World SoulReaper   作:阿良々木日和

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何となくで予定を組んでいた月見と黒崎のデート回。
書いているうちにちゃんとした理由ができてしまった。

あと月見さんの口調がまだしっかりと掴めていないです。


日常の一幕②

その日、夕暮れ時に一護は三門駅前で立っていた。立っているだけで人波は彼を避けるように左右に別れていく。何故だ。

 

「待たせたかしら?」

 

不意に声をかけられれば心底面倒くさそうに顔を顰めながら振り向く。

白いコートに映える長く艶めかしいの黒髪を風に靡かせながら現れたのは三輪隊オペレーター 月見蓮。

何故か自分の知らぬところで蓮とデートをすることになっていた一護は多くのボーダー隊員にランク戦ルームなんてお構い無しな闇討ちの如く襲いかかってきて凄まじいことになったし、井上は朝から一言も口を聞いてくれなかった。

 

「別に、来たばかりだ」

「あら、そうなの。 ふふ、待っていてくれたのを少し遠目から見てたから知ってるのよ?」

「なんで見てんだよ!? さっさと来いよ寒いんだから!!」

「さ、行きましょうか。どこにエスコートして貰えるのかしら」

「マイペース……! 相変わらず話がしにくいやつだなお前……」

「それにしてもこうして外で会うのは珍しいわね。 それに普段の和風な服装ではないのね。 前に言っていた嵐山くん達と買い物に行った時のかしら」

「あぁ、気が付いたら和服しか無かったからな。 そういうお前は…綺麗なもんだな」

「ありがとう。織姫ちゃんと出掛ける時もそうやって褒めてあげるのよ」

「なんで井上が今出てくる」

 

先程まで一護を避けていた周囲の人達が蓮の登場により少し緩和された。というより蓮を見る為に人が集まっていることに気が付いた一護はとりあえず移動を促し、軽く話が出来る場所を目指すこととなった。

 

「あそこでいいか…」

「あら、いい所が?」

「商店ばかりで勉強するのも気が滅入るし気分転換にたまに喫茶店に行くんだよ」

「そういえば本当は大学生だったのね。 てっきり駄菓子屋さんかと」

 

19にして駄菓子屋を切り盛りしてる奴ってどんな奴だよ。

行きつけの喫茶店に入ると他に客は三人だけ。

いつものように店の奥隅の方へと進んで月見を座らせコーヒーとケーキを頼んだ。

 

「んで、俺の居ない時にデートなんて、してもいない約束をボーダーに流してどういうつもりだ」

「逃げないようにするにはいい手、だとは思わない?」

「元から逃げるつもりなんざねぇよ…お陰で見かけた事がある程度のヤツらにも突っかかられたんだぞ」

「それと "あの三輪隊の月見蓮と出掛ける" それだけで城戸司令の派閥は色々と考えを張り巡らせるわね」

「ぁ? そりゃどういう…」

 

城戸司令は近界民と徹底抗戦を唱える派閥だ。

そしてそれの考えに賛同する連中もそうだろう。

そんで俺は近界民では無いものの、並行世界なんてもんは近界民と何ら変わらないわけで、城戸のおっさんは黙認しているが……

 

「そう、司令や他の幹部達が公認をしていても事情を知っているその下にいる一定役職の人は早々簡単に割り切れないわ。 それでも幹部達が認めている以上は公に何かをする訳にもいかない」

「近界民に反感を持つボーダー隊員に何かを吹き込む可能性があるってか」

 

ゆっくりと首肯しタイミングよく運ばれてきたコーヒーを軽く傾ける。

 

「美味しいわ…。 人の口に戸は立てられないもの。 それに若い子たちは噂話が好きなのは知っているでしょう?」

「反近界民側の三輪隊と噂の俺が懇意にしてりゃ話が逸れるってか? そう上手くいかねぇだろ」

「現にその噂よりもデートの方が話題性が強かったのよ。 身をもって体験したでしょう?」

「…………あー…」

 

いつもビクビクしていたC級とかが恐怖畏怖よりも羨ましげに見ていたのはそういう。

 

「別にお前じゃなくても良かっただろ。 だいたい俺は三輪や米屋とはよく居るが月見とはほぼ話してねぇのに」

「他にも候補は居たのだけどね。 織姫ちゃんは今更過ぎるから却下。 柚宇ちゃんも黒崎くんとの関係は知られ過ぎている、加古さんだと貴方が引っ張り回されているように見えてしまう。 ののちゃんは……ね」

 

考えてみりゃ三上や染井だとそれはそれで問題があるか。 綾辻は忍田本部長陣営だし……何よりメディア組だし。

 

「そこで同い年でほぼ接点がない私という訳よ。 誰にも公言せずに密かに付き合っていた……なんて噂も流れているから明日から大変ねお互いに」

「大変ね、じゃないだろ…… だいたいお前がそこまでする必要があったのか? 最悪、俺の正体なんてバレちまっても俺がボーダーを抜けて潜んでりゃ良かっただけだろ」

「感謝しているから、じゃだめかしら?」

「は? 感謝されるような事はしてない」

「黒崎くんが三輪くんに関わってくれたおかげで彼は少し変わったのよ。もちろん、空閑くんのこともあるのでしょうけれど」

「三輪のためか」

「NoとYes、ね。 彼が変わったおかげで助かることもあったわ。 でもそれだけじゃない、黒崎くんは入隊からこの前の大規模進行までこの街の為に皆と戦ってくれていた。 だから私なりの感謝ということ。 受け取ってくれない?」

 

 

 

 

『この一年はボーダーの中で過ごして周りから信用されるための準備期間ってところだ』

 

 

 

 

迅が言っていたことが、実を結んだってことかよ。ったく……

 

「わかった。 助けてくれて感謝する」

「感謝したのは私の方なのだけれどね。 ケーキも美味しいわね…また来ようかしら」

「あぁ、いい所だぞ。ここも、この街も」

「そうね。 次は、どこに連れて行ってくれるの?」

「デートは続行するのかよ……」

「勿論。 何人か付けて来ているのに気が付いているでしょう」

「米屋と出水に生駒隊、少し離れたところに国近と宇佐美……あぁ、あとワラワラと居る。 人気者過ぎるんじゃねぇか月見」

「黒崎くんが人気なのよきっと」

 

本当にいい性格してるなコイツ。

少し他愛もない言葉を交わしながらコーヒーとケーキを味わい終えると会計をして服を見に行くことになった。

 

「ご馳走になって悪いわ」

「嘘つけ、最初から任せる気だったろ。 払わせるつもりはなかったが」

「ありがとう。 それにしても、この前の試合は酷かったわ」

「…………言うな。あの後さんざん色んなヤツらに絡まれたんだ。絡まれた後に黒江にフォローされた俺の気持ちわからねぇだろ…」

「一人は限界?」

「…………遠回しな言い方は好きじゃねぇ」

「黒崎隊に補充される人員は?」

「死神と人間だ」

 

事実を答えると月見が虚を突かれたように表情を崩した。

ま、いつもの澄まし顔が崩れたのでつりが来るな。

 

「同僚なの?」

「あくまでも俺は死神"代行"だ。 手助けに来てくれたやつは百年は年季の入ったうるせー奴だよ。人間の方は色々と会った時に知り合った奴でな。何回も助けられた」

「そう。 死神さんは沢山いるのかしら」

「なんだ気になるのか?」

「気にならない人はいないと思うわ」

 

死神に知り合いがいるって考えたら……気になるか?

 

「あー…戦闘狂がいるな」

「太刀川さんみたいね」

「あとちっさいけど強いやつとか」

「風間さんみたいね」

「それに軽薄そうだが凄い人とか」

「迅くんね」

「……そう考えるとボーダーの連中に似てるかもなアイツら」

「なら、いい人ばかりなのね。死神さんは」

 

気のいい奴らは確かに多い気もするがな。なんて付け加えながら服屋に入ると月見が物色を始める。 正直、こいつならばなんでも似合いそうな気もするが……

 

チラリと背後に視線をやるとそそくさと隠れる奴を見て溜息を吐く。

 

「少し服を見ていてくれ。なんなら試着していてくれ」

「デートを放り出して他の女性のところ?」

「7時近いからな。 14歳と15歳にはお帰り願ってくる」

 

暇人しか居ねぇのかよボーダーは。

物陰に隠れた二人に近付くと軽く手刀を脳天に落とした。

 

「「痛っ!?」」

「もういい時間だぞ。さっさと家に帰れ日浦、夏目」

 

狙撃手組の二人は頭を抑えながら見つかったことに慌てているが狙撃手ならもっと上手く立ち回れよ、と思う。

 

「あぅ、黒崎先輩……」

「ヤンキー先輩……」

「誰がヤンキーだ。 どうする誰か呼ぶか? 今から一人で帰るのも危ねぇし」

「あ、大丈夫です! あっちに当真先輩居るので」

「……はぁ。気をつけて帰れよ」

「わかりました! 明日デートのお話聞かせてください!」

「月見先輩と楽しんでくださいヤンキー先輩」

 

手を振りながら走っていく姿に奥で当真が手を合わせて頭を下げている様子を見れば言いたいことは色々あるも明日、あの髪の毛をスライスにすることで許すとしよう。

足早に試着室に戻ると打って変わって黒の服を身に付けている月見が居た。

 

「どうかしら?」

「似合うな。買うのか?」

「……一着ぐらい増えてもいいかもしれないわ」

 

「月見ちゃん綺麗過ぎるわ」

「そうやね。めちゃくちゃ綺麗」

「ウチの可愛い可愛いマリオちゃんにも似合いそうやろ」

「い、いやいやウチには似合わへんって…」

「えー、マリオ先輩も似合いますよー!」

 

騒がしい奴らが騒ぎ始めた。

 

「ふふ、そろそろお終いかしら」

「……の、ようだな。 明日からいい方向に動けばいいが…迅が何も言ってこないって事は大したことにならねーだろ」

「次のデートは何時が空いているの?」

「…………これが最初で最後では?」

「あら酷いわね」

「俺だって忙しいんだよ」

「そういえば、二宮くん達との食事会はどうなったのかしら?」

「…それはまた別の機会に話す」

「楽しみにしてるわね」

 

その日の夜に犬飼からの連絡で『辻ちゃんと氷見ちゃんにフラれた』と報告を受けた。

まぁ、アイツらも忙しいのは分かっているから日程合わせは苦労するだろう。それにどうせ焼肉だからな。

そんなことを思いながら携帯を閉じると、月夜の光を浴びて微笑む月見を見る。

 

「じゃ、帰ろうぜ」

「えぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、じゃあ月見さんとデートしていたのは噂を上書きするため……だったの?」

「だから何度もそう言ってるだろ… これは土産の菓子と月見から俺を一日借りた分だってよ」

 

借りたって何だ借りたって。

 

「………………良かった

「何か言ったか?」

「な、何でもないよ! そういえば弓場さんが帯島ちゃんと模擬戦して欲しいって」

「弓場が? そういや帯島とは最近模擬戦していなかったな……わかった。 後で行ってくる」

「あと次の混成部隊の防衛任務はオペが私じゃなくて漆間隊の梨香ちゃんだよ」

「六田か…………せいぜい怖がられねぇようにしねぇと。 漆間隊に菓子折でも持ってくか」

 

はぁ、と溜息を吐きながら立ち上がり弓場隊隊室へ向かう一護を見送った織姫は端末を弄り意を決したように声を出した。

 

「加古さん、実はお願いがありまして……」




次回
バレンタイン
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