銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集)   作:銀推し

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おまけの話 JC銀子のその後③

 

 

 

 

 ──会いたい。

 あの子に、会いたい。

 

「……はぁ」

 

 思わず溜め息が出た。

 別に憂鬱だからってわけじゃないんだけど、どうにも胸が苦しいというか、重い。

 胸の奥で大きな感情が渦を巻いて唸りを上げているような、そんな感じがする。

 

 というのも……あの子に会いたいから。

 会いたい、会いたい……と、ここ最近の俺はそんな事ばかりを考えてしまっている。

 まるで恋煩いにも似た想い。……というか、ぶっちゃけるとそのものだったりする。

 

 きっかけはあの一件。ハワイの地でとあるおまじないを貰ったのが契機だった。

 あの日までは普通に接していて、それなのにあのおまじないがきっかけですぐそうなるだなんて、我が事ながらなんて分かりやすいというか、なんて現金な話だとは思うけど。

 

 でも、なっちゃったんだからしょうがない。

 自分の気持ちに嘘はつけない。この想いから目を逸らす事は出来ない。

 特に今ではもう。あの時に約束した期限はすでに来ているわけで──

 

 

 ──と、そんな事を考えていた時だった。

 

「あっ……」

 

 黒のセーラー服。

 見慣れたその制服姿を、特徴的なその格好を視界の端に捉えた。

 

「っ!」

 

 俺は慌てて駆け出す。

 見つけた。ようやく見つけた。

 関西将棋会館からの帰り道の途中、探していた相手はそこにいた。

 

 

「姉弟子っ!」

 

 張り上げた俺の声が届いたのだろう、

 

「……なに?」

 

 立ち止まった彼女は振り返って、俺と目が合う。

 

 っ、……か、かわいい。

 こうして久し振りに顔を合わせた姉弟子はいつにも増して可愛く見えた。

 これはあのおまじないによって俺の心境が変化した影響だろうか。内にある動揺を気取られるのが恥ずかしくて、努めて平然を装いながら口を開く。

 

「なに、じゃないでしょう。探しましたよ。どうして先に帰っちゃうんですか、この時間ならまだ棋士室に残っていると思ったのに」

「……べつに」

 

 つんと顔を横に背ける仕草、相変わらずのそっけない態度。

 実に姉弟子らしい淡白な態度に、俺としては少々感心したような気分になってしまう。

 こうして平然としているのは凄い事だ。俺には中々真似出来そうにない。俺は今も、こうして姉弟子の顔を見る度にハワイの一件を思い出して、視線が自然と唇の方に向かってしまう。

 

「今日は棋士室に人が多かったから帰る事にしたってだけ。それで、なんか用事でもあるの?」

「あります。……姉弟子、よければこのあと少し付き合ってくれませんか?」

 

 俺がそう言うと、

 

「……付き合う?」

 

 姉弟子は警戒するかのように顔付きを変えた。

 

「はい。……その、話したい事があるんです」

「……そう」

 

 俺が何を言いたいのか。

 自分が何を言われるのか。

 恐らくはすでに察しているのだろう。姉弟子の神妙な表情がそれを物語っている。

 

 それは竜王戦第一局。ハワイの地で約束した事。

 あの時、ホノルルのホテルの部屋の前で……俺と姉弟子は勝利のおまじないをして。

 俺が言いたくなった言葉を、この胸の内に湧いた感情を……けれど、対局への影響を考慮して竜王戦が終了するまでは心に封じておく事にした。

 

 そして先日、竜王戦は終了した。

 激闘の末に俺はタイトル防衛を果たした。

 これでこの子の隣に立つのにもなんとか格好が付いたはずだ。

 

 だから……俺は姉弟子に言うつもりだ。

 この子に対する自分の気持ちを。自分の心を。ありのままを真っ直ぐに伝えようと思っていた。

 

 ……だが。 

 

 

「……今日は、駄目」

「えっ」

「今日はこのあと用事があるの。だから駄目」

 

 そう言って姉弟子は顔を背ける。

 その横顔から見える瞳は弱々しく揺れていた。

 それは……後ろめたさで、だろうか。

 

「用事ってなんですか?」

「……別に、なんでもいいでしょ」

 

 歯切れ悪く答えるその様子も、俺と目を合わせようとしないその様子も。

 今の姉弟子からは拒絶の意思が……俺とは話したくないという意思が伝わってきていて。

 

「なんでもって……このあとなんてもう家に帰るだけですよね? だったら──」

「とにかくっ! その話はまた今度!」

「あっ、ちょ……!」

 

 そして、一方的に会話を打ち切った姉弟子は走り去ってしまった。

 突然の事に付いて行けず、俺は片手を伸ばしたままの虚しい格好で硬直する。

 

「姉弟子……」

 

 

 

 

 

 

 マズい。

 そろそろ限界が近い。

 もう有耶無耶にするのにも無理が来ている。

 

「……はぁ、はっ、はぁ……」

 

 呼吸が苦しくなってきて足を止める。

 ちょっと走っただけですぐ息が上がる自分の身体を情けなく思いつつ、私は背後を振り返る。

 

「……来てない、か」

 

 そこに八一の姿は、無い。 

 一方的に会話を打ち切り逃げ出した私を見て、八一は追いかけては来なかったようだ。

 それにひとまず安堵する一方、私は一体何をしているんだろうという自己嫌悪の念もある。

 

 というのも、実は……。

 ……ここ最近、私は八一と顔を合わせる事を控えている。

 ううん、控えているなんてレベルじゃない。さっきみたく露骨な程に避けてしまっている。

 

 ……要は、逃げている。

 

 

「…………はぁ」

 

 家に帰る道を歩きながら、思わずため息。

 憂鬱だ。こんな事をしてたって……逃げたって意味なんて無い事は明らかなのに。

 間違った事をしているって分かってるのに。そうと気付いているのに変える事が出来ない。

 

 だって……八一を、避けるなんて。

 そりゃあね? そりゃあ喧嘩した時なんかは八一を避けたりシカトしたりする事はあったけど。そんなのはもうお互い慣れっこなんだけど……でも今回はそういう話じゃない。

 だって今は別に八一と喧嘩なんてしてないし。弟弟子との関係は悪化しているわけじゃない。

 

 ……というか、なんというか。

 今はむしろその対極とも言える状態にあるかもしれないというか、その……その。

 つまり関係は一応良好で、その上で今はある種の転換期というか、今後の私と八一の関係が大きく変わるかもしれない最も重要な時期だと言うのに。

 

 それなのに。なのに私はこうして……八一と向き合うのを避けている。

 今日は用事があるから駄目、なんて……そんな分かりやすい嘘を吐いてまで。

 

 あの日に言おうとしていた言葉を。

 ハワイの夜に約束して、竜王戦が終わった今遂にその時期が来た……あれを。

 八一が私に言おうとしている言葉。その想いと向き合うのを拒んでいるのだ。

 

「……どうしたらいいんだろう。本当は……すごく嬉しいはずなのに」

 

 つい弱音が……というか、本音が漏れる。

 八一が言おうとしている言葉。それが私の想像通りの内容なら、最高に嬉しいはずなのに。

 だってそれは私が長年心待ちにしていた言葉だ。ずっとずっと八一に言って欲しかった言葉で、それを聞いたらきっと天に昇る程に嬉しくなっちゃうに決まっているのに。

 

「……うぅ」

 

 ……だ、だってっ!

 だって八一が私に言おうとしている事って、あれはきっと……!

 

「……う゛、うう~~~~~っ!!」

 

 あ、あれは、こっ、告白、だよね!?

 そ、そうでしょ!? 絶対に告白でしょ!? わたし間違ってないよね!?

 

「……うん。そのはず、そのはずだもん。あれは間違いなく告白してくる雰囲気だった」

 

 ハワイの夜。ホテルの部屋の前で私と八一はキ、……というか、勝利のおまじないをして。

 その時に八一が何かを言おうとして、しかし対局への影響を考慮して保留にした言葉。

 あの状況で言う事があるとしたら、それはもう「貴方が好きです」以外には無いだろう。

 

 ……無いよね? そうよね?

 あそこで「次の研究会についてなんだけどさ」とかさすがの八一でも言わないよね? 

 そんな事言い出したらさすがにぶちころす。バカで大バカで将棋バカな八一でもそこまで空気の読めない男だとは思いたくない。

 

「竜王戦が終わるまで待ってくれ、って言うからには……それだけ大事な話だって事だもんね」

 

 仮に将棋に関わる話なら、竜王戦終了時と言わずとも第一局が終了した時点で言えたはずだ。

 その他の話題に関しても同じ理屈が通る。わざわざ数ヶ月も待たせる程の言葉なんて、そんなのはもう告白ぐらいしか思い付かない。そうでしょ?

 

 ……うん、そうだ。そのはずだ。

 これは正しい思考だ。決して私の願望に引っ張られた都合の良い妄想とかではないはずだ。

 多分あのおまじないがきっかけになって、八一は私に告白したい気分になったんだ。うん。

 

「…………う」

 

 それはつまり。

 八一が、私を、す、す、しゅき、って事で!?

 

 そ、それでっ、ついでに言っちゃうとね!?

 私も、わたしだってね!? 八一の事がしゅ、しゅしゅ、ちゅき……だからね!?

 

 ……わたしも、だから。

 

「……私も、好き……なのに」

 

 ……だからこそ。

 そんな時に私は何をやっているんだろう。

 なんで私は逃げているんだろう。という……自己嫌悪の念が心を抉る。

 

「……告白を避けるなんて。八一と向き合わないなんて、そんなの……駄目に決まってるのに」

 

 そんなの絶対だめに決まってる……けど。

 これは言い訳にしかならないけど、私だってなにも理由なく八一を避けている訳じゃない。

 

 八一からの告白を。

 ずっと大好きだった初恋の相手からの告白を拒むほどの理由が。

 ずっと一緒に居た男の子と向き合えない理由が、……一応、あるにはあるんだけど。

 

 ……けれど、これは……。

 今、私の頭を大いに悩ませてくれているこの問題は……一体どう解決したらいいのか。

 この問題に気付いてからずっと、ずっとずーっと考えているんだけど、一向に答えが出せない。

 

「……こんな事、直接八一に言うわけにもいかないし……」

 

 それでは駄目だ。

 それでは意味がなくなってしまうし……それはなんか……ちょっと、さすがに。

 だってこれはとても自分勝手な話だから、それを八一に伝えるというのは気が引けてしまう。

 

 これはあくまで私が──

 ……というか、実際には八一が解決してくれないといけない問題なんだけど。

 

 ……でも、そんなのどうすればいいんだろう。

 

「…………はぁ」

 

 答えが、見えない。

 私は痛み始めた額を押さえて、ここ最近増えた大きなため息をまた吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 と、こんな感じで。

 とある難題に頭を悩ませる私が意中の相手を避け続ける一方で。

 

 しかし相手の方も引くことは無い。

 相手だって本気だ。あらゆる手段を使って私と接触してくるのを止めなくて。

 

 

 それから一週間後の事だった。

 

「姉弟子」

「っ!」

 

 再び関西将棋会館からの帰り道。

 まさかのタイミングでその声が聞こえて、私はビクッと肩を跳ね上げた。

 

「や、八一……」

 

 曲がり角の陰、そこにいたのは八一だ。

 今はちょっと会いたくない相手、我が弟弟子である九頭竜八一が待ち構えていた。

 

 ……私の家のすぐそばで。

 

「……あんた、まさか……ここで張ってたの?」

「はい」

 

 当然のように頷く八一。

 ……こ、こいつ。まさか私に会う為に家の前で待ち伏せしてくるとは。

 将棋会館内では相変わらず私が避け続けているって事情はあるけど、それでもこうまで強引な手を使ってくるだなんて。一歩間違えればストーカーだという事を分かっているのだろうか。

 

「だって姉弟子、電話にも出ないし、LINEだってずっと既読スルーじゃないですか」

「……そうだっけ?」

 

 私がすっとぼけた返事をすると、即座に八一から「そうですよ」と突っ込まれる。

 ……確かにそうだったかもしれない。ここ最近の私は本当に態度が露骨だったみたいだ。

 

「今日だって一緒に帰りましょうって連絡を朝から入れてたのに、全然返してくれないし……」

「……それで、待ち伏せをしたって?」

「はい。仕方なくですよ、仕方なく」

「仕方なく、ねぇ……」

 

 それはストーカーの言い分なのでは……という話は置いといて。

 仕方なくで待ち伏せをしちゃう程、今の八一はとても意気込んでいるのだろう。

 絶対に私を逃さないという意思を感じる。この包囲陣はそう簡単には掻い潜れそうにない。

 

「……で? なんか用事でもあるの?」

「勿論ありますよ。てかもうずっと前から言ってますよね? 姉弟子と話がしたいって」

「………………」

 

 ──話がしたい。

 その言葉を聞いて私の心が臆したのか、反射的に一歩下がって八一から距離を取る。

 

「……はなし?」

「はい。ホノルルのホテルで約束した話です」

「……私、今日はもう疲れたから……その話は今度にして欲しいんだけど」

「いやです。姉弟子そんな事言ってまた逃げちゃうじゃないですか」

「別に逃げたりなんかしないわよ。とにかくその話はまた今度に──」

 

 言いながら身体の向きを変えて。

 口では逃げないと言いながら、性懲りもなく逃げようとする私の機先を制するように、

 

「銀子ちゃんっ!」

 

 八一の手が、私の手を捕らえた。

 

「っ、……離して」

「……銀子ちゃん」

 

 その右手を。

 私を逃すまいと掴んできたその手を、ここで振り解く事は出来なかった。

 

 だって……八一の目が。

 私を見つめる瞳が……不安げに揺れていて。

 

「俺の話を聞いてくれるって……そう言ってくれたじゃないですか」

「…………言った、けど」

 

 そうだ。私は確かにそう言った。

 竜王戦が終了するまで待つと。終わったら話を聞いてあげるって八一と約束した。

 だから私は、逃げちゃダメなのに──

 

「……ふぅ」

 

 すると八一は掴んでいた私の手をゆっくりと離して、一度大きく息を吐いた。

 それで気を落ち着けたというか、何かしらの心構えをしたのだろう。

 先程覗かせた胸中の不安を隠した表情で、こちらを気を遣うような優しい表情で私を見た。

 

「……姉弟子」

「……なに?」

「俺が姉弟子に何を言いたいのか、もうなんとなく察しているんですよね?」

「そ、れは……」

「だから避けるんですよね? 俺からそういう話は聞きたくないから」

「別に、そういう訳じゃ……」

「けど姉弟子は気にしなくていいですから。別に俺は、断られるのは覚悟して──」

「ちっ、違う! そうじゃない、そういう事じゃないの!!」

 

 八一が言い掛けた言葉を慌てて否定する。

 そんなっ、それは違う! 私はそんなつもりで八一を避けているわけじゃないっ! 

 断るつもりなんて一ミリたりとも無いのに……だけど、八一の立場からしてみれば、確かにそのように見えてしまうかもしれない。

 

「そうじゃない……そうじゃないの」

「そうじゃないって……でも、だったらどういうつもりなんですか?」

「それは……」

 

 あぁもう、どうしよう。どうすればいい?

 ここで私は何を言えばいい?

 

「……分かった。けどその話をする前に一つ、先に私の話を聞いて欲しいんだけど」

「いいですけど……なんですか?」

「……実はね」

「はい」

 

 私では解決出来ないこの問題を。これを八一に察して貰う為には……。

 とにかく話の核心はひた隠しにして、それとなく遠回りに伝えられるような言葉で……。

 

「……あのさ」

 

 私は──話を切り出した。

 

「……八一、さ」

「はい」

「……両親って、大事じゃない?」

「は?」

「両親よ。父親と母親って大切でしょ?」

「え、あ、まぁ、そりゃそうっすね」

 

 突然の話題に面食らったのか、戸惑いがちに頷く八一。

 そう、両親は大事だ。父母という存在はなによりも大切にしなければならない。

 

「だったらさ」

「はい」

「ほら、たまには……実家に、帰省したくなったりはしないの?」

「えっ、……帰省ですか?」

「うん。たまには生まれ故郷に帰ってさ、大切な両親に会うのってとても大事な事でしょう?」

「まぁ、そりゃあ大事かもしれませんね」

「でしょ? ならあんたは帰省しないの?」

「俺は……まぁ、そうですね、今のところ帰省をする予定は無いですけど」

 

 は? なんで?

 なんでこいつ実家に帰省しないの? 意味分かんないんだけど。

 

「あんた両親が大事じゃないの? 久々に顔を見せようかなって思わないわけ?」

「思わないわけじゃないけど……でも……」

「でも、なによ」

「いやほら、ついこの前の竜王戦の前夜祭で両親とは会ったばっかりなんですよ。姉弟子も会場に居ましたよね?」

「あ…………そういえば、そうね」

「はい。両親や兄弟とはあの時に会ったし、だから俺としてはしばらく帰省はいいかな~、っていう気分になってるというか……」

 

 そうだった。

 竜王戦第四局。旅館『ひな鶴』で行われた対局の際に八一はご両親達と会っている。

 となれば確かに帰省という気分にはならないのかもしれない。作戦失敗だ。

 

「……で、帰省がどうしたんですか?」

「いや、あの……」

「姉弟子の話はそれで終わりですか?」

「う、えっと、えっと……!」

「終わりなら……次は俺の番ですよね」

 

 手順が途切れて動揺する私をよそに、攻めの番が回ってきた八一は表情を変える。

 ……ま、まずいっ、このままじゃ──!

 

「姉弟子、俺は」

「待って、八一、待ってっ!」

「待てないよ! 銀子ちゃんっ、俺は──!」

「分かってるっ!」

 

 分かってる。言われなくても分かってる。

 ここまで来て八一の想いと向き合わないなんて。そんなのあまりにも不誠実だ。

 それが理由で嫌われちゃってもおかしくない。それ程の事をしてるってちゃんと分かってる。

 

 けれど……っ!

 

「違うの! 私は、私は……! 別にっ、八一を避けるつもりなんかなくて、八一が言おうとしている事を拒みたいわけじゃないの!」

「っ、だったら──」

「けどっ! でも……だから、そのっ!」

 

 あぁもう駄目だっ! 

 もっと核心的な事を言うしかないっ!

 

「つ、つまり……つまりねっ!? し、シチュエーションにもこだわって欲しいの!!」

「し……ちゅ、えーしょん?」

 

 私の返しを予期していなかったのか、八一は間の抜けた顔になった。

 そう。原因はシチュエーション。私の頭を悩ませる問題とはシチュエーションなのだ。

 

 別に私は八一に帰省して欲しいわけじゃない。

 そうじゃなくて、本当に大事なものは……私が求めるものはもっと別のところにあって。

 

 ふと、脳裏の奥で。

 私によく似た、ちょっとだけ成長したあの顔と。

 そして……私がまだ見たことの無い、満天の星空の景色が見えたような気がした。

 

 

 

 

 

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