銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集)   作:銀推し

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12. 更にJSの話

 

 

 

「……ふふっ、情けない顔。ばかやいち」

 

 私がそう言って笑うと、

 

「……はぁ、全く……」

 

 この人……じゃないや。

 大きくなった八一もため息を吐きながら困ったような笑みを浮かべる。

 

「いいかい銀子ちゃん。クラスに好きな男の子が出来たの~……とか、そういう俺の心臓に優しくない冗談は絶対に言っちゃ駄目だからね?」

 

 ……ふむ。

 確かにそれは冗談だ。小学校のクラスに好きな男の子などいないし出来る予定もない。というかクラスの男子なんて興味が無いから顔も名前もロクに覚えてすらいない。

 だけど……この冗談を受けてあたふたする八一は見ものだ。イイ感じにかっこ悪くなる。なのでもうちょっとからかってみようと思う。

 

「別に冗談なんかじゃないわ。ほんとに好きな相手が出来るかもしれないじゃない」

「ちょ、ちょっと銀子ちゃん!」

「いっそ本気で恋人探しをしてみようかな。もちろん……八一以外の」

「んぐっ!」

 

 私の言葉が急所に刺さったのか、八一は苦しそうに呻いて心臓の辺りを押さえる。

 ふふっ、八一はもう18歳なのに、私の言葉一つでそんなに取り乱して……なんかかわいい。

 

 ……と、私がそんな事を考えていると。

 

「ふ、ふふふ……」

 

 突然八一が不気味な笑い声を漏らして。

 

「な、なに?」

「ふふふ……銀子ちゃん、そんな思わせぶりな事を言っちゃってもいいのかな!?」

 

 一転してその顔に不敵な笑みを浮かべた八一からの反撃が飛んできた。

 

「俺は知ってるんだよ! 小4の頃の銀子ちゃんはもう九頭竜八一が大好きだって事をね!」

「にゃっ!?」

「クラスの男子を好きになるだってぇ!? そんな事出来るはずがないね! 何故なら君はもうこの俺にメロメロなんだからさぁ!」

「な、にゃ!? わわ、私が八一にメロメロ!? そ、そんにゃことにゃいし!?」

 

 慌てすぎて喋り方が変になっちゃった。でも本当に、本当にメロメロなんかじゃないから!

 私にとって八一とは子供の頃からずっと一緒にいるだけの相手で、何処に行くのにも手を繋いでいるだけの相手で、これからもずっとそうしていたいだけの相手で、ただの弟弟子で……だから好きとかそんなんじゃなくて……!

 

 そりゃ八一は私の事を好きなんだろうけど? 

 というか大好きなんだろうけどね!? 

 でも別に私は、私はそんな、そんな……!

 

「べ、別にわたしは、そんにゃ、八一の事なんて好きにゃわけじゃ……!」

「おーっとぉ、その言い訳は通用しないよ。なんせ俺は当の銀子ちゃん本人から聞いたんだからね」

「え、私から?」

「そうだよ。高校生になったきみ自身から。初──じゃない、前に機会があった時に『いつ位から俺の事が好きだったの?』って聞いたら『子供の頃からずっと♡』って答えてくれたもんね!」

 

 な、なんですってぇ! 高校生の私めぇ、なんという余計な事を言うのだ! 

 勝手に人の本心を打ち明けないで欲しい。これでは私がもうすでに八一に告白をしちゃっているようなものではないか。

 

「九頭竜八一の事、とっくに好きなんでしょ? ほらほら、認めちゃいなよぉ?」

「し、知らないそんな事っ! 私は八一なんて好きじゃないもん!」

「へぇ~? そうなんだぁ~、好きじゃないの?」

「好きじゃない!」

「ふーん……」

 

 私はぷいっとそっぽを向くが、それでも八一は強気な笑みを崩さない。

 成長して18歳になった八一はこの私の事を、空銀子という人間の事を知り尽くしている。だからこそ的確に私の弱い部分を付いてくる。

 

「けど良いのかなぁ、そんな事を言っちゃって」

「な、なにが……?」

「それなら……それなら俺だって銀子ちゃんの事を好きじゃなくなっちゃうかもしれないよ?」

「え……?」

 

 うそ、好きじゃなくなっちゃうの……?

 

「それどころか……銀子ちゃん以外の子を好きになっちゃうかもね」

「えぇ!?」

 

 うそうそ、私以外の女の子を……!?

 

「あ、唐突に思い出したぞ。そういや小6の頃はクラスにとても可愛い女子が居たんだよなぁ。君の知っている九頭竜八一はもしかしたらその子の事を好きになったりしちゃうかも……」

「そんなぁ!?」

 

 八一の語る話があまりに恐ろしすぎて、私は思わず悲鳴を上げる。

 そ、そんな……! 八一が、八一が他の女の子の事を好きになっちゃう……!?

 ……や、やだやだぁ! そんなの、そんな事になったらもう立ち直れないよぉ! 

 わたしは……わたしはやいちだけなのに……やいちじゃないとダメなのに……。

 

「……うぅ、そんなのやだぁ……!」

 

 口からは蚊の鳴くような声しか出なかった。

 そして目元がじわじわと熱くなって、視界がじんわりと滲んできて……。

 

「──あ」

 

 するとそんな私の様子を見た八一は「ヤバい」と言うような表情に変わった。

 

「じょ、冗談! これ全部冗談だからね!? 他の子なんて好きになったりしないからね!?」

「……ほんと?」

「ほんとほんと! 九頭竜八一は空銀子ちゃんがだーい好き! もうちょー好きだから! 銀子ちゃん以外なんて考えられない!」

「……それならいい」

 

 危うく泣きそうになっちゃったけど、私はギリギリで涙を抑える事に成功した。

 

 ……ふへへぇ、だーい好き、だって。

 ちょー好き、だって。えへへ……嬉しいな。

 

「少しからかい過ぎちゃったね。ごめん」

「むー……」

 

 八一はぺこりと頭を下げる。本当にひどい話だ。18歳のくせに小学生をからかうだなんて。

 もやもやの収まらない私は八一をじっと睨む。するとその睨みに効果があったのか、

 

「お詫びのしるしに……ほら、おいで」

 

 そう言って優しい笑顔を浮かべながら、八一は両腕を大きく横に広げた。

 

 ……む。なにそれ。

 もしかして抱き付いていいよ、って事? そんなのでお詫びになるとでも思ってるの?

 

「………………」

「……あれ? どうしたの、こないの? 銀子ちゃんこれ好きだよね?」

「……別に好きじゃ……って、もしやそれも高校生の私が言ってたの?」

「まぁこれは直接聞いた訳じゃないけど。でも反応を見ていれば何となく分かるからね」

「……むぅ」

 

 ……どうしよう。カンペキに私の嗜好が読まれてしまっている……。

 そりゃあ……好きだけど。だって私は八一の事が好きなんだもん。好きな人に抱き付くのが好きだなんてのは当たり前の事でしょ?

 

 そう、だからこれは当たり前の事なの。

 だから八一が抱き付いて良いよ? っていうならお言葉に甘えてそうしたい……けど、でも……なんか恥ずかしいような気もするし……。

 でもでも、もう八一には好きって気持ちがバレちゃってる訳だし……それにこれは所詮夢だし……この夢から覚めたらもう18歳の八一に抱き付くなんて数年経たなきゃ無理な訳で……。

 

 ……うぅ~、えーと、えーとぉ……えいっ! 

 と勢いをつけて、私は八一の胸に飛び込んだ。

 

「おっと」

 

 すると八一が飛び込んできた私を優しく受け止めてくれる。

 

「ん……」

 

 ……ぁ、大きい……。

 18歳になった八一の身体は私が想像していた以上に大きかった。

 八一の両腕が私の背中に回される、すると私の全てがすぽりと覆い隠されてしまうぐらいだ。

 ……あわわわ、八一に包まれてるぅ……!

 

「ん~……」

「よしよし、いい子だね」

 

 八一の胸にぐりぐりとおでこを押し付ける。すると八一の手が私の頭に伸びてくる。

 そうしてナデナデされちゃうと……あ、大きな手のひら……ふわわぁ、気持ちいい……。

 

「……んー♡」

 

 八一の手が私の髪の奥にまで入ってきて、私の長い髪をブラッシングするみたいに優しく丁寧に梳いてくれて……。

 こ、これは……! これは心地いい……うぅ、ふにゃふにゃになっちゃうよぉ。

 高校生の私はこんなに心地いいのを味わっているのか、ずるい。

 

「八一、もっとなでろ」

「いいよ。好きなだけなでなでしてあげる」

 

 答える八一の声も嬉しそうだ。まぁ当然よね? だって八一も私の事が好きなんだし。

 これは私も嬉しくて八一も嬉しい、win-winの関係というヤツだ。だからお互いに「そろそろ止めようかな?」って気分にはならなくて、その後もしばらく私は八一に抱き付いていた。

 

 ……あぁ、幸せ。

 今日はずっとこのままこうしてたいな……。

 ……と、私はそう思っていたんだけど……その時玄関の方でガチャリとロックを外す音が。

 

「あ、JC銀子ちゃんが返ってきたみたいだね」

 

 中学生の私が帰宅したのを切っ掛けにして、八一は私の抱擁を解いた。

 ぬぅ、せっかくの幸せな時間だったのに邪魔者が帰ってきた……と思っていたら、

 

「……ふにゅぅ」

 

 すぐ近くからもそんな声が聞こえた。

 どうやら幼女の私もお昼寝から目覚めたらしい。仕方無く私は八一の胸元から離れる事にした。

 

「おかえり、JC銀子ちゃん」

「ん」

「おかえり」

「……ただいま」

 

 八一に続いて私も挨拶すると、中学生の私は私だけにはただいまと返してくれた。けれどもその顔は複雑そうな感じだ。かくいう私も自分に挨拶するのはちょっと違和感があったりする。

 

「幼女銀子ちゃんも、目が覚めたかな?」

「…………(こくり)」

「よし。それじゃあ将棋の時間といこうか。そろそろJK銀子ちゃんも帰ってくるだろうし」

「うん」

 

 今は3時過ぎ。みんなが揃い出すこの時間帯から将棋をするのはいつもの流れだ。私もふわふわだった頭の中を将棋モードに切り替える。

 今日こそは中学生の私に勝ちたい。相手は自分と同じく空銀子、それも自分より成長している空銀子とあっては分が悪く、実際私の連敗続きなのだが、けれどもこの夢の中で一勝ぐらいはしたいと思っている(ちなみにこれは中学生の私も高校生の私に対して同じような事を考えているらしい)

 

「……あ、そうだ」

 

 とその時、帰宅したばかりのJC銀子が何かを思い出したかのようにその口を開く。

 

「ねぇ八一。ちょっと聞きたい事があるんだけど」

「なに?」

「この前──」

 

 と、何かしらを言い掛けたのだが。

 

「……あ、その……」

 

 そこでまず私を見て、

 

「……えっと……」

 

 次に幼女の私を見て、

 

「……ん」

 

 そしてJC銀子は困惑したように口ごもる。

 なんだろう。今の様子を見る限りだと私達の前では話し辛いような事なのかな。

 

「……八一、ちょっとこっち来なさい」

「あ、うん」

 

 どうやらその読みは正解だったらしい。JC銀子は八一の腕を掴んでベランダへと向かう。

 ……むぅ。露骨な程の内緒話の気配だ。何を話すんだろうか、気になる……けど、これ程に内緒話の空気を作り出されてから「私も聞きたい」と言うのはちょっと気が引けるし……。

 みたいな感じで私は躊躇していたのだが、しかし幼女の私はそんな空気を物ともしなかった。

 

「じぇーしー、なんの話をするの?」

「え、と……別に大した話じゃないから」

「たいした話じゃないならわたしもきく」

「駄目よ。幼女にはまだ早い話なの」

「やだ。わたしもきく」

「駄目」

「やだ」

「駄目だってば」

「やーだ」

 

 中学生の自分相手でも幼女銀子は折れない。さすが私譲りの頑固さだ。……あれ、逆かな?

 そしてこの部屋内での幼女の私は立場が強い。八一は元より、他の空銀子達も一番小さい自分自身にはあまり強く出られない(かくいう私もだ)幼女の私にはそうさせる不思議な雰囲気がある。

 

「……ねぇ、これどうすればいい?」

 

 なので結局は根負けしたのか、JC銀子は助けを求めるかのように八一に視線を送った。

 

「えっと……その話ってどうしても内緒じゃないと駄目な話?」

「……まぁ、どうしてもって程ではないけど……」

「なら良いんじゃない、ここで話しても。聞くのは他人じゃなくて同じ銀子ちゃんなんだしさ」

「……そう、ね」

 

 中学生の私はまだ迷っていたようだが、やがて意を決したようだ。

 そばにいる私と幼女の私にちらっと視線を向けた後、八一と顔を合わせて。

 

「八一。あんたは高校生の空銀子と付き合っているのよね?」

「う、うん。そうだけど」

「なら率直に聞きたいんだけど……二人はその、あの、お、おしべとめしべ、みたいな事はその、もう、もうしちゃってるの!?」

 

 すると八一がギョッとした顔になった。一方でそれを尋ねた中学生の私は顔が赤くなってる。

 

 ……おしべとめしべ?

 しちゃってる? 何を? 何のこと?

 

 

 

 




JC銀子は前々からそこがずっと気になってました。
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