銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集) 作:銀推し
俺と銀子ちゃんズの共同生活が始まってから、今日で4日目となった。
その間俺はずっとこの部屋に泊まっている。当然4人の銀子ちゃん達も一緒だ。
だがそうなると、この4日間俺は一度も自宅には帰っていないという事になる。そしてその事情を説明する電話の一本すらもいれていない。
4日間も音信不通で連絡無し。となれば俺の家に居る内弟子のあいだって心配するだろう。
そしてついでに言ってしまうと、あいとは別のもう一人の弟子の方、週に2回ある天衣への将棋の指導もこの4日間の内にすっぽかしている。
となれば当然向こうから俺に対する何らかのアクションがあって然るべきなのだが、しかしこの生活が始まってから俺のスマホは一度も着信音を鳴らしはしない。勿論故障しているわけじゃないよ?
それは何故か。答えは簡単、これが夢だから。
俺達が寝泊まりしているこの部屋。この部屋はもう俺の知っている801号室ではなくて『銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの部屋』なのだ。
この部屋で俺がすべき事は銀子ちゃんを可愛い可愛いするだけ。それがこの部屋、ひいてはこの夢の目的であって、だからこそ壊れている訳でもない俺のスマホは着信音を鳴らしはしないのだろう。
という事で、俺は早々にこの日々を夢だと断じている為、銀子ちゃんに関わる以外の事については手を出す事を止めにした。
それが現状の俺のスタンスであり、だからこそちょっと不思議に感じてしまうのだが──
「……ほら、ハンカチとティッシュは持ったの?」
「うん、持った」
時刻は朝。JC銀子ちゃんの言葉にJS銀子ちゃんが素直に頷く。
基本的に銀子ちゃんとは自分が認めた相手以外に世話を焼かれるのを嫌う生き物なのだが、さすがにその相手が自分自身とあっては無闇に反発する事はないらしい。
そしてそれは銀子ちゃんズ共通の考え方(同一人間なのだから当たり前だ)な為、同じ部屋に自分が四人居る状況でも無用な対立が生まれたりはしなかった。この数日間でそんな事も分かってきた。
「仕度は出来たわね。それじゃあ行くわよ。……八一、鍵閉めて」
「はいよー。気を付けていってらっしゃーい、銀子ちゃんたちー」
そしてJK銀子ちゃんが玄関ドアを開けて、そんな彼女達に俺は片手を振って応える。
そのすぐ隣では幼女銀子ちゃんもちっちゃなおててをふりふりしていた。可愛い。
そう。意外と言うか何と言うか……銀子ちゃん達は朝になったら学校に登校するのだ。
いやまぁ彼女達は学生なのだから学校に行くのが当たり前なのかもしれないが、それにしたってわざわざ夢の中でまで……と感じてしまうのは俺の感覚が間違っているのだろうか。
とにかくそんな訳で、学生の身分である銀子ちゃん達は毎朝8時前には登校していく。
すると室内に残るのは学生の身分を持たない者、つまり俺と幼女銀子ちゃんの二人。
今から学生達が帰宅する昼過ぎまで、俺とこの子はこの部屋で二人っきりなのだ。……ごくり。
まぁ幼女銀子ちゃんは4歳だしね。一人きりでお留守番などさせてはいけないよね。
ちゃんと大人が面倒を見なければ。俺は幼女を警戒させないようにっこり笑顔を作って。
「それじゃあ幼女銀子ちゃん、対局しよっか」
「や」
そっこーでフラれた。辛いっす……。
どうやら今は本を読みたい気分だったらしい。俺との対局を断った幼女銀子ちゃんはぺいっと座布団の上に寝そべって、俺が買ってあげた将棋の指南書に目を通し始める。
……ふむ。将棋は断られたけど、これはこれで……はぁ、いつ見ても癒やされるなぁ。
幼女ってスゴい。ただ眺めているだけでHPとMPがモリモリ回復する。本人としては何も気にせず本を読んでいるだけだろうに、見ているこっちは一日中眺めていたって全く飽きない。
なんせこの幼女は幼女である上、銀子ちゃんでもあるのだ。そんな奇跡的な存在にこの俺が骨抜きにならないはずがないではないか。
「……んー?」
本を読んでいて疑問に感じる事があったのか、難しそうに眉を顰めたり。時折身体を揺すってみたり、足をぱたぱたさせてみたり……。
そんな幼女の様子を眺めているだけの生活。幼女銀子ちゃんのそばにいるだけの人生。そんな素晴らしい人生を送れるのならば俺は本望だ──
──なんて事を考えていたら、あっという間に時刻はお昼になっていた。
毎度のように出前を頼み(昼食は蕎麦にした)二人でお昼ごはんを食べ終わった頃。
どうやら幼女銀子ちゃんの体内電池はこの辺で一旦カラになるようで、その瞳がうとうとし始めたらすぐにおねむタイムだ。
「……やいちはそこ」
「はいはい」
布団に入るや否や、幼女銀子ちゃんは小さな人差し指ですぐ隣をピッと指差す。
これは一緒に寝て♡ という意味……では無く「お前はそこでじっとしてろ」という命令だ。
最初こそ「まさか俺が布団に入り込むのを警戒しているのか……?」と感じたものだが、どうやらこれはそういう意味ではないらしい。
むしろその逆で「寝ている間は近くにいて」という意味合いのようだ。きっと目が届く範囲に誰かが居ると安心して眠れるのだろう。幼女ならではの習性という訳だ。
だから幼女銀子ちゃんがおねむの間、俺はその命令通りじっとしている(トイレにでも行こうものなら銀子ちゃんはすぐ起きる、そして怒る)
そしてそのぷりちぃな寝顔を観察したり、ぷにぷになぽっぺたをつんつんしたり……している内に時刻は2時過ぎとなって、するとJS銀子ちゃんが帰宅してくる。
そして3時過ぎにはJC銀子ちゃんとJK銀子ちゃんも帰宅して、その頃にはもう充電を完了させた幼女銀子ちゃんも活動を再開する。
そして俺と四人の銀子ちゃんズが揃ったならば、みんなでする事と言えば将棋以外には無い。
「………………」
しんとした静かな空気の中、パチ、パチと駒を指す音だけが聞こえる。
「……くっ」
劣勢となっている終盤、JC銀子ちゃんが苦しそうに呻く。
「……ふっ」
その正面、JK銀子ちゃんは勝勢を確信してか、ふふん、と得意げな顔。
そしてその将棋盤の両側面にJS銀子ちゃんと幼女銀子ちゃんが座って、対局中の盤面を食い入るように眺めている。
……それはまるで妖精たちが、将棋の妖精たちが盤上の泉で戯れているかのような光景。
銀髪美少女達と銀髪美幼女が真剣な表情で盤面だけを見つめるその光景は、これまた一生眺めていても飽きないだろうなぁと俺は思いました、まる。
その対局はその後10分程で決着が付いた。勝敗は先程の二人の表情が物語る通りで。
「……ありません」
そう言ってJC銀子ちゃんが軽く頭を下げる。
おぉ、中学生銀子ちゃんが投了した。あの年齢だからもうすでに女流二冠、対女性成績は無敗を誇る『浪速の白雪姫』が女性相手に負けた……!
……てまぁ、相手が成長した当の本人なのだから当たり前だけど。というかJC銀子ちゃんがJK銀子ちゃんに負けるのはこれが初めてじゃなく、初日以降もう何度目かの対局なんだけど。
ともあれ対局or観戦中の銀子ちゃんズ。
そんな彼女達を眺めながら、俺は脳内で密かに彼女達の分析を、言わば「空銀子研究会」なんてものを開催していたりするのだが……。
出会いの日から4日経った事もあってか、それぞれの銀子ちゃんと俺との現状の距離感というものが大体分かってきた。
まず幼女銀子ちゃん。
この子との距離感は先程の通り。初日以降色々と話を聞いて分かったのだが、どうやらこの子は師匠の家に内弟子として上がりこんでから2ヶ月、つまり子供の時の俺と出会って2ヶ月程経過した段階の空銀子のようだ。
となるとこの子にとって、九頭竜八一とはもう完全に格下の存在。弟、家来、パシリ、小間使い、そんな言葉で表現する相手だと認識しており、それはここに居る18歳の俺に対しても同様だ。
なんせ幼女銀子ちゃんはまだ幼女、自分が知る子供の九頭竜八一と大きくなった九頭竜八一との差異をあまり大事には捉えていないのだろう。俺にとっても懐かしいなぁと感じる子供の頃そのままの感じでこの俺に接してくる。
この子とはもっと距離を詰めて、膝の上に乗せて可愛がるのが今の俺の目標だ。
そして小学生銀子ちゃん。
この子はまだちょっと難しいというか……現状だと少し距離を感じる。
どうやらこの子は小学4年生9歳の段階の空銀子のようだ。小学4年生9歳と言えばあいや天衣が俺に弟子入りした時の年齢で……ここら辺は妙な縁を感じてしまう。
それはともかくとして。その年齢差がネックと言うか……これは想像なのだが、自分の知っている九頭竜八一と18歳のこの俺との差異を一番大きく感じているのがこの子なのかもしれない。
幼女なら気にしない事だって、小学生ともなればおかしな事だと分かるだろう。そんな事もあってかまだ俺に対してよそよそしいというか、率直に言って懐いてくれない。寂しい……。
この子とはもっと距離を詰めて、膝の上に乗せて可愛がるのが今の俺の目標だ。
そして中学生銀子ちゃん。
この子とは然程距離は感じない。ただその代わりと言ってはなんだが……この子からは随分と視線を感じる事がある。ふと気付けばよく俺の事をじっと見ているのだ。
中学生銀子ちゃんは中学3年生14歳の段階の空銀子であり、高校生銀子ちゃんと1年半程しか離れていない。俺が初めて会った時に見間違えてしまうのも仕方無しといったものだ。
なまじ1年半という想像しやすい年齢の開きがあるのが理由なのか、自分が知っている九頭竜八一がどう成長しているのか、そんな事が気になって俺の事をじっと見ているのかもしれないな。
勿論俺の目標としてはこの子も膝の上(以下略)
そして高校生銀子ちゃん。
この子との距離感は……まぁ相変わらずだ。
そう、相変わらずなのだ。つまり相変わらず恋人同士なのです。えへへ……。
他の銀子ちゃんズとは異なり、この子はすでに膝の上に乗せて可愛がった事がある。だからこの子との目標は……まぁ多くは語るまい。
……とそんな事を、こうして銀子ちゃんズを観察しながら考えていた俺なのだが。
どうやらそれは相手も同じ事で。現状を観察していたのは俺だけでは無かったようだ。
その話題が巻き起こったのは夕食の時間。
今日の夕食は出前のお寿司だ。銀子ちゃんが四人もいるこの暮らしにおいて、一番稼ぎのある俺は財布の紐を固くするつもりなど全く無い。というかそもそもこれは夢だしね。
という事で特上寿司をがっつり五人前、折り畳みテーブルの上に計5つの寿司桶が並ぶ。
小学生や幼女も居る事だしとわさびは抜きにしたのだが……それでも握り一つというのは幼女の口にはちょっと大きいかもしれないね、うん。
という事で。俺はマグロの握りを取って箸で半分こにして醤油をつけて……と。
「はい幼女銀子ちゃん、あーん」
「あー」
幼女は小さなお口を大きく開ける。
そして箸を近付けていくと……一口でぱくりっ!
「どう、美味しい?」
「……(こくり)」
もぐもぐしながら頷く幼女銀子ちゃん。か、かわええ……。
「JS銀子ちゃんも食べる? ほら、あーん」
「……いらない」
対して小学生の銀子ちゃんはついっとそっぽを向く。くぅ、もっとお近付きになりたい……。
「ならJC銀子ちゃん……は、大丈夫そうだね」
「当たり前でしょ。子供扱いしないで」
中学生の銀子ちゃんは俺にクールな目を向ける。
この子との距離感はあれだ、付き合う前の銀子ちゃんとの感覚に近いな。
そして付き合った後の銀子ちゃん、つまりJK銀子ちゃんにはここであーんなどはしない。
何故かって? 下手に「あーん♡」などしちゃったら歯止めが利かなくなる恐れがあるからだ。
「じゃあもう一度幼女銀子ちゃん、あーん」
「あー」
俺が言えば幼女銀子ちゃんは素直に口を開く。あぁもう超かわいい! 食べちゃいたい!
この子にとって俺は家来のようなものなので、こうして奉仕されるのは当たり前の事で気にするような事では無いのだろう。そう、だからこれは何も問題ない、何も問題ない……。
「……ちょっと、八一」
するとその時、俺の箸が幼女銀子ちゃんのお口に届く前。
JK銀子ちゃんがすっと手を伸ばして、幼女を持ち上げて自分の膝の上に避難させた。
「え、あーん駄目?」
「駄目じゃないけど目付きが怖い。そんな不気味な目で小さな私を見ないで」
「ぶ、不気味な目って……」
「ほら、お寿司なら私が取ってあげる。次はどれが食べたいの?」
「うに」
なんら躊躇せず高級食材をオーダーする幼女銀子ちゃん。こういう所はさすがの一言やで。
そしてJK銀子ちゃんがうに軍艦を取り分け、幼女の小さなお口へと運んでいく。
……おぉう。これはこれで……いいね、うん。
この前の風呂場での妄想然り、こういう世話焼き銀子ちゃんは中々見られるものじゃない。
あい達ともうちょっと仲良ければ普段からそんな光景も見られるのかもしれないが、それも中々に難しい現状、こういう貴重な銀子ちゃんはしっかりと目に焼き付けておかなければ……!
「……なによ? そんなジロジロ見て」
「え? あ、いや……」
なんて言うか……。
JK銀子ちゃんが自分の膝の上に自分そっくりな幼女を座らせて、ご飯を与えている。
そしてその隣にはこの俺が居る訳で……なんかこれって……これってあれに近いよね?
「なんか、こうしてるとさ……」
「こうしてると?」
「こうしてるとなんか、夫婦、みたいだなって」
「ば、バカっ! にゃ、にゃにそんな、夫婦なんて、夫婦なんて……♡」
照れ照れになるJK銀子ちゃん。やっぱり可愛い。
そして口元では小声で「まだ早いわよ……♡」と言うのが聞こえた。
……えへへ。まだ、だって、えへへへ……。
……てな感じで、食事中にもかかわらず俺とJK銀子ちゃんがイチャついていると、
「………………」
JCとJSの銀子ちゃんの二人は、俺達の事をなんとも形容し難い複雑な目で見ていた。
特にJC銀子ちゃんの視線は凄い。それは引いているのか、それとも照れているのか。とにかく目の前の光景をどう処理していいのか分からない、そんなスゴい目をしていて。
「……ねぇ。前から聞きたかったんだけど……」
そして彼女は恐る恐るその口を開いた。
「……その、高校生の私と八一って……今はどういう関係……なの?」
え、あ、それ聞いちゃうー?
それ聞いちゃうのぉー? 困ったなー!
各姉弟子の学校の所在はよく分からないので、このマンションから普通に通えるという設定にしておいて下さい。
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