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トリオン体。
文字通りトリオンで構成されたカラダで普段はトリガーホルダーの中に格納されている戦闘体でトリガーを
俺の死神化もそうやって肉体が格納されりゃいいのに。なんて思いながら、初めてトリオン体になった感触を確かめるように身体を動かし軽く跳ねてみる。 生身とはまた少し違った感覚で死神状態よりは完現術に近い気がする。
そもそも、俺の戦闘スタイルは天鎖斬月による超速戦闘、霊力に物を言わせた月牙天衝によるパワーファイト。 このトリオン体ではそれを挑めないからには戦い方も変えていく必要があるだろうな。に、しても白い隊服っての全然似合わねーな俺。 死覇装で慣れてるせいもあるんだろうが、あんまり白のイメージがない…いや、アイツは真っ白だったけどアイツと俺はイコールじゃねーし…肌の色とか…色々。
昨夜は遅いから、という理由でボーダー基地内の仮眠室で夜を明かし今朝は朝っぱらから確かめたい事があった為に早起きしたが、朝早くでも基地にはそこそこ人が居るらしいな…
「どうだ黒崎、トリオン体の調子は」
「調子っつーか…違和感はあるが動けねぇレベルじゃねーよ。何とかなるだろ」
近寄ってきた迅の方へ顔を向ければ、昨日声を掛けてきた太刀川さんとやらと、冬獅郎よりは大きいけど世間一般的には背の低い男が立っていた。
「よ、早速だってな黒崎。 今日はよろしく」
「風間だ。 気負うことは無い…俺達が一緒に防衛任務に着く」
「因みに風間さんは俺の1個上で20歳だ。こう見えてな」
防衛任務とやらは警戒区域に誘導、出現したネイバーを迎撃する…んだったか。 なんつーか詳しい事はよく分からねぇけど、俺は今日その任務に着いて行く事になったらしい。 いい成績を残せば入隊式に昇格に必要なポイントを上乗せされ、早くB級に上がれるだとか。
「黒崎一護だ…です。よろしくっす太刀川さん、風間さん」
「因みに太刀川さんも風間さんも2人ともかなり腕のいい隊長だから安心していいよ。風間さんの部隊はこの前A級部隊に昇格したところだしね」
「…過剰じゃねぇか?」
「今回の混成部隊はたまたま…だそうだ」
「たまたまで仮の俺とA級の2人が一緒になるのかよ」
「ま、監視って意味合いもあるだろうな。 事情を知るのはおれと城戸さんだけだけど」
って事は、有事の際に俺を取り押さえる為か? 随分と警戒されてるんだな。 俺がというより浦原さんが警戒されてるのかもしれないが。
「警戒区域まで移動しながら概要を説明する。 太刀川はその手のことはてんでダメだから俺が選ばれたようだ」
「なるほどな。確かにそんな気はした」
「あれ、なんで唐突に俺が馬鹿にされてんだ」
ボーダー基地を後にし、2人の後ろを歩き着いていく。風間さんの方から歩きながら防衛任務やらボーダーの概要、トリガーについてわざわざ聞いてもねーけど説明してくれたので忘れないように覚えておく。後でメモでもとってまとめるか…
一方、太刀川さんは欠伸をしながら全く興味無さそうだ。 年齢は近そうだが、なんつーかダメ人間感が強い。
「迅がスカウトをしたというのは本当か? 」
「ん? あぁ、あれがスカウトって言うのかわからんねーけど…ですけど」
「そうか。それ以上深く聴くつもりは無い」
「…どーも」
「夜シフトの連中から引き継いだら取り敢えずは近界民が出てくるまで待機して、近界民が出てきたら先ずはお前の実力を見る為に任せる。危なくなったら俺と風間さんが助けてやるから思い切りやれよ」
あぁ…と短く返事をしながら近界民の、トリオン兵とやらのことを考えていた。 昨日の迅の戦闘を見る限り、デカいのも小さい鎌付きも虚程度、もしくはそれ以下の力だろうと考えているが此方も天鎖斬月ではなく、『孤月』と呼ばれる鍔の無い日本刀のような形状をしたトリガーのみだ。 C級はトリガーを一つしか扱う事が出来ないらしい。
俺として刀一本で十分な気もするがこいつが何処まで通用するのか…
そうこう考えている間に引き継ぎは随分とあっさり終わった。引き継ぎというか単に交代って言った方が正しい気もするが、敢えて言えばゴーグルを付けた生駒とかいう男に背中を叩かれたぐらいだ。
「さーて…とりあえず待つか」
「いきなり横になるな太刀川」
『隊長、そろそろ私の紹介を〜』
不意に通信越しの声が聞こえてきた。なんつーかふわふわした雰囲気の女子だなおい。
「あー、忘れてた。今日のオペレーターで普段は俺の隊のオペレーターをやってる」
『国近柚宇だよ〜よろしくね黒崎さん〜』
「よろしく…むず痒いからさんは止めてくれ。呼び捨てでいい」
『いやいや、年上だからね』
「まーまー、いいだろ黒崎。 近いうちに黒崎先輩とか呼ばれ始めるんだぞ?」
「うっ…それはそれで嫌だな…」
小一時間…どころか2時間近く何が起きるわけでもなく只々時間が過ぎていった。 まぁ、オペレーターの国近柚宇があーだこーだと長々色んな質問をしてきたから別に退屈はしなかったけどよ。
そんな時、バチッとトリオンが急激に収束し開く感覚を感じ取った。
「…来る」
「あ? どうした黒崎何が来るって?」
「ネイバーだよ。 たぶんゲートが開く」
「何? だが、まだ何の連絡も…」
『黒崎さんの言う通り。 座標誘導誤差0.87。すぐ目の前に来るよ黒崎くん、気を付けて』
「お前…いや、後でにしよう。 いけるか?」
風間さんの問に俺はつい口角を上げて答えてしまう。 別に俺はバトルジャンキーなつもりもねぇし平和なら平和でいいんだが、やっぱりこういう時は身体を思いっきり動かしたくなるもんだ。
「勿論っ」
ゲートから現れたのは昨夜俺を良いように追いかけ回したヤツらと同じ個体。
故に…
「八つ当たりさせてもらおうじゃねーか……よっと!!!」
カサカサと気味の悪い動きをしながら近づいてくるモールモッドから放たれたブレードを半歩で躱し、一気に肉薄。すれ違い様に孤月を振るってモノアイを両断すると力無くモールモッドは崩れ落ちた。
孤月に不安もあったが通用するなら問題ねェ!
続く2匹目と3匹目、仲間意識なんてもんコイツらにあるのか分かりゃしないが、こちらを挟撃する様に左右からブレードを広げて迫ってくるのだが挙動の一つ一つが遅く、振り上げられたブレードがコチラに届くよりも先にぶった斬ればいいんだろ!
耐久力が低いらしいC級トリガーで防いだら孤月が砕かれる可能性があるようで、それなら攻撃されるよりも速く先に狩ればいいだけだ。
焦る様子もなく淡々とモールモッドの攻撃を捌き、反撃をしている様子を見て孤月に添えていた手を下ろし太刀川は腰を据えた。
「ほー、中々やるなアイツ」
「少なくとも何かの経験者な様だ。でなければ単なる素人…しかもC級トリガーでモールモッドに初見であそこまで動くのは無理だろう」
「最初からモールモッドに勝つ隊員なんて数える程じゃないか? B級成り立てですら負けるヤツら居るし」
「少なくとも近々入隊したメンバー、仮入隊中の中で一人で3匹相手は有り得ないな。群を抜いて逸材だろう」
迅のスカウトとは聞いていたが思ってた以上の実力持ちだったことを両名とも喜んだ。 太刀川としては斬り合える仲間が増えたという点で、風間としてはいつ起こるか分からない侵攻が起きた際に前線を支えられる隊員として…と違いはあるが。
一体につき20秒かかっているかどうか。 B級に上がればグラスホッパーや旋空のオプションも取り付けられる為に今よりも圧倒的に早く、目標の殲滅を可能にするであろう戦い方を見て風間は今日の仕事は何もなさそうだと判断した。
「おらァ!!」
3匹目の攻撃をスレスレで回避しながら刺突の要領で貫くと機能が停止したようにコチラに倒れてきた。 何発か掠ってしまったがトリオン体での初の戦闘でこれなら上々だろう。問題は、相手の攻撃を見切れているのに身体が反応に追いつかねぇ事ぐらいか。
さて、最後の一匹…たしかバムスターとか言った大きめのやつを仕留めるか。
……ノシノシとコチラに背を向けて必死に逃げようとしているバムスターを。
「待てよテメェ!?」
『台詞だけ聞くと完全にヤンキーだね〜』
「まぁ、アレだ。弓場とか居るし大丈夫だろう」
その後、3回ほど出現したトリオン兵達もせっせと一護が撃破していき夕方の引き継ぎとなるのだが、虚よりも高い頻度で現れるトリオン兵と未だに慣れぬ身体に内心で浦原喜助に毒づいている事には誰も気が付かない。
■■■
「お〜、どうだった初戦闘」
「どうもこうも、特に問題なく終わったぞ。つーか、お前は何してんだよ迅」
換装を解き、仮眠室にまとめていた荷物を担いで基地から出ようとした所で菓子を頬張りながら佇んでいた迅に呼び止められた。
「いや、おれこそ聞きたいが荷物持って何処に行こうとしてたんだ?」
「…あ? そりゃ家に…ってそういや場所聞いてなかったな」
「ま、いいや移動しながら話そうか。車もあるし」
…と、まぁ上手い具合に誘導されて車に乗せられたが運転席に乗ってるオッサンとその横に座ってる茶髪のアホ毛女は誰だ?
「あ、今運転してくれてるのが我らが玉狛支部支部長の林藤さん。助手席に座ってソワソワしながらこっちに聞き耳立ててるのが小南」
「ばっ、別に聞き耳なんて立ててないわよ! No.1攻撃手の小南桐絵よ。 よろしく」
「黒崎一護だ…ってNo.1? 太刀川さんがそうなんじゃねーのか?」
「小南はつい一、二ヶ月前までNo.1だったんだ。 玉狛支部の都合でランク戦に出れなくなった間に太刀川さんと風間さんに抜かされちゃったんだ」
「だから実質あたしが1位よ! 分かった?!」
「どーでもいいな」
「あたしはどうでも良くないのよ!!」
ふしゃー!なんて猫のように切れる小南を無視して迅に向き直り先程チラリと名前が出ていた場所を口にする。
「で、俺は玉狛支部って所に連れてかれるのか?」
「最初はおれもそのつもりだったんだけどな。 なんと、黒崎が住む場所は既に決まってたらしい」
「…は? 決まってた…?」
「迅、黒崎くん着いたぞ」
車で10分掛かってないレベル。
単に荷物を運ぶ為だけに車を出してくれたのか。 軽く頭を下げると気にするなと手で制してくれた林藤さんはなんつーか俺の知る大人たちの中でかなりマシな部類だ。
親父、浦原さんもう少し努力しろ。
さて、俺がこれから住むという場所はどんな場所だろうと鞄を手に見上げるとそこは古い日本家屋で瓦屋根、大きなガラスが取り付けられ中を覗けるような引き戸がありその上にデカデカとした看板で………
『浦原商店』
「………………あ?」
「どうしたのよ黒崎、馬鹿みたいな顔して。ごめんくださーい」
「いやぁ、用意してくれたのはあの人なんだよ」
脳が処理落ち起こしている内に小南、迅が次々に店内へと入っていく。
慌てて追うように中に入ると案の定居た。
「いやーいらっしゃいませ! おや、黒崎サンお早い到着ッスね?」
「お早い到着じゃねーよ!! アンタ何してるんだ此処で!? あっちはどうした!!?」
「まぁまぁ、落ち着いて。 あたしが黒崎サンと別れたあとに思い出したんッスよ。住む場所用意してなかったって」
「基礎の基礎を忘れてんじゃねぇよ!」
「それにここだけの話…黒崎サンこっちの世界じゃ根無し草でしょ? 一応、裏で色々すれば向こうの大学と似たような所に捩じ込むことも出来ますが…それならこっちに戻ってきて勉学に励んだ方が良さそうですシ。 だったらコッチで浦原商店十五号店の切り盛りをしてもらいましょうかね…と」
時間の流れが違うとは聞いてたがちょいちょい戻って講義には出れるのかよ…てっきりそう簡単には戻れねーのかと思ってたんだが。
「まっ売り上げとかあまり気にしません。あくまでも黒崎サンの隠れ蓑として店長代理を務めて欲しいんですよ。 だからここは浦原商店ですけど勉強部屋はありませんしフツーの駄菓子屋です」
「…それなら別に良いけど。 まて、十五号店とか言わなかったかアンタ?」
「おじさーん、これください!」
「はいはーい…あ、黒崎サンのお友達ッスかね? だったらタダでいいッスよ。黒崎サンからお金もらうんで」
「やった、ラッキー!」
自由人か! と、ツッコんでいる内に店内を出て行った小南を後目に浦原さんは巫山戯た様子を潜め迅に声をかけた。
「さて、迅サン。 あなたの予知だといつ頃動き出しますかね」
「早くも遅くも一年ってところですかね。 今から約一年後…そこで大規模侵攻が起きて浦原さん達が追っている事件にも繋がるナニカが出てくるかと」
「一年だ? 俺はここに一年以上留まるのかよ」
「時折ならコチラに戻ってきても…まぁ、問題ないでしょう」
「それならこっちで…ややこしいな。 三門に一年後に来ればよかったんじゃねぇのか?」
「それだと時期が悪い。まだハッキリ視えてないから断言は出来ないけど一年後に黒崎が来たら、いの一番に近界民って疑われるしボーダーとの軋轢を産む。この一年はボーダーの中で過ごして周りから信用されるための準備期間ってところだ」
随分とややこしい連中が多いようだなボーダーは。 そこに所属しようとしている俺もややこしいっちゃそうだがよ。
それだと正体が露見した時に裏切り者みたいな扱いになんねーか。
「一年しっかりやれば殆どおまえを敵に回そう…なんて思う奴は居ないよ」
…だ、そうだ。
「さて、とりあえず黒崎サンは入隊して最速B級! とかやると目立つんじゃないッスかね」
「悪目立ちだろそれ」
「仮入隊で実戦に駆り出されてる時点で目立ってるから今さら問題ないよ」
「…え」
「当たり前だろ。 まだ何もした事の無いような子を初日から実戦になんてないない」
「おま、それを先に言えよ!?」
太刀川、風間、国近辺りにどう捉えられちまってんだ俺。
城戸司令の奴…なーにが特別措置はない、だ。バリバリ要警戒対象みてぇな扱いしやがって…
「迅まだー? 早くしなさいよ!」
「おっと…とりあえず、黒崎はこの一年普通にボーダーの一員として過ごしてくれよ。長い潜入任務…みたいできついかもしれないけど」
「あたしもたまーに様子を見に来るのでキツい時は言ってください。手が無いわけではないッスから」
それじゃあ。と短い挨拶をして迅と浦原さんはそれぞれ帰っていった。
色々騙された感満載だったがしょうがねぇ…
「やりきるしかねーよな」
立ち上がり自分に喝を入れる。
先ずは…
「店の掃除からやるか……」
黒トリガーの少年と出会うまで約一年。
というわけで、一護が三門に訪れたのは本編から1年前です。
ダイジェスト気味に1年経過させますが空閑遊真などの活躍は今しばらくお待ちください。