時折、幕間や番外編を描きたいとは思ってるので、こんな話が読みたい!など意見があると作者は小躍りします。(その通り書けるとは言ってない)
気が付いたらお気に入り登録が100件超えていました。
拙い文ではありますが楽しんで頂けたら何よりです。ありがとうございます。
浦原商店は本日も閑古鳥が鳴く始末。と、言いたかったんだが店内には太刀川さんに出水、日浦に熊谷に井上、仁礼と大盛況(たった六人で大盛況と言っていいのか分からないが)だった。
ボーダー隊員限定割引、なんて銘打って安い駄菓子を更に格安で売ってるもんだからオペレーターの女子面子も最近じゃよく店に顔を出すようになってきた。 それに比例してか俺の顰めっ面を見て最初は少し脅えてたり、目を合わせようとしてなかった連中が今じゃ眉間のシワを手で押えてゲラゲラ笑ってたりする様になった。
人で遊ぶんじゃねぇ。
「クロさんこれ幾らだー?」
「あ? 30円」
「んじゃ、箱で持ってくわ」
「黒崎さん、これ買っていきます」
「結構買ってくんだな。後で本部行くから運んでやるよ。那須隊の隊室でいいか?」
「そんな、悪いですよ!? これくらい持てますっ」
「気にすんなって、出水と一緒に運んでくからよ」
「え、俺? イヤいいっすけどね」
「黒崎、餅どこに置いてるんだ」
「うっせ、帰れ」
わちゃわちゃしてる店内を眺めながらノートを閉じて立ち上がり店の奥からダンボールを持ってくると仁礼、熊谷に日浦が買った駄菓子類を箱に詰めていく。 まとめて運んじまった方が楽だし女子勢に持たせるというのも酷なものだろう。
「黒崎くん、今日は本部行くの?」
「あぁ、夕方から約束してるしな。個人戦の」
「クロさん、最近カゲと仲いいもんなー」
「俺ともやれよ黒崎」
「あんたは散々やってるだろうが! つーか、そろそろレポート提出なんだろ。風間さんから店に入り浸ってるようだったら言っておけって言われたぞ」
「げっ、マジか…」
防衛任務がない時は基本四六時中、浦原商店かランク戦ブースに居る太刀川さんだが、この人はこう見えても大学生だ。 本当に大学生なのか?と思う事しかないがそれでも大学生なのだ。 講義はもちろん提出物も多くあるのにも関わらずこうして店に居座っており、そんな隊長に釣られてか知らないが出水、そして店には居ないが奥の居住区の方で国近が横になりながらゲームをしていることは多々ある。
人の店を隊室と間違えてんじゃねーか太刀川隊。
浦原さんからは定時連絡以外に特に話は来ていない。
向こうは向こうで、というか虚圏で少し問題が起きたようだけれど冬獅郎と乱菊さん、あと偶然鉢合わせたグリムジョーが事を鎮圧したらしい。 何だか楽しそうだと思ってしまうのは仕方がないだろう。
現世の方までには影響が出ていないようで安心した。
それにしても魂魄消失事件だ。
あちらの世界でトリオン兵が現れ、現世の人間から魂魄を抜き取ったとは考えられない。 あんなもんが街中を歩いていたらそれこそ大パニックだろう。
逆に何でこの世界には虚も死神も居ねぇんだ?
堕ちた人間の魂がない…? 有り得ねぇ。
言っちゃなんだが人間も、死神も別に清いモノじゃねーから。
トリオンは魂魄、霊力に近しいもんだって浦原さんは言ってた…ってことはトリオン兵は…?
「黒崎くん、大丈夫? 凄く怖い顔になってるよ…?」
「何時もだろ」
「ち、違いますよ!? 黒崎くんの顔は確かに怖いかもしれないですけど…荷物持ってくれたり、自然と車道側歩いてくれたり遅くなったら家まで送ってくれたりとても気が利くいい人なんですよっ」
「太刀川さん黙っててください。あと織姫聞いてもいない事をペラペラ喋らない方が良いよ。 出水と光が凄く面白そうな表情で見てるから」
出水、太刀川、仁礼が鬱陶しい視線を飛ばしてくるので一睨みすると照れ隠しと思われたのかキャーキャー言い始めた。女子かよテメェら…仁礼は女子だな。
井上に関しては…まぁ、知らねー仲ではないし防衛任務で夜遅くなる事もあるから送って行くのは当然だろう。
この世界でも井上は一人暮らしだった。
あちらとは違い、家族仲は円満だったものの数年前の大規模侵攻で亡くなってしまったらしい。
「おら、そろそろ店閉めるから帰れよ」
「んじゃー、ヒカリさんも荷物を持とう」
「俺と出水でいいっての。お前は大人しく本部に行けよ」
「はぁ、レポートやるか…じゃあなお前達。俺抜きで楽しそうなことすんなよ!」
「ガキか!? おい国近、店閉めんぞ!」
「留守番してるよーイッチー先輩いってらー」
「おーう……じゃなくて帰れよ!? 最悪太刀川隊の隊室でやれよ!?」
渋々奥から出てきた国近を放り出し、全員が出たことを確認すると鍵をかける。
手のかかる連中だ…ったく。
「私と茜は少し遅れて本部に行くので…すみません。それお願いします」
「お願いします黒崎さん!」
「おう、隊室に置いておくぞ」
「あ、えーと今日は那須さんが…」
「玲が隊室に居るので…黒崎さんまだ会ったこと無かったですよね」
「ん、そうだな。挨拶ついでに行ってくる」
熊谷、日浦を見送り飲み物が入ったダンボールを二箱抱え上げるとカランコロン…最早聞きなれたゲタの音をアスファルトで鳴らしながら本部に向かって歩き始める。 出水ももう一箱抱えてるので後で飲み物でも奢ってやるか。
「なー、クロさんって何時もの甚平姿だよなー。 似合ってるし違和感ねーんだけど…なんで?」
「あ? いや、あの店の正装がこれだって店主に渡されてんだよ」
「黒崎くんって…私服もそれだよね…?」
「そんなわけ……」
そういや、こっちの世界に来た時に着ていた服はどうした…?
確か、店に入って浦原さんに甚平渡されて……あれ? あの服…というか俺の荷物に入ってた私服はどこにいった……??
一体いつから私服を持ってきていると錯覚していたっスか?
「なん…だと…?」
「黒崎くんどうしたの!?」
今度、服を買いに行こう。
嵐山辺りに付き添ってもらって。
歩き始めて20分ちょい。
ボーダー本部に辿り着くと出水と何故か仁礼が肩で息をするようにグロッキーになっていた。
「な、なんで黒崎さんはそんなケロッと…」
「鍛え方がちげーんだよ。 ま、運んでもらったしな。好きなもん3人で食ってこいよ」
グロッキー二人と井上に財布を投げ渡すと出水が運んでいたダンボールを更に重ねて那須隊の隊室へと向かう。 迷うこと無く辿り着けば呼び鈴を鳴らす。
十秒待たずして扉が開かれると中から淡い金髪をボブカット?にしたボーダ内でもかなりの美人が出てきた。
「あー、お届け物だ」
「くまちゃんから連絡もらってます。 初めまして…ですよね。 那須隊の隊長をやらせてもらっている那須 玲です。 いつもくまちゃん達がお世話になっています」
「黒崎隊の黒崎 一護だ。 世話になってるのはこっちだぞ。 井上を紹介してもらったり駄菓子を定期的に買いに来てくれるからな」
那須は体調が芳しくなく、体の弱い人がトリオン体を使用すれば元気に出来ないか?という研究からボーダーに入隊したレアケースらしい。
隊室へ入れてもらうと中央のテーブルにダンボールを置き一息つく。
「あ、お茶出しますね」
「いや気を使うことねーって。 荷物を置きに来ただけだしな」
「私が少し黒崎さんとお話したいから。じゃ、ダメかしら?」
「…ま、時間あるしいいぜ」
椅子に腰掛けて出されたお茶を啜るとこちらをじっと見詰めている那須と目が合う。圧がすげぇ。
「改めてありがとうございます。黒崎さん」
「いやだから礼を言われるようなことしてねーよ」
「以前、ナンパされていたくまちゃんを助けてくれたと聞いたので。 くまちゃん可愛いのにそういうのに疎いから…」
「あ、あー…んな事もあったな」
「黒崎さんはみんなの言う通りいい人なのね」
なんかむず痒い。
「那須は個人ランク戦はあまりやってないのか?」
「最近はそこそこやってます。 黒崎さんが太刀川さんや米屋くんとやってるの見かけますよ」
「アイツらは暇を見つけりゃ誘ってくるから… そうだ、那須さえ良けりゃ相手してくれよ。出水が言ってたぞ? 那須のバイパーはボーダー随一だから経験しておいて損は無いって」
「随一だなんて…出水くんや加古さんに比べると私なんて全然ですよ? バイパーが得意なだけで」
バイパーが得意な事は否定しねぇんだな…
初めて出水とやった時にズタボロに蜂の巣にされたがそれ以上にヤバそうだぞコイツ…
「射手との対戦経験が少ねぇからな。気が向いたら頼むぜ」
「分かりました。 私たちの隊と黒崎さんが当たる前にやりましょうか。くまちゃんともたまにしてるんですよね。喜んでいましたよくまちゃん」
「喜ばれるようなこともしてないけどな」
「動き方とかが参考になる…って言っていましたけどね」
目の前の少女は嬉しそうに微笑む。本当に熊谷の事が好きなんだなコイツ…
その後も時間を忘れるように、たわいも無い会話は暫く続き…
「あ、あの…すみません…引き止めた私が言うのも何ですけど…時間…」
「………げっ、ヤベぇアイツ切れてるんじゃねーか!? 悪いな那須、行かせてもらう」
足早に隊室を飛び出た。
「いつ来ても人がモーセの十戒の如く割れるな…」
ランク戦ブースに顔を出すとそそくさと見知った顔以外の連中が左右に避けていく。歩きやすいのはいいが露骨過ぎんだろ。
椅子に腰をかけている目的のもじゃもじゃ頭を見付けると遅れた事に申し訳なさを感じながら声を掛けた。
「よぉ、遅れた」
「遅せぇよ。102に入る」
「あいよ」
軽く言葉を交わして各々個室に入り端末を弄る。
102ってーと……スコーピオン 11050か。
8000超えるとマスタークラスってやつになるんだっけか? A級隊長ともなると随分と稼いでるんだな。
互いに承認し5本勝負を選びベッドに横になると市街地へと転送された。
「うっし雅人、何賭ける」
「メシでいいだろ」
「お、いいな……ァ!!」
視線が合えば滑るように孤月を走らせる。
一太刀めは影浦雅人のスコーピオンによって下から弾きあげられるが互いにそれは何時もの挨拶代わりの様なもんだ。決まったような打ち合いで互いの調子が分かる…なんて事はねーけど何度もやり合う間にお決まりみたくなったもんだ。
孤月とは違いコンパクトな取り回しが出来るスコーピオンは突き、切り上げ、切り払いと手数の多さで攻め立ててくる。 風間さんもスコーピオンを使うが攻め方がまるで違う。 影浦雅人のそれは獣のように怒涛で、また搦手が上手く攻めあぐねるとあっという間にこちらが落とされてしまう。
舌打ちをひとつ吐き、攻撃の切れ目に後ろへと思いっ切り飛び下がると彼は腕を突き出し、飛び下がった俺目掛けて鞭のようにしなったスコーピオン。 マンティスが襲いかかってくる。
狙いは首、と考え身を捻るも完全回避は出来ずに左肘から下を切り落とされた。
かくいう影浦もコレで落とせるとは思って居らずに追撃の為に前傾姿勢で突っ込んでくる。
だからこそ。
「…ッ!?」
バシュッ!! と、風を切る音と共に影浦の肩口からトリオンが漏れ始めた。
「やっぱりお前には当たんねぇか…っ」
脳天を狙ったつもり何だけどな。と吐露しながらもう一度飛び下がり今度はグラスホッパーを踏み更に距離を空けた。
猛追してくる影浦と自分の間に着地と同時にエスクードを発生させて
振り抜き、切り裂いたエスクードの向こうには影浦の姿は無く、代わりに一護に影が降り注ぐ。
もらった…!!
肘から下が無いものの出来ないわけじゃねー! と、息巻き影浦が旋空を回避して上から来ると読んでいたので
と、思った瞬間が命取りだったんだよ。
マンティスを俺から見て右側の民家に突き刺し空中でスライド移動してみせた影浦はそのまま家の壁を足場にして二発目のマンティスを俺へと伸ばす。 完全に振り切った孤月を引き戻すよりも早く刃は身体を貫き供給機関を破壊された。
ドンッ、と背中がベッドに叩き付けられる。
一本目が取られた。 左腕を落とされた辺りからもう怪しかったか…
2本目気を取り直して行くか。
転送、接敵。
目が合うよりも早くアステロイドをばら撒くように放つ。
狙い、目標クソ喰らえだ。 とにかくデタラメにしかし隙間は小さめにばら撒きながら孤月を抜き距離を詰める。
影浦も躱すつもりは無いのか被弾しながらスコーピオンを構え、一本目と同じくコチラを間合いに入れようとしてくる。
そう同じ手はくわないと射程に入った影浦に向かって左下からの斜め切り上げ旋空弧月を放つ。
もっとも当たる訳もなく、地面に転がるように体勢を崩しただけだ。 俺が振り切った孤月を引き戻すよりもまた早くマンティスが届くだろう。
だったら振り切った孤月を引き戻さないで、別の攻撃をすればよくねぇか?
太刀川さんみたいに。
「…なっ!?」
「旋空弧月…!!」
右腰に付いた鞘から引き抜いた二本目の孤月を先程とは逆の右下、影浦が体勢を崩した場所を切るように滑らせた。
奴の身体が真っ二つに割れると同時に待機室に引き戻される。
アステロイドも二刀流もバレたので三本目から更に厳しくなるんだろうな…ったく。
結局、この日は 3-2 で勝ち越すことが出来た。
雅人に飯を奢ってもらい、その後 熊谷が引き連れてきた那須に蜂の巣所か身体が吹き飛ぶ様な螺旋のバイパーを食らって 1-4 でボロ負けした。
あんなのずりぃだろ。
井上織姫
年齢:16 誕生日:9月15日
身長:157cm 血液型:BO型
星座:おおかみ座 職業:学生(三門市立第一高等学校)
好きな物:チーズ、バター、甘い物
トリオン:8
機械操作:7
情報分析:7
並列処理:8
戦術:6
指揮:6
Total:34
※オペレーターのパラメーター合計にトリオン能力は含まれない
元フリーオペレーター内のマドンナ。
年上から年下まで幅広い隊員に可愛がられており告白、ナンパは数知れず。 毎度の如く、熊谷や小佐野に助けられている天然ボケ系だが学力は学年トップクラスの頭脳明晰でオペレーターとしての腕も仁礼や国近に負けず劣らず。
一護に初めて出会った時は「友子ちゃんを助けてくれた人だからいい人! お礼しなくちゃ」と息巻き、運命的な出会いとも感じ取った為にオペレーターになる事を了承した模様。
数多くのファンが彼女の知らぬ所で涙した。
また迅悠一のセクハラ被害者だったが黒崎隊に入った後、セクハラされることは無くなった。 迅曰く「腕が切り落とされる可能性を見た」とのこと。
トリオン量はオペレーターの中でも群を抜いて高く、菊地原などと同じ《8》であるものの大規模侵攻時のトラウマ故にオペレーターの席にいる。