銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集)   作:銀推し

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24. JCと風呂の話

 

 

 

 

 ──あ、あいつら、あいつらマジで4人一緒にお風呂入りやがった……!

 

 八一と3人の銀子達が風呂場へと向かった後。

 一人リビングに残された私はタブレット端末を片手に持ったまま戦慄する。

 

 え? え? なんで? あいつら正気なの!?

 なんで、だって八一と一緒にお風呂だよ!? そんなお風呂、普通入れないわよね!? 

 いやてか入れたとしても入らないわよね!? そんなのあり得ないわよね!?

 

 え、待って待って、一度冷静になって?

 だってなんで? なんであの三人は普通にしれっとした顔で風呂場に行けちゃうの? 

 これ私の感覚は間違ってないよね? どっちかって言うと異常なのはあっちの方だよね? あいつら絶対頭イカれてるわよね?

 

 ……うん。そうだ、そのはずだ。

 私は正常、私は至って正常。おかしいのはあいつらのはず、絶対あいつらのはず……。

 

「…………うぅ」

 

 ……だと、思うんだけど。

 けれど、そんな正常な思考を有する私はこうしてリビングに一人残されていて。

 そしてあの異常者4人共は仲良く風呂場に行ってしまって……。

 

 ……あ、あわわわ。

 今頃、お風呂の中では3人の私と八一が……。

 お風呂で、みんなで、は、はだかで、はだかで、はだかではだかで──!

 

「はだ……かっ」

 

 ……やっぱり、みんな裸……なんだよね?

 だって……お風呂だもんね? お風呂っていったら裸で入るものだもんね?

 

 八一と、幼女と、小学生と、高校生の私が、おふろではだか……。

 ……どうしよう。なんか、なんか無性に風呂場の様子が気になってきちゃった……。 

 

「……そうだ。て、を、洗いに、行こうかな」

 

 そう、手を洗いたいから。なんとなく手を洗いたくなっちゃったからね。

 別にバスルームの様子を伺うとかじゃなくて、手を洗う為に洗面所にいくのよ、うん。

 誰が聞いている訳でも無いのにそんな言い訳をしながら、私はゆっくりと足を踏み出す。

 

「そーっと……」

 

 浴室内の異常者共に気付かれないよう、物音立てず静かに洗面所のドアを開いて。

 

「わっ……」

 

 するとまず目に付いたのはドラム式の洗濯機。その中には四人分の衣服が投げ込まれていた。

 八一の服に幼女の服に小学生の服、洗濯かごの中には高校生の私の下着なんかもあって……。

 ……うぅ、なんか生々しい。あいつらここでどうやって、どんな気分で服を脱いだんだろう。

 

「……くっ、異常者共め……」

 

 そしてすぐ隣に目を向けると、そこには照明の灯ったバスルームのドアが。

 そこから聞こえてくる物音。曇りガラス越しに聞こえる異常者共の声。

 

 

『……八一。どの私に対してもそうだけど、いやらしい目で見たらここから即座に叩き出すから』

『み、見ないですよ、そんな……俺はただ、ただ普通に風呂に入るだけだって』

『……どーだか』

 

 聞こえてきたのはそんな会話だった。

 今のはJK銀子の声だ。どうやら高校生の私は八一の下心に疑いの目を向けているらしい。

 うん、確かにそれはあやしいわね。その点を訝しむ気持ちに関しては私も大いに同感だ。

 

 ……同感なんだけど。でも、いやらしい目で見られたくないなら、そもそも一緒に風呂なんて入らなければ良いだけの話なんじゃない?

 なんで自分からOKしておいて、更には風呂の中に入ってからそういう事を言うの? やっぱり高校生の私って馬鹿なのかな?

 ていうかこのタイミングで八一をお風呂から叩き出すのは止めて。それだとここに居る私と鉢合わせになっちゃうじゃないの。

 

『やいち。さっきから気になってたんだけど、なんでタオルまいてるの?』

『え? いや、あのね、これは……その、このタオルはお互いにとって必要なものなんだよ』

『おたがい?』

『そうだよ、お互いの為にね』

 

 ……幼女との会話から察するに、どうやら八一は腰にタオルを巻いているらしい。

 全く、何がお互いの為になんだか。……けどそっか、八一はちゃんと隠してるんだ……なんかちょっとだけ安心したような……。

 ──って違う! なんで私が、私が何を安心しなきゃいけないのよっ!

 

『はぅ……あぅぅ……』

『……あんたもタオルで隠せば良いのに』

『な、なにをかくしゅの!? だからわたちは恥ずかちきゅにゃいっていってりゅでしょ!』

 

 ……今の舌足らずな喋り方は小学生の私か。

 今の会話から察するにどうやらJS銀子は身体を隠すタオル無し、完全なるノーガード戦法で八一との混浴に臨んでいるようだ。

 

 ……ん。まぁ……どうなんだろ。女の子とはいってもあの子はまだ小学生だしね。

 本人の気持ちはともかくとして、傍目からは小4の9歳なら隠す必要もないのかな……。

 

『……それに、JKの私だってタオルなんか巻いてないじゃない』

 

 ──な、なんですって!? 高校生の私もノーガード戦法を!?

 高校生にもなってノーガードって、それちょっと気合入りすぎてない!? 大丈夫なの!?

 

 ていうか今の会話では出なかったけど、まず間違いなく幼女の私もノーガードよね?

 となると今この浴室内で、八一だけは腰から下をタオルで隠していて、他三人の空銀子は全員ノーガードで裸体を晒しているって事?

 

 ……え、なんかもう率直に言って怖いんだけど。

 とても信じたくないっていうか、この浴室内にいるあいつらを同じ自分だと思いたくない。

 いつから空銀子という生物は羞恥心を手放してしまったのか。いつからそんなに攻め攻めな姿勢を取るようになったのか。

  

『……私はタオルなんて要らないの。それが証拠にあんたみたいに恥ずかしがってないでしょ』

『む……ほんとに恥ずかしくないの?』

『えぇ、勿論。高校生の私は小学生のあんたとはくぐり抜けてきた修羅場の数が違うのよ』

 

 ……なにやら高校生の私が小学生に対して偉そうな事を言っているのが聞こえた。

 くぐり抜けてきた修羅場だなんて、なにをそんな大げさな事を。大体JK銀子の年齢なんてこの私と1年半程度しか違わないじゃないの。

 

 ……ん? いや、ちょっと待って?

 こ、この場合の、JK銀子が言うくぐり抜けてきた修羅場っていうのは……。

 それって、それってまさか、ぇ、え、えっちな事をした経験があるからって事なんじゃ……!

 だって、だって高校生の私はもう『大人』な訳だし……大人、おとな……うぅ。

 

『そうそう。俺とJK銀子ちゃんはもう恋人同士だからね。恋人同士だったら風呂ぐらい──』

『こっちみんな』

『はい』

 

 話し掛けた八一の言葉を遮って、JK銀子がドスの利いた声を突き付ける。

 ……なんだ。やっぱ見られたくないんじゃない。修羅場がどうとか言ってたけど、なんのかんの言ってちゃんと恥ずかしがってんじゃない。

 

 けど、自ら一緒にお風呂に入っておいて、それで自分の身体は隠さなくて、なのに自分の裸体は見せたくないって、なんか色々と矛盾してない?

 さっきも言ったけどそれなら一緒に風呂なんて入らなければいいじゃないの。重ね重ね思うんだけど高校生の私って絶対に馬鹿になってるよね?

 

 ……いいえ。高校生の私だけじゃないわね。

 今浴室の中に居る空銀子達、幼女も小学生もみんなおかしい。みんな異常者だ。

 そんな恥ずかしい思いをしてまで八一と一緒にお風呂に入る必要なんてないのに。私を除く空銀子達はみんな馬鹿ばっかりだ。

 

 ……と、私はそう思うんだけど……。

 ……けれど。

 

『やいち。かみ洗って』

『うん、いいよ。よいしょっと……それじゃあ流すから目をちゃんと閉じてるんだよ』

『ん』

『……八一。幼女が終わったら私の髪も洗って』

『勿論いいよ。JS銀子ちゃんの髪は長いから一人で洗うのは大変そうだしね』

『……うん』

『あそうだ。ならいっそJK銀子ちゃんも──』

『こっちみんな』

『はい。……けど、どうする?』

『……好きにしたら?』

 

 それでも、浴室の中からは相変わらずあいつらの声が聞こえてきて。

 

『やいち。からだ洗って』

『か!? からだっ、も、ですか?』

『うん。洗って』

『か、からだは……いや、そうだね、よし、分かった……いいよ、幼女銀子ちゃん』

『ん』

『……や、やいち、わたちも、わたちも……!』

『え゛っ、JS銀子ちゃんも? それは……色々と大丈夫……なの、です、かね?』

『私を見るな』

『いやでもなんか、一応ご意見を伺っておきたいなぁなんて思ってみたりして……』

『ぐだぐだ言うな。……そのくらいあんたの好きにしたらいいんじゃない?』

 

 浴室の中からは相変わらず……八一と三人の私の楽しそうな声が聞こえていて。

 

 その声を聞いているとなんか……なんか。

 間違っているのはそっちの方だと、悪手を打ったのはお前だと言われているような気がして。

 思わず私は壁に寄り掛かったまま腰を下ろして、三角座りになって膝を抱える。

 

 ……わたし、なにしてるんだろう。

 ドア一枚隔てたそこでは八一と三人の私が、私を除いた空銀子達が楽しそうにしているのに。

 それなのに、この私だけがこんな洗面所に一人ぼっちで……。

 

「……私だって、空銀子なのに」

 

 同じ空銀子同士、違いなんて無いはずなのに。

 それなのにこうも立ち位置が違うのは、八一のそばに私だけが居ないのはどうしてなんだろう。

 

「……私だって、好きなのに……」

 

 私は八一が好き。私だって八一が大好き。

 その気持ちは誰にも負けない。それは他の空銀子にだって負けていないはずだ。

 それなのに私だけがここに居る。八一と三人の私が一緒に居る中、中学生の私だけがこんな洗面所で小さく丸まっていて。

 

 ……なんだか、すごい惨めな気分。

 なんで私だけ、こんなさみしい気分にならなきゃいけないんだろ。

 一緒にお風呂に入らなかっただけ。至って普通の選択をしただけなのに。そのはずなのに。

 じゃあ私はどうすれば良かったの? みんなと一緒にお風呂に入るのが正解だった?

 

「……けど、そんなの無理だよぉ……」

 

 私はもう中学3年生の14歳だ。子供だからセーフで済む幼女や小学4年生とは訳が違う。

 けれど、その一方で高校生みたいに毅然とした態度も取れない。だって私は八一と付き合ってなんかいないのに、それなのに一緒にお風呂に入るなんて言ったら八一に変な目で見られちゃうもん。

 

 ……あぁ、どうすれば良かったんだろう。

 またこんな事がある度に、私はこんなふうに一人でつらい思いをするのかな。……やだな。

 他人ならばいざ知らず、同じ空銀子なのになんでこうも違いがあるんだろ……。

 

 ……と、私が心中で弱音と愚痴を吐いていると。

 また浴室の方から会話が聞こえてきて。

 

『……にしても。4人で入るとさすがにバスタブが狭いっすね』

『うん。せまい。4人はむりがある』

『ね。さすがにこの狭さだと意識しなくても手とかが当たっちゃったりするよね』

『八一。それっていやらしい所に触ろうとする為の前フリにしか聞こえないんだけど』

『ち、違いますってっ! そんなつもりはマジで無いですから!』

 

 ……八一のえっち、すけべ。

 ……って言ってやりたい。仲間外れになっている私には言えない言葉だけど。

 

『でも改めて思いますけど、こうして三人の銀子ちゃんと一緒にお風呂に入るって、なんか信じられないような経験してますよね』

『……まぁね。信じられないっていうより、信じたくないような経験だけど……』

 

 そこでJK銀子は一拍置いて。

 

『……けど、まぁこれは夢だし? 夢の中なら別にいいんじゃない?』

 

 ──ん?

 

『そ、そうそうっ! これは夢だから、夢だから八一とお風呂に入ったっていいの!』

 

 ……あぁ、そっか。

 今の言葉を聞いて、私の心中にすとんと腑に落ちるものがあった。

 そっかそっか、そういう事か。私と他の銀子との違いが分かったような気がする。

 

 これが夢だから、なんだ。

 これが夢だから構わない。夢の中での出来事だから恥ずかしくたって構わない。

 幼女はどうか分からないけど、JSとJKの私はそう割り切ってるんだ。だから八一と一緒にお風呂にも入れちゃうんだ。

 

 なるほどね。そう言われれば確かにその通りだ。

 これは夢。所詮は夢。だったらそんな夢の中で何を遠慮する必要があるのだろうか。

 

 ……なら、私だって。

 決めた。私もそう割り切ってやる。だってもうこんな惨めな思いはしたくないから。

 

「……見てなさいよ、八一」

 

 私だけにこんなさみしい思いをさせた、その報いを受けさせてあげるから。

 

 

 

 

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