銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集) 作:銀推し
……なんか、大変なことになっちゃった。
な、なんか大変なことになっちゃったっ! 大変なことになっちゃったよぉ!
そんな私の心中での悲鳴などいざ知らず、他の皆はすたすたと廊下を歩いていく。
幼女を抱えた八一、それに続いて高校生の私、それに続いて……小学生の私が。
──ど、どど、どうしようどうしようっ!
まだ、まだ何も始まっていないのにっ、それなのに心臓がバクバクしちゃってるよぉ! あぁもう緊張と恥ずかしさで頭がおかしくなりそうっ!
ど、どうしよう、私どうすればいい!? どうして、どうしてこんな事になっちゃったの!?
……いや、うん。……原因は分かってるの。
悪いのは私だ。だって八一と一緒にお風呂に入りたいなんて言ったのは私自身なんだから。
だからこれは私の自業自得、自分で自分の首を絞めたようなものだ。
……でも、でも、……だってさぁ……。
だってなんか自分でも知らぬ間にっていうか、口を突いたような勢いで言っちゃたんだもんっ!
ていうか八一が悪い、八一が悪いんだもんっ!
八一が幼女の私ばっかし構うから、だからなんか……なんか私だってっ! みたいな気分になっちゃったんだもん!
……だって、だって今だってほら……八一は幼女の私を抱っこしてるしー。
幼女は別に赤ちゃんじゃないんだから普通に歩けるのに、なのに抱っこしてるしさー。
「いしょっと……」
そんな八一は幼女を抱えた不格好な体勢のままドアを開いて、洗面所へと足を踏み入れる。
そしてJK銀子と私も続いて、我が家(仮)の洗面所に4人もの人数が揃った。
「……狭いっすね」
「……そうね、狭いわね」
……うん、それには私も同歩。はっきり言ってこの家の洗面所は狭い。
ここは一人で住む用のワンルームマンションって話だし、洗面所を複数人で利用する事なんて想定していないんだろう、この狭さに4人というのは明らかに許容量を超えているので、私は少し下がって廊下に出る。
……けど、けど、そんな狭い所でこれから私達がする事といえば……は、はわわわわ……!
「ええっと、それじゃあ……」
置き場に困ったのか、八一は洗面台の上に座らせる形で幼女を下ろして。
「……ど、どうします……かね?」
見るからに困惑した表情でそう言った。
「………………」
そして私もJKの私も共に言い淀む。
さて、洗面所に来たけどここからどうしよう……というのが全員の頭の中にある問題だろう。
目的は入浴だ。けれどもお風呂に入る為には……当然、服を、脱がなくちゃならない訳で。
服を脱ぐという事は……上も下も、パンツも、全部脱いで裸にならなくちゃいけない訳で?
裸になるという事は……そしたら当然、八一に、は、は、裸が見られちゃうという訳で!?
は、は、はだか……はだかに、なるのぉ!? こ、ここで!? やいちの前で!?
う゛ぅぅう~!! そんなのむりだよ絶対むりむり死んじゃう死んじゃうあぁもうなんでわたし八一とお風呂入りたいなんて言っちゃったの!?
……はうぅ、ほんとに無理だよぉ。
恥ずかし過ぎるよぉ、今からでもリビングに逃げ出したいぃ……んだけど。
「やいち、おふろ入らないの?」
「勿論入るよ。ただ……」
「……そうね、この狭さだとね」
でも、そんな感じで逃げ腰になっちゃってるのは小学生の私だけで。
幼女の私はいつもと変わらない様子だし、高校生の私だって平然とした顔をしている。ついでに言うと八一だっていつも通りだ。
だったら……だったら私も逃げられない。私だって幼女やJKと同じ、同じ空銀子なんだから。ここで私だけ引き下がるなんて情けないもん。
「とりあえず……先に銀子ちゃん達がお風呂に入っちゃいます? その方が──」
「それって、私達が着替えるシーンを見たいからってこと?」
「ち、違う違う! そんな意図は無いって!」
「……どーだか」
顔の前でぶんぶんと手を振る八一、対して冷たい目付きを向けるJKの私。
ふ、服を脱ぐシーンを八一に見られるなんて……そ、そんなのむり、むりむり、まじむり。
「じゃあ……まず俺が風呂に入っちゃうけど、それでいい?」
「いいけど。ていうか狭いんだからとっとと入っちゃってよね」
という事で、空銀子達の脱衣シーンを目撃されないよう八一が先陣を切る事になった。
けどそうなると……いざ私が服を脱いでお風呂に入ろうとしたらそこに八一が待ち構えているという事になる訳で……ううむ、それだって結構恥ずかしい感じなのでは……。
……まぁ、そもそも一緒にお風呂に入る時点で恥ずかしくない方法なんてないのでは? と言われたら返す言葉も無いんだけど……。
……ん? ていうか……八一が先に?
となると……八一の着替えシーン? あ、それはちょっと……なんか興味あるような……。
「……(じぃ)」
思わず八一をガン見してしまう私。
「……(じぃ)」
「……(じ~っ)」
「……っ、」
そしてどうやら同じ考えなのか、幼女の私の目も八一の方に向いていて。
二人の銀子の視線が気になったのだろう、八一は服に手を掛けたままの姿で硬直する。
「……えーと」
きっと八一も脱衣シーンを見られるのは恥ずかしいんだろう、暫し躊躇していたのだが、
「八一、早くして」
「……あの、一旦廊下に出てくれると凄く有り難いのですが……」
「いいから早くしろ」
「はい」
しかしJK銀子の有無を言わせない圧の前に簡単に屈して……そして。
「──ふっ!」
すると八一はバッと服を脱いで。
「はっ!」
サッと腰にタオルを巻いて。
「それじゃお先!」
瞬く間に浴室の中に飛び込んで、そしてバタンとドアが閉められた。
「は、はやい……」
すごい。見事だと言う他ない早脱衣の技だった。
その早さにびっくりしてしまって八一の身体をじっくりと観察する暇さえなかった。
「あのバカ、なにを恥ずかしがってんだか」
「………………」
「そんなに恥ずかしいんだったら一緒にお風呂入るなんて言わなきゃいいのに」
「…………う」
JK銀子の言葉に私は思わず唸ってしまう。
それは八一に対して言ったんだろうけど……だけど私の胸にも深く刺さってしまう言葉だ。
……でもだってぇ、だって八一が、やいちが……やいちと一緒が良かったんだもん……。
「さてと。幼女、服は自分で脱げるわよね?」
「ん」
こくりと頷いて、洗面台の上に立った幼女銀子がよちよちと服を脱ぎ始める。
「ふぅ……」
そして、高校生の私も服を脱ぎ始める。
八一みたいに早脱衣などするはずも無く、衣服を傷めないよう丁寧にゆっくりと。
「………………」
私はその様子を自然と目で追ってしまう。
一枚一枚脱いでいく度、私と同じ真っ白な地肌が露わになっていって。
「……あ」
JKの私、高校生になった私の身体。
足がすらっとしていて、お尻はあんまり大きくなくて、ウエストも細くて、胸も……そこそこで。
全体的にスリムな感じで、体中が透き通るように白くて……本当にまっしろで。
それはなんだか──
「……なに?」
「──えっ、あ、な、なんでもない!」
JK銀子から訝し気な目を向けられて、私は慌てて顔を逸らした。
ていうか、いま、わたし……JK銀子の事を……きれいだな、なんて思っちゃった。
な、なに考えてるの全く。成長した自分自身をきれいだと思うなんてナルシストもいいとこだ。
「……ふぅん? ま、いいけど」
動転する私の事など然程興味なかったのか、すぐにJK銀子は表情を戻して。
そして残っていた下着に手を掛けて、ブラジャーとパンツを脱いで洗濯かごに入れる。
……にしても八一と一緒の入浴だというのに、高校生の私は本当に平然としている。この図太さというか、肝っ玉の強さみたいなものは正直言って私も見習いたいところだ。
……あるいはそれとも、JK銀子も心の中では『八一と一緒にお風呂なんてむりむりマジ無理恥ずかし過ぎて死んじゃう私死んじゃうってぇ!』……とか思っていたりするのかな?
……なんて事を考えていると、裸になったJK銀子は同じく裸の幼女の手を取って。
「八一」
『はい?』
「向こう向いてなさい」
──じゃなかったらぶちころすから。
と言外に言い含めるような言葉を告げてからバスルームのドアを開く。
すると少しだけ中が見えた。バスタブに浸かる八一は言い付け通りに顔を横に向けている。
けれどそれは一瞬の事、JKと幼女が中に入ってすぐにドアが閉められた。
そしてシャワーの水音が聞こえてくる。きっと身体を流しているんだろう。
「……す、すごい」
ほんとに、ほんとにお風呂に入っちゃった。
幼女はともかくJKは裸なのに。中には八一が居るのに、ついでに言えば八一も裸なのに……。
せめてタオルで身体を隠すぐらいの慎みはあってもいいじゃなかろうか。まさかほんとに恥ずかしくないのかな? なんかもう度胸がすごい、JK銀子恐るべし……。
「……はっ!」
って、そんな事に驚いている場合じゃない!
私も、私もお風呂に入らないとっ! ここで時間を掛けるのは悪手だ、そうしたらより入り辛くなっちゃうに決まってるんだから。
……そうね、お、お風呂、は、入らないと。
入らない……と、と、とぉ~……うぅぅう~……は……入るの! 私もお風呂入るんだもんっ!
「……は、はいりゅのぉ……!」
声にならない呻きを漏らしながら、私もいそいそと服を脱いで。
そして、裸になって……、バスルームのドアを、ドアを、ドアをををぉ……!
「──やいちぃっ!」
『な、なに?』
「ぜったいみちゃ駄目だからね!?」
再三言うけどだったら風呂なんて入らなければ。と私の心の冷静な部分がそんなツッコミを入れてきたけど、もう知ったこっちゃない。
ここまで来ておいて逃げの一手なんてない。私は覚悟を決めてバスルームのドアを開いた。
「あ、じぇーえすきた」
「てかなんで後ろ向いてるの?」
なんでってそりゃあ、覚悟は決めたんだけど……でも真正面から入る勇気は無いっていうか?
だから……後ろ向きで。しゅんと身体を丸く縮こまらせたまま。
「……う、ぅぅう~……!」
でもなんか、なんかこうして後ろを向いていると八一の様子が見れないから……!
はうぅう~、八一の目が、八一の視線が私の背中に刺さってるような気がするよぉ……!
「……うぅ、やいちのばか」
「え、俺何もしてない……」
「うるさいっ! ばかっ!」
大体ここに八一が居るのがおかしい! そうだ、お風呂に八一が居るのがおかしいんだっ!
いや一緒に入りたいって言ったの私だけど! そりゃもう私が言っちゃったんだけどね!?
そんな支離滅裂な思考を頭の中で巡らせながら、シャワーでパパっと身体を流して。
「……ちょっとつめて」
「あ、うん」
八一が横にずれて出来た僅かなスペース、バスタブの中に身体を沈めた。
すると熱々のお湯からじわじわと伝わる心地よい痺れ……を、感じる余裕すらなく。
「……せまい」
「……そうだね。狭いね」
洗面所が狭いならお風呂の中も狭い。だったら当然バスタブの中だって狭い。
ていうか狭すぎて、身体が、身体のあちこちがどうやっても当たっちゃうし!
「……むぅー、きゅうくつ」
するとその狭さに耐えかねたのか、幼女の私がバスタブを抜け出してイスに腰掛ける。
勿論ながら裸で。見ようと思えばその身体中が隈なく見られちゃうような形で。
……まぁ、この子は恥ずかしいとか感じる年頃じゃないから気にする事じゃないと思うけど。
とその時。
「……ん?」
カタン、とそんな微かな物音が洗面所の方から聞こえた……ような気がした。