銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集)   作:銀推し

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13. よく分からない話

 

 

 

 

「え、ちょ、なに、なんて?」

 

 思わずといった感じで聞き返す八一。

 

「だからっ! 八一は高校生の私ともうしちゃってんのかって聞いてんの!」

 

 キレ気味で聞き直す中学生の私。

 

「……しちゃってる?」

 

 そんな中、小学生の私は一人呟き首を傾げる。

 

 ……もうしちゃってる? 

 しちゃってるって、一体何をしちゃってるの?

 というかおしめとめしべってなに? 八一とJK銀子はお花でも育てているの?

 

「いやちょっと待ってよJC銀子ちゃん! 突然なんでそんな話を!?」

「別になんでだっていいでしょ!? いいからとっとと答えなさい!」

「てかそれどう考えても小学生と幼女が居る前で話していい内容じゃないっすよね!?」

「わ、私もそうは思ったけどっ、でもあんたがここで話せって言ったんじゃない!」

「いや俺だってまさかそんな話だとは……!」

 

 ヒートアップしていく八一とJC銀子。

 そんな二人の会話を聞きながら私は「……ふむ」と思考を巡らせる。

 

 それはJC銀子が聞きたい事で、八一とJK銀子がしちゃってるかもしれない事らしい。

 そして小学生や幼女の居る前で話すような事ではないらしくて、おしべとめしべらしい。

 

 ……うーん。私の前では話せないとなると、将棋に関わるような事ではないはずだよね。

 そして八一と高校生の私は付き合っていて、付き合っている二人が『しちゃってるかもしれない事』となると……おしべとめしべというのは恐らく隠語のようなものだから……。

 

 ……あ、分かった。多分これはキスの事だ。

 うん、きっとそうね、謎が解けてすっきりした。

 

「JKの私としちゃったの? それともまだしちゃってないの? どうなの!?」

「ど、どうって言われても……!」

「こんなの『はい』か『いいえ』で答えればいいだけじゃない。簡単に答えられるでしょ?」

「いや、あのですね、中々そういう訳にもいかないというか……」

 

 JC銀子の剣幕の前に八一はたじたじな様子。

 八一とJK銀子がキスをしちゃっているのかしちゃっていないのか。その事がそんなにも気になるだなんて中学生の私も結構お子様だ。

 けれど……うん、確かにちょっと気になる。だってそれは……そ、そういう事は、ほら、私にとっても決して他人事じゃない訳だし?

 

「……八一。男だったらバシッと答えなさい」

「って、JS銀子ちゃん!?」

「ほら、小学生にも言われてるわよ! ぐだぐだ言ってないでバシッと答えなさい!」

 

 中学生の自分に便乗して私もうんうんと頷く。

 

「やいち、ばしっと答えろ」

「よ、幼女銀子ちゃんまで……」

 

 すると幼女の私までもが口を開く。

 けれども果たしてこの子は今繰り広げられている話を理解しているのだろうか。付き合うとかキスとかって4歳の子供でも知ってるのかな?

 

「い、いや……けど……」

「けどじゃない。言え」

「いや待ってって! こればっかしは俺の一存じゃ答えられないんだよ。JK銀子ちゃんにも関わる事だからあの子の了解がないと……」

 

 それでもバシッと答えない、全く潔くない八一はどうにか逃げ道を探していたようだけど、

 

「高校生の私なら良いって言ってたわよ」

「……え、それ、本当に? JK銀子ちゃんが?」

 

 続くJC銀子の言葉を受けて、八一はきょとんとした顔になった。

 

「そうよ。前に一度、JK銀子とは二人だけで今と同じ話をしたから」

「あぁ……そういえばベランダでなにか話していた時があったね」

「うん。そしたら自分の口からは答え辛いから、その話は八一から聞いてくれって言われたの。だからこうしてあんたに聞いてるの」

「そっか、そうなんだ……あの子がOKなら話しちゃってもいいのかなぁ……?」

 

 八一は腕を組みながらうーん、と唸る。

 そうだそうだ。言っちゃえ言っちゃえ。高校生の私が良いと言っているなら良いはずだ。

 なんたって同じ空銀子なんだし、そういう情報は共有しておく必要があると思う。

 

「ほら、早く答えなさい」

「……分かったよ」

 

 お。遂に八一が答える気になったようだ。

 一度コホンと咳払いした八一は、私達三人の顔を見ながら言う。

 

「けどなんて言ったらいいか……そうだな、まず大前提として、俺とJK銀子ちゃんは高校生カップルなんだ。まぁ俺は高校に行ってないんだけど年齢としては18歳で高校3年生に当たるから、とにかく高校生カップルな訳で」

 

 ふんふん、それで?

 

「高校生カップルともなればね、つまり~……自然とそういう関係になっちゃうんだよ。特別に進んでいる訳でも無くて特別に遅れている訳でも無い、世間一般と比較しても至ってノーマルな関係だと俺は思っているけどね」

「……で?」

「え、いやあの……ほら、ここまで言えば何となく分からないかな? てか分かるよね?」

 

 八一はそう尋ねてくるが、JC銀子は「分からないわよ」と首を横に振る。

 そして私も同感だ。今の説明では曖昧過ぎて何が言いたいのかよく分からない。

 高校生カップルだからなに? だからキスをするの? しないの? どっちなの?

 

「だから~……そうだな、あのー、JK銀子ちゃんは高校一年生だってのは知ってるよね?」

 

 うん。

 

「でもね。実はJK銀子ちゃんはただの高校一年生じゃないんだ」

 

 ただの高校一年生じゃない?

 

「あの子はJKだけどただのJKじゃなくて……つまり、まぁ、なんていうか……」

 

 そこで八一はまるで言葉にし難い事を言うかのように視線を横に逃して。

 そしてちょっと赤くなった顔で、言った。

 

 

「あの子はもう大人の銀子ちゃんでもあるんだ」

 

 

 ……大人の銀子ちゃん?

 JK銀子はJKじゃなくて大人らしい。けれどそれが何だと言うのか。

 話の流れから察するに、大人だからキスをしちゃってるって事なのだろうか。

 むぅ。ややこしい言い回しというか、煮え切らない言い方だ……と私は思ってたんだけど。

 

「お、おとなぁ!?」

 

 聞こえたその声は見事に裏返っていた。

 どうやら中学生の私には八一の言葉の意味が、その真意が私よりハッキリと理解出来たらしい。

 その顔が見る見る内に真っ赤になっていく。まるで茹でダコのようだ。

 

「おとなって、それって、それって……!」

「ま、まぁ……そういう事だね」

「う……そ、それ、ほんとなの!?」

「……うん。け、けどね!? さっきも言ったけど俺達は高校生カップルだからそうなるのも自然っていうか、別に俺が急かしたとか我慢できなくなったとかそういう話じゃないんだよ!?」

 

 八一は何やら早口でまくし立てる。その言葉はどこか言い訳めいて聞こえた。

 

 だが今の説明を聞いても私にはよく分からない。

 そもそもどうしてJK銀子は大人なの? まだ高校一年生の16歳だよね? 

 大人って20歳になったらじゃないの? 高校生なのに大人になる方法があるの?

 

「や、や……やいちの……やいちの不潔……!」

「不潔違うっ! 普通の事なんすよこれは! 付き合っていたらマジで普通の事!」

「……ねぇ、JC銀子」

 

 分からないので尋ねてみる事にした。

 八一と言い争い中のJC銀子の服の袖を私はちょんちょんと引っ張る。

 

「え!? あ、なに?」

「中学生のあなたは大人なの?」

「は、はぁ!? わ、わわ、私が大人な訳ないでしょう!? バカじゃないの!?」

 

 するともの凄い剣幕で叱られた。でもJC銀子は顔中真っ赤だからまるで怖くない。

 でもそっか、中学生は大人じゃないんだ……となるとキスをしていないって事なのかな?

 

「なら八一は大人なの?」

「俺? ……うん、まぁ、そうだね。JK銀子ちゃんと一緒のタイミングで大人になったんだ」

「一緒のタイミングとか言うな!」

 

 むー? 一緒のタイミング?

 八一と私は誕生日が異なるのに、一緒のタイミングで大人になったりするのだろうか。

 ……とそんな事を悩んでいると。

 

「あっ」

 

 突然八一がそう呟く。きっと今玄関の方で聞こえた物音に反応しての事だろう。

 どうやら話題の中心人物である高校生の私が帰ってきたようだ。

 

「ただいま」

「お、おかえり銀子ちゃん」

「……って、なにかあったの?」

 

 いつも通りの様子な幼女。大人の意味がよく分からなくて悩む私。顔中真っ赤の中学生。

 そんな三人の様子を見て、JK銀子は不思議そうな表情でそう尋ねる。

 

「え? あ、いや別に? 何もないっすよ?」

「……ほんとに?」

「ほ、ほんとにほんとに」

「ふーん……?」

 

 八一の反応は妙に白々しい。目が泳いでいるのが私から見ても分かる。

 当然JK銀子もそれを訝しんでいたようだが、けれどすぐに興味無さそうな顔になって。

 

「まぁいいわ。そんな事よりもあんた達、どうして対局をしていないのよ」

「あ、そういやそうだね。さぁみんな、全員揃った事だし将棋の時間だ。ほらほら!」

 

 場の雰囲気を一変させるように、八一が両手をパンパンと叩く。

 そうしてその後はいつも通り。みんなで将棋をする流れになったんだけど……。

 

 

「………………」

 

 私の正面に座る相手。私と対局中のJC銀子。

 私と似たような表情で盤面を見つめる、私以上の鋭い読みの冴えの持ち主。

 

 ……なんだけど、今日は様子が違う。

 JC銀子の視線は盤面ではなく、少し右の方へと向いていて。

 

「………………」

「……なに?」

 

 自らに向けられている視線に気付いたのか、高校生の私が眉を顰める。

 

「う、……別に」

 

 するとJC銀子は即座にすっと視線を逸らす。

 けれども先程の話題が尾を引いているのか、その顔はずっと顔が赤いままで。

 明らかにその意識は高校生の私へと向いている。まるで対局に集中出来ていないのが明らかだ。

 

 けど……けれどこの対局も私の負けだった。

 くぅ、こんな見るからに集中を欠いている相手に負けるなんて……。

 ……と言いたい所なんだけど、実は集中出来ていなかったのは私も同じで。

 

「……(じー)」

「……あんたまで、なに?」

「……別に」

 

 JK銀子と視線が重なるや否や、私も中学生の私を真似てすぐに顔の向きを戻す。 

 

 ……うーん。こうして見てもよく分からない。

 私が観察する限りでは、JK銀子はJC銀子と殆ど変わらないように見えるんだけど……。

 けれども中学生の空銀子はまだ子供で、一方高校生の空銀子はもう大人らしい。

 

 たったキス一つでそんなにも人間が変わったりするのだろうか。

 なんとも不思議な話だ、よく分からない話だなと私は思った。

 

 

 

 

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