銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集) 作:銀推し
早朝。我が家(仮)の食卓には四人の女の子達が揃って席に着く。
その全員が銀髪美少女、全員が銀子ちゃん。朝から目の保養が出来る光景だね。
……いや、ある意味では目に毒な光景かもしれないけど。
「八一、飲み物汲んできて」
「分かった。麦茶でいいよね」
JK銀子ちゃんからのオーダーを受けて俺はキッチンへと向かう。
そして冷蔵庫から麦茶を取り出しコップに注ぐ。その数は勿論5つ分だ。
俺と銀子ちゃんズの共同生活が始まってから、今日で一週間が経過した。
当初はどうなるものかと思ったこの生活もここまで問題なくやってきている。それが人間の適応力というものなのか、一週間も経てばみんなもある程度この不思議な状況に慣れてきたようだ。
とはいえ勿論その不思議さに変わりは無い。
よくよく考えてみると「これ夢にしては随分と長くないかな?」とか「夢の中で眠ったり、日にちが経つってどういう事なんだろ?」みたいな疑問が浮かんできたりはするんだけど……。
ま、そんな事どうでもいっか。……って気分になっちゃう。だって考えても分かんないしね。
これは盤の中に答えがある将棋とは違う、きっと答えなんてどこにもない。だから俺達に出来るのはただありのままを受け入れるだけだ。
こと俺にとってはこの部屋のドアプレートに書かれていた文字の通り、ただ銀子ちゃんを可愛い可愛いするだけである。というかあのドアプレート、どうして『×5』なんだろうね?
まぁとにかくそんな訳で、今ではもう銀子ちゃん達は普通に日常生活を送っている。
そして俺もだ。というか俺の場合この部屋に居るだけで、この空間でただ呼吸をしているだけで幸せになれるっていうか。
特にJK銀子ちゃんと毎夜ごとにイチャつく術を確立した事で、むしろ今までより充実した日々を送れているような気がする。
なんせ銀子ちゃんと付き合い初めて以降、あの子のスケジュールが多忙過ぎて二人っきりの時間を取るのが大変だったからなぁ。
勿論そんな中でも時間を見つけて会っていたんだけど、ここでは毎日一緒で毎日イチャつける。これ以上の幸福があるだろうか、いやない。
「八一」
「あ、JK……じゃないか、JC銀子ちゃん、どうしたの?」
とあれこれ考えながら麦茶の用意をしていたら、隣にはJC銀子ちゃんが来ていた。
俺が一瞬見間違えてしまったのは彼女の格好が着替え前、つまり私服だったからだ。中学生と高校生の銀子ちゃんは年が近い為、私服だとパッと見で判断するのが中々難しかったりする。
ともあれそんなJC銀子ちゃんなんだけど、最近この子の様子がちょっと変わってきていて……。
「……(じー)」
「……えっと、なにかな?」
「……(じぃ~~)」
「……あの、銀子ちゃん?」
なんかこの子すっげー見てくる。とそんな事がここ最近増えたのだ。
決して睨んでくるという訳では無くて、ただじーっと俺の顔を見つめてくるのだ。
一体どうしたんだろう、俺何かしたかな? 自分が知っている九頭竜八一よりも成長している俺の事が余程気になるのかな?
「……えっと、俺の顔になんか付いてる?」
「目と鼻と口が付いてる」
「いやあのそういうボケじゃなくてさ」
「なに? 八一の顔はなんか付いてなきゃ見ちゃいけないの?」
「いけないって事は無いんだけど……」
うーむ、なんだろうね、これは。
昔とは違って今では銀子ちゃんに凝視されても恐怖を感じたりはしないけど、ただこうも見つめられるとなんか……ちょっとドキドキしちゃう。
だってJC銀子ちゃん顔が近いんだもん、というか相変わらず可愛いお顔ですね……なんて事を考えていると、彼女は俺の手からコップが5つ乗ったお盆を奪い取った。
「……貸して。運んであげる」
「え、いいよ。俺が運ぶから──」
「いいから貸しなさい」
俺に一切有無を言わさず、JC銀子ちゃんはそのままお盆を持ってリビングへと戻っていく。
とこんな感じで、俺の手伝いというか……なにかと親切にしてくれる事も増えた。
そしてそれだけじゃない。
更にはその……不思議な行動というか、謎のアクションを起こしてくる事もあって。
以下、最近の俺とJC銀子ちゃんの一幕その一。
「八一」
「ん? ……て、なに?」
「なにが」
「いやなにがって、これ、なに?」
「だからなにが」
「いやだから、何で俺の頬をつまむの?」
「つまみたいから」
「……そっか」
「うん」
「……うん」
「……(ぷにぷに)」
「……あの、楽しいっすか?」
「別に」
「………………」
以下、最近の俺とJC銀子ちゃんの一幕その二。
「八一。手を出して」
「手?」
「うん。手、出して」
「はぁ……」
「ふむ……(にぎにぎ)」
「……あの、なにしてるんすか?」
「ツボを押してる」
「ツボ?」
「うん、ツボ。どこか身体で悪い部分はない? ツボを押して治してあげる」
「あ、じゃあ……って、でも銀子ちゃん、手のひらの何処に何のツボがあるとか知ってるの?」
「知らない」
「………………」
……とまぁ、こんな感じで。
これはあくまで一例に過ぎないんだけど、こんな感じで時折俺の頬を軽く抓ってきたり、あるいは俺の右手を取ってにぎにぎと、ツボでも押すかのように手のひらを揉んできたりと……。
とにかくJC銀子ちゃんとはここ数日で触れ合う機会が一気に増えた。この部屋で出会った頃よりも沢山スキンシップを図れている。
やはりこの生活に慣れてきて心に余裕が生まれたという事なのだろうか。理由はよく分からないけど嬉しい限りだ。
……ただ、こうしてJC銀子ちゃんと接触する機会が多くなった今。
一方で俺は考えてしまう事がある。それは未だスキンシップを図れていないあの子の事だ。
その後、朝食を食べ終わって。
身支度を済ませたら、学生の身分である三人の銀子ちゃんはそれぞれの学校に登校していく。
それから暫くは俺と幼女と二人きり。幼女と一緒に将棋を指して、幼女が本を読む姿を眺めて。
そして昼。幼女と一緒に昼飯を食べて、目がしょぼしょぼしてきた幼女を寝かしつけて……。
そして。
「ただいま」
昼の二時過ぎ。玄関ドアが開く音。
学校が終わるのが一番早い小学生の銀子ちゃんがまず帰宅してくる。
「おかえり、JS銀子ちゃん」
いつものように俺はそう声を掛けた。
だが銀子ちゃんはちらっと俺を見て「……ん」と呟くだけで。
それだけですぐに俺から視線を外して、背中から赤いランドセルを下ろす。
うーむ、相変わらずのご様子。まだちょっと打ち解けていないというか、距離を感じるよなぁ。
まぁ空銀子と言えば誰に対しても距離を作るような性格なんだけど、それでも弟弟子であるこの俺に対してはもっと気安くというか、本来ならもっと親密に接してくれるはずなのだ。
このJS銀子ちゃんとの微妙な距離感、その問題は前々から気になっていた。
もはや捨て置く事は出来ない。JS銀子ちゃん懐いてくれない問題に何か手を打たなければ。
せっかく小学生の銀子ちゃんが、今やもう夢の中でしか会う事の出来ないロリ銀子ちゃんがここに居るのに、仲良く出来ないだなんてあまりにもツラい話ではないか。
この時間帯だと幼女はまだ夢の中。よって今から幼女が目を覚ますまで、あるいは中・高の銀子ちゃん達が帰宅するまで、この部屋で俺とJS銀子ちゃんの二人だけ。
なのでこの機を利用して、俺はもっとJS銀子ちゃんと親密になろうと考えていた。
「ねぇ、銀子ちゃん」
「なに?」
「良かったらさ、俺と少しお話をしない?」
「……お話?」
怪訝そうな目で俺を見るJS銀子ちゃん。
ここでいつも通りに「それじゃあ一局指そうか」と言わないのが今日の俺の狙いだ。
今日まで一週間、この子とはもう何度も指導対局をしてはいるのだが、将棋では中々思うように親密度が上がらない。というか銀子ちゃんが盤面に集中してしまい俺の方を見なくなってしまう。
だから今日はまず会話から、しっかり顔と顔を合わせてお話をする所から始めてみたいと思う。
「話ってなに?」
俺の前にちょこんと座ったJS銀子ちゃん。
その綺麗な灰色の目を見ながら、俺は世間話をするような気安いノリで口を開く。
「銀子ちゃん。俺達がこの部屋で共同生活を始めてから今日で一週間になるよね」
「そうね」
「だからさ、ここまでで何か思った事とか……なにか困っている事とかはないかな?」
「……別に、なにも」
二秒程考えた後、銀子ちゃんはなんともそっけない答えを返してくる。
「そ、そっか。それじゃあ~……あ、なら最近の小学校での生活とかはどう?」
「どうって、別に普通だけど」
「ほら、授業で分からない所とかは無いかな?」
「無い」
「……そ、そっか。ならいいんだけどね、うん」
「……うん」
「えっと~……あ、そうだ! じゃあさ、今何か欲しいものとかは無いかな? この際だから奮発して何でも買ってあげ──」
「それも無い」
「……そ、そっすか」
「……うん」
やべぇ、話が続かねぇ……会話のキャッチボールというのをする気がねぇよこの子……。
「………………」
「………………」
そして俺も銀子ちゃんも沈黙してしまい、その場には気まずいような空気が流れる。
こうした会話のぎこちなさ、それは子供の頃の俺と銀子ちゃんの間には無かったものだ。
当時との違いは俺が18歳になった事だけだし、やはりそこがこの問題の原因なのだろう。
けどまぁそれも仕方無いっちゃ仕方無いよなぁ。
仮に俺が小4だとして、本来小2のはずの銀子ちゃんが高校生になったらと考えると……。
……うん、そうなったら俺だって高校生の銀子ちゃんと普通に接する自信が無い。小学生からしたら高校生なんて殆ど大人みたいなものだし……。
「……ていうか銀子ちゃん。もしかしてだけど……俺の事が怖かったりする?」
「……別に、怖くなんてない」
「そっか、それは良かった。……けど、なんとなく慣れないような感じがあるんだよね?」
「慣れないっていうか……その……」
「まぁ気持ちは分かるよ。小学生だった俺がいきなり高校生になってるんだからね。けど単に成長しただけで別人になった訳じゃないんだからさ、その辺はあんまり気にしないで、いつもの銀子ちゃんの感じで接してくれて良いんだよ?」
「……そんなことは分かってる」
別人になった訳じゃない。
その言葉が刺さったのか、JS銀子ちゃんが悩むような表情で俺の事をじっと見つめる。
……ううむ、こうして顔を合わせるとその度に思うんだけど、やっぱり可愛い。小さい銀子ちゃんというのは何故こんなにも可愛いのだろうか。
いや別にね? 決して大きくなった銀子ちゃんが可愛くないとか言っている訳ではないんだ。だたそれでもJSにはJS特有のあどけなさがあるというか、この小ささが俺を狂わせるっていうか……あと銀子ちゃんには見慣れないロングヘアーがまたグッと来るっていうか……。
とそんな邪な事を考える俺をよそに、銀子ちゃんは「八一……やいち……」と繰り返し呟いて。
「……あなた、は、八一」
「うん、八一だよ。俺は九頭竜八一」
「八一……は、今、18歳なんだっけ」
「うん、そうだよ」
「ふーん……」
頷く俺の顔を銀子ちゃんがしげしげと眺める。
「それじゃあ……私が知っている11歳の八一から7年成長した八一なんだ?」
「うん、そうだよ。厳密に言うと俺は誕生日を迎えているから6年と少しだろうけどね」
「……11歳から6年と少しが経って……それでプロになった八一なのよね?」
「うん、そうだよ」
「で、私と付き合う八一だと」
「んっ!?」
思わず言葉につっかえてしまった。
俺は気を落ち着ける為ごくんとツバを飲み込む。
「つ、付き合う?」
「なによ、私と付き合ってるんじゃないの?」
「え、あ、うん、そう……だね。高校生になった銀子ちゃんと付き合ってる、かな」
「そうよね。だって自分から言ってたんだし。……ふーん、私と八一がねぇ……」
JS銀子ちゃんはより興味深そうに、俺の顔をじとーっと半眼で見つめてくる。
な、なんだろう。今この子はその頭の中でなにを考えているのだろうか。
もし仮に「なんで八一と?」とか「高校生の私はなんでこんなに冴えない男を選んだの?」みたいな事を考えていたとしたら俺はショックで二、三日程寝込むと思う。
「私とお付き合いしてるんだ?」
「はい」
「恋人なんだ?」
「はい……」
「私と恋人になって、嬉しかった?」
「……はい。嬉しかったっす……」
「ふーん……」
JS銀子ちゃんはより一層興味深そうに、ふむふむと頷く。
けどこの流れは……この流れはなんか……。
「で、どっちから?」
「え、な、何がっすか?」
「だから告白。どっちからしたの?」
あぁやっぱりだ。この流れは良くないぞ。
これはきっと根掘り葉掘り、あれこれ聞かれてしまうヤツでは……。
次はJSの番。