銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集)   作:銀推し

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14. 大人な話

 

 

 

 ……ふぅ、さっきは色々と危なかったな。

 JK銀子ちゃんがグッドなタイミングで帰宅してくれたから何とか急場を凌げたけど……。

 ……いや、そうでもないか。もう殆ど俺とあの子の関係を詳らかにしてしまったようなものだ。

 

 

「はい、今日の晩飯は天丼だよー」

 

 時刻は夜。夕食の時間。折り畳みテーブルの上に出前で注文した特上天丼を5つ並べる。

 

「ん、いただきます」

 

 すると四人の銀子ちゃんズが同じように手を伸ばして、これまた同じように丼を平らげ始める。

 そんな光景をぼーっと眺めながら、ふと俺は昼間の事を考える。

 

 ……にしても、今日の昼間は凄かったなぁ。

 俺の頭に浮かぶのはJS銀子ちゃんの姿だ。今日のあの子はマジで究極可愛かった……。

 

 JS銀子ちゃん、小学生の銀子ちゃんとはこれまでずっと距離を感じていて、それをどうにかしたいなぁと前々から思っていたんだけど……。

 やっぱり正面からお話しをしてみたのが正解だったようだ。最初こそ居心地が悪そうにしていたが、次第にあの子も俺に打ち解けてきてくれた。

 

「……あ」

 

 とそんな事を考えていると、ちょうどJS銀子ちゃんと目が合った。

 

「……ん」

 

 あ、小さく頷いた。そして口元にはちょっとだけ笑みが浮かんでいる。

 前は視線を合わせたらすぐにぷいっと顔を逸らされちゃっていたからなぁ。

 これは本当に大きな進歩、この子とは今まで通りの気安い関係に戻れたと言っていいだろう。

 

 ……いや違うな。今まで通りではないか。

 だって今まで通りならあんな事はしないからね。

 

「……にへへへ」

「……八一。キモいから急に不気味な笑いを浮かべるのは止めて」

「同歩」

 

 叱られた。JKとJCの年上銀子ちゃんズは相変わらず俺に手厳しい。

 

 けど……あぁなんかヤバいな、思い出すだけで顔がニヤけちゃう。

 だってマジ急接近だよ……今日だけであんなにあの子と近付けるなんてさぁ……。

 

 ──そう。俺は今日、なんとJS銀子ちゃんをこの手に抱きしめてしまった!

 あの子をハグしてしまったのだっ! あの子をぎゅーってしてしまったのだ!!

 俺が両手を広げたら素直に飛び込んできてさ……あれはもうマジで天使やでぇ……。

 

 まぁ正直、銀子ちゃんをぎゅーってするの自体は何度か経験がある。あるんだけど、それでもその相手が小学生時代の銀子ちゃんとなると……やっぱし格別っていうかね? 

 いや別に比較している訳じゃないんだけどさ。ただなんていうか……これはあいや天衣達にも同じように言える事なんだけど、やっぱ小学生ってのは軽くて、そして小さい生き物なんだ。

 それをこう……ぎゅーってすると……もう言葉では表現出来ない幸福感みたいなものがある。更にそれが銀子ちゃんともなれば……あぁ、叶う事なら今日はずっとああしていたかった……。

 

 けどまぁチャンスは幾らでもあるか。また明日にでも頼んでみようかな。

 あそうだ。明日からはあの子が帰宅して幼女銀子ちゃんがお昼寝から目覚めるまで、伝統の腰掛け銀スタイルで将棋のお勉強をするというのも良いかもしれないな。あれは色々と捗るし。

 

「ご馳走様」

 

 とその時、早々に天丼を食べ終わったJC銀子ちゃんが席を立つ。

 ただその顔色は相変わらずというか……白い肌が分かりやすく色付いている。

 

「あ、随分と早いね」

「……まぁね」

 

 そう呟くJC銀子ちゃんの様子は居心地が悪くて立ち去るような感じだ。

 ううむ……間違いなくさっきの話を意識しちゃってるよなぁ、あの子。食事中もちらちらとJK銀子ちゃんの事を見ていたし。

 

 昼間、JS銀子ちゃんと仲良くなった事までは良かったんだけど、その後が色々と……ね。

 色々と赤裸々に話してしまった。どうにか表現を濁したから幼女や小学生の銀子ちゃんには伝わらずに済んだと思うけど、さすがに中学生の銀子ちゃんにはバレてしまったようだ。

 けど話しちゃって良かったんだよね? JK銀子ちゃんもOKしたって言うし……。

 

 

 

 そしてその後、食事を終えてお風呂に入って。

 夜9時になったらもう寝る時間だ。俺達が師匠の家で暮らしていた頃に決められた就寝時間。

 幼女銀子ちゃんはこの時間帯にはもう夢の国へ旅立つので、俺達も一緒にお布団に入る。

 

 ……ただ、まぁ、ね。お布団に入るといってもすぐに眠る訳では無い。

 ここからは大人の時間というか……俺とあの子にとってはむしろここからが本番の時間だ。

 

 

「……よし。そーっと……」

 

 そんな呟きは声には出さず、俺は物音立てずに布団から身体を起こす。

 いつものようにそっと布団から抜け出して、静かに静かに廊下を歩いて。

 そして洗面所のドアをそっと開いて、そこで待つ事数分後──

 

「……おまたせ」

 

 これまたそっと洗面所のドアが開かれて、JK銀子ちゃんが姿を現した。

 見慣れた制服ではない寝間着姿の銀子ちゃん。何処か無防備な感があってとてもよろしい。

 こうして二人して夜に寝床を抜け出す理由は……まぁ人目を忍んでイチャつく為だね。うん。

 

「銀子ちゃん」

 

 待ちきれなかった俺はすぐさま両手を広げる。愛しい恋人を優しく迎え入れる。

 

「ん……」

 

 すると銀子ちゃんはおずおずとしながらも、やがて俺の腕の中に収まってくれる。

 あぁ、相変わらず柔らかくていい匂いがする……これが俺の恋人……俺だけの銀子ちゃん……。

 小学生もカウントすると銀子ちゃんをハグするのは本日二度目だ。こればっかしは何度味わってもまるで味わい尽くした気分にならない、何度でも俺を幸せな心地にしてくれる。

 

 そしてそんなJK銀子ちゃんなのだが、まぁこれは昼間にも言ってしまった通り……。

 この子はもう大人だ。大人銀子ちゃんなのだ。

 

 ……いやだってさ。だってだよ?

 俺達はもうただの姉弟関係じゃないんだよ? もうとっくに付き合っているんだよ? 

 だったら別に普通の事だよね? てかむしろ当然の事だよね? 俺なにも間違ってないよね?

 

 俺達が付き合い初めて約3ヶ月。特別早いとは言えない進行速度なはずだ。

 ……まぁ実のところを言うと、事に及んだのは付き合い初めて結構すぐの事だったので、早いと言えば早いのかもしれないけど……。

 

 だがその点に関しては言い訳はすまい。

 あの時は我慢出来なくなっちゃったんだ。……俺も、銀子ちゃんも。

 

「……そうだよね? あれってなにも俺だけの責任って訳じゃないよね?」

「なにが?」

「だから……俺と銀子ちゃんの初めての時」

「っ!」

 

 瞬間銀子ちゃんがピクッと身体を硬直させる。

 そしてその後、至近距離からじとっとした半眼でこらちを睨んできた。

 

「急になに言ってんのよ……ばか」

「ごめん。でもなんか急に思い出しちゃって」

「……ていうか、あれは八一の責任じゃないの」

 

 その言葉に、俺も至近距離で首を左右に振る。

 

「いやいや、俺だけではないでしょ」

「あんたのせいよ。あんたが辛抱できなくなって襲い掛かってきたんじゃない」

「お、襲うってそんな人聞きの悪い……あれはお互い同意の上だったじゃないですか」

「私は同意なんてしてない」

「いーやしてた」

「してない」

「してたって」

「してないってば」

「してた。もう目でしてたもん」

「してないから」

 

 この話をする度、俺達は必ず口論になる。

 銀子ちゃんは必ず否定してくるんだけど……さりとて俺もここだけは譲らない。

 

 俺と銀子ちゃんの初体験について、多くを語るつもりは無いけど……でも大まかには今俺達が話した内容がそのまま事実なはずだ。

 その日は普通にこの部屋で、普通に研究会をしていて……途中で少し手を止めて休憩して、そしたら自然と互いの距離が近付いてしまって……。

 当初そのつもりは無かったんだけど、なんかその場の雰囲気に流されてしまったというか……なし崩し的にそうなってしまったというか。

 

 休憩中に銀子ちゃんと肩が触れ合って、俺はその小さな肩に手を回した。

 そして自然と口付けをした。すると次第に力が抜けたのか、銀子ちゃんが背後に倒れちゃって、そのまま俺も覆い被さるような形になった。

 すぐに身体を起こそうと思ったんだけど、どうしてか身体が動いてくれなくて、そうして至近距離から見つめ合っていたら、なんか、なんか……。

 

 なんか、銀子ちゃんの唇が。そして潤んだ瞳が「いいよ?」と言っているような気がして。

 ふと気が付いた時には俺の手が伸びていた。そこからはもう止まらなかった。

 

 けれどもあれは襲ったとかそういうのではない。

 だって本当に、本当にあの時の銀子ちゃんの表情は「いいよ」と言っていたんだ。

 俺には確かにそう見えたんだ。だからこれは同意の上での出来事なはずなんだ。

 

「……ケダモノ」

「なっ」

「はぁ。まさか幼い頃から一緒だった弟弟子があんなにもケダモノだったなんてね」

「そんな、ケダモノって……大体銀子ちゃんだって嫌がってなかったじゃんか」

「……なに? 嫌がって欲しかったの?」

「いやいや、そういう事じゃなくてね? もしそうだったら俺だって躊躇してたっていうか、さすがに銀子ちゃんの嫌がる事は出来ないから……」

「……どうだか」

「ほんとだってば」

 

 俺は銀子ちゃんの事を宥めようと、その背中をゆっくりと撫でる。

 肉付きのないスリムな背中、だけど伝わってくるのはやっぱりパジャマ越しの感覚で……。

 

 先程も言った通り、こうしているだけで幸せな心地になれるってのは事実なんだ。

 けれどこれまた先程から言っている通り、俺とこの子はもう男女の関係な訳で……。

 だからここから先のスキンシップ、そちら側に進みたいという気持ちを否定する事は出来ない。なんせ俺にはもうそれが許されているのだから。

 

 ……まぁ、とはいえ、だ。

 さすがにこんな場所で、こんな洗面所でそんな真似は出来ないんだけどさ。

 ただそれでも俺は未練がましく、銀子ちゃんのパジャマの中に手を滑らせる。

 

「んっ……」

 

 モデル顔負けの細いウエストに触れると、銀子ちゃんが小さく喉を鳴らした。

 せめて、せめてお腹だけね。これより上に行っちゃうと俺も止まれなくなっちゃうから。

 

「……(なでなで、なでなで)」

「あ、ちょっと……もう……」

「……(なでなで、なでなで)」

「うぅ、ん……」

「……(なでなで、なでなで)」

「……八一。お腹撫でてて楽しい?」

「うん、楽しいよ。銀子ちゃん肌スベスベだしさ」

「……そう」

 

 呆れたように息を吐く銀子ちゃん。その滑らかなお腹をひたすら撫で回す。

 俺ぐらいの棋士ともなればこの手触りだけでも満足出来るのだ。いや棋士関係ないけど。

 

 ……と言うか嘘だけど。

 満足出来るなんてのは欺瞞で、満足しなきゃいけないというのが本音だけど。

 そしてどうやら俺のそんな思考が伝わっていたのだろう。そこで銀子ちゃんが口を開く。

 

「……ねぇ、八一。やっぱりもう──」

 

 その声色が不安そうな響きだったので、その機先を制して俺は口を開いた。

 

「大丈夫。大丈夫だって」

「けど、前は……」

「本当に大丈夫だから」

「八一……」

 

 銀子ちゃんが言いたい事は分かる。

 ここでの生活が始まってから、この子は度々こうして俺の事を心配してくれている。

 それは銀子ちゃんが俺の恋人であって、そしてついでにいうと大人だからでもある。

 

 けれどマズイなぁ。そろそろこっちの方もなにか手を打たないとなぁ。

 そろそろ言い逃れるのにも限界がある。それに銀子ちゃんに気苦労を掛けるのも可哀想だ。

 とはいえ一体どうすればいいんだろう。これは本当に難しい問題だ。

 

「……はぁ、困ったなぁ」

「なにが? ……て、あ、ちょっと──」

 

 今はなにか次善の策と言うか、2番目の解決策が欲しい所なんだよね。

 そりゃ一番の解決策と言われればさ、ぶっちゃけもう答えは分かっているんだけど。

 けどなぁ、その一手は俺の心の駄目な部分が待ったを掛け続けているっていうか……。

 

「……あー、マジでどうしよ」

「ちょっと八一、そっちは……!」

「どーっすかなぁ。もう言っちゃおうかなぁ」

「やいち、て、手が……!」

「でもなぁ、それもなぁ……」

「んぅ、や、やいちぃ……」

「うーん……」

「う、うぅ、ん……!」

 

 頭の中であーだこーだと。あーでもないこーでもないと考えながら。

 俺はしばらくの間、意識せずに銀子ちゃんのお腹の辺りを撫で回し続けていたらしくて。

 

「うーん…………って、あれ?」

 

 ふと気付いて目を向けてみると……。

 おやおや? どうしてか分からないけど銀子ちゃんの顔が随分と赤くなっているぞ?

 

「どしたの銀子ちゃん?」

「……この、馬鹿っ!」

「いだっ!?」

 

 そしてガツンと頭突きを食らった。

 

 

 


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