「……っと、朝か……」
明朝、オレはベッドから目覚める。
あれから、十一年の歳月が経過した。オレは中学から叔母の家から離れて東京のアパートで過ごすようになった。こっちの高校の方が学力的なレベルが高いからな。
「おじゃましてるぞ、緋鳥」
「全く……今日は東京だっけか」
「そうだぜ」
リビングでテレビを見ながら筋トレをする姉に文句を言わず、朝食を作る。
ルミねぇは今は『ミルコ』と言うヒーローネームでヒーロー活動をしている。何でも、プロとしては異例の事務所を持たないヒーローで、かなり注目を浴びている。
それでも、一ヶ月に一回はオレの家に来るけどな。
『次のニュースです。今日未明、新宿の路地裏で十人の男女が暴れているのを近くにすんでいた住民が発見し、警察が逮捕したものことです。警察は、彼らが三年前から度々発生している『発狂事件』の被害者と捉えています』
「これの捜査か、ルミねぇ」
「ん、まあそうだな。顔を表さねぇ臆病者何かの調査に私らも駆り出されるのさ」
朝食を食べながらテレビで流れるニュースを見る。
『発狂事件』。それは、数週間から一ヶ月のインターバルで東京近郊で起きている謎の発狂事件である。被害者は全員、暴走と沈静を繰り返し、結果的に精神崩壊を起こしてしまう。警察は何かしら精神に干渉する個性を持つヴィランが起こしているのだと考え、捜査をしている。
(と言うのも、それを行っているのはオレだけどな)
オレは、暴力行為を働いているチンピラをねじ伏せては緋色の鳥に食べさせている。オレは完全に個性として制御できているため、危険性はそこまで高くない。
……無論、もう食べるのは止めておくつもりである。多くの人間の精神を食べたからこれで恒常的に満腹にできる。
「そーいえば、確か今日が受験日だっけ」
「そうだよ」
そして今日は雄英高校の入試の日である。
雄英高校とは、No.1ヒーロー『オールマイト』を筆頭に数々の有名なプロヒーローを輩出してきた名門中の名門である。志望動機?単純に『そこを出たほうがヒーローとしての名を売らせれる』と言うのが本音である。
「それじゃ、少し早いけど行ってくるね」
「おう、受かってこいよ」
「分かってるって」
準備を完了させ、姉と挨拶をして部屋を出る。
ヒーロー科……楽しみだなぁ。
「よいしょっと……」
オレは電車に乗りこみ、席に座る。
ふう……この時点で心臓のバクバクが止まらないよ。
「あの、隣失礼して良いですか?」
「別に構わねぇよ」
暇潰しにスマホを弄っていると同年代くらいの女子に話しかけられて、席に座るように促す。
何と言うか……サバサバとした雰囲気の女子だな。耳にイヤホンジャックのようなものがあるが、それは個性のようなものか。
「うわ……大きい……いてっ!?」
「……何の事を言っているんだ、お前は」
女子が俺の胸を凝視してきたため、頭をチョップする。
確かに、オレは普通の女子に比べて背も大きいし胸もでかい。大体身長が169くらいで胸はFカップくらいか。こんなものがあると、肩こりが酷いし動きにくい。どちらと言うと、女子くらい少ないほうが楽だ。
……と言うことは言ってはいけない。貧乳は自分の胸がコンプレックスだと言うことを小説で読んだ。
「いや、胸が大きいなぁ……てね」
「失礼を通り越して清々しいな。お前、名前は?」
「あ、ウチは耳朗響香。雄英に受験しに行くけど、貴女も?」
「まあな。オレは兎岳緋鳥、どっちも合格できると嬉しいな」
耳朗と握手を交わし、情報交換をする。
耳朗からの情報によると、実技試験はロボットを使うポイント制だったりと、かなり良い情報を入手できた。オレの個性は有効範囲が狭いのが難点だが、リボルバーを使えば何とかできるかな。
「あ、この駅だ」
「それじゃあ、降りる準備するか」
オレは席から立ち上がり、上に乗っけていたリュックを取る。
「それじゃ、頑張ろうか」
「うん」
拳を小突き合わせ、オレと耳朗は駅のホームに降りる。
さて、絶対に落ちてはいけない試験を頑張りますか。