ダンジョンでハイエルフに出会うのは間違っているだろうか 作:98zin
若いって凄い
「フッ!」
剣閃が走る
「ハッ!」
白兎が駆ける
片腕を失ったウォーシャドウたちはなんとか残りの腕で交戦するが、なかなか攻撃に転じられない
「シッ!」
白兎が繰り出した高速の連撃は反応が鈍ったウォーシャドウを屠るには十分だった
「、、、」
断末魔も上げずドサリと地面に倒れ伏すウォーシャドウ
仲間がやられたことで無言の怒りとともに捨て身で突撃してくる残りの1匹
片腕とはいえ6階層初出のモンスター
そのポテンシャルは凄まじく、怒りによってブーストされたその爪はベルにあと一歩のところまで迫る
ベルにその凶悪な爪がベルの命を奪い取ろうとしたその瞬間
それを待っていたかのようにベルの後ろから1つの影が現れる
デジャブを感じたウォーシャドウだったが時すでに遅し
その爪がベルに届く前に、ウォーシャドウの体は半分に分かたれた
ルームに2人の荒い息遣いだけが聞こえる
「、、勝った」
目の前に倒れたウォーシャドウは魔石までも半分にされておりその体を黒い霧へと変化させた
ギリギリだった、、
僕は今生きていることに驚きを隠せない
間違いなく1人なら死んでいただろう
ベルがウォーシャドウ2体の攻撃を全部捌き反撃すら行う
僕はベルの後ろでかばってもらいながら戦ってたんだ
助けに来たのか、助けられてるのか分かんないや、、
最後の一撃だってウォーシャドウが完全にベルにしか意識をさいていなかったから決まったんだ
僕なんて最後のほうは相手にされてなかった気がする
どうしてこんなにも差が出るのか
同じ時期に冒険者になって、同じ体格で、どうして?
しかしダンジョンが、胸の奥のわだかまりを整理させてくれる暇を与えるはずもなく
ピキリ、、、ピキッ、、
いたるところの壁や天井からモンスターが産まれる音がする
これいけるかな、、
ベルを見るとろくに装備もつけず、服は引き裂かれ血が滲んでいた
「ベル、これ使って」
手渡したのは青の薬舗でナァーザさんから買ったポーション
今日の探索で使い切らなかった分だ
満身創痍の彼にこのまま戦わせるわけにはいかない
「ありがとう」
素直に受け取ったベルはそれを一口ですべて飲み干す
完治とまではいかないが明らかにさっきより血の気が戻っている
「絶対帰るよ」
産まれ落ち産声を上げる大量のモンスター
恐怖で足がすくみそうになるがそれを制して自分を鼓舞する
頑張れ!僕!
ベルばっかりに頼ってちゃだめだ!
ベルより先に一歩強く踏み出す
眼差しが見据えるは、迫りくる数多の
目の前に見える絶望の塊に抱くのは恐怖だけではない
隣に立つ頼もしい同期と必ず地上へ帰る
走り出した僕らは雄たけびを上げる
希望を胸に、熱く燃える背を、感じながら
薄暗い地下室の一角
壁にかかっている魔石時計とにらめっこを続けるのは、アルファの主神ガイア
針が指し示す数字は5
今までアルファがここまで遅く帰ってくることはなかったしこれからも無いと思っていた
(いくらなんでも遅過ぎるわ、、、!)
どこかの神とまったく同じ思考を展開するガイア
昨日の朝、私がベッドじゃなくアルファ君のソファで起きてから一度も彼を見てないわ!
私がバイトに行っている間に返ってきた様子でもないし
夜ずっとドアの前で、飛びつき待機してたのに一向に帰ってこない
カチカチと鳴り続ける時計の音が焦燥を掻き立てる
昨夜、流石にお腹がすいた私は1人で寂しくご飯を食べてアルファ君の分までちゃんと用意して、、
良妻かよ!って1人でニヤニヤしていたのが恥ずかしいわ!
10時、11時、12時とあまりにも帰りが遅いから探しに出かけたはいいものの暗い夜道
黒髪の彼を見つけるのは容易じゃなかった
いったい何をしてるのかしら!
これといった収穫もなく、ただ酔っぱらった冒険者にナンパされただけだった
ただ無情に過ぎる時間
唯一の眷属である彼の恩恵が途絶えていないことは分かってはいるのでパニックまでには至らないが焦りによる冷汗は止まらない
ただの夜遊びだったら、、まだマシなんだけど
アルファがそんなことをする性格ではないことは一番わかっているのだがそう願うほかなかった
日も昇りはじめ地下室も薄暗く照らされ始める
もう一度探しに行こう
多少明るくなったことで彼のことも探しやすくなったはず
ガイアがドアノブに手をかけ捜索に向かう瞬間
ガイアがドアノブを回す前にクルッとドアノブが回った
「!、、ふぎゅ!?」
こちらに向かって開いたドアはガイアの顔面を強打
鼻っ面を攻撃されたガイアはそのまま地面にうずくまり涙目で鼻を押さえる
「いった~、、、ってアルファ君!?」
開かれたドアから部屋に入ってきた人物を見上げるとそこにはボロボロのアルファが立っていた
「あ、、神様ごめんなさい」
いたるところから血を流し冒険者用のライトアーマーも欠けていて損傷が激しい
顔も血の気が抜けていて、ただでさえ色白の彼を病的にする
「ど、どうしたの?こんな朝まで帰ってこないで」
「ダンジョンに潜ってました、、」
「なっ!ホントに!?どうして?」
「ベルを探しに行ってました」
ベル、、アルファ君がオラリオに来るまで一緒だった子だ
彼から少し話を聞いたくらいしか知らないけど、、
「彼も無事なの?」
「はい。ホームに送り届けてきました」
「ふぅ、、。2人とも無事ならいいわ。言ってやりたいことが山ほどあるけどとりあえず傷の手当てが優先ね。シャワーで汚れと血を流しましょ」
彼に肩を貸し一緒にシャワー室へと向かう
滴る血が彼女の衣服を汚すのを見てアルファは戸惑う
「か、神様、服が汚れますよ」
「そんなの気にしてちゃ手当も何もできないでしょー」
彼女はそう答え彼の体を支える
アルファは彼女の行動に嬉しさを感じながらも申し訳ない気持ちになり複雑な感情になった
「あ、そうだ」
思いついたようにガイアが声を上げる
「アルファ君、今日はベッドで寝ること。分かったわね?」
「いいんですか、、、?」
「当然よ。ただ私も一緒に寝させてもらうけどね?」
ニヤリと片頬を吊り上げ告げるガイア
1日アルファと会えてなかったのでショタ欲が溜まりに溜まっている
現にこうして密着してアルファをシャワールームまで支えるのも心配7割、欲3割といったところだ
初心な反応を期待して耳を澄ませるガイア
「分かりました。すぐに一緒に寝ましょう、神様も疲れてますもんね」
「ぬぁ!?」
即答かつまさかのオッケー
予想を裏切る反応に思わず声が漏れる
もっと驚くところでしょ、そこは
何で私が驚いちゃってるのよ
どうやら心身疲れていつものギャイギャイ合戦をする気力は無いようね
動揺しちゃったけどこれは大チャンスよ
言質はとったわ
思う存分堪能させてもらうわ
あの貧弱そうに見えて実は引き締まった体にぐりぐりと体を押し付けてアルファ君の匂いをたっぷり吸うのよ
神特有の変態根性を全開に来るべき極楽を想像してにやける
「神様、、、」
「にゃ、にゃんだい!?」
横から呟かれる声にドキッとして変な声がでる
まさか見透かされた!?
「僕、強くなれますか?」
弱弱しく呟かれたその声は自信を失っていた
何があったのかは分からないし、甘やかしてしまいたい気持ちは投げ捨てて
「、、、それは君次第だよ」
なれる、と簡単には決して言わない
彼が
彼が冒険者になった理由は、幼い少年1人にはあまりにも厳しすぎるものだから
アルファ・イロアス
Lv1
力:H101→G264
耐久:I64→H138
器用:I71→H150
敏捷:I89→H154
魔力:I55→I70
魔法
【 】
スキル
【 】
「、、、」
僕は自分の更新されたステイタスを見て目を疑った
昨日あれだけベルと無茶をしたのでそれなりに上がっているだろうとは思っていたけど、期待以上だ
力がG台に突入して他も70近く上がってる
不思議なことに魔力の上昇は今回も起きてる
魔法なんて一切使えないのに
昨日神様に手当をしてもらった後、僕は死んだように眠りについた
朝目覚めると腕の中に神様を抱いていたので、危うくもう一度眠りにつきそうになったけどなんとか意識を引っ張りベッドから脱出した
体中の筋肉痛、倦怠感、傷口の痛み
昨日どれだけ無茶をしたのかがよくわかる
実際今僕がここに生きていること自体奇跡のようなものだ
どうやら1日丸々寝てたようで今は朝の早い時間帯
目を覚ました僕に気づいた神様も起きて、とりあえずステイタスの更新を終えたところだ
神様を見るとウーンと首をひねっては声を絞り出し何かを考えている様子だ
僕はもう一度ステイタスが書かれた紙に目を落とした
やっぱりあのスキルのせいよね、、
アルファがステイタスを見ている間に考えるガイア
リアリスフレーゼ、、
アルファの心がヤツに向いていることをしっかりと教えてくれるスキル
まったく面白くないわ
ただの嫉妬という感情しか湧かない
しかしそのおかげでアルファは確実に強くなれる
強くなれることに越したことはないけど、あまりにも早すぎる
彼が慢心を抱くことは無いと思うけど早すぎる成長は心身ともに負担をかける
昨日のように無茶をすることがあるかもしれない
その時に自分の力を見誤った判断をしてしまうとホントにどうしようもなくなってしまう
ストッパー、、いち早く眷属を増やすべきね
彼が1人で無茶しないように、できないように仲間がいるわ
いたった結論に納得するが、アルファとの2人きりの生活を崩されてしまうのかと思うと独占欲が顔を出す
いやいや、これはアルファ君のためよ
そう簡単に弱小ファミリアに入ってくれる人はいないと思うけど必ず探し出すわ
そうと決まれば、、
特に何も入っていないクローゼットへと向かい一番上の引き出しから1枚の招待状を取り出す
『ガネーシャ主催 神の宴』
これね
別に行く予定はなかったけど、ここで神同士の情報収集ができれば一番いいわね
新しい眷属じゃなくても他のファミリアとの合同パーティでもいいと思うわ
それにレアスキル、成長スキルの発現例も調査しないと
我が子のためならと意気込み気を引き締める
「アルファ君、私今日の夜はいないからね。申し訳ないけど1人でご飯を食べるか、外食にでも行ってちょうだい」
「分かりました。用事、、ですか?」
「まぁそんなとこだわ。ところで今日もダンジョンに行くのかしら?」
「はい、、ダメですか?」
昨日のこともあって少し遠慮気味に尋ねるアルファ
「ううん、大丈夫よ。気を付けて行ってらっしゃい」
「ありがとうございます」
まだ少し申し訳なさそうに頭を下げるアルファに微笑むガイアだったが、牧場バイトのことをすっかり忘れているのはまた別のお話
オリジナル展開に入っていく予定なので、本家との違いは見逃してください