ダンジョンでハイエルフに出会うのは間違っているだろうか   作:98zin

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シルさんポジションを誰にしようか悩みどころさん


モヤモヤ

「ほぁ、、」

【ガイア・ファミリア】の本拠地、風車台の地下にて僕は目を覚ます

この部屋を照らす唯一の明かりは天井についている天窓からの光だ

「6時か、、」

壁にかけてある、魔石によって動く時計を確認する

僕の朝は冒険者にしては早いほうだと勝手に思ってる

普段僕がダンジョンに行くときはまだちらほらとしか他の冒険者を見かけない

だけど、ベルはどうやら僕より早いらしい

彼とダンジョンで会ったとき、朝6時にはすでに潜っていたらしく、少し溜まった魔石を見せびらかしてきたのだ

「僕は故郷の田舎で、朝早くから畑仕事に駆り出される習慣が染みつき体内時計ができちゃってるんだよ」

そう言ってさわやかな笑顔で事もなげに言う彼に軽い劣等感を抱いてしまったのは1週間ほど前の話だろうか

「ベル、、無事かな、、」

ベルのことを思い出すと同時にその身の安否も気になった

なにせ昨日はあんな上層にミノタウロスが何匹も出現したらしいのだ

僕が遭遇した2匹だけじゃなく他にもと考えるとゾッとしてしまう

Lv1である僕ら新米冒険者にはまったく歯が立たないミノタウロス

臆病な彼ならミノタウロスに出会っただけで失禁してしまいそうだ

頭の中で考えてても仕方ないし、きっと今日も僕より先にダンジョンに潜っているだろう

気にすることはないさ

さーて、今日も頑張るぞ!

と、気合を入れていつもの僕の寝床のソファから降りようとすると

「むにゃむにゃ、、」

なーんでここで神様が寝てるのかなぁ

仰向けの僕の体の上に、いつもは自分のベッドで眠っている神様が寝転がっていた

「んーーー、、、」

なかなかな密着具合に少し緊張してしまうけど起こさないようにそーっと神様を持ち上げながら脱出する

めっちゃ軽いなこの(ひと)

身長は僕と同じくらいなのに体重が僕の半分ほどだろうか持ち上げるのに全く苦労しない

「むにゃぁ、、」

静かにしてたらかわいいのになぁ、、

直接言ったらまたギャイギャイ合戦になりそうなことを考えてしまい思わず苦笑してしまう

彼女が目を覚まさないうちに今日も出かけよう

乱れた毛布を彼女にそっとかけ直し出発の準備をする

今日は何階層までにしようかな

なんてことを考えながらようやく着慣れた冒険者用のライトアーマーや革の手袋を身に着けていく

あ、そうだ、昨日壊れた長剣の買いなおしをしないと

まずはギルドで買い物だなー

ギルドでは、新米冒険者の死亡率を減らすために初期装備はとても安く買えるようになっている

借金も可能で、僕も最初はお金を借りて装備を整えた

準備ができると神様を起こさないように忍び足でドアに向かいドアノブに手をかける

 

「いってきます」

 

閉め際、神様を起こさないように今日もそっと呟きを部屋に残して出かけた

 

 

 

 

 

 

 

 

既に東の空は明るく、町の人影も夕方ほどではないがまばらに見える

「お、そこの兄ちゃん冒険者かい?ダンジョンに向かうなら『ポーション』、必要じゃねえか?小さな傷ならその場で癒える!冒険者の必需品!オープンしてすぐなら安くしとくぞ?」

朝、ダンジョンに向かう冒険者に向けて、ちょうど鎧戸を上げた露店がいくつか見える

そのうちの1つのヒューマンのおじさんから声がかかった

みると店頭には様々な色の液体が試験管に入っていていかにもな雰囲気はあるお店だ

しかし僕はこの半月で行きつけのお店がもうできてしまったのだ

「あ、おはようございます。僕もう間に合ってるんで大丈夫です」

出来るだけやんわりと断りたいのだけど、どうも人と喋るのは苦手で固くなってしまう

「そうか!今日も1日頑張れよ!」

1つ小さく礼をしてその場を立ち去る

なかなかに優しい人で助かった

スタスタと歩を進めしばらくして徐にバックバッグから包装された固い黒いパンを取り出す

今日も固いな~

一口かじるにも相当力を入れないと噛み切れず、食べるのに苦労するのだが、この黒パンはパンにしては日持ちするし、安く手に入るのでいつもの朝ごはんとして重宝している代物だ

もぐもぐと食べ歩きを続ける僕

まわりには鎧を着こんだ屈強なドワーフたちや、もはや布を括り付けているだけじゃないかという格好のアマゾネス

今からダンジョンに向かうのだろう、パーティメンバーたちと今日はどうするか、予定はどうしようか、そんな声が聞こえてきて

「あー、僕もパーティ組みたいなー」

思わず心の声が漏れてしまった

知り合いの冒険者といえば、ベルくらいしか思い当たらず、自分の社交性の無さにブンブンと頭をふる

 

「ベルとは相性が合わなさそうだな~」

 

武器の相性もそうだが、何故かそう思ってしまう

そして黒パンをようやく1つ食べ終わるころに、最初の目的地であった『青の薬舗』にたどり着いた

「ナァーザさん、おはようございます」

「おはよう」

店の中でポーションが入った試験管をせっせと運んでいた犬人族のナァーザさんに挨拶をする

彼女はこの青の薬舗で働く【ミアハ・ファミリア】の唯一の眷属だ

僕がここを行きつけにするには理由がある

 

半月前、初めてポーションを買おうと町に繰り出した時、こわもてのお兄さんに絡まれたことがあるのだ

 

「よぉ、そこのお兄さん、ポーションが欲しいならウチのはどうだい?安くしとくゼェ?」

 

新米冒険者を狙う悪徳なヤツだというのは素人目でも分かったが、このオラリオはステイタスがものを言う

がっしりと肩を組まれた僕は一切の抵抗もできず、あからさまな粗悪品を法外な値段で買わされそうになったところを

 

「君、あんまり新米冒険者をいじめるんじゃない。それになんだその薄いポーションは。それでそんな値段を出せるわけないだろう」

「あぁん、誰じゃわれぇ?今こいつはウチの商品を、、って、神様!?」

がしっとそのチンピラの肩を掴んだのは1人の美青年だった

「そんな効果の薄いポーションじゃ、冒険者用の命に関わる。人の商売にあまり口出ししたくないが、いささか放置できかねるぞ」

「失礼しましたぁ!!」

するっと僕の肩から手を離し一目散に逃げていくチンピラ

見ず知らずの僕を助けてくれた神様に一言お礼を言おうと口を開こうとするが、手を上げ制される

「子どもが困っていたら手を差し伸べるのが神だ。私は当たり前のことを下までだよ」

この(ひと)優しすぎるっ!

この時はオラリオにきてすぐだったので人見知りが激しく、あうあうと声も出せないでいたところに

「それで、、ポーションを探しているんだよね?さっきのチンピラじゃないが、ぜひウチの商品を見ていってはくれないだろうか?」

こんなに優しい(ひと)は滅多にいないだろう

お祖母ちゃんに教えたらきっとひっくり返って驚いてしまう

 

これが青の薬舗に僕が来る理由だ

 

 

 

 

「それで?今日は何本買ってくれるの?」

眠そうな目をこすりながら尋ねてくるナァーザさん

眷属が1人なので、ミアハ様がいないときは1人で営業しなければならないみたいだ

朝早くから、ご苦労様です

「いやー、僕もお金に余裕はあんまりないですから。今日は2本で勘弁してください」

「わかった。5本ね、2500ヴァリス」

「今日はホントに勘弁してくださいっ!この後装備も整えないといけないので!」

「、、わかった。1000ヴァリス」

不服そうに、んっと出された手には2本の試験管

それを受け取りキッチリと1000ヴァリスを空になったその手に乗せる

「、、確かに。それじゃあ、今日も頑張って稼いで来てね、、」

「はい!ありがとうございます!」

軽く一礼をしいそいそと試験管をバックバッグに仕舞う

その場を後にした僕はギルドへと足を向けた

 

 

、、、ちなみにここで買っているポーションはこの前のチンピラよろしく、品質偽造されていることに気づくのはまだまだ先の話だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~黄昏の館~

 

 

 

ロキファミリアの本拠地『黄昏の館』の食堂には今日も朝から大勢の眷属が集う

主神ロキの『出来るだけご飯を一緒に食べよう』というお言葉のもと眷属たちは和やかに朝食を楽しんでいた

長方形のテーブルがいくつも並べられ、各々好きな場所で食事をとる

朝からにぎやかなロキファミリアの眷属たちだったが、今日はあるテーブルの一角の金髪の姫が発するどんよりとした空気が気になっていた

 

「おい、アイズさんどうしたのか誰か知ってるか?」

「いや、私も分からないよ、、」

「まさか、、失恋!?」

「バッカ!そんな訳ないだろ、、」

 

ガヤガヤとしたざわめきの中、自分のことを噂する声も耳に入らず、手に持ったフォークでひたすらポテトを刺し続けるアイズ

彼女が放つどんよりオーラは隣接した3つ先の席まで誰も座らないほどには、ひどいものだった

そんな誰も近寄らない彼女の近くにスタスタと近づく人影が3つ

 

「アーイズッ!どうしたの~?昨日の遠征が終わってからずっとどんよりしてるよね?」

「そうよ、周りを見てごらんなさい。あなたが放つオーラのせいで近くに誰もいないじゃない」

「あっ、あ、あの!アイズさん!私でよければ、お話を聞きますよ?」

 

明るい声で彼女を心配してアイズの正面の席へ座ったのは、アマゾネスの姉妹の妹ティオナ

やれやれと両手をふりスッと、持っていた朝ごはんのプレートをテーブルに置きアイズの隣に座るのは、姉のティオネ

ティオネの正面にはなぜか不服そうな顔をしてアイズの対角線上の席に着くレフィーヤ

自分を気遣ってくれる仲間にちゃんと答えれないのが少し心苦しいのか、それとも胸のモヤモヤを打ち明けることにためらいがあるのか、少し間を置いて、何でもないと答えるアイズ

「まぁ、あなたが喋りたくないのなら無理にとは言わないわ。だけどたまには私たちを頼ってもいいのよ」

「うん、ありがとう」

そして、暗かったテーブルの一角も3人のおかげで明るく楽しいものになった

ただ、アイズの胸中は昨日出会った白髪の少年が見せた、戦慄(しょうげき)に打ち抜かれたような表情がしこりのように残っていた

 

 

 

 

「、、、、、」

「どうしたんだい、リヴェリア。いつになく顔が険しいじゃないか」

「そうだぞ、お主、そんな顔じゃシワが染みついてしまうぞ」

フィンの執務室にて、ロキファミリアのトップ、フィン、ガレス、リヴェリアが集まっていた

「む、すまない。そんなに顔に出ていたか」

いつもならフィンとガレスに憎まれ口を1つや2つ返すところだが、素直に受け取るリヴェリアに顔を見合わせる2人

「リヴェリア、なにかあったのかい?」

仲間の心配事は共有しておきたいフィンはからかうのをやめて疑問を口に出す

そんな2人の様子に気づいたリヴェリアは昨日あったミノタウロスとの追いかけっこの一幕を語る

「なに、昨日出会った新米冒険者のことが気になってな。ミノタウロスを倒すときに魔法に巻き込んでしまってな、気絶させてしまったんだ。そこで介抱したのだが目を覚ました後、おびえるように逃げて謝罪の一言もかけれなかった」

それを聞いた途端フィンはぷっと笑いガレスはドワハハ!と豪快に吹き出した

「なーにそんなことを気にしとったんか!助けてもらったのに礼も言わずに逃げ出す臆病者に謝ることなどないわい!」

確かにそういう見方もあるが、こちらが一方的に迷惑をかけておいて謝らないというのも筋が通らない話だ

このモヤモヤを抱えたまま過ごすのはいささかどうなのかと思いつつも、彼はおそらく新米冒険者

自慢ではないがトップファミリアに名を連ねる以上彼と関わる機会はとても少ないだろう

こうしてまた1人、むーんと考え込むリヴェリアにこれ以上言葉をかけることはなくただ2人は、旧友の姿に軽く微笑むのだった




オリ主の性格が迷子です
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