ダンジョンでハイエルフに出会うのは間違っているだろうか   作:98zin

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Lv1のアルファ君がどこまでやれるか、、


無茶

迷った、、、

盛大に迷った、複雑な路地

数分前、変な触手に襲われた後、僕は応援を呼びにその場を離れた

だけどその前、リヴェリアさんから逃げるためにむやみやたらに走ったせいでここが何処だか分からなくなってしまった

のちに知るがそこは『ダイタロス通り』と呼ばれる場所だった

「どうするどうするどうする!?」

焦りで思考がままならない

このまま進んでも出口が見つかる保証もないし、出られたところでもう一度リヴェリアさんのところまで戻れる自信がない

今ならまだ進んだ道を逆戻りすれば何とか戻れる気がするけど

あんなモンスター見たことも聞いたこともない、、、

未知のモンスターをリヴェリアさん1人に戦わしていいものなのか

しかも彼女は魔導士

そこまで知識はないけど、詠唱しないと魔法が撃てないことは知ってる

1対触手で果たして詠唱をする隙なんてあるのか

もし、彼女が触手に捕まったら、、もし、、

悪い予想しか思い浮かばない

オラリオでも有数のLv6である彼女に僕の心配なんて杞憂に過ぎないかもしれないけど、、

立ち止まっていた足を元来たほうに向け駆け出す

1人で迷っていたってなにも進展しない!

僕にできることは少ないかもしれないけどアイツを協力して倒すんだ、、!

 

駆け出した僕の背中は、また少し熱を帯びている気がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

噴水の広場

アルファが立ち去った後から数分でさらに地面はボコボコに抉れていた

周囲の建物も薙ぎ払われた触手によって壁面が抉れ中が丸見えになっている

幸いにも住人たちは早々に避難したようで人的被害はないようだ

最初に現れた触手の数より明らかに多くなっている

「埒が明かない、、」

詠唱する隙が無い

普段ならアイズやティオナたちの優秀な前衛が攻撃を受けてくれるのだが今は1人

平行詠唱も心得てはいるが、コイツは魔法を唱え始めると途端に猛攻を仕掛けてくる

まるで魔法に反応しているように

厄介

そうとしか言いようがない

魔導士である私に為す術はほとんど限られている

魔法効果を高める杖を持っているわけでもないし今日はただの普段着でしかない

攻撃を受けてしまえばそこからあっという間に追撃されてしまうだろう

普段前衛などしないので立ち回りに少々不安が残るが、、

避ける行為だけならまだ思考を展開する余裕もある

「アルファを待つしかない、か」

至った結論は持久戦だ

また放たれた触手をジャンプで躱し瓦礫の上に降り立つ

このままいけば特にアクシデントもなければ避け続けられる

そう思った私は避けに徹することにした、、時だった

 

「うわぁーん、おかぁさぁーん!」

 

噴水広場からつながる細い通路の奥

1人の小さい少女がうずくまって泣いていた

「!?」

それに気づいた触手は、なかなか捕まえられないリヴェリアに腹を立てたのか即座に目標を切り替える

「待て!」

少女に迫る危機に焦り駆け出す

しかしそれを待ち構えていたかのように触手が一斉にこちらを向く

「なっ!?」

いくらレベルが高くとも急な方向転換などできるはずもない

放たれた触手攻撃は寸分の狂いなく命中した

なんとか腕でガードしたが

その衝撃をすべて殺すことなどできるはずもなく

ドゴォッ!!

家の壁へとたたきつけられた

しまった、、

不意打ちを狙うモンスター、あまりにも知性が高い

さらに油断してしまったことを後悔する暇も与えてもらえない

すぐさま触手は少女へと向き直りその触手の先を開けた

開かれたそれはまるで花のようで中心には鋭い牙がギラついていた

それは少女を喰らわんと大きく体勢を落とし通路へと向かった

「間に合わないか、、、!」

大きく飛ばされたせいで少女の救出に遅れてしまう

攻撃を受けた腕は軽く痺れる程度

だが弾き飛ばされたせいで距離があいてしまった

よだれを垂らした食人花

その進行を防ぐ手立てはない

ただ何もできず少女が捕食されるのを見ているだけ

ゴォオン!

少女がいたところに食人花の頭であろう部位が突撃する

その通路はモクモクと煙を上げ瓦礫が崩れる音がする

いくら1人とは言え一般人の犠牲を出してしまったことに歯噛みする

間に合わなかった、、いや?

煙が消え少女がいたところを見るとそこには誰もいなかった

困惑する食人花

同様に私も困惑する

「リヴェリアさん!この子は無事です!」

声がするほう、食人花の後方で少女を抱えたアルファが立っていた

腕の中には泣きじゃくる少女

怪我はないようだ

よくやった、しかし応援は?どうして戻ってきた?

言いたいことが喉から一気に溢れそうになるが優先すべき言葉は

「すぐに離れろ!」

声を張り上げ離脱を促す

その声に反応してアルファは走って食人花から距離をとる

そこでようやく細い通路から出てきた食人花

「どうして戻ってきた?」

近くにやってきて少女を下ろすアルファに尋ねる

「、、迷っちゃいました」

「なっ、、、」

思わず絶句してしまったが

しょうがないとも納得する

ここはダイタロス通り、迷い込んでしまえば外に出ることはなかなか難しいか

頭を掻くアルファにため息をつくが少女を助けた功績は大きい

避難した住民がギルドに報告してくれることを願おう

現在食人花は人を喰らい損ねたことでかなり怒っているようだ

どうする、、、アルファが来たからといって状況はあまり変わらない

アルファには悪いがLv1のポテンシャルじゃこいつには傷もつけられないだろう

かばうべき者が増えた

いよいよどうするかと悩む

そこへアルファから思いもよらない声がかかった

「リヴェリアさん、どのくらい時間を稼げば魔法が撃てそうですか?」

アルファの顔を見ると真っすぐな眼差しでこちらを見据えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リヴェリアさん、どのくらい時間を稼げば魔法が撃てそうですか?」

 

この提案自体がおこがましいことは分かってる

だけど持久戦に持ち込まれたら僕たちをかばいながら戦うリヴェリアさんが辛い

そんなことは分かってる、分かりきってるんだ

僕が弱いのは僕が一番知ってる

だけど僕ができることを知っているのも、僕だけだ

 

「数十秒、あれば十分だ」

 

簡潔に返ってくる答え

今の僕が1人であいつに数十秒も時間を稼ぐことは出来ない

だけど

「やります」

やらなくちゃいけないんだ

この前みたいに、助けられるだけじゃダメだ

それじゃいつまでたっても成長できない

僕は弱いままの僕が嫌だ

少女の頭を撫で優しい声音で語りかける

「このお姉さんの近くに居てね。絶対離れちゃダメだよ」

頭から手を離し食人花へと向く

腰に差した長剣を抜刀

腰を落とし、熱くなる背中を感じる

「行きます!」

掛け声とともに走り出し、崩された街路の上を駆け抜ける

1回でも捕まれば終わり

足を止めたら終わり

僕のステイタスじゃ傷もつけられない

じゃあどうするかって?

こう、、するんだよっ!

食人花が放つ触手突きをギリギリで躱し()()()へと飛んだ

 

躱せてなかった、、

頬に痛みを感じ流れだす血を感じる

だけどそんなの気にして止まったら終わりだ

 

壁にたどり着いた僕は長剣を振りぬき壁を破壊した

まだ!

そのまま壁に埋まった剣を引きずり壁を切り裂いていく

後ろで蠢く触手たちを何とか避けながら切り裂き続ける

僕に向かって放たれる触手も壁を壊し続け次々と破片が舞い散る

破片が腕や足を掠め血が流れだす

痛みが走るが気になんてしていられない

ごめんなさい!ここに住んでた人たち!

削ることで居住空間だった部屋が見え隠れして罪悪感に襲われる

置いてあったソファや壁掛けなども全て切り裂いてしまう

しかし僕は止まれない

建物を3軒ほど削りきった後食人花へと向き直る

「こい!」

下手したら死ぬかもしれない自分でたてた作戦に足が震えるけどもう後戻りできない

突き出された触手に自らの体を入れ込んでいく

来るとわかっていて、避けることが困難ならガードする

体と触手の間に滑り込ませた長剣

ギリギリで受け流し触手の軌道をそらす

触手の直撃はまぬがれたが弾かれた反動で大きく吹き飛ばされもうボロボロだった家の壁へ叩きつけられる

「ぐふっ!」

肺から空気を引きずり出され呼吸がままならない

だけど僕の仕事はどうやら達成できたらしい

ガラガラと音をたて崩れ始める建物

これだけ壊せば、、!

「潰れちまえ!」

壁を壊され完全にバランスを崩した建物は広場に向かって倒れ始める

僕に向かってとどめを刺そうと近づいてきた食人花はようやく僕の狙いに気づいたようだ

急いで避難しようがもう間に合わない

スローモーションのように宙に舞う建造物

落下地点に居た食人花は言うまでもなく下敷きになった

ギェェェェ!!

これでやられてくれれば一番いいんだけど

完全に崩落した上階3軒分

流石の食人花もこたえたようで動きが無い

下敷きになったまま何も動かなくなった空間に美しい歌声が響きだす

 

「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に風を巻け。」

 

僕の行動を信じてずっとチャンスを待っててくれていたリヴェリアさん

 

「閉ざされる光、凍てつく大地」

 

ようやく瓦礫を押しのけ姿を現した食人花

魔力の流れに気づきリヴェリアさんのほうを向くがもう遅い

 

「吹雪け、三度の厳冬――我が名はアールヴ】!!」

 

地面に魔法陣が描かれはたはたとリヴェリアさんの服と髪がはためく

襲いかかる触手に微動だにせずただただその魔法を放つ

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」

 

突き出された腕は三条の吹雪を巻き起こす

今までやってくれた分の鬱憤(うっぷん)を晴らすように絶対零度の風が食人花を襲う

次々に触手が凍らされていき動きが鈍くなっていく

 

キェァァァァァ、、、、

 

断末魔さえも凍りつきその動きを完全に止めた食人花

なんとか立ち上がり体を引きずってその氷像へと向かう

不完全な体勢で固まったそいつに振り上げた長剣を突き出す

凍った体に当たった瞬間面白いように崩れゆく

「やった、、、」

完全に崩れた食人花はもう動くことはかなわずその体を黒い霧へと霧散させていった

なんとか勝てた、というか攻撃自体は一切行わなかったけど

振り向くと足にしがみついた少女を不慣れな様子であやしているリヴェリアさんが視界に入った

よかった、、みんな無事だ、、

安堵した僕はその場に腰を下ろそうとした瞬間、視界が暗転した




アルファ君頑張りました
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