銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集)   作:銀推し

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37. 空銀子たちの話

 

 

 

 

 全身から伝わってくる甘美な感覚。

 その温かさや柔らかさも全て、何度味わっても飽きない銀子ちゃんの感触。

 

「……で?」

「え?」

「八一、あんたはちゃんと助かったのよね?」

「っ!?」

 

 突然の話題に喉が詰まってしまった。

 た、助かったというのは……まさか、あの一件のことを尋ねている……のかな?

 

「どうなの?」

「えっと、それって……あの話、かな?」

「他になにがあるってのよ。で、どうなの?」

「……まぁ、はい、問題無しです。その件に関してはその、おかげ様でというか……」

 

 これはきっと『ピー』な話題……というべきか。

 要はあれだ、人命救助の現場で戦っていた一人の少女の活躍の事を聞いているのだろう。

 となるとイエスともノーとも答え辛い俺としては曖昧に言葉を濁すしかない。

 

「そ。なら良いんだけど」

 

 そう言って彼女は軽く息を吐いた。

 あぁ、なんかくすぐったい感じがする。どうしようもなくドキドキしてしまう。

 

「……色々と心配掛けてごめんね」

「別にそれは良いんだけど……」

 

 ただ……、とJC銀子ちゃんは呟いて。

 

「……声、漏れてた」

「え゛っ、う゛そ゛!?」

「ほんと。JKの声がうっすらと」

「……マジすか」

 

 瞬間背筋に冷たいものが走る。顔からさーっと血の気が引いていく。

 ま……マジで? JK銀子ちゃんの声……リビングにまで漏れちゃってたの?

 い、一応その点は考慮して、抑え目にしたつもりだったんだけど……。

 

「……えっち」

「ぐッ!」

「すけべ。へんたい。ケダモノ」

「ぐ、ぐぐ、ぐぅ……!」

 

 ……もはや言い返す言葉もない。

 まさか声漏れしていたとは……ああああ、なんか無性に恥ずかしくなってきたっ!

 てかそうなると、他の二人にもバレちゃってる可能性も? え、それってガチ目にヤバくない?

 

 ……などと戦々恐々としていたら、途端にJC銀子ちゃんがもじもじと身じろぎしだした。

 

「……もういい」

「え、もういいの?」

「うん、だってなんかえっちな事されそうだし」

「し、しないってば、そんなこと……」

 

 取り繕うように俺がそう答えると、

 

「……ふーん?」

 

 とJC銀子ちゃんは俺の耳元で意味深に呟いて。

 

「……しないんだ?」

「──な、それは、どういう……」

「べっつにー、しないんだーって思っただけ」

 

 その台詞は恐らく……実にしれっとした顔で言っているのだろう。

 角度的に俺からは見えないけど、分かる。銀子ちゃんのからかう心が伝わってくる。

 

「……ぐぬぬ」

 

 JC銀子ちゃんめぇ……! こっちが大人の対応を取ればつけ上がりおって……! 

 こうしている今も俺がどれだけ我慢しとると思ってんじゃいっ! と言ってやりたい気分だ。

 

 というのも……先程からの俺とJC銀子ちゃんとの会話、これは超至近距離で行われている。

 互いの声が互いの耳元で聞こえる距離。互いの感触すらも伝わる程の至近距離。

 まぁつまりは抱擁だ。ハグだ。俺は今JC銀子ちゃんを抱きしめちゃったりしている。

 

「でも、これはえっちな事じゃないよね?」

「……どーだか」

「どーだかってそんな……それにそもそもこれはJC銀子ちゃんが……」

「私はなにも言ってない」

 

 つい先程。俺が風呂に入ろうと洗面所にやって来たらJC銀子ちゃんが付いてきた。

 そこで俺が「どしたの?」と尋ねたらJC銀子ちゃんは「ん」と呟いて両手を軽く広げた。

 それがハグを求める仕草だと理解した俺は、遠慮なくその通りにしてあげたという訳だ。

 

 実はこうした事はここ最近よくあったりする。切っ掛けはやはりあの封じ手事件だろう。

 あの日以降、JC銀子ちゃんはちょくちょく俺に甘えてくるようになった。上手く二人きりになれる機を窺って、こんな感じでハグやら何やらを求めてくる事が多くなった。

 俺としてはなんというか、正直いけない事をしているような気がして凄くドキドキする。けど「JCには優しくしてあげなさいよ」ってJK銀子ちゃんからもお達しを受けている訳だし、これぐらいなら問題ないよね? 

 

 ……うん、問題ない問題ない。

 これはセーフ。これはお互い合意の上だからセーフだよね。うんうん。

 

「………………」

 

 なのでと俺はそーっと手を動かして、JC銀子ちゃんの背中を軽く撫でてみる。さわさわ。

 

「っ、……!」

 

 すると息を呑む気配と共に、JC銀子ちゃんが身体を固く強張らせたのが分かった。

 

「……やっぱりえっちな事してんじゃないの。このバカ、クズ」

「おやぁ? この程度でえっちだなんて中学生の銀子ちゃんはウブですなぁ」

「な、なんですってぇ……?」

「この程度のボディタッチ、JK銀子ちゃんだったら平気な顔で受け入れると思うけどね」

 

 先程からかわれた意趣返しとばかりに、俺は挑発的な言葉を投げつける。

 

「ぐぬぬ……!」

 

 すると高校生と比較しての言葉が効いたのか、JC銀子ちゃんが悔しそうに唸った。

 ……かと思いきや。

 

「……そう」

 

 途端にその声のトーンを変えて。

 俺の耳に触れる程の距離まで唇を近づけて、そして言った。

 

「……じゃあ、さ…………いいよ?」

「え?」

「……えっちなこと、しても、いいよ?」

「えぇエエエエ!?」

 

 し、してもいいって、え、ま、ま、マジで!?

 でもそんな、中学生になんてそんな、いやでも本人が良いと言っているなら良いのかな良いんだろうかいやけどしかしさすがにそれは──

 

「……(カプリっ!)」

「ぎゃーー!!」

 

 耳がっ! 耳を齧られたッ!

 痛みと驚きに俺は抱擁を解いて一歩飛び退る。

 するとようやくJC銀子ちゃんの表情が、りんごのように真っ赤になっているその顔が見えた。

 

「嘘に決まってんでしょ! このエロ、エロ八一! とにかく次JKと変なことをする時は声漏れしないように注意しなさいよね! 私が言いたかったのはそれだけ! このバカ!」

 

 そして銀子ちゃんらしくキレたかと思いきや、そのまま洗面所から去っていった。

 

「い、いたた……めっちゃ本気で噛まれた……なんか耳たぶに歯型が付いた気がする……」

 

 ……けど、嘘か……そうか。

 ……いや違うよ? 俺だって嘘だと分かってたからね? うん、分かってた分かってた……。

 

「……さてと、お風呂入りますかね」

 

 洗面所に残された俺は頭を切り替えて、ぱっぱと服を脱いで浴室のドアを開く。

 けど声漏れしてたってのは迂闊だったなぁ。十分に気を付けていたつもりだったんだけど。

 そう言えばここってワンルームマンションだから複数人で住む想定の造りじゃないだろうし、そもそも部屋の壁が薄かったりするのかな……。

 

 ……などと考えながら、シャワーでさっと身体を流して。

 

「……ふぃー」

 

 そして肩まで湯船に浸かって、全身を包む熱々の心地に大きく息を吐き出した。

 あぁ……いい湯だなぁ、極楽極楽……。

 

 

 

 ■

 

 

 

 あぁ……いい湯だなぁ、極楽極楽……と。

 熱々の湯船に浸かって、一日の疲労を湯に溶かしている真っ最中の九頭竜八一は知らぬ事。

 

 

「……よし、それじゃあ始めようかしら」

 

 そう呟いたのは空銀子、高校1年生のJK銀子。

 

「さ、早く早く」

 

 そして急かすJC。

 

「………………」

 

 沈黙するJS。

 

「……ふぁ」

 

 そろそろ眠たくなってきたのか小さくあくびをする幼女と。

 4人の銀子達が顔を突き合わせるような形でリビングに集まっていた。

 

「……では」

 

 この集いの発起人、JK銀子はいざタブレット端末に手を伸ばす──

 

 

 ……とその前に。

 何故こうして4人の銀子達が集結しているのか、その理由は今から数分前に遡る。

 

 それは八一が風呂に入ってすぐの事。

 顔を赤くしたJC銀子がリビングに戻ると、そこへJK銀子が近付いてきた。

 

「ねぇJC、今大丈夫?」

「いいけど、なに?」

「この前のお礼も兼ねて、あなたには特別にあれを見せてあげようと思ってね」

「あれ?」

 

 この前のお礼。それはあの日の夜、八一の人命救助に手を貸した事だろう。

 一晩中寝不足にさせてくれた返礼として、JK銀子は特別な何かを見せてくれると言う。

 けれどもあれとは何だろう。とJC銀子は一瞬だけ悩んだが……しかしすぐにピンときた。

 

「……あれって、まさか……あれ?」

「そ。あれよ」

 

 言葉に出さずとも分かる。同じ空銀子同士通じ合えるものがある。

 二人は速やかに意思疎通を済ませ、そして両者共にイイ顔でこくりと頷いた。

 

 こうして二人の銀子は一緒に『あれ』の鑑賞会をする事にした。

 丁度今は八一が入浴中でリビングにいない、ここで『あれ』を見るには絶好のタイミングだ。

 

「さてっと……」

 

 JK銀子は愛用のタブレット端末を取り出す。

 その中には彼女ご自慢の逸品、これまでに沢山集めてきたお宝画像が眠っている。

 その収集活動は中学生の頃から行っていた事で、だからこそJC銀子もその存在を知っていた。

 

「その中には私が見たことのない写真があるって事だもんね。……なんか楽しみ」

「ふふっ、期待してくれて良いわよ。ここにあるのはとっておきのやつばかりだから」

 

 高校生と中学生、二人の銀子の顔には共に笑みが浮かんでいた。

 互いにとって互いは自らと同じ嗜好を持つ者、言わば同好の士。好きなものを語り合える相手というのは貴重な存在だ。それが当の自分自身というのは哀しくないのか、とは言ってはいけない。

 

 とにかく同好の士というのは貴重な存在、少なくとも銀子にとってはそうだ。

 なんせ銀子は自らの嗜好について、同好の士などこれまで一度たりとも出会った覚えがない。

 だがそれもそのはず、そのタブレット端末の中に眠る空銀子のとっておきとは……常人には中々理解出来ないものというか、少々特殊性癖に片足を突っ込んでいるようなもので。

 

「ほらJK、早く早く」

「急かさないの。全く……」

 

 とはいえ理解され難い嗜好であっても、好きなものは好きなのだからしょうがない。

 こうして初めて出会えた同好の士二人、銀子達は早速『あれ』を見ようとしたのだが。

 

「なにしてるの?」

「え、あ、幼女……」

 

 その時背後から幼女の銀子に声を掛けられた。

 どうやら二人の銀子がリビングの片隅でこそこそしているのが気になったようで、小首を傾げる幼女の瞳は興味津々といった感じだ。

 

「……JK、どうする?」

「……そうね」

 

 これは幼女にはまだ早すぎる代物なのよ。とここで大人の対応を取る事は簡単だ。

 けれどもこの幼女とて空銀子。JKとJCが同好の士なのだとしたら、子供の頃の銀子とは将来同好の士になり得る存在と言える訳で。

 

「……よし。なら幼女。あんたにも見せてあげる。それとJSも呼びましょうか」

 

 という訳で、せっかくだからと幼女や小学生も誘って。

 空銀子4人で『あれ』の鑑賞会をする事にした。……と言うのが話の流れである。

 

 

「まずはどれからいこうかなーっと」

 

 そうして集まった3人の銀子達を前にして、JK銀子が軽快にタブレット端末を操作する。

 

「みんなでなにをみるの? 将棋?」

「違うわ。見るのは写真よ」

「写真? もしかして八一の写真とか?」

「そう。それもとっておきのね」

 

 未だ事情を理解していない幼女の銀子、そして小学生の銀子がきょとんとする中。

 JKの銀子はふふんと笑いながら、端末内に保存されている秘蔵の画像フォルダを開く。

 

「……ええと、あなた達が見る事の出来ない最新のがいいから……ほら、これとかはどう?」

 

 そうして画面に表示されたのは──

 

「あ、いいね……」

「……ん」

 

 それを見て、JCの銀子は軽く頬を染める。

 そしてJSの銀子はこくんと喉を鳴らす。 

 

「………………」

 

 だがそれを見て幼女の銀子は沈黙するだけで。

 

「次は……そうね、これとか」

 

 そうして次に表示されたのは──

 

「これ、中指のラインがすごく綺麗……」

「……んー?」

 

 それを見て、JCの銀子はまるで評論家の如く感想を述べる。

 そしてJSの銀子は身体の内に湧き上がってきた不思議な感覚に身震いする。

 

「……むぅ?」

 

 だがそれを見て幼女の銀子は首を傾げるだけで。

 

「なにこれ。なんで手のしゃしんばっかなの?」

 

 それは手だった。右手だった。九頭竜八一の右手が収められた写真だった。

 幼女の銀子はタブレットの画面に自ら手を伸ばし、何度も横にスワイプしてみる……が、どれだけスワイプしても現れるのは右手の写真だけ。

 

「ねぇ、やいちのしゃしんが見たいんだけど」

「だからこれが八一の写真じゃない」

「そーじゃなくて。もっとやいちがしっかりと写ってるのはないの?」

 

 右手ではなく八一自身を、成長した八一のちゃんとした写真を見てみたい。幼女の銀子は右手のどアップ写真になどさっぱり興味が湧かない。

 けれどもその考えはJK銀子やJC銀子にとっては異なるらしく、二人は若かりし頃の自分自身を眺めながらしたり顔で首を振る。

 

「ま、まだ幼女には分かんないでしょうね。八一はこの右手がいいのに。ねぇJC?」

「その通り。八一と言ったら右手、あいつの存在価値の9割はこの右手にあると言ってもいいわ」

「そ、そんなに? それだと八一は右手を除くと殆ど価値が無いって事になっちゃうんじゃ……」

「実際そんなもんでしょ。ねぇJK?」

「そうね。さすがにJCは良く分かってるわね」

 

 同じ性癖を持つ者同士、JKとJCの銀子はうんうんと頷き合う。

 九頭竜八一の価値は右手にあり。棋士の真髄とはその利き手に宿るのだと言わんばかりだ。

 

「ていうかJS、小学生のあんたにだったらちょっとぐらいは分かるんじゃない?」

「え、分かるって……なにが?」

「だから……ほら、この写真を見ていて何か感じる事はないの?」

「え、えぇ? そ、そう言われても……」

 

 高校生の銀子に促されて、困惑した表情のJS銀子はタブレット端末に視線を移す。

 そこに映っているのは右手だ。ただの右手でしかない……が、それは九頭竜八一の右手で。

 5本の指、その爪、その指先、そしてその滑らかなフォルムを見ていると……。

 

「……う。……なんか、よく分からない、けど……なんか、ちょっとドキドキするかも……」

 

 どうしてか分からないけど惹き付けられる。JS銀子は思わず自分の頬を押さえた……熱い。

 どうやらJS銀子は目覚め始めているようだ。JK銀子が「JSは素質があるようね」と呟けば、JC銀子が「同じ空銀子なんだから当たり前でしょ」と冷静なツッコミを入れる。

 

「ならJS、これは? この写真のどこが素晴らしいのかは分かる?」

「ん……その、小指が……小指がピン、ってしてる所が……ちょっと可愛い……かも」

「そう! よく分かってるじゃない!」

「さすがは私、さすがは小4って所かしらね。ならほら、こっちとかもどう?」

「あ、うん……」

 

 高校生と中学生と小学生。共通の嗜好を持つ者同士、銀子たちはタブレット端末に表示される右手の写真を和気藹々と鑑賞する。

 

「……むー」

 

 しかしそのように3人だけ盛り上がられては、幼女の銀子としては全く面白くない。

 右手がなんだ。右手がどうしたというのだ。そんなの幼女にとっては何ら興味の沸かない話だ。

 

「ねぇじぇーけー」

「なに?」

「じぇーけーはやいちの右手をすきになったの?」

 

 なので幼女は話題を変える意味も込めて、率直に思った事を言ってみる。

 

「……む」

 

 するとJK銀子の眉がピクンと動いた。

 

 

 

 

 

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