「……」
オレは大きめな講堂の後ろ側で静かに資料とモニターを見る。
プレゼントマイクの説明は異様に五月蝿いが、説明の内容は資料に書かれているから問題ない。てか、説明のほうか五月蝿くて邪魔だ。
模擬戦闘はポイント制で何かしらの個性を使用して戦闘不能にすることが目的だ。だが、モニターは三種類しか映し出されていない。と言うことは、四種類目は妨害要因と考えて良いだろう。
「質問よろしいでしょうか!」
前の方の列で手を上げる男子生徒を見る。
堅苦しい見た目だな。それに、あの口調から考えて堅苦しいのはデフォルトか。堅苦しい雰囲気は嫌いだからあんまり関わりたくないな。
「資料には四種のヴィランと記載されています!」
「ナイスなお便りサンキューだ。それは0ポイント。いわばお邪魔虫。倒せないこともないが、倒しても意味がない」
「ありがとうございます!それと、後ろの縮れ髪の少年!」
「は、はい!」
堅物少年が後ろにいた縮れ髪の少年に視線を向ける。
……敵意や侮蔑が混じった目付きだ。あの視線、無性に腹がたつな。
「……撃とうかな」
オレは太ももからタイムマシンリボルバーを取り出して弾丸をこめる。
ここに来ているのなら、それはヒーローになりたいと言う思いがあってのことだ。それを侮辱するような発言をすれば、即打つ。
「先程からぼそぼそと!気が散る!物見遊山のつもりなら即刻ここからたちさ」
バーン!!
……ヤバい。撃っちまった。
「Oh!?受験番号444173ちゃん受験番号7771くんに質問どうぞ!」
「……ここに来ているのならヒーローになりたいと言う意志があっての行動だ。その行動を否定できるのは己のみ。それを分かった上でその言動か。慎め」
「くっ……!失礼します!」
オレが立ち上がって注意すると堅物少年は不服そうに席に座ったためオレも座る。
全く……。撃つつもりなんて無かったのに、撃っちまったよ。あそこまで酷い言い様はねぇだろ。
「それじゃあ、最後にリスナーへ我が校訓を教えよう!かのナポレオン・ボナパルトは言った!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えて行くもの!』さらに向こうへ、Plus Ultra!」
五月蝿い!もう一回撃ち込むぞ!ウォルターの個性の影響か知覚過敏で大きな音は嫌いなんだよ、オレは!
「さて……」
「あ、あの!」
演習会場に向かおうとしたとき、縮れ髪の少年に話しかけられる。
確か、さっき堅物少年に怒られていた少年だったな。
「さっきありがとうございます……!」
「別に構わねぇよ。オレは、あいつの言っている事が気にくわなかっただけだ、気にすることはない」
「受験、頑張りましょう!」
「ああ、そうだな」
縮れ髪の少年と会話をした後、オレはバスに乗る。
オレの試験会場はDか。あの少年が手に持っていた受験票はBか。あの少年と獲物の取り合いになることは避けたかったからな。
「あ、貴女はさっき銃を撃った人だ!」
「……何かようか、ピンク少女」
バスの座席に座っていると、隣の席にピンク髪の少女が座ってくる。
ピンク色の髪に同色の肌、白目の部分が黒くて頭に触角のようなものが生えている。なんつード派手な見た目だな。
「ピンク少女じゃなくて私は芦戸三奈!個性は『酸』!よろしくね!」
「芦戸か。オレは兎岳緋鳥だ。よろしくな」
「うん!あれ?個性が銃に関連するものだと思ってたけど、耳が……ウサミミ?何で?」
いきなり距離感が近いな。陽キャかよ。
「オレは生まれつき全く違う個性が二つあるんだ。しかも、銃の方は突然変異で生まれたものだからオレも始めて発動した時はビックリしたものだよ」
「へー!面白いね!」
「面白いか……?」
芦戸の明るさに若干押されながら喋っていると、バスが止まる。
お、着いたようだな。
「さて、と……」
バスを降り、オレは制服を脱いで動きやすい服にする。
いやー、ジャージなんてものを着れば動きにくいから短パンにタンクトップが一番楽だ。
「スタイル良いんだね!」
「姉に鍛えてもらっても筋肉ムキムキになれなかったのは悔しいけどな」
「お姉さんがいるの?」
「義理だけどな」
名前は……言わないほうが良いな。結構人気なヒーローだし、そう言ったことは騒ぎになるから言わないでおこう。
『ハイ、よーいスタート!』
「っ!!」
「えっ、ちょっ、緋鳥ちゃん!?」
突然、マイクから声が響いたため、芦戸を置いて一気に市街地に入る。
まさか、カウントダウンもないのかよ……!合理的だが、フリーダム過ぎない!?
『ブッコロ!』
「邪魔だ、どけ!」
ロボットが襲ってきたため、太腿のホルスターからタイムマシンリボルバーを取り出して間接部分を正確に射撃して動けなくさせる。
よし、まずは一体!どんどん行こう!