Persona4 THE NEW SAKURA WARS 作:ぺるクマ!
中々更新できずに申し訳なかったです。それにも関わらず、いつの間にかお気に入り登録してくれた人が100人に達していたので、驚いています。
これからも不定期の更新になると思いますが、よろしくお願いします。
追伸
活動報告で他作品のアンケートを実施中です。時間があれば、そちらも方もお願いします。
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かあかあとカラスたちのかん高い鳴き声が不気味に鳴り響く。そんな不気味という言葉が表現される薄暗く人一人近寄らないような場所にその者たちはいた。
「それで、かの者をこちら側へ引き込むのは出来なかったと?」
「はい。面目ございません」
薄暗いどこかも知れない大広間。そこの中心にて、黒いフードを被った男2人がそんなやり取りをしていた。膝をついている1人の男は申し訳なさそうに謝罪しているが、声色には全く反省が感じられない。もう一人の男もそれを察したのか溜息を一つ吐いて話を進めた。
「まあいい。それで、かの者と対峙してみてどうだった?」
「ええ、思っていた通り彼は私と同じでした。無から生まれて何ものにも染まり、何ものにもなり得る者。ですが、彼は既に至る所に至っている。確実に私たちの障害と成るでしょう」
「………………」
あっけらかんとした報告を聞いた男は思わず黙り込んでしまった。だが、目の前にいる者の言葉には嘘は感じられなかった。それほどまでにあの未来から来たという少年【鳴上悠】は自分たちの脅威であるということなのだ。予想していたとはいえ、こうもハッキリと告げられては認めざる負えない。
しばらく冷たい沈黙が辺りを包んだが、ふうと息を吐いた音と共に男は沈黙を破った。
「……よく分かった。本当なら我々の障害になる者は早々に始末したいところ。だが、あの方の仰せの通り我々の計画にその者は必要だ。しかし、お主の話を聞いて少し試したくなった」
「という事は……?」
男はその問いに何も答えずに踵を返すと、指をパチンと鳴らした。瞬時、男の目の前にまた違った黒いフードを被った人物が現れた。その者を見据えて、男は重々しい口調で告げた。
「ジライヤ、帝国華撃団の隊員を1人暗殺しろ」
♫~♫♩~♩~♫~♫♩~♩~
聞き覚えのあるメロディーが聞こえて目を開けると目の前にあの光景が広がっていた。全てが群青色に彩られたリムジンの車内を模した不思議な空間。そう、ここは【ベルベットルーム】。
「ようこそ、我がベルベットルームへ」
証拠に向かいにはここの主を名乗る奇怪な老人【イゴール】とその従者を名乗る【マーガレット】が鎮座していた。イゴールがお決まりのセリフを言い終わると、マーガレットが手に持っているペルソナ全書を開いてこう言った。
「先日はお疲れ様でした。お客様はかの者たちと共に戦ったことで絆を深め、新たに一つアルカナを手にしたご様子。そのアルカナの名は【魔術師】」
ペルソナ全書から顕現されたのは文字通り【魔術師】のアルカナが描かれたタロットカード。そのページには悠と【魔術師】のアルカナを手にするキッカケとなった神山誠十郎とのこれまでのやり取りが映像で流れていた。イゴールは目を開いてカードを見つめたと思うと、次第にニヤリと笑った。
「フフフ……素晴らしい。お客様はどの世界に身を置いても、惜しみなくご自身のお力を発揮しておられる。しかし、この先も幾多ほどの試練が貴方様を待ち受けていることでしょう。さてさて、この世界で貴方様がどのような絆を育むのか……楽しみですな……」
「鳴上くん、起きて下さい」
誰かの声がする。だが、まだ眠気が残っているし、身体も少しだるいのでもう少し寝かせてもらいたい。
「鳴上、起きろ」
また別の誰かの声がする。だから、もう少し寝かせて
「「鳴上(くん)っ!!」」
刹那、大音量の叫び声が鼓膜を盛大に響かせる。びっくりして飛び上がると、そこに男女一組がやっとかと言わんばかりに溜息をつく姿が見受けられた。1人は帝国華撃団花組隊長【神山誠十郎】、もう一人は同じく帝国華撃団花組隊員の【天宮さくら】だった。
「やっと起きましたね。鳴上くん、もう朝ごはんの時間は過ぎてますよ」
「えっ?」
しかめっ面で告げるさくらの言葉に慌てて時間を見てみると、時刻は既にいつも起きている時刻を超えていた。
「……寝坊だ……」
「まあ、昨日あんなことがあったから無理もないか……」
寝坊したことに青ざめる悠の表情に苦笑いしながら、神山は頭を掻いてそう言った。
あんなことというのは昨日の戦闘のことだろう。
明らかになった新たな敵の組織名は【禍津日】。何らかの目的のために夢遊霧を発生させ人間からシャドウと呼ばれる何かを集めている。それに、その組織の人間の一人は悠と同じペルソナを使役していた。どんな奴にしろ、同じペルソナを持つ者としてこの事態は看過できない。
「さっ、もうそんな難しそうな顔しないで着替えて下さい。すみれさんが呼んでますよ。随分待たせてるから、もうカンカンになってるかもしれませんね」
昨日のことを思い出して思い詰めていると、さくらがさらっと怖いことを宣いつつ、手早く悠を布団から起こして傍に用意していた着替えを渡してくれた。
「それより、鳴上の部屋に置いてあるあの箱みたいなのに、何か眼鏡がたくさん置いてあるんだが……あれは何なんだ?」
神山が屋根裏部屋で何か見つけたのか、発見した物を悠に見せてきた。
「昨夜はよく眠れたようですね」
「はあ……」
支配人室に入って早々すみれとそんなやり取りが始まった。ニコニコと笑みを浮かべているのに目が全く笑っていないところから察すると相当お冠のようだ。そんなすみれに慄きつつも、悠は昨日のやり取りを思い出した。
あの戦闘が終わってから司令官に呼び出されて、カオルに深々と謝罪された。未来から(正確には全く別の世界線から)来た事情についても少し聞かれたが、すみれは何かを察したのか深く追及はしなかった。
「それで、何ですか? この眼鏡の数々は」
回想から現実に戻って早々、すみれは自身の机に置かれている複数の眼鏡のことに言及した。確かに端から見れば何のことか分からない奇妙な光景に悠は改めて説明した。
「今朝俺の部屋に置いてあって。よく見たら、この眼鏡は俺が戦闘に使ってるものと同じだったんです」
悠の言葉にすみれは一瞬言っている意味が分からなかった。だが、これまでの悠の戦闘する時の姿を思い出したのか、確認のために聞いてみた。
「そう言えば、あなたは霧の中でペルソナを召喚する際は眼鏡を掛けていたわね。もしかして、その眼鏡を掛けることによって何か変化があるのかしら?」
「はい、これは掛けることによって、あの霧の中でも視界がよく見えるようになったり、霧の中で感じる身体の負担も減ったりするんです。神山さんたちの分もあるので、もしかしたら今後の霧での戦闘がやりやすくなるかもしれません」
告げられた事実にすみれは今度こそ驚愕した。今朝屋根裏部屋にあった眼鏡の数は6つ。ちょうど帝国華撃団花組の隊員と同じ数だ。これから【禍津日】と戦うにあたって夢遊霧が発生しても、この眼鏡をかければ今まで通りの性能で戦闘ができるという訳だ。
「ふふふ、やっぱり貴方をここに迎えて正解だったわ。早速この眼鏡を司馬くんや神崎重工の開発部に回しましょう。量産出来れば一般人にも普及できるし、夢遊霧による被害も格段に下がるでしょう」
昨今の夢遊霧への対策がままならずに頭を悩ませていた案件が思わぬところで解決できるかもしれない。そのことにお冠だったすみれの表情が一気に和らいだ。早速傍に控えていたカオルにあれこれ指示を出して、机に置かれた眼鏡を渡す。指示を受けてカオルが支配人室から退室したのを確認すると、すみれは改めて悠の顔を見た。
「あなたにはこれからも期待しているわ。今後ともよろしくね」
────すみれから期待と信頼を感じる。
その後、少し時間寝坊したことについてきっちりと叱られてから支配人室を後にした。
「舞台……ですか?」
「ああ、今度の公演についてなんだが……」
ところ変わって帝劇内にある食堂。遅めの朝食を取っていた悠は神山からそんな話を聞いていた。
「昨今の夢遊霧による被害者が増加していることで帝都の不安が膨れ上がっている。だから、この不安を払拭するために帝都の人たちを元気づけられる演目を披露しようってすみれさんが提案したんだ」
「なるほど……」
帝国華撃団は帝都の防衛をしている傍ら歌劇団としても活動している。昨今は夢遊霧の対応に追われて公演ができなかったが、現状対策が追い付きそうになったことを受けて、再び公演を再開することになったそうだ。その演目は出来れば今の状況下に置かれて不安に駆られる人々に少しでも元気と勇気を与えられるものにしたいということらしい。
「今クラリスがその脚本を書いているようなんだが、中々進んでないらしい。もし何かあったら協力して上げてくれ」
「分かりました」
「といってもな……」
食事を終えて通常業務に戻った悠は帝劇のエントランスホールを掃除しながら考えにふけっていた。
八十神高校では演劇部にも所属していたものの、あれは学生レベルの話であってこの帝国劇場のようなプロが並ぶほどのものには程遠い。そんな自分がプロの脚本の制作に関わるなんてお門違いも良いところではないかと思うのだが、神山に頼まれてはやるしかないだろう。
「くそおおっ!! また出やがったかああっ!!」
「初穂、うるさい」
ふと思い悩んでいると、近くのサロンでくつろいでいたらしい初穂とあざみの声がしてくる。初穂は何やら新聞を憎々し気に見つめているようだが、何があったのだろうか?
「どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもねえ! まあた現れやがったんだよ! 白マントがなあ!」
「白マント?」
「……悠は帝都に来て日が浅いから、知らないもの無理はない」
興奮する初穂に代わって、傍でクナイの手入れをしていたあざみが教えてくれた。
白マントとは最近帝都を騒がせている怪盗のことらしく、ある時は悪徳高利貸しを懲らしめ、ある時は権力を盾に悪事を働く軍人に鉄槌を下す。その善行もさることながら誰も正体を見たことがないという神出鬼没。まさに義賊ともてはやされている人物なのだそうだ。
「別に東雲さんが怒るようなことはしてないように思えますけど」
「そうだ、最初はあたいもそう思ったさ。でも! 奴さんはついにやりやがったんだよ!! 子供の誘拐をなっ!!」
「へっ?」
突きつけられた新聞を見てみると、確かに初穂の言う通りのことが記事に書いてあった。白昼堂々と子供を攫って姿を消した白マント。だが、警察に被害届はされておらず捜査は進んでないとのこと。
「ああっ! 腹立つ~!! 私がその場にいたらめっためたにぶん殴ってとっ捕まえてやるのによおっ!」
新聞をぐしゃぐしゃにしながら荒れに荒れる初穂。余程今回の白マントの悪行が許せないらしい。まあ言いたいことも分かるが、少し気になることもある。
「でも、子供が誘拐されたのに何で被害届が出てないんだ?」
「それは、確かに不自然。あざみもそう思った。あと、そっちの記事には夢遊霧のことも取り上げられてる」
ぐしゃぐしゃになった新聞を広げてあざみが示すその記事には、確かに先日の夢遊霧のことも書いてあった。やはりというべきか、夢遊霧による患者が急増している昨今、今度は自分ではないかと不安がる人も多いようだ。一刻も早くこの事態を解決しなければ帝都に住む人々が安心して暮らせない。
「悠……難しい顔してる」
「えっ?」
「こういう時はお饅頭を食べるのが一番。ということで悠、みかづきにお饅頭を買いに行くのに付き合ってほしい」
「わ、分かった」
興奮して手が付けられない初穂を放置して、悠はあざみについていく形であざみの行きつけの和菓子屋に行った。どうやら新聞に記事を見て表情が険しくなった悠をあざみなりに気遣ってくれたらしい。気遣ってくれた割には饅頭代は全て悠持ちということになったが、そっとしておくことにした。
それからは特にこれと言った出来事はなく一日が終わった。
数日後……
あれから何事もなく淡々と仕事をこなして同じ日を過ごした。という訳ではなかった。
「神山さん・さくらさん・鳴上くん、この物語どう思いますか?」
昨日からこのようにクラリスは脚本についての意見を神山とさくら、悠の3人に尋ねていた。
「ほう、これは……」
「クラリスさん、この物語って英雄譚ですよね?」
「はい! 昨今の夢遊霧の影響で皆さんが不安と恐怖で暗い気持ちになってると思います。その状況で帝都の皆さんに元気になってもらうには、民衆を勇気づけてくれる英雄の物語が一番だと思って」
「なるほど…」
「良いね!英雄譚!!ここの英雄様が囚われたお姫様を助けるシーンなんて、乙女の浪漫って感じで」
クラリスがあらかた描いた物語にさくらはとてもお気に召したらしい。お姫様のくだりを見ながらチラッと神山を見ている辺り、そういうことなのだろう。
「うーん……でも、自分でも何か足りない気がしてて……もう少し何か参考になるものが欲しくて…」
「じゃあ、今から」
「ええ、俺はこの後仕事はないんで」
「あっ、そう言えば俺はこれから令士のところに行く時間だ。あとは3人で考えてくれるか?」
かくして、整備士の司馬に用事のある神山を除いた悠とさくらはクラリスの脚本づくりに協力するため一緒に帝劇を出た。
「鳴上くんはどんな本を読んでるんですか?」
「そうですね。俺は小説とか読みますよ。”弱虫先生”とか」
「弱虫先生?」
「ええっと、その話の内容はですね…」
道中、そんな他愛ない話で盛り上がる3人。さくらはともかく、ここ最近はクラリスも悠に対して、とても友好的だった。というのも、クラリスは悠の境遇を知ってから親近感を持っていたのだ。
今は神山のお陰でそうでもないものの、一族が代々研究してきた『重魔導』の力をクラリス自身は忌み嫌って、その力を皆に見せることを恐れていた。悠もこの世界に迷い込んできた際はペルソナというクラリスたちにとって未知の力によって神山やクラリスたちが自分を化物だと恐れるのではないかと思っていた。
同じような思いを抱いていたことを本人の口から聞いたことで、クラリスはそれから悠を気に掛けるようになった。かつて自分が神山にしてもらったように、自分も同じ想いを抱いた者として何か悠にできることはないかと。
クラリスが贔屓にしているという本屋に辿り着くと、3人は参考になりそうな英雄譚の本を探し始めた。あれはどうか、これはどうかと探して見るが中々参考になりそうなものは見つからない。今回の題材が英雄譚で、それ関連のものになると少し外の空気を吸おうとさくらとクラリスは一旦店の外に出た。
「あれ? あの女の子は……」
「クラリス、どうかしたの? あっ……」
誰かの視線を感じて見てみると、そこにはこの帝都ではあまり見かけない恰好をした少女がこちらを、正確には悠にじ~とした視線を向けていた。その少女はさくらとクラリスの視線に気づいたのか、慌ててその場から離れた。一体どうしたのだろうと少女の行動に疑問を感じた2人はその場へ向かう。
先ほどまで少女がいた場所に着くと、既に少女の姿はどこにも見えなかった。どこに行ったのかと辺りを見渡そうとすると、さくらの足元に何か便箋のようなものが落ちていた。
「あれ? これって……あの子が落としたものでしょうか?」
「何か書いてますね。これって、詩?」
拾い上げた一枚の便箋に何か詩のようなものが書いてあった。もしやと思い、2人は失礼だと思いつつも便箋に書かれた文字に目を通した。
「「………………」」
メモに書かれていた詩を読み終えたさくらとクラリスは開いた口が塞がらなかった。何だ、この読んでいるだけで痛々しさを感じられる文章の数々は。一応続きがあるようなので、気になって次の文章を読もうとしたその時、
「のあああああああああああああああああああああああっ!?」
どこからか女性のかん高い悲鳴が上がった。誰かと思って顔を上げてみると、いつの間にかさっきの少女が目の前に現れて、さくらが手に持つ便箋をひったくった。
「君たち! 読んだ!? 読んだよね!!」
「「…………(コク)」
「なっ!? ななななななんで見んの! てか、何で落ちてんの!? ううううううううううう………バカキライサイテー!何で悠じゃないの!?悠のバカアアアアアアアア!!」
詩の内容を読まれたのが相当恥ずかしかったのか、大勢の人が見ているにも関わらず絶叫して悶えまくる少女。あまりに奇妙な光景にさくらたちのみならず、周囲の人たちも唖然としている。
だが、途端に喚くのを止めたと思いきや、
「あ、あとっ! 君たち! これ、悠に渡しといて!」
「えっ?」
「いい? 絶対無くすなって言っといて! 絶対だからね!! じゃあ!」
一方的に強い口調で手に持っていた腕輪を押し付けると、少女はそのまま明後日の方向に走り去っていった。
「い、一体……何だったんだろう?」
「さあ? それで、今あの人に渡されたものは」
「ええっと……こ、これってっ!?」
強引に渡されたものは何だったのだろうかと見てみると、その手には漆黒の鞘に納められた日本刀があった。試しに鞘を抜いてみると、見事なまでに銀色に光り輝く刃が現れた。実家の父が刀鍛冶をやっていて幼い頃から父の打っていたものを見てきた程度だが、相当な業物であると目で分かる。
「これを鳴上くんにって……あの人、鳴上くんの知り合いなんでしょうか?」
「さあ?」
悠を知っているということは、もしかしてあの少女も悠の世界から来た人物なのだろうか。それはそれとしても、何故渡すものが刀なのだろうか。
「【天宮さくら】……帝国華撃団花組」
「!!」
「【クラリッサ・スノーフレーク】……同じく帝国華撃団花組」
「!!」
誰かに声を掛けられた。今の少女とは違う、冷たくて悪寒を感じる男性の声。振り返ると、そこには黒装束に身を包んだ不気味な男が立っていた。
「だ……誰?」
「…………死ね」
その者はさくらの問いに答えることなく、いきなり襲い掛かってきた。
ーto be continuded