実験で利用する価値もあるでしょう。ですが、彼らを利用するには降魔だけでは戦力が足りません。やはり……彼には是非ともこちら側に来てもらうしかないでしょう」

 

 男は新聞から顔を上げると、懐から一枚の写真を取り出すと、そこに映る1人の青年を見つめて笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ…………」

 

 いつもの帝劇の業務に励んでいる最中、悠は頻りに溜息をもらしていた。

 昨夜の浴場でのハプニングがあってから、さくらは悠と神山に対して不機嫌な態度を取っていた。いつもなら美味しそうに食べている悠手製の朝食に対して感想を言わず、何か声を掛けても無視する一点張り。試しにとすみれから許可を取って、お菓子を作って振舞ってもてんでダメだった。

 

「鳴上、そう落ち込むなって。さくらだって鬼じゃないんだ、そのうち許してくれるさ」

 

「そうだと……良いんですけど」

 

 落ち込む悠を神山はそう励ましてくれたが、あまりそういう気分にはなれない。余談だが、お菓子に関してはさくら以外の花組は皆美味しそうに食べてくれた。特に花組の一人【望月あざみ】はおかわりが欲しいとねだってきてくれたことに関しては嬉しかったのだが、それとこれとは話が別である。

 

「お前らなぁ、あんなんでさくらが許してくれるわけねえだろ」

 

「初穂の言う通りよ。例え事故だったとしても、あなたとカミヤマが悪いわ」

 

 肩を落とす悠たちに花組の一人である初穂とアナスタシアはそう声を掛ける。普段勝気で姉御肌の彼女の言葉に男二人は大ダメージを受けた。

 

「そうなん……ですが……何か方法は……はっ! 謝罪が足りないなら、いっそのことスライディング土下座で……」

 

「アホなこと言ってねぇでさっさと仕事しろっての。そういや鳴上、カオルさんにおつかい頼まれてたの忘れてんだろ?」

 

「あっ……す、すみませんっ! 今すぐ行ってきます!!」

 

 忘れていた買い物をすぐに済まそうと悠は慌てて帝劇から出て行った。その姿を見届けた初穂とアナスタシアは深いため息を吐く。

 

「あいつも神山と同類だな。女心を分かっちゃいねえ」

 

「そうね……」

 

「えっ? 俺と同じってどういうこと?」

 

「「………………」」

 

 そういうところだよと表現するように2人は神山をキッと睨みつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました」

 

 頼まれた買い物を済ませて帝劇へ戻ろうとする帰り道、悠は物思いにふけながら帝都の街並みに感嘆していた。ここは自分の知る大正時代とは違うのは承知していたが、これほどまで賑わっているとは思わなかったのだ。

 

「こっちの稲羽はどうなってるんだろうな。機会があったら行ってみたいけど…………あれ?」

 

 その時、辺りの景色に異変を感じた。まるで靄がかかったように視界が曇り始めたのだ。昨夜雨が降ったとしても、こんな真っ昼間から発生するのかと疑問に思う。段々と靄が濃くなっていき視界も数十メートル先までは見えなくなってくる。

 

「まさか……!?」

 

 件の夢遊霧ではないかと気づいたときには遅かった。既に霧が広範囲に覆い、周囲の人たちに影響が及び始めた。悠は慌てて懐からめがねを取り出して耳に掛けると、すぐに近くで倒れた人たちの救護に当たる。

 

「大丈夫ですかっ!? しっかりしてください!!」

 

「う……ううう…………」

 

 大声で必死に呼びかけるが誰も上の空で反応しない。とにかくこの場から避難させようと辺りのいる人から連れ出そうとしたその時、目を疑うような出来事が起こった。

 

 

「ひっ……! く、来るな。……来るなあああああっ!!」

 

 

「??」

 

 突如近くで霧に苦しめられていた人間が何かを恐れるように発狂し始めたのだ。だが、それだけで終わらず発狂し始めたのも束の間、目が虚ろになり身体から黒いものが飛び出してきた。

 

「あ、あれは……シャドウっ!?」

 

 テレビの世界で何度も見て戦ったシャドウそのもの。だが、ここはテレビの世界ではないのに、人からシャドウが飛び出るなんて聞いたこともない。だが、驚いている間に周囲の人間からも続々とシャドウが飛び出してきた。シャドウたちは少しの間ウロウロしていたものの、何かを感知したのかまるで導かれるようにどこかへ移動し始めた。

 

 シャドウたちがどこへ向かうのか気になるところだが、今は市民の避難が最優先だと意識を切り替えて、まだ影響を受けていない人から避難させようと行動を開始する。だが、まるでタイミングを見計らったように見覚えのある魔方陣が展開された。そして、そこから先日戦ったばかりの降魔たちが出現した。

 

 

グオオオオオオオオオオオオオオッ!! 

 

 

「くそっ……こんな時に……!」

 

 どうやらこの霧を発生させた張本人はどうしてもこの人たちを霧から出させたくないようだ。そっちがその気なら力づくでいかせてもらう。悠は戦闘開始というように来ていた制服のボタンを全開にして、タロットカードを顕現する。

 

 

ーカッ!ー

「ペルソナ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<帝国華撃団 作戦司令室>

 

「皆さん、揃いましたね」

 

 一方、降魔と夢遊霧が出現した報告を受けて、帝国華撃団は帝劇の地下にある作戦司令室に集合していた。服装は霊視戦闘機用の隊服に着替えているので、緊急の事態だということが伺える。

 

「警告の通り銀座大通りで夢遊霧が発生しました。報告によると、多くの人たちが巻き込まれたようです」

 

「更に霧の中で降魔も出現しとる。一週間前と同じ状況やと思った方がええな」

 

 帝国華撃団風組のカオルとこまちがスラスラと状況を報告する中、さくらが恐る恐ると質問した。

 

「あの……本当なんですか……? 鳴上くんが巻き込まれたって」

 

「はい、間違いありません。発生した夢遊霧の中から鳴上くんのペルソナ反応が出ていますし、恐らく降魔と戦っているのでしょう。まさか彼が買い物に出かけたタイミングで現れるとは思いもよりませんでした……」

 

 偶発的な事態だが、悠に悪いタイミングで買い物を頼んでしまったことに責任を感じているのかカオルの表情は暗い。普段悠のことを毛嫌いしているとはいえ、万が一のことがあったらと心配しているようにも見えた。

 

「一刻も早く彼と市民を救出しなければなりません。直ちに現場へ向かいなさい。よろしく頼むわよ、神山くん」

 

「はいっ!」

 

 司令のすみれの指示に神山は大きな声で返した後に、こちらに視線を向けている花組の面々に顔を向ける。あれから結局あの霧への対抗策が見いだせず、未だにこちらに分が悪い状況であるが、絶対に悠と市民たちを救いだして見せる。その想いを胸に神山は目を見開いた。

 

 

 

「帝国華撃団花組、出動せよっ!!」

 

 

「「「「了解っ!!」」」」

 

 

 

 号令をかけ終えた花組一同は各々の霊視戦闘機に乗り込むためにその場を駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<銀座大通り>

 

 

「ふむ……やはり彼は逸材だ。私より内なる心の力を使いこなしている」

 

 霧に覆われた現場付近でどこからか悠の戦闘を見物していた黒フードは笑みを浮かべながら称賛する。

 

「もう少し見物しておきたいところですが、どうやらお邪魔がきたようですね」

 

 

 

「そこまでです!」

 

 

 

「「「「帝国華撃団、参上!!」」」」

 

 

 

 少し遅れて到着した帝国華撃団花組。連絡を受けた銀座大通りに来てみると、そこは異様な雰囲気に包まれていた。

 

「こ、これは……!?」

 

「いつもの街並みだが、何か様子が……」

 

 いつもの銀座大通りと変わりないのだが、どこか雰囲気が違う。まるで銀座の建物一つ一つから禍々しい邪気のようなものが発せられている気がする。魔幻空間と似たような感覚だが、何かが違う。辺りはこれまでのように霧に覆われており視界が悪いようだが、全く見えない訳ではない。

 

「ひとまず先へ進もう。鳴上とここに囚われている人たちを救出するんだ」

 

「「「了解」」」

 

 神山の命令でさくらたちは行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 探索を始めてから数十分後、何人か一般人を発見したが、時は遅くすでに夢遊霧による昏睡状態にかかっていた。一体この魔幻空間を模したような場所で何が起こっているのかと考えを巡らせていたその時だった。

 

 

「ようこそ、帝国華撃団のみなさん」

 

 

「お前はっ!?」

 

 突然霧の中から黒いコートを羽織って、黒いフードで顔を隠している怪しい人物が現れた。神山たちは黒フードに警戒を強めるが、当人は慌てずおどけた調子で語りだした。

 

「いやいや、この空間ができてからそう時間も経っていないというのに……流石は帝都を守護するだけはある」

 

「お前、何者だ?」

 

「私ですか……? まあ、強いて言えばこの霧を発生させ者とでも言っておきましょうか。それよりも、私は貴方たちに話があってきたんです」

 

 フレンドリーに話しかけてきた黒フードだが、神山たちは警戒態勢を緩めない。この霧を発生させたと自供したこともあるが、雰囲気は違うがこの男から華撃団大戦の最中に敵対した【朧】と似たような気配を感じたからだ。

 

「おやおや……じゃあ、これを見て頂きますか」

 

 黒フードはやらやれと大袈裟に呆れるポーズを取ると、薄っすらと霧の奥から見えてきたものを指さした。

 

「何だ……これ……」

 

 霧の奥から現れたものが見えた途端、神山たちは凍り付いてしまった。そこには得体の知れない物体があった。否、物体というよりもゼリー状の何か。しかも金色に輝く目が二つあるところから生物と定義すべきかどうか分からないが、おぞましいものであるのは確かだった。

 

「ああ、これは人ですよ」

 

「人っ!?」

 

「人と言っても、正確にはこの霧の影響を受けた霊力の低い人間が精神に異常をきたして飛び出した負の部分が具現化したものです。我々はこれを影……西洋でいう“シャドウ”と呼んでいます」

 

 黒フードの説明に背筋が凍るような悪寒を神山たちは感じた。あんなおぞましいものが人間の中から出たものだとは思えなかった。まさか自分たちもあのようにあるのかという不安が華撃団に過る。だが、それと同時に一つ確信できたことがあった。

 

「まさか……お前らはこれが目的で……夢遊霧を発生させてるっていうのかっ!?」

 

「そうです。このシャドウには無限の可能性がありますからね。ああ、心配しなくてもあなた方のように霊視戦闘機を扱える霊力の高い人間はこのようになりませんよ。更に、我々のように内なる負の部分を制御できると、このように……」

 

 黒いフードはそう言うと、頭上からフッと赤く光るタロットカードを顕現した。そして、それを手元に引き寄せて砕くと、赤い輝きは激しさを増していき、気が付くと背後に得体の知れないものが召喚されていた。

 

「なっ!?」

 

「あれは……」

 

「鳴上と同じ……ペルソナっ!?」

 

 タロットカードを砕いてからの召喚。それは間違いなく悠が持っているペルソナだ。違う点を上げるとすれば、黒フードが顕現したカードは赤いこと。そして、あのペルソナから発せられている雰囲気が言葉には表せない程禍々しいということだろうか。

 

「彼が使う内なる心の力……ペルソナと言いましたか。我々と同じ力を持つ者として放っておけない訳ですよ。まあ要件と言うのは、あの少年をこちら側に引き入れたいということです。興味深い存在でもありますしね」

 

「あ、あなたたちは鳴上くんの何を知ってるんですか!?」

 

「ええ、先日知りましたよ。彼の正体については」

 

 黒いフードはそう言うと、脇から大きいボストンバッグを取り出した。一体何なのかとさくらたちは首を傾げたが、そのバッグに神山は見覚えがあった。

 

「それは、鳴上が持ってた鞄じゃないかっ!? もしや、貴様が盗んだのかっ!?」

 

「いえいえ、違いますよ。先日の実験の帰り際に珍しい鞄を持っている男がいましてね。興味深かったので、ちょいと拝借しただけです」

 

「泥棒のモンを泥棒するたあ、狡い野郎だなっ!!」

 

 初穂の突っかかりそうな勢いに黒フード大袈裟に仰け反るが、恐らく何とも思っていないだろう。その証拠にやれやれと悪びれずに会話を続けた。

 

「まあそう言われると痛いところですがね。ですが、彼の荷物を調べると、凄く興味深いことが分かったのですよ。彼は2012年……我々からすると約70年先の未来から来た人物であるということがね」

 

 まるで世間話をするような形で投下された爆弾発言に神山たちは言葉を失ってしまった。そんなこと信じられるわけがないと思っていることを察したのか、黒フードは証拠を示すように鞄から一枚の写真を取り出した。

 神山たちはこの時知る由もなかったが、それは悠が稲羽の事件が解決した後の夏休みで仲間たちと一緒に取った大切な集合写真だった。

 

「この写真を見て下さい。彼と同じ年頃の若者たちが如何にも青春を謳歌しているのが分かる写真じゃないですか。これに2012年と日付がされています。きっと何かのミスなんじゃないかと疑いましたが、今の技術では考えられないほど精密に印刷されていますし、こんな間違いがあるはずありませんしね」

 

 写真を元に告げられていく事実に神山たちはもはや受け入れるしかなかった。鳴上悠は未来から迷い込んだ人物である。そんなのは当然理解も納得も出来るはずないが、あの黒フードの言葉はどこか本当のことを言っていると気がした。

 

「見たところ、彼は不本意な形でこの時代に訪れたのでしょうね。故に、どんな理由にしろ彼は元の時代に帰りたがっていることでしょう。それなら、帝都を守るだけしか能がないあなた方より同じ能力を持っている僕らの方が元の時代に戻れる可能性があります。その可能性をこのシャドウたちが握っているのですからね」

 

 黒いフードは周りに漂うシャドウたちを指しながらそう言うが、その言葉一つ一つに神山は嫌悪感を抱いた。悠のことを想って言っているように聞こえるが、実際こいつは何とも思っていない。己の実験のために悠を利用しようとしている。絶対悠を渡すものかと言おうとした時だった。

 

 

「ぜ、絶対にあなたたちに鳴上を渡しませんっ!」

 

 

 開口一番にそう言い放ったのはさくらだった。昨夜のことがあってそう反応することがないと思っていたのか、さくらの行動に神山のみならず初穂たちも驚愕する。だが、黒フードは驚くことなく間を開けずに反論する。

 

「おやっ? 何故そんなことが言えるのですか。彼は正式な帝国華撃団の一員ではありませんよね?」

 

「そ、それは……」

 

「あなた達だって、私たちへの対抗策として彼を利用しようとしているのでしょう。それを考えれば、私も貴方たちも同じだと思いませんか?」

 

 黒いフードの言葉にさくらは押し黙ってしまう。結局自分たちも同じだと思ってしまったのだ。これにはさくらだけでなく神山たちも表情を強張らせてしまう。だが、さくらは意を決して思いの丈を晒し出すように叫んだ。

 

 

「鳴上くんが……鳴上くんが例え未来から来た人でも、私たちの大切な帝国華撃団の仲間なんですっ!! そんな鳴上くんをあなたには絶対に渡しませんっ!」

 

 

 さくらの心からの叫びが木霊したその時、

 

 

 

 

ドオオオオオオオオオオオオンッ!! 

 

 

 

 

 

 突如、何か落ちてきた衝撃でそこから土埃が発生した。見ると、それは地面に叩きつけられて戦闘不能になった降魔だった。

 

「……遅くなってすみません」

 

「鳴上くんっ!?」

 

 そして、その降魔の傍からフッと姿を現したのは背後に己のペルソナ【イザナギ】を携えた悠だった。顔や服が傷で汚れているのを見ると、自分たちが来るまでずっと降魔たちと戦っていたのを物語っている。

 

「ほほうっ! あの降魔の群れを一掃しましたか。ところで……」

 

「ああ、聞こえてたさ。今の天宮さんたちの会話、俺にも聞こえるように細工してただろ?」

 

「ふふふ……では、改めて問いましょう。鳴上悠くん、こちら側に来る気はありませんか?」

 

 悠の質問に回答せず、自分たちに従順するか否かを急かすように聞く黒フード。悠が何と答えるのかと神山たちは固唾を飲んで見守るが、悠の腹は当に決まっていた。

 

 

 

「俺は帝国華撃団の一員だ。だから、あなたを捕まえる」

 

 

 

 手に持つ刀を黒フードに向けて、悠は力強く宣言した。これは黒フードだけでなく固唾を飲んで見守っていた神山たちも驚愕した。

 

「ほう、我々と敵対すると言うのですか。こちら側に来た方が、あなたを元の時代に帰せるかもしれないのに?」

 

 黒フードは冷静を保って再びこちら側に誘うように語り掛けるが、悠の意思は固かった。

 

 

「確かにそうかもしれない。でも、俺はこの時代に迷い込んで困っていた時に神山さんたちに助けてもらったんだ。そして、約束した。あなた達が起こしている事件を解決するまで協力すると。俺は助けてもらった神山さんや神崎さんたちとの約束を放り出してまで、帰りたいとは思わないっ!」

 

 

 刀を構えて力強く恐れくことなく己の意思を示した悠。その勇ましい姿に神山たちは感嘆してしまった。そして同時に気づいた。この男は我らが帝国華撃団の隊長と同じ、熱く正義の心を身に宿した人物であると。

 

「それがあなたの答えですか……残念です」

 

 瞬間、黒フードの周囲から大きい魔方陣が展開され、そこから再び大型降魔が出現した。出現したと同時にすぐさま悠に襲い掛かるが、背後に控えていたイザナギが容易く倒した。だが、

 

 

「マガツツクヨミ」

 

 

 いつの間に黒フードが召喚していたペルソナがイザナギの間合いに入っていた。黒フードのペルソナ……【マガツツクヨミ】の手がイザナギを突き刺そうとしたその時、

 

 

「させるかああああっ!!」

 

 

 刹那、神速と称すべき速さでマガツツクヨミの懐に入った神山の霊視戦闘機“無限”の刃が炸裂する。間一髪でマガツツクヨミの手と無限の刃は火花を散らし、激しくせめぎ合う。

 

「ふむ……あの距離で防いできますか。華撃団大戦で拝見しましたが、これほどとは……では、これはどうでしょう?」

 

 黒フードはそう言うと、マガツツクヨミは更に攻撃を加えようともう片方の手にどす黒いエネルギーを集中させて神山に放とうとする。だが、次はイザナギの大剣がそれを防ぎ、ついにマガツツクヨミにカウンターを喰らわせることに成功した。怯んだ隙を見逃さず神山が追撃する。

 

 

「闇を切り裂く神速の刃……【縦横無尽】っ!!」

 

 

 告げられた通りまさに神速、目にも止まらぬ速さで次々と繰り出される斬撃にマガツツクヨミは耐えきらずに押し切られ、膝をついてしまう。そして、

 

 

ーカッ!ー

「イザナギっ!」

 

 

 間髪入れず神山が必殺技が炸裂した刹那、イザナギも続いて魔法でマガツツクヨミの頭上に落雷を落とした。

 

「ぐっ……よもやこれほどとは…………」

 

 ペルソナのダメージは召喚者にもフィードバックする。マガツツクヨミのダメージを身を持って受けているのか相当苦しそうなのが見受けられる。

 

「動かないで下さいっ!!」

 

「色々話を聞かせてもらうわよ」

 

 黒フードの周りを既にさくらたちの霊視戦闘機が包囲していた。これで逃げられない。だが、

 

 

「……くく、私はそう簡単に捕まりませんよ」

 

 

 黒フードは不気味な笑みを浮かべてそう言った途端、黒フードの周りに禍々しい魔方陣が展開され、何かを察したさくらたちは大きく後退する。その感が正しかったのか、すぐに魔方陣から多数の大型降魔が出現した。これでは流石にさくらたちと言えども手は出せない。

 

「今回はここで退かせてもらいますか。どちらにしろ良いデータは取れましたし、最後に我らのことを紹介しておきましょうか」

 

 黒フードは更に魔方陣を己の真下に召喚させて仰々しく両手を広げると、歌劇の終幕と言うように高らかに声を上げた。

 

 

 

「我らの名は【禍津日(まがつひ)】。またお会いしましょう、帝国華撃団」

 

 

 

 黒フードはそう言うと霧に紛れて姿を消した。そして、それと同じく辺りを覆っていた夢遊霧は晴れて、元の帝都の光景に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 黒フードが去ってから数分後、周囲に降魔の気配はなかった。それを確認した神山たちは一旦霊視戦闘機から地上へと降りる。

 

「鳴上くんっ!」

 

 戦闘が終わったも束の間、霊視戦闘機から降りたさくらたちは一目散に悠の元へ駆け寄った。

 

「大丈夫でしたか!? どこかケガとかは?」

 

「ありがとうございます。でも、シャドウにされた人たちは……」

 

 思わず先ほどまで霧に包まれていた場所を見て落ち込んでしまった。それから自分の手を改めて見ると、目の前でシャドウになって廃人化してしまった人たちを思い返してしまい、助けられたなかった悔しさで震えてしまう。

 だが、そんな悠を見て何を思ったのか、励ますように背中からバンっと衝撃が与えた。

 

「鳴上、お前は独りじゃない。俺たちは、仲間だ!」

 

「……!」

 

「俺たちだって悔しいさ。でも、これで終わったわけじゃない。またあいつらが夢遊霧で人から影とやらを奪おうとするだろう。だから、今度こそ俺たちで阻止しようっ! 俺たちなら出来るっ!」

 

 神山の熱い言葉に悠は心を揺さぶられた。そして、さくらたちも同じなのか神山に続いて悠に己の想いを打ち明ける。

 

「そうですよ。鳴上くんは私たちにとって大切な隊員なんですっ! お料理も上手だし、色々教えて貰いたいこともあるんですからっ!!」

 

「私もです! 未来から来たって、これからの脚本づくりの参考にもなりそうですし……」

 

「ったく、未来から来たって事情があるんだったら最初から言っとけよ。あたしは別にそんなんで、お前を色眼鏡でみりゃしねえよ」

 

「そうね、私も皆に隠していた秘密はあったわ。それを考えたら、私たちは気が合うかもしれないわね」

 

「誠十郎たちがそう言うなら、あざみも異論はない。またお菓子を作ってほしい……」

 

 さくらやクラリス、初穂にアナスタシア、そしてあざみからの言葉を受けて悠の心が温かさで包まれる感覚がした。すると、神山は改まった表情で悠に手を差し伸べた。

 

「鳴上、改めて頼む。俺たちと一緒に【禍津日(まがつひ)】を倒すぞ!」

 

「……はいっ!」

 

 神山からその言葉を受けた悠は差し出された手をぎゅっと握り返した。

 

 

 

────帝国華撃団との絆が一段深まった気がする……

 

 

 

「っと、いけない。誠十郎さん、戦闘が無事終わった事を祝してアレをやりましょう」

 

「あれ……?」

 

「そうだな、まだ鳴上に教えてなかったが……」

 

 話を聞くと、何でも帝国華撃団は戦闘が無事終了した際にするお約束の儀式みたいなものらしい。話を聞いてそういうひと昔前のアニメのヒーローみたいなことをやってみたいと思った悠は是非ともとノリノリでやる気になった。

 

 

「じゃあ、いくぞ。勝利のポーズっ!」

 

 

 

「「「「「「決めっ!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふう、とんだめに遭いましたね……歩くのが……これほど辛いとは……」

 

 

 帝国華撃団との戦いから逃げた黒フードは薄暗い裏道をフラフラと歩いていた。悠と神山から受けたダメージが未だ残っており、回復に時間がかかっている。この事態は流石に予定外だった。

 

「まさか、()()()()の力しか出してない状態でこれとは…………まあ、更なる楽しみが出来たと思っておきましょう……くくくくく……」

 

 口から出る言葉を裏付けるように黒フードの口元には不気味な笑みがあった。組織の目的とは別に、新たな楽しみができた。あの者たちを次はどう転がしてやろうかと考えながら、黒フードは暗闇に消えていった。

 

 

ーto be continuded




次回予告

改めて帝国華撃団の一員となってくれた鳴上くん。
私、同世代の男友達って初めてだから、ちょっと新鮮だなぁ。
そう言えば鳴上くんから見て、私ってどんな風に見えるんだろう?
あれ? あの帽子の女の子って……

次回、Persona4 THE NEW SAKURA WARS
【乙女の浪漫】
太正桜に浪漫の嵐!

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