ダンジョンでハイエルフに出会うのは間違っているだろうか 作:98zin
走って、走って、走った
リヴェリアに追いかけられた時より走った
しかしまだソレは追いかけてきていた
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
アルファたちが走るのを止めないように向こうも追いかけるのを止めない
やがてアルファと雫は走り続け、入り組んだ工業地帯に入り込んだ
まわりには多くの魔石製品を製造する工場
今日はどこも稼働していなくて人がいない
隠れるのに好都合だと思ったアルファは即座に身を隠す場所を探す
「雫!こっち!」
勢いよく雫の手を引き工場の影へ飛び込む
雫は急な方向転換に思わずこけそうになるがなんとか耐えてアルファに続く
2人がギリギリ入れるほどの隙間に飛び込み息をひそめる
追いかけてきていた地割れは、そのまま進み遠くへ行ったようだ
「ハァハァ、、、なんとか、、まいた?」
「ゼェ、ハァ、、そうだな、、」
2人して大きく空気を吸い込み息を整える
周りを見渡すと大きなタンクがあったり、鉄骨が入り組み複雑な地形になっている
魔石工場、、何をどのようにして魔石を製品にしているかは知らないけど凄い施設であることは間違いない
そんなとこにモンスターを運んできてしまったことに後悔の念が生まれるが仕方ない
死ぬより謝るほうがマシだ
ただここに来ただけでは何の解決にもなっていない
このままアルファたちをを見失った食人花が一般人を襲ってしまうかもしれない
それだけは避けなくちゃいけない
落ち着いてきた息を静かに吐きながら頭を回す
考えろ、、考えろ、、
周りには高い鉄でできた工場
なかには鉄を溶かすための大型の溶鉱炉もある
植物、、溶鉱炉、、
安易な考えだが、なんとかしてあいつを溶鉱炉にぶち込むしか思いつかない
どうやって溶鉱炉にぶち込むかは全く考えていないが
隣をみると不安そうな顔で地面を見つめる雫
あんな得体の知れないヤツみたら誰だって怖くなる
「雫、今からあそこにある溶鉱炉に火をつけに行く。あそこにあの触手たちを入れて燃やすんだ。モンスターだとしても植物が原型だったら燃えるはず」
「本気か?」
「もちろん。このままじゃ悪戯に被害が増えるだけだ」
汗ばむ体は走ったからか、それとも不安からか
しかしやらなければならない
今はリヴェリアもいない、アルファ自身で成さなければならない
決意を固めアルファは鋭く意気込む
「行くよ!」
地面の
この時点で食人花に気づかれてしまえば溶鉱炉にたどり着くまでに襲われてしまう
迅速に、しかし隠密に
器用に入り組んだ鉄骨を躱しながら走り続ける
目標の溶鉱炉までは数十
はやる心臓の鼓動を抑え走り抜ける
「ハァッ!ハァッ!着いた!」
息を大きく切らしながらも溶鉱炉の前にたどり着いた2人
見上げるほどの高さを備えているそれは、いったいどれほどの金属を溶かすことが出来るのか
そんなどうでもいいことを考えたアルファだったがすぐに思考を切り替える
「操作盤を探そう!」
近くに見えるレバーやらスイッチやらを見渡しそう叫ぶ
様々な操作を行うであろう溶鉱炉の周りには到底一瞬では数えきれないほどのスイッチが並んでいた
おそらく、このスイッチで動くのは溶鉱炉だけじゃないのだろう
他にも見たことが無い機械が並ぶ工場で2人は焦りを覚える
(どれだ、、!どれだ、どれだ!?)
手当たりしだいボタンを押したいところだが、それで肝心の溶鉱炉がつかなくなっても困る
ボタンの上に張ってある、辛うじて読める
しかし、そんなに悠長にボタン探しに付き合ってくれるほど食人花は優しくなかった
ドガァァァァン!!!
「!?」
アルファが振り向けば先ほどまでアルファたちがいたところが煙を上げて倒壊している
その煙の中から姿を現したのは、もちろん黄緑の触手
さらにその先端の凶悪な花びらは開いていた
その顔のように現れたそれは中心に鋭利な牙がこれでもかと並んでいて、そこにあった鉄骨をかみ砕いている
「おい!あったぞ!」
前方に気を取られボタン探しを中断していたアルファだったが、雫の声に振り向きその成果に感謝の言葉をおくった
「ありがとう!起動させて!!」
アルファの声が届く前に雫はすでに起動ボタンを押した
ゴォォォンという機械音とともに溶鉱炉が赤く光りだす
あたたまるのに時間がかかる。それまで食人花の相手をしなくてはいけない
そう考えたアルファは雫に避難するよう叫んだ
「あとは僕に任せて!溶鉱炉があたたまるまで僕があいつの相手をする!雫は避難してくれ!」
万が一溶鉱炉が食人花の攻撃で壊れてしまったら近くにいる雫に熱された鉄やら、機械が直撃してしまう
それも懸念した判断だった
「無茶だ!お前も逃げろ!」
しかし雫は頑として逃げようとはしない
そうこうしている間にも食人花はアルファを確認し、尋常じゃないスピードで向かってくる
もう後ろを振り向いて叫ぶ余裕もないアルファは食人花を迎え撃つために長剣を抜刀する
「こんなとこで死ねない、、!!」
その言葉に呼応するように食人花も耳障りな奇声をあげた
速い、、だけど、避けられる!
僕は食人花との戦いに身を投じていた
以前リヴェリアさんと一緒に戦った時より僕のステイタスは上がっている
そのおかげで、僕はギリギリのことろで命を維持していた
縦に叩きつけられる触手
間一髪で横にずれその攻撃を避ける
しかしその衝撃で地面が割れ僕の足元を揺らす
よろめいた僕を逃すまいと追撃が来るが僕はギリギリで跳躍しそれを躱す
横向きに薙がれた触手は工場の建物をまた1つ倒壊させた
しかしその中から触手が現れるのは数秒後
そう、僕が一命をとりとめているのは、ここの道幅が狭いのも理由の1つだ
食人花が横に薙いだ攻撃は必ず建物へとぶつかりその瓦礫で触手を押しつぶす
動きが重くなったその触手はそこから出てくるのに時間がかかる
その間に僕は体勢を立て直し次の触手攻撃に備える
一度にくる触手の数が2本ほどで抑えられているおかげで僕は今生きている
食人花もなかなか僕を捉えられないことにイライラしているようでさっきから狙いが少しずれている
しかしこのままだと地面が破壊しつくされ僕の行動範囲が無くなってしまう現にさっきも足をとられてやられるところだった
この不公平な命のやり取りを続けて数分、一挙手一投足が僕の命を脅かす
「ゼェ、、、溶鉱炉は、、」
息を切らしながらチラリと溶鉱炉の様子を観察、、したいところだけどそんな隙を食人花がくれるはずもなく
「キェェェ!!!」
頭にくる奇声をあげ触手を叩きつけてきた
「くっ、、!」
またしてもギリギリで身を投げ出し避ける
地面に埋まるソレに剣を突きつけたい気持ちはやまやまだがその行為が無意味であることはよく知っている
Lv1の僕がコイツに傷をつけることは不可能に近い
コイツになにかウィークポイントでもあれば別だけど、、
そんなものを探せるほど今の僕に余裕はない
避けることだけに徹してようやく命が保てるのだ
「溶鉱炉は十分あたたまったぞ!!」
不意に聞こえたその声に希望を抱いた
数分しかたってないけど無限にも思えた耐久戦
食人花を溶鉱炉へと誘導しようとした時だった
「ゴフッ!?」
初めてまともに攻撃を受け数
地面でのたうち回り、焦りが一気に加速する
今の攻撃、、見えなかった
今まで縦と横の攻撃しかしてこなかった食人花がここぞというタイミングで
明らかなミスリードに引っかかった
貫かれたお腹からは尋常じゃない痛みが走る
痛む脇腹を触るが血は流れていない
ギリギリで反応した僕の体は直撃のタイミングに少し引いたようでお腹に風穴が開くまでには至らなかったみたいだ
だけど内臓、、イったなコレ、、
明らかにおかしいお腹の様子にうめき声をあげる
そんな僕のトドメを刺そうと食人花がその軟体を近づけてくる
なんとか体を引きずり起こし溶鉱炉へと向かう
長剣を地面に突き立てるが歩みは遅々として進まない
このままだと溶鉱炉にたどり着く前に殺される
さらに溶鉱炉にぶち込む方法も思いつかない
、、死んだかも
そんな諦念を浮かべかけた時だった
「こっちだ!!クソヘビ!!」
上のほうから聞こえたその声は女の子に似つかわしくない言葉遣いだった
雫!
見上げれば工場の建物の端に括り付けてある鉄骨やら鉄パイプの紐を刀で斬り落としたところだった
「え、ちょ!?」
明らかにその落下範囲に僕も入っていたので慌てて前に転げまわる
「痛っ!?」
潰れた内臓を自分でさらに痛めつけるような真似をしてまた鈍痛が走る
しかし後ろを振り向けば目と鼻の先に落下してきた鉄骨やらは食人花に直撃しその巨体の動きを数秒、封じ込めた
「ちょっと、僕も危うくお陀仏なんですけど!?」
お腹の痛みを無視して、いつの間にかあんなとこに居た雫に抗議の声を上げる
「生きてるんだったらいいだろ!!はやく溶鉱炉に行け!!」
そんなことを言われては足を進めるしかない
溶鉱炉に向かって歩き出しなんとかたどり着く
すっかり燃え盛っているようで近くにいるだけでめちゃくちゃ熱い
「どうやってアイツを入れよう、、、」
大きさ的には確実に食人花はこの中には入らない
しかし触手の半分でもこの中に入ってしまえば燃えてくれるだろう、、、と思う
ガラガラと音をするほうを振り向けば、鉄骨を押しのけ体勢を立て直した食人花がこっちに向かってくるところだった
「ここで攻撃を受けるしかない、、か」
ここで攻撃を受ければ触手が確実に溶鉱炉を破壊し、中の溶けた鉄やらが触手にかかるはず
そのまま燃え移ってしまえばこっちのもんだ
ただ下手をすれば僕も燃え尽きて死んでしまう
上手いこと触手を溶鉱炉に突っ込ませなくちゃ、、
さっきほどじゃないけど痛むお腹をさすり僕は剣を構え挑発した
「ほら!やってみろよ!!」
その言葉の意味が通じるはずはないけど、煽られているのは十分理解できたらしくまたまた奇怪な叫び声をあげ突進してくる
またしても繰り出された触手による突き攻撃
しかし一度見た技をそう何度も喰らう訳にはいかない
「フッ!」
点による攻撃は防ぎにくいけど、避けるだけならまだ、、!
何とか身をひねり直撃を躱す
もちろんその突き攻撃は溶鉱炉を破壊し中から高熱の液体を噴出させた
「うわっ!」
危うく体にかかるところだったがそれもまた身をひねり回避する
そのひねる動作は僕のお腹をしっかり痛めるんだけど
「キェェァァァ!?」
「ちゃんと燃えた!」
食人花が突っ込んだ触手の先端は赤いドロドロとした液体に覆われていてしっかり発火している
それをブンブンと振り回し消そうとしているのはなかなか面白い光景だ
溶鉱炉が一部破壊されたことで周囲の温度はさらにグッと上がる
痛みによる汗なのか、温度による汗なのかもうよくわからない汗を流す
火がどんどん移っていく触手を振り回し叫び声を上げ続ける食人花
その振り回された触手は近くの建物をなぎ倒し火を燃えうつらせていく
さらに他の触手も暴れまわり辺りを無茶苦茶にし始めた
「あぶなっ!?」
その薙がれた数本が僕のほうへ向かってくるがしゃがんで躱す
僕自身を狙ってるわけではないので避けることはさっきよりやりやすい、と思ったとたん
「ヤバッ!!」
不意に薙がれた触手
ギリギリで反応し剣を盾にして攻撃を受ける
あっけなく吹き飛ばされた僕は建物に激突し息とともに大量の血を吐いた
その触手は溶鉱炉をさらに破壊し中から大量の液体をまき散らした
ジュワアァァ、、
流れ出た液体は地面を流れどんどん広がっていく
血を吐き動けない僕もその液体に溶かされる、、ところだった
「逃げるよ!」
体を起こされ横を見るとそこにはさっきまで建物の上に居た雫が居た
「ホントに何なのあいつ!もうちょっとで建物から落とされて死ぬところだった!」
どうやら暴れていた触手が雫が居た建物を直撃して落とされるところだったらしい
溶鉱炉の熱で汗ばむ雫に肩を担いでもらい僕達はそこから避難した
さっきまで僕がいたところはすっかり溶岩のような液体に飲み込まれそこに倒れていたらと思うとゾッとする
その液体は道一帯に零れ、食人花のところまで広がった
「キェァァァァァ!!」
断末魔、僕達はそう思った
雫も僕を引っ張りながら食人花のほうを見やる
なんとかして食人花を燃やすことが出来た僕達は、燃え広がる液体を完全に避けれる場所で腰を下ろす
遠くでは食人花が触手をのたうち回らせいつまでも耳をつんざく悲鳴を上げている
「何とかなった、、」
僕は呟きと同時に血を口から漏らし、内臓のダメージがタダではないことを知る
「おい!大丈夫か?」
心配そうにこちらを見て手で背中をさすってくれる雫に感謝する
だけど、雫が鉄骨を僕の上に落とさなかったらここまで悪化することなかったけどね!
「ホントにあんな奴を倒せたのか」
雫が僕を見る目はいったい何を意味しているか僕には分からなかった
そう言えばなんか静かだ
何か、違和感がする
、、、、、
「雫、、アレ、、」
その違和感の正体は、この状況だ
今まで断末魔をあげていたはずの食人花の声が聞こえない
それに代わって聞こえてくるのは堅い、破砕音
ゴリッ、ガリッ、、
その音のほう、食人花が燃えていたはずのほうを僕らは見つめる
そこには燃えながら、蠢く黄緑色の触手
さっきまでのたうち回っていたはずの触手は、その身を焦がしながら、しかし表面が焦げ付いたそばから新しい皮膚を生成している
さらに触手の先端、凶悪な顔面の先からその破砕音、いや、咀嚼音が聞こえてくる
ガリッ、ボリッ、、
その咀嚼音の正体、何を喰らっているのかは遠目からでも確認できた
「『魔石』を喰ってる、、」
そう『魔石』
溶鉱炉をあたためるための加熱用魔石製品
それを大量に口の中に含み、かみ砕いていた
焼け焦げた表皮はすぐに新しいものに生まれ変わり火傷のダメージがゼロになっている
「不味い、、」
明らかに、どう見ても、ソレは進化していた
「嘘、、、」
僕らは声が出ない
目の前で起きる人間の理解を超えた出来事
神が冒険者に恩恵をもたらすように、魔石がモンスターにもたらす破壊の力
回復した触手は地面からさらに多数生え始め周りの建物を破壊していく
さらに驚くべきはその威力
さっきまでは建物を破壊するのに数秒を要していたが今は一瞬のうちに粉々にされる
明らかな絶望の出現に僕らは成す術を失った
魔石を喰らい終えた食人花は一回り体格が大きくなったようで道幅いっぱいにその触手を広げていた
僕はもう動けない
雫も戦意をへし折られた
さっきまでの食人花も溶鉱炉というものに頼る形で追い詰めることが出来たのだ
それがもう燃えてはいるがその場でダメージを回復している
今も咀嚼を続けるソレは、次はお前だといわんばかりにこちらを睨みつけているようだった
「に、逃げるぞ!!」
勝てない、成す術がない、何もできない
自らの非力を認め撤退を始める、がそれはすでに遅かった
完全に力を蓄えなおした食人花はもう目に負えない速度で触手を伸ばしてくる
ドゴォン!
僕達の真横に直撃した燃える触手は地面を抉り取り本体のほうへ戻っていく
さっき戦っていた時とは比べ物にならないほどの轟音と破壊力
上手く動けない僕が食人花から逃げきることは出来ないだろう
僕1人があいつに捕まれば雫が逃げる時間は稼げるだろうか
「雫、僕を置いて逃げるんだ!僕はもう走れないから!」
「い、いやよ!ここに仲間を1人置いて逃げるわけにはいかないでしょ!」
僕の目をしっかり見て、汗を流す雫はそう言い切った
僕の腕を引っ張り必死に食人花から離れようとする
っていうか今、仲間って、、
「キェェェ!!」
どうやら感傷に浸らせてくれるほど食人花は優しくないようだ
雫にこう言われたから逃げることを諦めてはいけない
なんとか足を動かし食人花から遠ざかるが、それはほとんど意味をなさない
次の触手攻撃が当たってしまえば僕らは死んでしまうだろう
だけど、絶対に足を止めない、肩を支えてもらっている雫に応えるために
「キェェェァア!!」
もう一度聞こえたその奇声に僕らが覚悟した時だった
金色の風が、ささやかな言葉とともに降り注いだのは
「【
その静かな声色とは裏腹に荒れ狂う暴風が食人花を襲う
その暴風は燃え盛る炎を巻き上げ赤い竜巻を巻き起こす
「ギエェァァァ!!」
今日2回目の断末魔を上げる食人花
その表皮は火傷を負っては回復を繰り返すが、かえってそれが自分自身を苦しめる
その再生速度が仇となり自分を苦しめ続ける
ボロボロと再生を繰り返していた表皮が徐々にその頻度を緩めていく
なんとかその炎の檻から抜け出そうとするが、荒れ狂う暴風がそれを阻む
魔石を喰らいつくした食人花はそれ以上強化することもなく燃え始める
再生速度が限界を迎え表皮が黒く変色し始めた
「ギァァ、、、」
力ない声を出し食人花は燃え尽き、完全に黒い灰へと変貌した
極彩色の輝きの魔石を残して
「い、いったい何が、、」
完全に殺されたと思いきや、食人花が燃え尽き息絶えた
そんなありえない状況に目を丸くする
声がした上空を見上げればそこには、金髪の美しい少女がゆるりと浮いていた
「妖精、、、?」
その金色の輝きと舞うように宙に浮かぶ姿はまるで妖精のように見え僕は思わず見惚れてしまった
「大丈夫、、?」
その優しい声とともに舞い降りてきた少女
着ている可愛らしいフリル付きの服はボロボロになっていてあちこちで肌が見え隠れしている
そういう耐性が無い僕は思わず目をそらしそうになるが、命の恩人に失礼な態度をとるわけにもいかずひとまずお礼を告げる
「助けてくれてありがとうございます。どうしてここに来れたんですか?」
オラリオの中心からは程遠く、人もいないこの工業地帯にどうして来れたのか
「、、、上から、探した、、」
何ともないように淡々と告げられた言葉
その言葉に開いた口から言葉は出ない
さっきの魔法と言い、この人が発するオーラは僕達とは格が違う
ホントに言葉通りなのだろう。彼女はそれ以上言葉を発さずただの灰となった食人花のほうを見やる
「あれ、君たちが燃やしたの、、?」
「はい。まぁ、奇跡かなってくらいギリギリでしたけど」
「そうなんだ、、、」
またしても沈黙
僕自身初対面の人との会話のキャッチボールは苦手だ
助けを求め声をかけようと振り向けばそこに雫はいなかった
少し離れた鉄骨の影でこちらの様子を伺っている
雫ってそんなに人見知りだったの?と首をかしげる
あ、そうか。この人が魔法を使っていたから、それを封じてしまわないために、、
雫の配慮は素晴らしいけど、なんだか凄く、辛い
雫が礼も言えない人だと思われるのが嫌だったので僕は金髪の少女に向き直り代わって礼を告げる
「すいません。彼女は少し人見知りで、、ホントにありがとうございます、僕達を助けていただいて」
雫の性格を1つでっち上げてしまったけど許してほしい
「そう、なんだね。、、私もあまり得意、じゃないから、、分かる」
そうポツリと呟きを落としフッと視線を僕から外す
そのまま歩き出しようやく炎が収まってきた溶鉱炉の前へ向かう
僕も行こうと思ったけどもう足も思うように動かないし、お腹も痛い
無理に動こうとはせず剣を支えに僕は彼女の動向を見守った
彼女はその砕けきった地面を軽い身のこなしで通り過ぎ、目標物の目の前にとまる
腰を折り拾い上げたそれは、魔石
ダンジョンのモンスターから手に入る魔石は紫紺の輝きを放っているが、それは違った
極彩色の輝きを放ち禍々しさすら感じる
彼女はそれをジッと見つめ何かを考えているようだった
「おい、お前はあの女に連れて行ってもらえ。その傷、深いだろ。私はこのまま自分の工房に帰って寝る。私が余計なことをしてあの女の魔法を奪ったら大変だからな」
いつの間にか近くに来ていた雫はそう言い残し足早にこの場を去る
「あ、ちょ、、!?」
思わず追いかけようとしたがお腹の激痛に襲われうずくまってしまう
顔を上げればもう見えなくなってしまった雫の背中
雫だって怪我をしているのにそれをどうするんだよ、、
彼女の優しさと不器用さに触れ複雑な気持ちで立ち上がる
「ねぇ、、あの子は、?」
「あ、先に帰ってしまいました。寝るって」
「そうなんだ、、」
金髪の少女もいつの間にか僕の横に戻ってきていて驚く
その手には食人花の魔石がしっかりと握られていた
「そういえばまだ名前を聞いてませんでした。僕はガイア・ファミリアのアルファ・イロアス。です」
「アルファ、、私は、ロキ・ファミリアのアイズ・ヴァレンシュタイン、、」
え!?リヴェリアさんと同じロキ・ファミリア!?
もしかして、、、【剣姫】!?
その容姿、言われてみれば噂に聞く金髪の女剣士とはまさにこの人の事だった
オラリオで知らない人はいないくらい有名な冒険者に、僕は命を救ってもらったのだった
食人花が工場でアルファたちを見失ったのは、魔石工場だったからです。魔石がアルファたちの存在をくらましてくれたのです