銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集)   作:銀推し

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33. 夜の話

 

 

 

 

 

「……すー、すぅ……」

「くぅ……くぅ……」

 

 明かりを落とした真っ暗な室内、隣から聞こえてくるのは静かな寝息が2つ。

 わざわざ目を開けないでも分かる。それは幼女の私と小学生の私の寝息だ。

 二人が眠ったのは布団に入ってすぐの事、本当に寝付きが良いなと思う。幼女はまだしもこの時間帯でも眠れる小学生の私が正直言って羨ましい。

 

 今はまだ夜の9時過ぎ。中学3年生の私にとっては些か早めの就寝時間だ。

 私も小学生の頃はこの時間に寝ていたはずなんだけど、中学生になってから実家に戻った事もあって就寝時間が遅くなってしまった。

 だからまだ眠くない……んだけど、このワンルームの部屋では足並みを揃えるしかない。起きていた所で明かりが付けられないので将棋だって指せないし、結局は眠る他に選択肢はない。

 

 なので私は仕方無く布団に入って瞼を瞑って。

 眠気が下りてくるまで、頭の中で今日の対局の振り返りでもしていたんだけど──

 

「………………」

 

 そんな時、ごそごそと。

 

「………………」

 

 暗闇の中でごそごそと、何者かが起き上がる物音が聞こえて。

 

「………………」

 

 それは足音を立てずに移動しながら、廊下のドアを開いて洗面所へと向かう。

 お手洗いかな? ……なんて思ったのはせいぜいが最初の日と次の日ぐらいまでだ。なにせこれはもう連日連夜続いている事なのだから。

 

「………………」

 

 それから数分後。

 再び暗闇の中でごそごそと物音が聞こえて。

 

「………………」

 

 もう一人が起き上がって、先程と同じように静かに洗面所へと向かっていく。

 

「………………」

 

 そんな中、私は依然として瞼を瞑ったままで。

 

 ……まぁ、別にね?

 あの二人がどこで何をしていようが、それは構わないんだけど……さ。

 

 ただ、あいつら……。

 この方法なら誰にも気付かれないよね、とでも思ってんのかしら。

 

 

 

 

 

 

「…………むぅ」

 

 目の前に居るのはとてもかわいい幼女。盤面を睨みながらむすっとした顔になってる幼女だ。 

 その眉間の皺と、ぎゅっと握られたままのおててが悔しさを表している。

 

 朝。学生銀子ちゃんズの登校を見送って、午前中は幼女銀子ちゃんとの将棋の時間である。

 駒落ち戦はこの子がぷいって嫌がっちゃうので平手での対局。以前は勝ちを譲っていたものの、前にJK銀子ちゃんからお叱りを受けて以降は俺も普通に指している。

 4歳の幼女と普通に指して、普通に俺が勝つ。そんな対局の繰り返しだ。

 

「…………むむぅー」

 

 可愛らしく唸り続ける幼女銀子ちゃん。

 平手での対局を続ける以上、負けっぱなしとなるこの子の機嫌は当然ながら悪化していく。けれど一度ぎゃん泣きさせちゃったあの日以後、まだこの子はぎゃん泣きモードになっていない。

 ……が、それでも悔しさはあるはずだ。いつか溜め込んだ思いが爆発しそうでちょっと怖い。その時は全力であやしてあげるしかない。

 

「……ない。やいち、もっかい」

 

 負けを認める言葉をぽつりと呟いた後、銀子ちゃんはいそいそと駒を並べ直す。

 この通り、幼女銀子ちゃんはどれだけ負けても挑むのをやめない。何度でも、何度でも。

 

「つぎは勝つ」

 

 ギリッと、射殺さんばかりの目付きで俺を睨んでくる4歳の幼女。

 うんうん、やっぱそれでこそ銀子ちゃんだよね。この子は滅茶苦茶可愛いのは勿論なんだけど、それ以上に気が強くて負けず嫌い、それこそが俺が惚れた空銀子という人間なのである。

 その心意気と根性に応える為にと、俺も手を抜かずに対局を続けて……。

 

 

 

「はい銀子ちゃん、お昼ごはんだよー」

 

 そうしている内に時間は過ぎて、昼。

 

「……きょうも勝てなかった。くやしい」

 

 出前で頼んだうな重をもぐもぐと食べながら、幼女銀子ちゃんのお顔は曇り模様。

 

「元気出して銀子ちゃん。最後の一局はこれまでよりも良い攻めだったよ」

 

 対局をした後のお昼というのは、基本的に幼女銀子ちゃんの機嫌を直す為の時間となる。

 なので俺は自分の食事そっちのけで手を伸ばし、その頭をよしよしと撫でてあげる。

 

「ほら、いいこいいこ」

「んにゅ、さわるなっ」

 

 けれどもご立腹中でムカムカしている幼女銀子ちゃんは俺の手をぺいっと払う。

 

「まったく、ちょっとばかしわたしに勝ちつづけているからってえらそうに……」

「いや、あの、一応俺、プロ棋士だからね?」

「そんなのしらない。やいちはどんなやいちでもわたしの弟弟子だもん」

 

 拗ねるようにそう言いながら、ぷくっとほっぺを膨らませる幼女銀子ちゃん。

 けれども確かにその通り、俺は弟弟子で銀子ちゃんが姉弟子だ。それは俺がどれだけ成長しようと、この子が幼女であっても変わらない。

 

 そう、俺は弟弟子なんだ。弟弟子には弟弟子の役目がある。

 故に俺は弟弟子の責務として姉弟子のご機嫌を取るべく、お箸でうな重をひょいっと摘んで。

 

「はい幼女銀子ちゃん、あーん」

「あー」

 

 箸を近付けると、幼女銀子ちゃんはえさを求める雛鳥のように大きく口を開く。

 そしてぱくりと食べてもぐもぐ……ううむ、しかしこの幼女、可愛すぎか? ついさっき頭なでなではぺいっとしたのに、あーんはしちゃう幼女銀子ちゃん、いやホントに可愛すぎでは?

 

 

 

 その後、お昼ごはんを食べ終わって。

 いつものようにいつもの如く、電気の切れた幼女銀子ちゃんはしばしのお昼寝タイムに入る。

 そうして2時頃になれば、幼女と交代するかのように別の銀子ちゃんが帰ってくる。

 

「ただいまー」

 

 と可憐な声を聞かせてくれる小学生、JS銀子ちゃんのご帰還だ。

 

「お帰り、JS銀子ちゃん」

「うん。ただいま」

「どうする? すぐに対局する?」

 

 早速とばかりに俺がそう尋ねてみると、JS銀子ちゃんは「……んー」と何かを考えて。

 

「……対局の前に、ちょっと休む」

「休む?」

「ん、休むの」

 

 そう言って背中からランドセルを下ろすと、すたすたとこちらに近付いてくる。

 そして俺の隣にすとんと腰を下ろして、そのまま身体を真横に寄り掛からせてきた。

 

「……ふぅ、今日は体育があって疲れた」

「あれ? 見学しなかったの?」

「今日は体育館だったから」

「あぁ、なるほど」

 

 銀子ちゃんは生まれつき身体の色素が薄く、その為直射日光に弱い。

 なので太陽の下で行う体育の授業は基本的に見学勢なのだが、しかし今日は体育館での授業だったので頑張ったみたいだ。

 とはいえ体育館であってもそもそも体力が少ない銀子ちゃんの事、体育の授業というのは他人が思う以上に大変だっただろう。見学するという選択肢だってあったはずなのに……。

 

「苦手な体育の授業を頑張るなんて、銀子ちゃんは偉いねぇ。えらいえらい」

 

 うん、銀子ちゃんは偉い。銀子ちゃんは尊い。だからなでなでしてあげようね。

 

「ん、ぅ……」

 

 幼女よりも少し大きめな頭を撫でると、JS銀子ちゃんはくすぐったそうに首を竦める。

 

「……ねぇ、八一。なんだか最近、何かと理由を付けて私の頭を撫でてきてない?」

「え? それはまぁ……けど、銀子ちゃんだって嫌いじゃないでしょ?」

「ま、まぁ、嫌いってことはないけど……」

 

 とかなんとか言っちゃってー。

 嫌いどころかほんとは大好きなくせにー。このこのー。

 

 と思ったが口には出すまい。そんな事言ったら銀子ちゃんは反発するに決まってるからね。

 意地っ張りで頑固な銀子ちゃんのメンツというものを尊重しつつ、その上でスキンシップを図るのがこの子との上手な付き合い方なのである。

 

「……八一。今日は運動したから髪が乱れちゃってるかも」

「そっか。じゃあ直してあげるね」

 

 JS銀子ちゃんご自慢の……かは分からないけど、とにかく綺麗な銀の長髪。

 そこには特段乱れなんてないように見えるが、ここでそんな事を言う程に俺はもう野暮じゃない。

 この子が何を求めているかを察せれる程には俺も成長したんだ。なので俺は片手を回して、その長髪を手櫛で優しく梳いてあげる。

 

「ふ、ぁ……にゅ……」

 

 するとJS銀子ちゃんは目を細めて喉を鳴らす。

 この子は特にこれがお気に入りのようで、見るからに心地よさそうな顔になる。顎の下を撫でられている時の子猫みたいでめちゃ可愛い。

 サラサラと揺れるロングな銀髪は本当に綺麗で、この髪でヘアアレンジを楽しみたくなっちゃったJCとJK銀子ちゃんの気持ちが俺も良く分かる。

 

「さわさわ、さわさわ……」

「……ん、やいち……」

 

 あぁ、この手触りの良さはどれだけ触っていても全然飽きないな。さわさわ、さわさわ……。

 

 

 

 ……とそんな感じで、暫しの間JS銀子ちゃんとのスキンシップを楽しんだ。

 それぞれの銀子ちゃんのスケジュールの都合上、午前中は幼女銀子ちゃんと、そして昼は小学生の銀子ちゃんと二人きりになるケースが多い。

 その時間は将棋を指したり、あるいは単にスキンシップを取ったりと、とにかく二人の銀子ちゃんとイチャつく事を俺は毎日の日課としている。

 

 それは俺にとって幸せな日常だ。なんせ幼女銀子ちゃんもJS銀子ちゃんもめちゃかわなのだ。

 こんなにも可愛らしくてロリロリな銀子ちゃんと仲良くしている。それが幸せでないはずがない。

 この二人のそばにいられるだけで、俺の心はあったかい幸福感で一杯になる。

 

 ……けれど。

 けれど、それでも少しだけ。

 俺の心の奥底では、それでもあと少しだけが満たされないような心地が残っていた。

 

 それはどうしてなのか。それはきっとこの二人の銀子ちゃん達の可愛さの質の問題だ。

 幼女と小学生が持つ可愛さ。それは純真無垢な可愛さ、穢れなきピュアな可愛さであって。

 しかしそれでは足りないものが、ピュアな可愛さからは味わえないものが存在していて。一度それに触れてしまうと、心の奥底ではどうしてもそれを求めてしまうのだ。

 

 つまり、これはこの子達が悪いんじゃない。

 この子達では全てが満たされる事のない俺が、俺の方が穢れてしまったという事なんだ。

 

 そして、そんな穢れた俺を満たしてくれる存在と言えば……それはやっぱりあの子だけだ。

 

 

 

 

 ──その後。

 時間は飛んで……夜。

 

 みんなが寝静まった頃。いつものように俺はひっそりと寝床を抜け出した。

 そうしてやってきた洗面所で待つ事数分、いつものようにそのドアが開かれて──

 

「……八一」

 

 洗面所にやってきたのはJK銀子ちゃん。

 俺の満たされない心の隙間を満たしてくれる、とっても大切な恋人だ。

 

 けれど……あぁ、これはマズいかもな。

 

 その考えは、こうして彼女と顔を合わせた直後から俺の胸中に生まれていた。

 何故なら昨日までとは違って、今日の銀子ちゃんの表情は固く強張っていたから。

 

 ……いいや、実のところ予兆はあったんだ。それは以前から感じていた。

 これは今日突然にそうなった変化じゃなくて、除々にそうなっていった変化なのだから。

 

「……ねぇ、八一」

「どうしたの?」

「……あの、さ」

「うん」

 

 二人きりでの洗面所の中、銀子ちゃんは中々話を切り出さない。

 そして俺もあえて何かを言おうとはしない。なので二人の間でぎこちない会話が続く。

 

 今、銀子ちゃんが何を言いたいか、どうしたいのかは何となく分かる。

 この子の考えとしては、むしろ俺の方から話を切り出して欲しいのだろう。

 それが分かっていて、けれど俺は何も言わない。ここでその話をする訳にはいかないから。

 

「……ふぅ」

 

 そんな俺の意固地な考えを察したのだろう。銀子ちゃんは呆れたように息を吐いた。

 それはお互い何を言いたいのか、何を言えないのかが分かり切っているからこそ。

 だから銀子ちゃんはただ溜息を吐くだけで、そこから先へは踏み込もうとはしてこない。

 

 ……と、俺はそう思っていたんだけど。

 その考えは甘かった。どうやら今日の銀子ちゃんはひと味違ったようだ。

 

「……ねぇ」

 

 銀子ちゃんが一歩前に踏み込む。そうやって俺との距離を埋める。

 そして少しだけ顔を持ち上げる。そうやって俺との身長差を埋める。

 

 そしてその顔は……ほのかに赤い。きっと次の言葉を言うのが恥ずかしいんだろう。

 そんな表情をしているから、この子が次に何を言うのか、俺はもう聞かなくても分かった。

 

「……八一。キス、して?」

「……うん」

 

 そんなの断れる訳が無い。

 ……けど、この子の方から求めてくるなんて。

 分かってる。これは俺の為だ。銀子ちゃんは優しい子だからこうしてキスを求めてくれる。

 

 でもこれは……この様子を見るともう一刻の猶予も無さそうだな……。

 とそんな事を考えながら、俺は唇を寄せた。

 

「んっ……」

 

 微かに喉を鳴らす音。とろけるような感触。

 それだけでもう俺は感無量なんだけど、しかし今日はそれだけに留まらなくて。

 

「ん、……ちゅ」

 

 ──なっ、ちょ、銀子ちゃん!?

 その唇が動く。触れ合ったままの口を開けて、はむはむと俺の唇を啄むように愛撫してくる。

 そうして俺の唇をこじ開けると、そのまま銀子ちゃんの舌が伸びてきて。

 

「は、ん……ちゅ、うぅん……」

 

 銀子ちゃんの熱っぽい舌と俺の舌を重なって、そうして互いの唾液までも交わる。

 それは以前、俺が誕生日プレゼントとして欲しがった時にはこの子が知らなかったキス。

 口の中に舌を入れて絡ませる大人のキス。あるいはディープキス。

 

「……はぁ、ん……ちゅ、やいち……」

 

 熱い吐息を漏らしながら、銀子ちゃんは舌と舌を絡める行為に没頭する。

 ヤバいヤバい。エロ過ぎる。こんな銀子ちゃんはヤバすぎる、俺の理性に制御が効かなくなる。

 これ以上はマズいと思いながらもこの子を味わうのを止められない。ずっとこうしていたい。

 

 そうして一分程唇を重ね合っていただろうか、

 

「…………ぷは、はっ、はぁ……」

 

 やがて銀子ちゃんが唇を離した。

 荒い呼吸を繰り返すその表情は赤く、力が抜けてとろんとしている。多分だけど俺も似たような表情をしているのだろう。

 

「……はぁ、やいちぃ……」

 

 そうして普段とは異なる色の混じったその瞳で、俺の目をじっと見つめながら。

 

「……ねぇ」

 

 そして、言った。

 

 

「……ねぇ、………する?」

 

 

 銀子ちゃんは、そう言った。

 その言葉がなにを意味しているのか、そんなの改めて聞き直すまでもない。

 

 ……あぁ、銀子ちゃん。とうとう限界が来てしまったのか。

 ここまで我慢したのも、ここが我慢の限界だったのも俺の為だろう。つくづく優しい子だ。

 

 だから銀子ちゃんを責める事なんて出来ない。

 この子をここまで追い詰めてしまった事、それは他でもない俺のせいなのだから。

 

 

 

 

 

 

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