銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集) 作:銀推し
そして、次の日。
今日は休日。教育機関がお休みな為、午前中から全銀子ちゃんズが勢揃いしている。
となれば皆でする事と言えば当然将棋だ。やっぱし休日というのは将棋が捗るね。
「……むむぅ」
すぐ隣では幼女銀子ちゃんが可愛く唸っている。その対局相手はJK銀子ちゃんだ。
高校生の自分が繰り出す容赦のない攻めを前に、幼女は序盤にして早くも苦戦中である。
……てかJK銀子ちゃんや、もう少し手心を加えてあげても……あまり厳しくし過ぎると幼女銀子ちゃん泣いちゃうからね? 分かってるよね?
「……ふぅ」
そして──お、こちらの対局相手の手が動いた。
どうやら考えが纏まったらしく、桂馬を跳ねさせて一気に攻勢を掛けてくる。
俺の対局相手はJC銀子ちゃんだ。
中学3年の銀子ちゃんといえばすでに女流二冠、名実ともに女性NO,1と言える指し手。
空銀子らしい鋭い攻めはこの頃からすでに備わっており、俺も決して気の抜ける相手ではない。
……ただ、そうは言ってもこの子は中学生。俺にとっては過去の銀子ちゃんでもあって。
今の俺の研究相手でもあるJK銀子ちゃん、つまり三段リーグを勝ち抜いて劇的に棋力の上がった高校1年生新四段の空銀子と比較すると、やはりそこかしこに甘い点が見られる。
なので高校生の銀子ちゃんを知っている俺からすれば油断は出来ぬが勝てぬ相手ではない。現に今の盤面も俺の優勢で進んでいる。
「……ねぇ」
するとその時、対局中のJC銀子ちゃんが俺に目を合わせて話しかけてきた。
「なに?」
「あんた今、スマホは持ってる?」
「スマホ? そりゃ持ってるけど」
「あっそ。ならいい」
それだけを尋ねて、JC銀子ちゃんはすぐにその視線を盤面へと戻す。
うーん、一体何だったんだろうね? まさか盤外戦術じゃないだろうし、なんとも謎な質問だ。
その後、俺とJC銀子ちゃんの対局が終了した。勝敗は俺の勝ち。
軽く感想戦を済ませるや否や、小学生がこちらにちょこちょこと近付いてくる。
「八一、交代」
「うん」
この場には計5人の棋士が居るので対局はローテーション制、余った一人は観戦に回る。
今しがた観戦していたのはJS銀子ちゃんで、ローテ順で言うと次に外れるのは俺の番。なので対局の席を譲って、俺はその場から少し離れる。
そしてJC対JSの対局が始まる。
その隣では先程からJKと幼女の対局、というか指導対局が続いていて。
そんな光景をぼーっと眺めながら、俺はふと昨日の出来事を回想する。
──しっかし、昨日はすごかったなぁ……。
何が凄かったのかって? そりゃあ勿論、3人の銀子ちゃんとの混浴だとも。
まぁ各々のプライバシーに配慮してあんまり詳細に語る訳にもいかないんだけど……とにかくあの狭い風呂の中に裸の銀子ちゃんが、どっちを向いても裸の銀子ちゃんが居て……うん、すごかったです。
銀子ちゃんの裸、あれはもう一種の芸術品だ。だってあの子ってば本当に肌が白くて、それが水に濡れるともう透き通っているように見える。
同じように濡れた銀髪もキラキラ煌めいて……そんな銀子ちゃんはもうなんていうか、本当に精霊か何かのように見える程に美しい。
そしてそんな銀子ちゃんが三人も居て……いやもう本当にごちそう様でした。一生ものの記憶として頭に焼き付けておきます、将棋の神様万歳。
……などと考えながら、銀子ちゃんズの対局を観戦中の俺は何となしにスマホを取り出す。
「ん?」
すると通知が一件来ていた。
何だろうと思って見てみると──こ、これは。
「……ふぅ。ちょっと一息入れようか」
対局中の銀子ちゃんズにも聞こえるように、気持ち大きめの声でそう言いながら立ち上がる。
「おやつでも買いにコンビニまで行ってくるよ。みんな何か食べたいものある?」
「ぷりん」
「アイス」
「甘いチョコ」
「糖分が取れそうなもの全部」
食べたいおやつを尋ねてみると、銀子ちゃんズが思い思いに注文してきた。
と言うか最後のJK銀子ちゃん、あなたもの凄いオーダーの仕方をしますね。さすが最年長の空銀子は権力の使い方が尋常じゃない。
「それじゃちょっと行ってくるね」
そして財布を手に取って、厚めのコートを羽織って靴を履いて。
玄関から外に出ると直後に押し寄せる冷気、冬の冷たい風に吹かれて俺は思わず首を竦めた。
「ふぅー、さむ……」
家の中では暖房をガンガンつけているので気にならないが、この通り外はとても寒い。
なんせ12月だしね。……ただこの夢の中ではそこら辺も曖昧というか、なんかもう日にちの感覚が無くなってきているような気がする。
なんせ今の俺の日常といったら一日中銀子ちゃん達と和気藹々するだけだからなぁ。そりゃ日にちの感覚なんて無くなるよね……なとど考えながら廊下を渡ってエレベーターに乗って一階まで。
……は、行かずに。
そのまま八階の廊下でしばらく待つ事、数分。
「お、来たかな」
801号室の玄関ドアが開かれて、そこから姿を現したのは……意外な人物。
「ってあれ、JC銀子ちゃんだったんだ」
「……ん」
それは黒いセーラー服を来ている中学生、JC銀子ちゃんだった。
この子を見て意外な人物だと俺が思った理由、それはつい先程俺のスマホに入っていた通知の内容がこんなものだったからだ。
『ちょっと話したい事があるから外に出て』
それを見て俺はてっきり恋人からの呼び出し、つまりJK銀子ちゃんからのメッセージだと思って外に出てきたんだけど……。
だが真相はこの通り、JC銀子ちゃんからの呼び出しだったようだ……て、あぁそっか、さっきの対局中に尋ねてきたのはそういう事か。
「どうしたの? こうして外に呼ぶって事はみんなの前じゃ話しにくい事があるんだよね?」
「……まぁ、ね」
そっぽを向きながら答えるJC銀子ちゃん。その様子は……ううむ、普段とは明らかに違う。
照れ隠しのように髪をそわそわとイジったり、きょろきょろと忙しなく周囲を見渡したりと……なんだか随分と落ち着きがないように見える。
「ここじゃちょっと……こっち来て」
「あ、え、銀子ちゃん?」
「いいから来い」
そしておもむろに俺の腕を掴むと、有無を言わさぬ勢いでぐいぐい引っ張っていく。
「……よし、ここら辺ならいいかな」
辿り着いたのは角を曲がった廊下の端。通りからは死角になっていてより人目につかない場所。
こんなに周囲を警戒して隠れるなんて相当な念の入れようだな。よっぽど他人に聞かれては困るような話をするつもりなのだろうか。
「……さてと」
そうして銀子ちゃんが俺を見据える。
この子特有の綺麗な灰色の瞳で。射抜くように真っ直ぐ見つめられる。
「……八一」
「うん」
この子特有の綺麗な灰色の瞳で、射抜くように真っ直ぐ……見つめられていたんだけど。
「……あの」
「なに?」
「……えっと」
途端にその瞳がすっと横に逃げ出してしまう。
……なんだろう。なんか今日のJC銀子ちゃんは全体的に変というか、挙動不審になっている。
「どしたの?」
「うるさい。ちょっと静かにして」
「いやけど──」
「いいから黙れ」
と思ったらめっちゃキレてくるし……。
……あぁでも、思えば俺と付き合う前の銀子ちゃんって偶にこんな感じになっていた気がする。
この子の妙に煮え切らない態度には昔っから随分と手を焼かされたもんだぜ……しみじみ。
「……すぅー、ふぅ」
そして銀子ちゃんは一度大きく深呼吸。
それでなにかしらの覚悟を決めたのか、もう一度その力強い眼差しを俺に突き付けてきた。
「ねぇ八一。あんたってさ……高校生の私と付き合ってんのよね?」
「う、うん。そうだけど」
「……ラブラブ、なのよね?」
「……まぁ、そっすね」
「なら……この私があんたをどう想っているのか、そんな事も分かるって事よね?」
「え?」
それは……それは、どういった趣旨の質問で?
「分かるわよね?」
「えっと、それって、どういう意味で、かな?」
「どうもこうもそのままの意味よ。私が今、あんたの事をどう想っているのか。高校生の私と付き合ってるんだったらそれぐらい分かるでしょ?」
JC銀子ちゃんが俺をどう想っているのか。
というのは……いわゆる好きとか嫌いとかっていう意味で解釈して良いのだろうか。
「分かるのよね?」
「……それは、まぁ……」
「なら、当ててみて」
「……えーっと」
それは……そりゃあ一応分かるんだけど、さ。
だって銀子ちゃんは……ほら、その~……俺の事が好きだと言ってくれている訳じゃん? 俺の告白を受諾してくれた訳じゃん?
そしてその気持ちはどうやら小学生の頃にはもうあったそうなので、となれば中学生のJC銀子ちゃんだって必然的にそういう事になる。
なるんだけど……けど、これってなんか俺の口からはメッチャ答え辛い話なような……。
「ほら、言ってみなさいよ」
「……ええっと、JC銀子ちゃんは~」
「うん、私は?」
「……その」
「うん」
「……俺のことが、好き……っすよね?」
……くぅ、これ自分から言うの本当にハズい。
相手の気持ちを語っているはずなのに、不思議と俺の方から告白をしているかのような気分だ。
そして聞いたJC銀子ちゃんもきっと恥ずかしかったのだろう、すっとその目を横に背ける。
「……ん。ちゃんと分かってんじゃない」
「そ、そうだね。子供の頃から好きだったって、高校生の銀子ちゃんが教えてくれたからさ」
「……なら、八一はいつから私が好きだった?」
「俺も同じだよ。子供の頃から君が好きだった。……具体的にいつかはちょっと分かんないけど」
「……そっか」
安心したように頷くJC銀子ちゃん。その顔色はほんのり桜色に色付いている。
この子は地肌が真っ白なのでちょっとの顔色の変化でも目に見えて分かる。表情こそ素っ気ないが今の言葉に内心とても喜んでいるんだろう。こういうところは本当に可愛いなぁと思います。
「……そっか。銀子ちゃん、この話がしたかったから俺を外に呼び出したんだね」
「ううん。ここからが本番」
「え?」
あれ、これまだ前座だったの?
もう俺大分やり切ったというか、告白し終えたような気分でいたんだけど。
「八一。あんたはこの私の気持ちをそこまで分かっちゃってるのよね」
「そう……だね。分かっちゃってるね」
「そこまで分かっちゃってるならさ……」
そこでJC銀子ちゃんは一度言葉を区切って。
「……わたしが今、八一に何をして欲しいか……それは分かる?」
「今……ですか?」
俺がそう呟くと、JC銀子ちゃんは「……うん」と頷きながら一歩前に近付いてきて。
「……今、わたしが八一にして欲しいなぁと思ってる事……当ててみて?」
今、この子が俺になにを望んでいるのか。
その言葉に、そして何よりもその表情に……俺の心臓がドキッと大きな音を鳴らした。