銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集)   作:銀推し

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35. 思い違いの話

 

 

 

 

「八一。もう限界でしょう? これ以上我慢なんてしなくていいから」

 

 銀子ちゃんは俺を気遣うような眼差しを、それはもう心底優しげな眼差しを向けてくる。

 

「……いや。あのね、まだ大丈夫だよ? そこまでキツイって訳じゃ……」

 

 一方穢れてしまった俺はその真摯な瞳を直視する事が出来ず、明後日の方向に視線を逃がす。

 

 ……いいや、うん。分かってる。

 これは全て俺が招いた事だ。全部全部俺が悪かった事だ。それは勿論分かっているんだ。

 だから今、こうして俺が追い詰められているのも自業自得だ。特にその追い詰められ方が俺にとっては悪しからぬものである事も含めると、我が事ながらなんてヒドい話だと思えてきてしまう。

 

 俺の犯した罪。それは銀子ちゃんに対して、他愛もない冗談を言ってしまった事。

 そしてその冗談を今日この日まで訂正しようとしなかった事。それに尽きる。

 

 この話を語ると、なんかちょっと生々しい話になっちゃうんだけど……。

 だから、そうだな。一応最低限の配慮としてアレな部分は『ピー』と伏せ字にする事にしよう。

 

 とにかく、あれは確か……銀子ちゃんと付き合い始めて一月程過ぎた頃だっただろうか。

 その頃にははもう……あの、なんて言うかな、その、俺達はもう初『ピー』を済ませていて。

 それで……3回、いや、4回目ぐらいかな? とにかく何回目かの『ピー』を終えて、それ終わりの気だるげな時間、というか……。

 ……まぁつまりはピロートークだ。事件はピロートークの時間に起きた。

 

 空銀子という女の子の特徴の一つとして、あの子は一度とろんって感じになっちゃうと暫くそのままになっちゃうっていうか……。

 思えば以前、桜ノ宮で撮影会をした時にも兆候は出ていたんだけど……要は甘えんぼうだ。基本的にあの子は『ピー』が終わると、その後暫く甘えんぼう状態になっている。

 きっと頭の中がとろけちゃうんだろう、『ピー』終わりの銀子ちゃんはマタタビの匂いに当てられた猫みたいになっちゃって、その後元のクールな状態に戻るには結構な時間を要するのだ。

 

 だから『ピー』終わりのピロートーク中、銀子ちゃんは頭の中がぽわぽわになってて、その影響で口の方もかなり軽くなっている。

 例えばこの時に『いつ頃から俺の事が好きだったの?』とか尋ねてみれば、銀子ちゃんは『子供の頃からずっと♡』と簡単に答えてくれる。

 普段なら言ってくれない事もピロートーク中ならすんなりと言ってくれる。それが空銀子ちゃん、とてもチョロくて可愛い俺の大切な恋人だ。

 

 そしてピロートーク中はそんな感じなだけに……頭ゆるゆるな銀子ちゃんにあれこれ言わせようとして、結果的に俺の方もついつい口が軽くなる。

 普段よりも会話が軽快になる事もあって、時に有る事無い事も口走ってしまったりする。

 そして『ピー』終わりだから俺も浮ついていて、そして銀子ちゃんは先の通り思考能力が低下していて……そこら辺の要因が色々と絡み合って、それが落とし穴だったのだと思う。

 

 

 とにかく俺は言ってしまった。

 曰く「男ってのはね、『ピー』して『ピー』を出さないと死んじゃう生き物なんだよ」と。

 

 そして銀子ちゃんは答えた。

 曰く「……え? そうなの!?」と。

 

 

 ……いや違うんだっ! 信じてくれ! 

 俺は騙すつもりなんて毛頭なかった! 本当に冗談のつもりだったんだ!!

 銀子ちゃんが「なにバカな事言ってんの?」みたいな感じに返してくるかと思ってたんだ!!

 

 それなのに、それなのに銀子ちゃんは……俺が適当に吐いた冗談を真に受けてしまった。

 男は『ピー』して『ピー』を出さないと袋がパンパンになってとても辛くてやがて死ぬ……なんて、そんな中学生でも信じないような冗談をこの子ってばあっさりと信じちゃったんだもんっ!

 

 ……いや、それも仕方ない事なんだ。

 なんせ銀子ちゃんだ。この子はガンダムという固有名称すら知らなかったような子だ。

 空銀子とはそういう女の子、その頭に将棋の知識だけを詰め込んで生きてきた女の子なんだ。男の身体の仕組みなんて何も知らなくて、だから俺が言った冗談をそのまま信じちゃったんだ。

 

 そしてそれ以来……銀子ちゃんは俺の健康状態を心配してくるようになった。

 俺と会う度「まだ身体は大丈夫なの?」とか「今日は『ピー』しなくても平気なの? 辛くないの?」とか、恥じらいの表情で俺にそんな言葉を掛けてくるようになって……。

 

 そして……そして。俺はそんな銀子ちゃんの思い違いを訂正しようとはせずに。

 むしろ……そこにつけ込んでしまった。銀子ちゃんが俺の身を案じてくれるのを良い事に、その後『ピー』の回数を増やしてしまった。それを口実にして『ピー』を何度もしてしまった。

 

 ……だってだって! そりゃ普通そうなっちゃうじゃん! 男だったらそうしたいじゃん!

 そーだそーだ! 俺悪くないもん! 銀子ちゃんがあまりにもウブすぎるのが悪いんだい!!

 

 ……いや、はい、分かってます。マジで俺が全部悪いんです。マジで。

 そんな日々が続いた結果、俺は銀子ちゃんの思い違いを訂正する事が出来なくて……。

 いつかは気付くだろうと思ってたんだけど、中々そのいつかが訪れなくて……。

 

 ……そして、俺と銀子ちゃんはこの不思議な夢を見る事になって。

 初日以降度々気に掛けてくれていたんだけど、その後一週間、二週間と日数を重ねて……。

 

 そうして今日、銀子ちゃんに我慢の限界が来た。

 八一はきっと辛い思いをしている。八一はきっと苦しい思いをしている。

 そんな切なる思いに突き動かされて、こうして自ら『ピー』のお誘いをしてきたという訳だ。

 

 

「ぎ、銀子ちゃん。とりあえずさ、今日のところはもういいから……」

「良くないっ! だって八一、この夢の中ではまだ一度も私と『ピー』してないじゃない!」

「いやそうなんだけど、でも別に──」

「私は……私はもうこれ以上、八一に辛い思いをしてほしくないのっ!」

 

 ──く、くぅぅ~……!

 マジで優しい! 銀子ちゃんってば優しすぎる……んだけど、今はその優しさが胸に痛いっ!

 

 この通り、銀子ちゃんは本気なのだ。

 エロ目的とかでは無く、本気で俺を救う為に、言わば人命救助の為に『ピー』を誘っている。

 だからこそ銀子ちゃんは引かない。そこには大切な恋人の命が懸かっているから。

 

「……銀子ちゃん、ほんとにごめんね」

「八一……」

 

 銀子ちゃんってばただでさえ銀髪美少女なのに、これ程までに純真な女の子で……そんな子を騙していると思うと、途轍もなく罪悪感が湧いてくる。

 ……だがそんな一面とは別に、俺の心の暗い部分ではこの状況を肯定している面もある。無垢な銀子ちゃんを都合よく騙している事に興奮と情欲を掻き立てられる面も確かに存在していて……。

 

「別に謝らなくていいわよ。だってそれが、その、男の人の身体の生理現象なんでしょ?」

「……いやもうほんとマジでゴメンね……」

 

 俺を見つめる目、その綺麗な灰色の瞳には疑いの色など欠片も混じっていない。

 あぁもうどうしよう、どうすればいいんだ。銀子ちゃんがあまりにもピュア過ぎてツラい。

 俺の身を案じてくれているこの子を納得させる方法が思いつかない。けれどもさすがにここで銀子ちゃんと『ピー』するのはちょっと厳しいし……。

 

 いやもうね、一番の解決策は分かってるんだ。

 あれは全部ウソだよって、冗談だよって、白状するべきだってのは分かってるんだけどさぁ。

 けれどここで全てを白状すると、俺マジで殺されるんじゃないかって気がしちゃって……。

 

「銀子ちゃん、今日はもう眠くなってきたからさ、ひとまずリビングに戻ろうよ、ね?」

「駄目よ! そんな事言ってたらいつまで経っても同じじゃない! このまま放っておいたら八一が死んじゃうかもしれないでしょう!?」

「い、いや、さすがに、さすがに『ピー』しなかったぐらいで死ぬ事は──」

「死ぬわよ! この前『ピー』した時に八一自身がそう言ってたんじゃない!」

 

 はい、言いました。そんな言葉を口実にして銀子ちゃんと『ピー』しちゃいました。

 あぁ、なんて愚かでバカなんだ俺。まさしく自業自得、身から出た錆としか言いようがない。

 

 そしてこれが自業自得というなら。

 きっと俺は美味しい思いをした分苦しまなくてはいけないはずで。

 

 だからなのか、それは唐突に現れた。

 その時洗面所のドアがバッと開かれて、

 

「なっ」

「え?」

 

 振り向いた俺達の目に映ったのは。

 

「八一が死ぬって、どういう事……?」

 

 当然ながら銀髪美少女、しかしその美麗な顔は血の気が引いた蒼白色をしている。

 ──まさかのJC銀子ちゃん、ご登場である。

 

「じぇ、JC銀子ちゃん!? ど、ど、どうしてここに!?」

「あ、あんたもしかして、私達の会話を盗み聞きしてたの!?」

「違うわよっ! 二人の声が大き過ぎてリビングの方にまで聞こえてんのよ!」

「え、あ、ごめん……うるさかったね……」

「てかそんな事はどうでもいいの! それよりも八一が死ぬってどういう事なの!?」

 

 JC銀子ちゃんの剣幕は真剣そのものだ。そりゃあ突然俺が死ぬと聞かされたらそうもなる。

 けれど……こ、これはマズいぞ! ここは慎重に言葉を選ばないと、これ以上更に手が負えない事態になってしまう気がする……!

 

「……えっとね。死ぬっていうのはその」

「JC銀子! あんたは知らないでしょうけどね、これは男の人特有の症状なの!」

「お、男の人特有の症状!?」

「いやあの銀子ちゃん、俺が説明するから」

「あんたは黙ってなさい! つまりね! 八一はもう限界なの! ここで『ピー』して『ピー』を出さないとマジで死んじゃうの!!」

「えぇ!? そんな、嘘でしょう!?」

「ホントなの! 私も全然知らなかったんだけど、男の人の身体はそういうふうになってるの!」

「そ、そんな……!」

 

 愕然とした表情になるJC銀子ちゃん。

 というか俺も驚きだ。まさか二人がこれ程迅速に意思疎通を済ませてしまうとはね。その早さの前に俺は口を挟む事すら出来なかったよ。

 そして同一人物だけあって見事に同じ冗談を真に受けちゃってるし。あぁもうこの子可愛い、可愛すぎて俺は泣きたい。

 

「八一、あんたねぇ! どうして、どうしてそういう大事な事をもっと早く言ってくれないのよ!」

「……はい。サーセンっした……」

「謝って済む問題じゃないでしょう!? て、ていうか、それより身体の具合はどうなの!?」

 

 どうもこうもない。俺はバリバリ健康です。

 

「言うまでもなく危険よ。八一の身体にはもう限界が来ているはず、一刻の猶予も無いわ」

 

 そんな事ないです。まるでへっちゃらです。

 

「だからJC……私達は今日ここで『ピー』しないといけないの」

「え、て、ぅい、で、こ、ここで!? ここで今日で『ピー』なの!?」

「そうなのっ! じゃないと八一が危ないの! これがりゅうおうの彼女のおしごとなの!」

「こ、ここで……ここで『ピー』を……!」

 

 そんなシーンを想像したのか、愕然としながらも真っ赤な顔になるJC銀子ちゃん。

 そんなウブな中学生をよそに、高校生の銀子ちゃんは決意を帯びた目で俺を見て。

 

「……そうよ。だって私は八一の命を守らないといけないから。だから……」

 

 改めて、言った。

 

「……さぁ、するわよ。八一」

 

 出来るかこんな状況でっ! とか。

 JC銀子ちゃんが居る側でするんかい! とか。

 そんなツッコミすら許さない程、今のJK銀子ちゃんが全身から発するオーラがもの凄い。

 

 恐らく元々秘めていた覚悟や緊張、そして中学生の自分に知られてしまった羞恥心など。

 それら色々なものが混ざり合って、今の銀子ちゃんのメンタルは天上を突破してしまっている。

 俺に有無を言わせない目ヂカラと迫力で以て、銀子ちゃんが一歩一歩近づいてくる。

 

「……八一。とっとと服を脱ぎなさい」

「ぎ、銀子ちゃん、ちょっとタンマ……!」

「あんたは横になってるだけでいいから。天井のシミの数でも数えてなさい」

「いや、ちょ、待ってって……!」

 

 つーかそれ男の方が言うセリフだからっ!

 あーもう駄目だ! 今の銀子ちゃんは覚悟が決まり過ぎていて止まってくれない!

 

 かくなる上は……!

 

「──とうっ!」 

 

 俺は洗面所からダッシュで逃げ出した。

 

「あ、逃げた!」

「待ちなさいっ!」

 

 そんな二人の声が聞こえたけど無視だ。決して振り向かずにリビングまで逃亡する。

 勢いそのままに布団の上にダイブして、頭から毛布にぐるぐると包まった。

 

「ぐ、ぐぎぎぎ……そりゃあ俺だって……!」

 

 そりゃあ俺だってしたいよっ! 叶うなら銀子ちゃんと『ピー』したいよ!

 でもこんな状況では。すぐ隣のリビングで銀子ちゃん達が寝ている状況ではさすがに……!

 

「うぐぐぅぅ~……煩悩退散煩悩退散……!」

 

 毛布に包まりながら呪文を唱える俺。

 我が内にある穢れを払うべくと、布団の上で芋虫のようにぐねぐね身を捩っていると、

 

「……あ、これは……」

 

 そこで柔らかな感触を2つ見つけた。

 勿論俺はすぐにそれを抱き寄せた。今はとにかく煩悩を払わなければならないからだ。

 

「……ん、にゅ?」

「……わっ、や、やいち!? ど、どしたの?」

 

 それは幼女銀子ちゃんとJS銀子ちゃんだ。

 抱き寄せられた腕の中、幼女と小学生が薄く目を開けて俺を見る。

 

「……二人共、お願いがあるんだけど」

「……んー?」「お願い?」

「うん。今日は俺と一緒に寝て欲しいんだ」

「いっしょに?」「え……!?」

 

 寝ぼけ眼で呟く幼女銀子ちゃん。

 ハッと目を開けたJC銀子ちゃん。

 幼女と小学生の感触はとても柔らかくて、とても良い匂いがして、とてもあたたかくて。

 

「……駄目かな?」

 

 俺は懇願するようにそう言う。

 

「……むぅ、こわい夢でもみたの? まったく、やいちは幾つになってもこどもなんだから……」

 

 すると幼女銀子ちゃんは呆れながらも、するりと手を回してきて。

 

「う、べ、べつに、一緒に寝るくらい、私は……い、いいけど!?」

 

 一方JS銀子ちゃんは照れながらも、これまたするりと俺の首に手を回してくる。

 

「二人とも……ありがとう」

 

 そうして幼女と小学生に両側から抱き付かれながら──俺は思った。

 

 ──あぁ、なんて無垢な生き物なんだ。

 これは妖精だ。いや天使だ。あらゆる穢れを寄せ付けない天使の銀子ちゃん達だ。

 

 この子達がそばにいる。それだけで俺の穢れた心の全てが浄化されていく。

 この子達のそばにいれば、俺は『ピー』の事なんて考えなくても生きていける。

 この子達じゃもう満足出来ないだとか、そんな事を考えた昼間の俺をぶん殴りたい気分だ。

 

「ありがとう、ありがとう、銀子ちゃん……」

 

 幼女とJSに深々と感謝しながら、俺はそっと瞼を閉じた。

 頭の片隅では洗面所の様子が気になったけど……もう知らん、このまま寝ちゃう。

 

 

 

 

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