ダンジョンでハイエルフに出会うのは間違っているだろうか   作:98zin

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再会

「今日も元気ないなぁ、アイズたん」

ホームの空中回廊

中庭が見渡せる渡り橋から金髪の少女を眺める

1人長椅子ただ座っているだけ

「昨日もずーっとあんな感じやったし、、」

「珍しいを通り越して不可思議だな、アイズが無為に過ごすのは」

会話を交わすのは、主神ロキとリヴェリアだ

アイズがふさぎ込んでいる理由はあらかた想像がつく

「やはり酒場での一件か」

「そんなにベートにセクハラされたんが嫌やったんかなぁ。あ、ちなみにベートも凄い勢いでへこんでるで」

「知らん。自業自得だ」

酒場での出来事はもう二日前になる

1人アイズが酒場を出た後、皆がベートによってたかって報復し、縄で動きを封じ店の外に吊るし上げたのだ

もちろん腹が立っていたリヴェリアもそれに積極的に参加して、ベートの頭を踏んづけてやった

「でもそんなんでへこむほどアイズたん繊細やないし、、」

「他に原因があると」

「多分な、それこそアイズたんしか分からんくらいの」

酒場で急に飛び出していった客

それを追いかけて飛び出したアイズ

店の店員まで追いかけていったあの一瞬にアイズにとって無視できない何かがあったのだろう

「んー、頼んだ」

「、、何?」

母親(ママ)に頼んだわ!うちがあれこれするより、そっちのがええやろ?」

「、、、誰が母親(ママ)だ」

肩にポンと手を置いて歩き去っていくロキにポツリと不満を零す

やれやれとため息をつきながらリヴェリアは中庭に向かった

 

 

 

 

 

 

 

「アイズ」

いくつもの塔に囲われた円形の中庭

いまだに何をするでもなくただ長椅子に座っているアイズに声をかけた

「リヴェリア、、、」

「相変わらず早いな。剣は振っていないようだが」

見ると椅子には愛剣ではないレイピアが置いてあり、大方日課の素振りに外に出たはいいものの気分が乗らなかったという訳か

暫く視線を交差していたがアイズがそっと芝に視線を落とす

「、、、」

「、、、」

ほんの少し間があく

どうしたものかと考え込むが何もためらうことは無いと結論づける

私は単刀直入に聞くことにした

「何があった」

顔を上げこちらを見上げるアイズ

しばらく視線をさまよわせるアイズに急かすことなく待つ

するとアイズはぽつぽつと話し始めた

「酒場であった、ミノタウロスの話、、」

「ああ」

「私は、男の子、、冒険者を助けたんだけど、、、」

語られる内容を聞くにつれて、納得すると同時に頭を痛めた

まさかあの場に当の本人がいたなんて

全て聞かれていたという訳か、、

すぐにベートを止めなかった自分にも腹が立ち後悔する

「お前はどうしたい?」

うつむきがちになるアイズ

急かしはしない、アイズ自身が胸の中で出す答えを待つ

「分からないけど、、」

顔をあげこちらを見据えて言った

「謝りたい、んだと思う、、」

「そうか、、、」

出した答えは私と同じ謝罪の意だった

なんとも似通った出来事が起きたものだ

会話が途切れ一瞬の沈黙が訪れる

そこにまるで見計らったかのように朝の鐘の音が鳴り響く

「まぁ、私も言えた立場ではないが、その気持ちは忘れるなよ。相談にはいつでも乗ってやる」

「、、、うん」

「朝食だ、行こう」

私は踵を返し食堂へと足を向ける

今日は、彼を探すか、、

名も知らぬ少年を探し出すことはなかなかに困難だが一日も早く見つけるべきだろう

今日改めて思った

「リヴェリア、、、」

「なんだ」

ふと後ろから呼ばれた声に振り向く

「、、ありがとう」

「、、ああ」

少し吹っ切れた様子のアイズに軽く微笑み2人で食堂に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「、、、」

朝食を食べた後私はギルドへと向かった

ダンジョンを利用する冒険者、その出入り口であるギルドに張り込みを続ければ彼に出会えるだろうという思惑だ

ただ彼の特徴は黒髪の幼い少年ということしか頭になく難しい

現に朝からギルドの支柱にもたれかかり腕を組み流れゆく冒険者たちを見ているのだが一向に見つかる気配がない

昼間はダンジョンに潜っているだろうとは思うが万が一昼で切り上げたら、、、

と考えるとなかなかここから離れることが出来ない

太陽もすっかり昇り現在時刻は正午だ

 

『おい、あれロキファミリアのリヴェリアだよな、、』

『おう、朝からずっとあそこにいるぜ』

『何してんだろうな、、』

 

そんな声も無視して私はダンジョンの入り口がある通路を眺め続ける

エルフ、白髪、ドワーフ、銀髪、ヒューマン、、

多種多様な種族が歩き回る

里に居ては決して見られなかったであろう景色に目を細める

 

「見つからない、、か」

 

一朝一夕で見つかるとは思ってもいなかったが落胆の声を零してしまう

とりあえずお腹も軽くすいてきたころなので一度ギルドを後にしようと支柱から背を離す

、、ひさしぶりにエイナに挨拶でもしておくか

外に向きかけた足をギルドの中へと向け歩き出した瞬間

 

「黒髪、、、」

 

ダンジョンの通路から黒い髪の少年が歩いてくるのが見えた

あれは、、、

目を凝らすと確かにあの時の少年にそっくり、いや同一人物だ

「今日は無理しないように、お昼で終わるかー。神様にも心配をかけたくないし」

伸びをしながら換金所へと向かう彼を追いかけようとするが、換金が終わるまでここで待つことにする

「何と言えばよいか、、」

今さらだが謝り方を考えてなかった

ましてや向こうがあの出来事を覚えてないかもしれない

しかし起こった出来事にけじめをつけなければ私自身、納得がいかない

愚直に謝るのが正解だろう

アイズに相談を受けるとは言ったものの上手いアドバイスはきっと言えないだろうな、と苦笑を漏らす

と、少年が換金を終えたようだ

何故か少し緊張してしまう心を叱りながら少年の正面に立つ

「そこの、黒髪の少年」

「はい、何でしょう?、、、!?」

声をかけるとこちらをしっかりと確認して立ち止まった、、と思いきや

 

「え、!あ、!?え?い?」

 

ずりずりと後ずさりこちらから遠ざかる

明らかにおかしい態度だが

「少し話があるんだが、時間はあるか?」

ともう一度声をかけると

「にぁーーー!?」

奇声を上げ私の前を通り過ぎオラリオ市街へと走り出していってしまった

「、、、」

そんなに私が恐ろしいか、、

改めてショックを受けるがここでへこたれてはいけない

Lv6の敏捷に(おそらく)Lv1の敏捷が勝てると思うなよ、、!

意地でも謝ってやると強い決意のもと黒髪の少年を追いかけるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待って待って待って待って!?

今の絶対リヴェリアさんだよね!?

オラリオの路地という路地を走り抜ける

ダンジョンに潜ったはいいけど病み上がり?だから少しでやめておこうと思ってお昼に地上に戻ってきたら、、!?

なんでいるのさ!?

いや会えてうれしいんだけど、話しかけられるのは、ねぇ!?

心の準備ってものが!?

ダンジョンにいるよりも走ってさすがに足がヘトヘトになって立ち止まる

ここは、、

あまりに適当に走りすぎてどこだか分からない場所につく

周りは建物が空高くまで伸びており異様な圧迫感がある

立ち止まった場所は噴水がある広間で太陽が少しだけ差し込んでいる

少し落ち着こう

噴水に向かって疲れた足を進める、、、

「ふぅ、満足か?」

「ひぃ!?」

声に振り向けば、なんと後ろにはまったく汗も出てなくて涼しい顔をしているリヴェリアさんが!

こっちは緊張か走ったせいか分からない汗が止まらないのに

「どうして逃げる?何か私が悪いことでも、、、したな、、」

何故か自分でが発した言葉で落ち込むリヴェリアさん

その言葉で思い出されるのは数日前のミノタウロスの一件

「お前に謝りたいことがあるんだが、時間はあるか?」

もう一度聞かれたお時間あるか質問

無くても作り出すけど、今は全然有り余ってるので

「大丈夫です、、」

なんとか平静を保ちたいが声が上ずりまともにリヴェリアさんを直視できない

「そうか。まず名前を教えてくれないか?」

「ぼ、僕はアルファ、アルファ・イロアスと言います!」

「アルファか。私はリヴェリア、リヴェリア・リヨス・アールヴ。アルファ、お前に謝罪したいことがあるんだ」

パクパクと口を開閉する僕は返す言葉も見つからず続きを聞く

「覚えてないかもしれないが、数日前、私のファミリアのミスでミノタウロスを逃がし上層に侵入させてしまった。その時お前に迷惑をかけてしまったことを詫びたい」

すまなかった、と言い頭を下げるリヴェリアさん

下級冒険者である僕に上級冒険者であるリヴェリアさんが頭を下げるなんてありえてはならない光景に思わず声を張り上げる

「そんな!頭を上げてください!覚えてますよ!あの時リヴェリアさんに助けてもらってなかったら僕今生きてませんし!」

物凄い勢いでまくしたてる僕にリヴェリアさんは軽く困惑してるけど僕は続ける

「それに!助けてもらっておいてお礼も言わずに飛び出していった僕のほうこそ謝るべきというか!?、、、膝枕、、してもらったお礼も言うべきというか、、、」

最後は恥ずかしくて声が小さくなってしまった

「僕のほうこそお礼も言わず立ち去ってすいませんでした!ホントにありがとうございました!!」

90度を超え110度くらいいってそうな僕のお辞儀にクスっと笑った声が聞こえた

顔を上げるともう顔は笑ってはいなかったけど優しい顔をしてこちらを見下ろすリヴェリアさんと目があった

「そうか、そう言ってもらえて助かる。聞くが、私のことは怖いか?」

不安そうな顔で尋ねてくるリヴェリアさんに僕は即答する

「滅相もないです!助けてもらった時、思わず見惚れてしまいました!」

あ、

勢いで出た言葉は一気に後悔にかわる

にゃぁぁぁ!!!

変なこと口走っちゃったーー!!

変な奴と思われちゃうじゃないか!

赤面して勝手に1人で悶え死にそうになる

「そう直接言ってくれるのは意外にも嬉しいものだな、、」

ポツリと呟かれた言葉は暴れている僕の耳には入らない

「1つ聞きたいんだが、、」

とその時

 

ドゴォン!!

 

レンガの地面がひび割れ、噴水がはじけ飛んだ

現れたのは黄緑の幾本の触手

ひび割れた地面はみるみるうちにその範囲を広げていき僕たちの少し手前で収まった

ウネウネと気持ち悪い動きで辺りを探る

「何?コレ?」

思わず漏れた呟き

その声に反応するようにその触手はこちらに向かって伸びてきた

「!?」

視界がブレ気が付くと触手から離れたところに浮いていた

抱っこされてる、、!?

リヴェリアさんの腕の中でまるで猫を扱うように片腕で抱きかかえられた僕は浮いていた

「リ、リヴェリアさん!?」

あまりに密着した体勢に上ずった声が出てしまう

首をひねってリヴェリアさんの顔を見ると苦虫を潰したような顔をしていた

「これは、、先日の遠征の時のモンスターと酷似してる、、!」

僕をそっと下ろし触手に向き直るリヴェリアさん

こちらを見ずに低い声で告げる

「アルファ、今すぐ逃げてギルドかそこらへんにいるファミリアに声をかけろ。これは一大事だ。ひとまず私が押さえておく」

そう告げ終わる前に揺らめく触手はこちらに向かって凄い勢いで伸びてくる

なんとか転がり避けるが触手は地面を軽々と貫き土煙を上げる

「リ、リヴェリアさん1人でですか!?危険ですよ!」

「私がやらなきゃ誰がやる!ここには冒険者じゃない住民もいるんだ!この広場だけで被害をおさえたい!」

確かに周りを見れば窓から怯えた顔でこちらを見下ろす住人の影が見える

「分かったら早く行け!」

ドゴォン!

打ち出された触手を躱し走りだすリヴェリアさん

っく!

背を向け走り出した僕はオラリオの中心に向かって走り出す

すぐ呼んでくるから、待っててください!リヴェリアさん!

 




頑張れアルファ君
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