World SoulReaper   作:阿良々木日和

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特に進展なしな日常回です。


ランク戦
解説者の黒崎さん


三雲は人目の無い病室で溜息を漏らす。

思った事を、決めた覚悟を口に出すのはこれ程までに疲れてしまうのか。

記者会見というものが初の経験ではあったのだがそれよりも外傷が依然完治しておらずそれが要因だというのに彼は気が付いていない。

 

空閑との約束も千佳との約束も。

母さんを心配させてしまったこともある。

それでもやらないといけないことがあるから。

 

病院の面会時間も過ぎ、院内は看護師達が巡回のために歩いている気配しか感じない。 みな眠りにつく時間のようだった。そんな時、カーテンの隙間から差し込んでいた月明かりが何かに遮られた。

 

「よお、三雲。 無事だったか」

「黒崎先輩!?」

「─ばっ!? 声がデケェよ!」

 

す、すみません…と小声で謝るも驚くのは許して欲しいと心で願う。何せ、この病室は4階なのだ。その病室の窓枠から入り込んでくるなんて想像する人は居ないだろう。

 

「そ、それで黒崎先輩はなんでこんな時間に」

「あー、俺は今帰ってきたばかりでな。 先ずはお前に謝っておこうと思ってよ」

 

そう言うとバツの悪そうに頭を掻きながら深々と黒崎一護は頭を下げてきた。

 

「悪かった。俺がもう少し早くケリをつけていれば…いや出し惜しみをしなければお前の命を危険に晒すことは無かったはずだ」

 

詳しい話は今は分からない。

宇佐美先輩の報告では黒崎先輩も論功行賞、しかも特級を受けていた筈だ。

 

ラービット及び更に新型のトリオン兵(呼称をホロウ)の大多数殲滅、人型近界民1人の撃破に加えて本部基地前に攻め込んできた人型に対して援護射撃をし風間隊長が撃破する決め手になった。だっただろうか。尚も出し惜しみをした…?

 

「そのぼくにはなんの事だかさっぱり…」

「だから俺が上手くやってりゃ三雲は怪我せずに済んだんだよ」

「えっと、でも黒崎先輩や風間さんのおかげでぼくはこの通り助かったわけですから。とりあえず座ってください」

 

納得がいかないと丸わかりな表情をしながらも小椅子に腰を据える一護に対して三雲はそういえばゆっくり話すのは初めてかもしれないと思い直す。

 

「黒崎先輩には2回も助けていただいてますし」

「2回?」

「今回のことと、空閑のことで」

「たまたまだ。 まぁ、俺にもやるべきことある。それにはお前や空閑…ボーダーの協力も必要なんだよ」

「ぼく達の?」

 

それから黒崎先輩が話してくれたのはこちらの世界ではない世界の話だった。

死神や虚とぼく達が関わることの無かった存在の話やどうしてこの世界にやってきたかを教えてくれた。

 

「…と、まぁこんな具合だ」

「黒崎先輩は昔から戦っていたんですね」

「昔から…つってもお前や雨取のような年齢ではねぇがな。 俺からすればお前達の方がすげぇと思うぜ?」

 

正面から褒められてしまった。

この人はこういう人なんだな…なんというか人を引きつけるような…?

 

「黒崎先輩はなんというか不思議な人です」

「んだそりゃ…とりあえず話すべき事は話したし俺は行くぜ。 まぁ、気が向いたら店か隊室に来いよ。侘びとして少しぐらいなら訓練付けてやるさ」

 

じゃあな、と先輩は言って窓から飛び降りて行った。

嵐のような人だったがあの人はあぁいう人なのだろう。それよりもあの人の隊ともランク戦を行うことになるのだ復帰することが出来たら過去のランク戦のデータを宇佐美先輩にお願いして見せてもらおう。

それから………

 

 

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 

ランク戦が開幕した。

初日の三雲達、玉狛第二の初戦は奇しくも俺が初めてランク戦を行った間宮隊、吉里隊との対戦だったのだが隊長の三雲はまだ身体が万全ではないという事で空閑と雨取のみの参戦だった。

勝負は一瞬で付いたので割愛させてくれ。

 

『ボーダーのみなさん、こんばんは! 海老名隊オペレーター 武富 桜子です! B級ランク戦新シーズンが開幕! 初日の後半戦が始まりますっ! 実況解説者はこの方達、先日の大規模侵攻にて人型近界民を撃退し特級戦功を上げたお二人! 三輪隊の三輪秀次さん! そして同隊の月見蓮さんとデートをするとボーダー内で壮絶なお話が上がった黒崎隊の黒崎一護さんです! 先程捕まえてきました!』

 

『『……どうぞよろしく』』

 

『お二人共元気に行きましょう! さて今回の対戦カードは柿崎隊、那須隊、そして香取隊です。このカードはどういう戦いになるのか! 特に黒崎さんは香取さんの師匠ということですが今回の対戦はどうなるでしょうか』

 

『…あー、そうですね。 葉子…香取自身の動きとしては緩むことなく攻め続けることが出来れば十二分にポイントは望めるでしょう。逆にそこを止めて主権を取ることが出来れば一気に勢いは柿崎隊、那須隊に持っていかれると思います』

 

『…戦術的に那須隊長のバイパーを抑制出来るのは柿崎隊でしょう。集団で防ぎつつ削る事が出来るか鍵ですし転送ポイントからどの様な作戦に切り出すか見所ですね』

 

珍しい二人が解説をしているぞ!やら、あの二人が丁寧な言葉を話してるのレアだろ。やら外野が五月蝿い。

 

『隊員達の転送が完了しました! ステージは森! 天候は晴れで時間は夜という珍しいチョイスですね! 森といえば前シーズンで黒崎さん、生駒さん、諏訪さんの三人相打ち試合終了が起きたステージでもありますがこれはどういった意図で香取隊が選んだのでしょうか』

 

『余計な事は思い出させるな。今でも生駒を見るとぶった切りたくなるんだ。…と、そうですね、森はステージ構成がその名の通り森、一部に川や丘がありますがエリアの大半は視界の悪い林の中となっている為、唯一のスナイパーである那須隊の日浦隊員には厳しい戦いになると思います。それに先程も言いましたが香取隊の強みは隊長の動き、小回りの効く香取を視界の外からの2人のサポートを活かすためでしょう』

 

 

 

 

 

【那須先輩、付近に他部隊ありません。 熊谷先輩、茜の距離が近いです】

「了解。 くまちゃん、茜ちゃんを」

『了解!』

 

自分が転送されたのは森の南西部。自分こそ少し離れた位置だが運良く、くまちゃんと茜ちゃんの二人は近くに転送していた。香取隊が選んだ森のステージは茜ちゃん対策もあるのだろうけれど…

なんにせよ向こうの思惑よりも先に動かなければいけない。

 

【香取隊と柿崎隊が戦闘を開始しました】

 

いい方向性に試合が動くかもしれない。

 

「全員バックワームを使って。香取隊と交戦中の柿崎隊の背後を叩くわ」

 

柿崎隊の集団戦術は私達にとっても葉子ちゃん達にとっても中々に厳しい相手だ。利害が一致しているうちに畳み掛けておきたい。

 

 

 

 

 

 

『那須隊が全員バックワームを起動しましたねっ!!』

 

『これは転送の位置が那須隊にとって最高のスタートになりました。 日浦隊員には厳しい環境ですがそれを差し引きしてもプラスでしょう。ですが動きを察知されると攻めにくい形にもなりましたね』

 

『既に交戦を始めた香取隊と柿崎隊は常に背後を気にしなければいけないから厳しい条件だな。特に香取隊長は三浦と若村の合流が未だ出来ていないので那須隊に先に潰されたら一気に厳しくなる…なりますね』

 

『それを考えると香取隊長が一人で柿崎隊長と照屋隊員二人を相手取っているのは凄まじいですね』

 

『アタッカーとしては既に上位にくい込む程の実力を付けていますし、黒崎さんに弟子入りしてから立ち回りも格段に上手くなったようです』

 

確かに葉子は二人を相手取り、木々を盾にし時にはトリガーを切り替えバックワームでレーダーから消えた後に木の上からの奇襲。 照屋に防がれると深追いせずに柿崎の反撃よりも先に再び林の中へと隠れる…と、森というフィールドを最大限に活かしていたのだが。

 

なんつーか、普段のアイツらしくないな。

攻めが甘いっつーか…わざとらしい?

 

『おっと、ここで巴隊員が那須隊の二人に捕捉されました!? 柿崎隊、これは厳しい!』

 

『いや、これは…!』

 

 

 

 

 

 

【那須先輩、熊谷先輩と茜が柿崎隊の巴くんを捕まえました】

 

柿崎隊が集結する前に叩けるなら完全に流れは掴める。巴くんには悪いけれどくまちゃん達なら必ず討てるはずだ。

だけれど、何かを見落としているような…

 

「…っ! 小夜ちゃん、柿崎隊の二人と交戦してるのは」

【熊谷先輩、茜! 後ろ!!】

『ごめん、玲! そっちに行けそうにないっ』

『ごめんなさい那須先輩! 挟まれました!!』

 

やられた…っ! 葉子ちゃん達は最初から二部隊を同時に相手取るつもりだったのね…!

 

 

 

 

 

『こ、これはーーー!? 巴隊員を捉えたハズの熊谷隊員と日浦隊員が背後から三浦隊員、若村隊員に逆に喰らいつかれたぁ!!』

 

『香取隊は市街地MAPとは違いスナイパーの目が効かず、物陰に姿を隠しやすいフィールドをしっかりと使いこなしましたね』

 

『柿崎隊は上手く餌にされちまったわけだ。虎太郎としてはここで粘って1点は取りたいところですね。那須隊が集まってしまうと柿崎隊が本格的に不味いことになりますから』

 

『さぁ、ここで巴隊員はどういった判断をするのか! そして那須隊長が何方に仕掛けるのか!!』

 

 

 

 

 

「…ッ!!」

 

巴が孤月を振るい、それを何とか熊谷が弾き上げると即座に若村からの射撃が降り注ぎ被弾をさせていた。

 

ここでの熊谷の正解は恐らく巴を使って若村を撃破することだろう。しかし、巴としては那須隊を香取隊に擦り付けて柿崎の援護に行きたい。 そして若村は確実にどちらかを落としておきたく、欲を言えば那須隊を削ってしまいたいのだ。

距離を置けば熊谷は巴と若村から一方的に削られ、近ければ若村が二人から攻められ…と中々に難しい戦局になってしまっている。

 

「この…っ!」

 

若村がバラ撒くアステロイドをバックステップで避けながら下からの切り上げのままに旋空弧月を放つが巴、若村共に致命傷にはならず隙を晒してしまった。

 

「熊谷先輩!!」

 

離れた林の中で三浦と鬼ごっこをしていた日浦が目にしたのは熊谷の危機。背後から迫る三浦にも目もくれずにイーグレットを構え一瞬の静止から放った。弾丸の軌跡は木々の間を抜け離れた位置で突撃銃を構えた若村の腕へ吸い込まれるように飛来しそのまま右腕を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

『どわーーー!!? 日浦隊員、三浦隊員に追い詰められ走りながらかなり離れた位置に居る若村隊員の腕を吹き飛ばしたァ!?』

 

『これは…驚いたな』

 

『…えぇ、日浦隊員がここまで素早く正確な射撃を行うのは驚きですね』

 

「咄嗟の反応…というところか」

「奈良坂の弟子が芽吹いたか?」

 

普段の日浦から想像が出来ない勢いのある狙撃で会場は湧き上がる。

咄嗟の、がむしゃらの行動。同じことをやれと言われてもきっと出来ないのだろうが、それでも今この瞬間で生み出した結果は最高の次ぐらいだろう。

因みに最高は日浦が三浦に捕捉されなかった事だが。

 

『日浦隊員落とされましたが同時に若村隊員の動きが止まったァ! 熊谷隊員、この隙に巴隊員を蹴り飛ばし戦線を離脱!!』

 

『巴隊員、逃げ損ねましたね』

 

『判断ミスだな』

 

『と、ここで那須隊長が香取隊長、柿崎隊に仕掛けるようです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ…いい加減倒れなさいよ…っ!!」

「そんな訳にいかない…!」

 

尚も続く攻防。

香取のトリオン体からは所々トリオンが漏れ出ているがそれは柿崎、照屋も同じ。照屋に至っては片腕を落とされていた。

 

柿崎とて香取を侮っていた訳ではなかった。元々腕が良いとは噂で聞いていたし、『あの』黒崎に弟子入りしたのだからその胆力も並大抵では無いのは分かっている。それでもまさかたった一人で自分と照屋をこの場に縛り付け続けるとは思わなかった。

巴はこちらとの合流を焦るあまりに落とされてしまった。那須隊の日浦も落とされたとなるとこれで香取隊は2点を取っていることになる…やられる訳には!

 

柿崎(ザキ)さん、文香、那須さんが近くに!】

 

こっちに来たか!!

 

「文香、下がるぞ!」

「…っ! はいっ!!」

「…!?」

 

こちらの動きに気がついたのか香取も慌てて後ろに下がるが直後、視界は光に塞がれてしまう。

 

「変化炸裂弾か…ッ!!」

 

粉塵で視界が霞む中から更なる追撃として木々を避けバイパーが殺到してきた。

柿崎は咄嗟にシールドを張るが那須のバイパーはシールドを更に避けて背後から回り込んでくる。

合わせるように照屋が柿崎の背後にシールドを張りバイパーを防ぎ切った、が香取の方は身体に幾つか穴を開けていた。

 

「来たわね…っ」

 

リアルタイムで軌道を引ける那須のバイパーはこの視界が制限される森の中での脅威が跳ね上がる。 木々を避けて視界外からの攻撃を防ぐのは困難だ。

香取は木々を足場に空中から、柿崎隊の2人は嫌でもこの場は香取を援護する他勝ち筋は見えなくなっていた。

 

 

 

 

 

『難しい戦いになってきましたね』

 

『あぁ、恐らく香取隊にとっては最善の盤面になりつつありますね。 柿崎隊にとっては選び所…ここで確実に葉子を落とすか、共闘して那須、熊谷の二人を落とすか。 はたまた一旦引いて両部隊が疲弊したところを突くか』

 

『おぉっと!? 香取隊長、ここで仕掛ける!! その身に降り注ぐアステロイドを掻い潜り…こ、これはぁぁ!?』

 

「…ちっ」

 

モニターを睨み付けていた男は忌々しそうに舌打ちをひとつ落とした。

 

 

 

 

 

 

狩った……!!

 

「玲…っ!」

 

那須玲の射撃下、完全にこちらの射程が届かないと思っている初撃のみ通用する不意打ち。

影浦雅人が得意とする変則技マンティスを那須の胸の供給器官目掛けて放ち、討ち取ったと確信した瞬間に彼女の身体はブレて代わりに熊谷友子の腕を跳ね飛ばしていた。

 

「くまちゃん!?」

「この、大人しく落とされなさいよ…っ!!」

 

那須の判断は遅れ、香取の回避行動は迅速だった。 着地寸前に頭上の木の枝へとマンティスを再度伸ばしフックロープのように引っ掛けて木々の中へと再び飛び込む。

ガラ空きになっている那須とシールドを張っている熊谷、上に逃げた香取を追うように柿崎隊の射撃が奔る。

 

腕を落とされ、柿崎隊の射撃を満足に防げていない熊谷はそう長くは持たない。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここで香取隊が集結ぅ!! これは那須隊、柿崎隊にとってかなり厳しい展開になりましたねぇ!』

 

『那須隊が落とされれば香取隊の三人が、香取隊が落とされれば那須の合成弾が迫りますからね。柿崎隊としては両者が削りあってくれれば良いのでしょうが…』

 

『那須のバイパーはそう簡単に抜けられないですね』

 

2チームに囲まれながらも後ろに下がりつつ那須のアステロイドに織り交ぜたバイパーが明確に5人を削っていく。

三浦が香取に迫る弾を防ぎ、2人が打ち返し、柿崎隊も上手い具合に攻撃の切り替えをしている。しかし若村も照屋と腕を落とされだいぶ経っている。そろそろ…

 

『あぁっと!? 鳥籠が若村隊員、照屋隊員を捕らえたァ!!』

 

『いや両サイドに別軌道のバイパーとかどんな感覚持ってんだよアイツ!?』

 

『出水隊員なら…いえ、ブースで首を振ってますね』

 

出水でも出来ないってか。 本格的に弾バカ2号の名前が相応しいな那須…

 

『若村隊員、照屋隊員がここでベイルアウト! 那須隊、この窮地で2ポイントもぎ取った!! しかし香取隊員も鳥籠の隙を突き熊谷隊員を撃破ぁ!』

 

『決着が近いですね』

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうなったら意地でも那須隊(あっち)を落とすわよ…!」

 

香取がグラスホッパーを踏み加速する。

迎え撃つ那須のバイパーが襲いかかるがピンポイントで張ったシールドが致命傷を防ぐ。それでも那須のバイパーは軌道を変え、シールドが張られていない所を狙うように再び襲いかかる。 しかしそれも敢無く別のシールドによって防がれてしまった。

 

「三浦くんの…!?」

 

読み負けた、歯噛みする那須はそのまま香取のスコーピオンによって穿かれる。それでも。

 

「一緒に落ちましょう」

「なっ…!!」

 

穿かれる一瞬の前、那須の置き土産が香取に牙を剥く。

トリオン供給器官が破壊され離脱するよりも早く那須の手は香取の腕を取り、自らの背に隠してあった置き弾のアステロイドがベイルアウト寸前の自分諸共、香取の身体を破壊した。

 

「葉子ちゃん…ッ!?」

「もらった…っ」

 

予想外の展開に三浦の動きは鈍く、そして待ち望んだ展開に柿崎は吼える。

銃を手放し、振るった旋空孤月は狙い撃たれると判断し木々の裏に隠れた三浦の身体を真っ二つに引き裂いた。

 

 

 

 

 

 

『決着ぅぅうう!! 柿崎隊隊長が最後に決めたぁ! 柿崎隊生存ポイントが入って3点! 香取隊は那須隊長に大きくダメージを与えベイルアウトに持ち込んだためカウントして3点、そしてそして那須隊も同じく香取隊長を同士討ちに近い形で持ち込んだため3点! 大変珍しい結末となりました!!』

 

『試合を振り返ってみるか…』

 

『…香取隊が森を選択したのは自分たちの機動力を活かすのと那須隊封じでしょうね。 那須隊が日浦隊員という狙撃手を使うことが出来ないステージを選んだと思われます』

 

『香取隊は前半は幾つか用意してたであろう作戦のひとつが上手くいったみたいで。葉子が餌になって部隊の合流を急がせる…初手に那須と当たっていれば熊谷達をエサにして柿崎隊を釣り出すつもりだったんだろうな』

 

『痛手といえば日浦隊員のスナイプでしょう! 見事な一撃でした!!』

 

『落とされてしまいましたが若村隊員、三浦隊員もしっかりと仕事はこなしてましたね。欲を言えば最後の局面で那須隊長のバイパーを凌ぎ切ることが出来れば…と』

 

『葉子はいつの間にマンティス使えるようになったんだ。雅人か?』

 

知らねぇよ。と解説を聞いていた雅人が呟き目をそらす。 知らないうちに散々バトってたらしい。

 

『日浦隊員はさっき言った通り、素晴らしい仕事をしました。 落とされはしたものの逃れることが出来なかった熊谷隊員をあの場から切り離しました』

 

『それが巡りに巡って香取隊長のマンティスから那須隊長を救い、相打ちという形になったものの那須隊長は香取隊長をベイルアウトさせましたね!』

 

『柿崎隊は終始翻弄されていましたが、それでも耐え忍ぶ局面をしっかりと耐えきり最後に生存ポイントを手にしましたね』

 

『転送位置がもう少し違ければ柿崎隊が那須隊、香取隊を封殺していたこともあったでしょう。 巴隊員的には悔しいでしょうがすぐに落とされず粘った事により香取隊が集結することを遅らせる結果となりました』

 

『さて、ポイントは全チーム3ポイントという滅多にないことが起きました! 順位は変動せず、次の試合で大きな動きを見せそうです! 明日の試合は荒船隊! 鈴鳴第一! そして本日解説して頂いた黒崎隊です!!』

 

『げっ、マジかよ』

 

『頑張ってください黒崎さん』

 

…秀次が真顔でそんなことを言ってくるのなんつーか不気味だ。

 

 

そんなこんなでランク戦での解説を終えるとブースの隅に香取隊が集まっていた。

 

「よう、随分と頑張ったじゃねーか」

「…………」

 

負けてご機嫌ななめか?

 

「えっと、ちゃんと話すのは初めてですよね。 はじめまして三浦雄太です。葉子ちゃんがいつもお世話になっています」

「若村麓郎です。いつもお菓子類をくださっているみたいで…ありがとうございます」

「染井華です。葉子が迷惑をかけてます」

「ちょっと、なんでアタシが迷惑かけてる前提なのよ!?」

「いつも迷惑かけられてるが俺の他の知り合いの方が面倒臭いからな。可愛いもんだ」

「アンタもなんですんなり受け入れてるのよ!!」

 

もぎゃー!とよく分からん奇声を発しながらこちらを蹴ってくる香取を手刀で黙らせ目の前にいる3人に向き直る。

 

「あー…なんつーか…騙してたつもりはねぇんだが」

「大丈夫、です。 確かに近界民に近しい存在かも知れませんが…黒崎さんが半年以上、葉子の面倒を見てくれていたのは知ってますし」

「よくまぁ…半年も投げずに師事してくれたなと思ってます」

「華と麓郎酷くないかしら?」

 

仲間からもそんな扱いなのかコイツ。

 

「以前はあまり関わり合いがなかったですがこれから同じボーダーの仲間として、よろしくお願いします」

「…まぁ、お前らがそれでいいってんなら俺から言うことはなんもねーよ」

「あ、よかったらオレも黒崎さんから孤月を教わりたい」

「教えるのは苦手だが相手になるぐらいならいいぜ? なんなら今からやってくか?疲れてなければだが」

「是非」

 

 

 

 

「次は勝つわ」

「葉子はまだまだ強くなれるもの」

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