今回はあのヨツリギが出てきます!
…え?ミツラギ?カツラギ?
…………どうぞ!
夕暮れ。山に落ち始めた夕日に照らされたアクセルの街は、オレンジの風景となって私たちを出迎えた。燃えあがるような夕日に似合わず朗らかな光は、何処か心を落ち着かせるような温もりを感じられた。
「ドナドナドーナードーナーー仔牛をのーせーてー…」
「変な歌歌ってんじゃねぇよ!?」
……誰かこの
湖のクエストを終えて帰ってきたのは良いものの、それまでの間にアクア様の説得に失敗した私たちは、アクア様を入れた檻を運びながら街中を歩くことになってしまったのだ。まぁそんな事になれば嫌でも目立つ訳で、通りかかる度に街の人の奇妙な物を見る目が突き刺さる…。
…あはは〜、希少モンスターを運んでる気分だ〜(現実逃避)…………………はっ!私は今何を!?(復帰)
「ア、アクア様、そろそろ出てきませんか?もう街にも着きましたし…」
「いやよ…この中こそが私の聖域なの……外の世界は怖いもの…」
…ワニが目の前で檻にまとわりついて噛み付いてくる光景はアクア様にしかわからないのだろうが、もはや檻から出れなくなる程の恐怖とは……恐ろしい…!
まぁ流石にギルドに着けば檻も回収しなければならなくなるし、その時にはアクア様も出てきてくれるだろう……多分きっと恐らくメイビー。
……不安になってきた…!
「女神様!女神様じゃないですか!」
アクア様が本当に出てきてくれるか不安になっていると、急に男の人が駆け寄ってきた。男の人はアクア様の入った檻に近づくと、檻の鉄格子を掴みだし……。えぇ…?思いっきり壊しちゃったよこの人…。というかそれ一応あのワニの攻撃耐えるくらい高性能な檻だったよね?そんな曲がる普通?
「何をしているのですか!こんな所で!?…っ!」
「…おい、私の仲間に馴れ馴れしく触れるな。貴様、何者だ?」
……すいません、ダクネスさん、貴女誰ですか?
…いやボケた訳じゃなくて。ダクネスさんなのはわかるんですよ?だけど私の知ってるダクネスさんは自分の性癖に正直な人なんです。こんなカッコいい女騎士のダクネスさんを私見た事なかったんですよ。だから困惑してるんです。
………にしても本当にこの人誰なんだろう?見たところ上級職の冒険者だろうけど。装備も結構高性能みたいだし、檻を無理矢理曲げた実績もある。
「おい、あれお前の知り合いだろ!女神とか言ってたし」
「……女神?」
「え、そうですよ?」
「…………………そうよ!女神よ私は!」
え゛!?アクア様もしかして今の今まで自分が女神ってこと完全に忘れてました!?嘘でしょ!?
「さぁ!女神の私に何の用かしら!……………あんた誰?」
「僕ですミツルギキョウヤですよ!貴女にこの魔剣グラムをいただき、この世界に転生したミツルギキョウヤです!」
「………あぁ、いたいた!ごめんなさいすっかり忘れてたわ!でも今まで沢山転生させてきたし、忘れたってしょうがないわよね!」
「え、えぇ…」
アクア様、せめて自分の転生した人くらい覚えておきましょうよ…。あのミツルギ?さんも変な反応になってるじゃないですか。
………あれ?もしかしてアクア様がもっと遅くこっちに来てたら、私のことも忘れられてた?
「お久しぶりですアクア様。貴女に選ばれし勇者として、日々頑張っています!…ところで、何故アクア様は檻の中に?」
これ、本人が檻から出なかったって言ったら信じてくれるかなぁ?
「…………はああぁぁ!!??女神様をこの世界に引きずり込んだ挙句?檻に入れて湖につけたぁ!?君は一体何を考えているんだ!」
「ちょっと!私としては結構楽しい日々を送ってるし、ここに連れてこられたことももう気にしてないし!」
「アクア様!こんな男にどう丸め込まれたかは知りませんが、貴女は女神ですよ!?それがこんな…!」
……………なんでこの人がアクア様のことを全部知ってるように話してるんだろう。この人がアクア様と一緒に冒険でもしたのだろうか?
……なんか気に入らない。
「因みにアクア様は、今どこで寝泊りしているんです?」
「え?えっと…馬小屋で…」
「なぁ!?……君は…」
「……………………ねぇ、いい加減にしてくれないかな」
…本当にいつまでうちのリーダーの胸ぐらを掴んでるんですかね?
「…君たちは?」
「礼儀も知らないの?それとも君の育ったところでは人の胸ぐらを掴みながら名前を聞くの?」
ここまで言ったらようやくわかったのか、私よりも先輩の転生者はカズマの胸元から手を離した。
「…………」
「……アオノ、覚えなくて良い。……カズマ、大丈夫?」
「あ、あぁ」
どうやらカズマに怪我などはなさそうだ。とりあえず一安心。
「…魔法騎士にクルセイダー、それにアークウィザードか。パーティメンバーには恵まれているんだね。……君はこんな優秀そうな人たちがいるのに、アクア様を馬小屋で寝泊りさせて、恥ずかしくないのかい?」
……私の言えたことではないが、きっとこの人は転生特典の魔剣グラムで、特に苦労することなくやってこれたんだろう。私にもチートで助けられたこともあるからわかる。
じゃあだからって、今まで一から頑張ってきたカズマの現状に文句を言うことは正しいのだろうか?それに、初心者の冒険者が最初に寝泊りするのは大抵が馬小屋だ。初心者が馬小屋で寝泊りするのがおかしいのだろうか?
「君たち、これからはソードマスターの僕と一緒に来ると良い。高級な装備品も買い揃えてあげよう!」
…………あぁ。
「ねぇヤバいんですけど、あの人ナルシストとか入ってて怖いんですけど」
「どうしよう、あの男は生理的に受けつけない…。攻めるより受けるのが好きな私だが、あいつだけは無性に殴りたいのだが…」
「撃っていいですか?撃っていいですか?……カナデ?」
「…大丈夫だよめぐみんちゃん、なんでもない」
………いや、流石にアレには及ばない。それに彼にも失礼だろう。
「え〜っと、うちのパーティは満場一致でそちらには行きたくないようです。じゃあこれで…」
「…待て!!」
「退いてくれます?」
「悪いが、アクア様をこんな境遇に置いておかない!」
いきなり私たちの道を塞いできたミツルギは、そう宣言した。……この後の展開によっては、ちょっと我慢出来ないかなぁ…。なんでか知らないけど、今ちょっと短気になってるから。
「勝負をしないか?僕が勝ったらアクア様を……」
「……ふざけてんの?」
「…なんだって?」「……え?」
「ふざけてんのって言ったんだけど、わかってる?」
「…なんの事だ?僕は正々堂々とこの男に勝負を…」
「それのことを言ってんだけど。なんでカズマがそんなのをふっかけられないといけないの?」
「当たり前だ!この男にアクア様をこんな境遇に…」
「こんな境遇?初心者冒険者は大抵馬小屋で寝泊りから始まるのに?」
「アクア様は女神なんだぞ!?馬小屋なんて…」
「……いじめって、どんな風に始まるか知ってる?」
「はぁ?急になんの話を…」
「なんてことないよ。他人より劣っているから、他人より優れているから、自分と違う、自分の信じてる人と違うから」
………これは私の自論でしかない。だから間違っているのかもしれない。ただ私が思うに、いじめの始まりは加害者側ではなく無関係の第三者の評価から始まっている。
「皆が嫌いだから大丈夫」「皆気にしてないから大丈夫」
これは恐らく普通に生活していていじめと聞けば浮かぶものだろう。けれど被害者はこれだけでは決まらない。
「あの人に近いから」「あの子と仲が良いから」
そんな嫉妬に近いものでも被害者は決まってしまう。
アクア様がどうこう言っているが、それはアクア様の周りの人達を除外して考えるようなものなのだろうか?それは別に…。
………違う、何言ってんだ私。
「…なんでもない、だいたい、高レベルのソードマスターと初心者で基本職の冒険者でまともな勝負になるとでも思ってるの?」
「そんなこと関係ない!最低でも僕を倒せるほどの人物でないのなら、アクア様を任せておかないのだからな!」
「あぁもう!アンタはアクア様のなんなのよ!?」
「お、おいカナデ!大丈夫だから!」
思わず熱くなってしまったところで、カズマがストップをかけてくれた。よくよく考えたら、このままでは平行線になっていただろうからありがたい。
「…ごめん、ありがと」
「…あぁ、大丈夫だ任せとけ」
「…うん、任せた」
「…よし、話を戻すぞ。勝負がなんだって?」
「あ、あぁ!勝負をしよう。僕が勝ったらアクア様を譲ってくれ」
………本当にさっき魔法でもぶつけておけば良かった。譲ってくれ?アクア様を物かなにかと勘違いしてるのだろうか?…私の考えすぎか。本当なんで熱くなってるんだろう。
それにしても、カズマはどうするつもりなんだろう。さっき言っちゃたけど流石にレベルの低い冒険者ではミツルギに勝てないと思うけど…
「君が勝ったら、なんでも一つ言うことを聞こうじゃないか」
「よし乗った行くぞぉ!!!」
「えっ!ちょっまっ!」
「『スティール』!」
「は!?おご!」
……わぁすごーい。ミツルギが条件を言いきった瞬間剣を抜いて不意打ちした後、スティールで魔剣を奪って剣の腹を頭に振り下ろした。ゴイ〜ンみたいなすごい音したなぁ…。
「言いたい放題言いやがって」
「…なんかもう、流石カズマとしか言えないね」
「ひ、卑怯者卑怯者卑怯者!!」
「お?アンタたち、こいつの仲間か?」
「そうよ、この卑怯者!グラムを返しなさい、その剣はキョウヤ専用よ!」
明らかにチート持ちが駆け出し冒険者に勝負を挑むのは卑怯じゃないんですか?…なさそうですね。
「へ〜、そうなのか?」
「残念だけど、確かにその剣はその痛い人専用よ」
「ふ〜ん……まぁせっかくだし貰ってくか」
「ま、待ちなさいよ!」
「こんな勝ち方、私たちは認めない!」
「…じゃあ私とやる?魔剣奪還戦」
「「…ひっ!?」」
あれぇ?なにをそんなに怖がってるの?せっかく奪還戦の提案を持ち掛けてるのに、そんな風じゃ勝てないよ?
「…カナデさん?その後ろに準備してる魔法はなんですか?」
「なに言ってんのカズマ?決まってるじゃん、今私の撃てる中級魔法だよ?」
数も種類も豊富だし、魔力も多いからとんでもないことになってるけどね?
「ほら、カズマがちゃんと考えて格上の人に勝てたのに無効試合にしようとしてる人には鉄槌が必要でしょ?」
「…ねぇ?」
「ひ、ひいぃ!?」
「お、覚えてなさいよーー!!!」
…なんかモブの捨て台詞みたいなの置いていったなぁ。あとミツルギも。
「…な、なぁ、カナデ…?」
「…………………ん?なに?」
「その……ありがとな、庇ってくれて」
「…うん…どう、いたしまして…」
……たぶん今、私ひどい顔してるなぁ。
〜翌日〜
「なんでよおおおおぉぉぉぉぉ!!??」
「あうううぅぅぅぅ………」
「…アクアの声だったな」
「そしてカナデはどうしたのですか?」
「今ちょっと恥ずかしいのぉぉ…」
なんで昨日あんなに熱くなっちゃったのかなぁ……。変なことばっか言った自信ありまくるぅ…。だいぶ無茶苦茶な事ばっかり言っちゃったししちゃったしぃ…。
「とりあえずカナデは良いとして……あいつは何かしらの騒ぎを起こさないと気が済まないのか…!」
カズマがだいぶな言われ方したから仕方ないとは言えさぁ…なんで変なことあの人に問いかけたのぉ…?困るでしょあの人もぉ…。…あの取り巻きの人たちにも酷いことしちゃったなぁ…。
あ、おかえりなさいアクア様。
「…あの檻、特別製だから壊した弁償しろって…、あの檻20万エリスもするんだって…だから報酬はたった10万エリス……私が壊したんじゃないのに…!」
…あの人本当にこのパーティに迷惑しかかけてないよね?こんな事言える立場じゃないけど、本当になにがしたかったんだろう?
「あの男…!今度会ったら必ずゴッドブローを喰らわせてやるんだから!」
「探したぞ!サトウカズマ!!君、噂では女の子を粘液塗れにする“鬼畜のカズマ”とか言われてるそうじゃないか!」
「「待ってその情報源詳しく!?」」
明らかにあの時のだよね!?なんで変な広まり方してるの!?
「アクア様、僕は必ず魔王を倒してみせます。だから同じパーティに…」
「『ゴッドブロオオォォォォ』!!!」
うわぁ躊躇ない左ストレート。右頬とんでもないことになってるなぁ。ボクシングだったらKO間違いなしだと思う。
「ちょっとあんた!壊した檻の修理代払いなさいよ!30万もしたのよ!?」
「へ?あ、はい?」
さっき20万エリスって言ってたのは私の空耳だったのだろうか?
「…こ、こんなことを頼むのは虫がいいのはわかっている。だが、グラムを返してはくれないか?代わりに街で1番の剣を…」
「とりあえず、ここにそのグラムが見えるのなら眼科をオススメするけど?」
「は?…サ、サトウカズマ?アオノ?魔剣は?ぼ、僕の魔剣は?」
顔を引きつらせるミツルギに、懐からとある袋を取り出した私とカズマは一言、
「「売った」」
「ちくしょぉぉぉぉぉ!!!!」
「「キョ、キョウヤーー!!!」」
「「虚しい金だなぁ…」」
今回はほんとに遅くなってしまい申し訳ございませんでした
m(_ _)m
次ちょっとカズオリみたいなイベント入れようかなぁと思ってます。
あ、あと柴田のおっさん倒せました!
マシュとアス医師とお虎さんで耐久もどきしてたらなんとか勝てました!!
追記:感想をいただいて考えさせられたので、伏線要素を強くする様に一部修正しました。
追記:超高校級の怠惰さん、誤字報告ありがとうございました!
この二次創作に新しいオリキャラを!
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入れてくれぇぇ!!!
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見たい…うん、まぁ…(ちょっと…?)
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あんまり入れて欲しくねぇ〜…
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カナデだけに集中しろやワレェ!!
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勝手にせんかい!!