美しき城へ続く道:「大和姉妹の事情」編 作:Whiplash
エピローグ:美しき城へ続く道、あるいは嵐の前触れ
ライブも大詰めのウェイティングルーム。
出番が終わり、ゲストであるPastel*Palettesを含め、演者全員に配布されたオレンジのライブTシャツへと着替えた5人が、部屋に設置されているモニターを見つめている。他の演者たちは、今眼前で流れている「さよならアロハ」を歌っているか、この後のMC、そしてアンコール前最後の曲となる「GOIN'!!!」のために全員出払っている。
舞台上には有香をセンターとして、夏樹、里奈、愛梨、フレデリカの5人。どんなエフェクターを使ったのか、スティールギターの音色をある程度再現したエレキギターに乗せて、ライブのタイトルである「Summerend Story」そのものと言える歌詞を紡いでいた。それももう終盤だ。
『夏の終わり告げる優しいメロディ』
里奈の、炎陣やソロでの歌い方とは異なる優しく呼びかける歌い方。
『二人の影 遠くなってゆくよ』
フレデリカも、先ほど「Tulip」を歌った時とは全く異なる、何か*1を思い返すような歌声だ。
『明日になればまた「いつも」に元通り』
有香の歌い方も、他の曲で見せるような力強さは極力抑えている。
『愛しい夏の日を胸に』
夏樹はソロライブ等でバラードを歌う時の、語りかけるような歌い方。
『さよならアロハ』
終わりを惜しむ感情をにじませた声の愛梨。
『本当にありがとう』
しゃららん、と消え入るように曲が終わる。
「終わっちゃうんだね……夏も、ライブも」
「そうね……」
「あれ、千聖ちゃんまでアンニュイな感じ?めずらしーね」
日菜の言う通り、珍しく千聖までしんみりとした様子である。
「一応まだ出番はありますから、あんまり緩み過ぎないようにしましょう」
「そうですね、ライブすべて終わるまでがブシドーです!」
「ふふ、セットリストがよくできてて、つい浸ってしまったわね」
振り返りのMCが続く様子を、5人が静かに見つめていた。
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アンコール。5人は同じライブTシャツに着替えた面々を見送り、引き続きウェイティングルームに待機していたが、アンコール1曲目である『M@GIC☆』が終わったタイミングで、運営スタッフから声がかかる。
「パスパレのみなさん準備お願いしまーす」
「「「「「はい!」」」」」
舞台袖に着いて、
「今度はみんなに混じって歌うんだよね……あー緊張するー」
「そう?むしろいっぱいいるんだから、気楽にやれると思うけどなー」
「憧れの人がいっぱいいるから緊張するんだよう……」
彩と日菜のやり取りを見ながら、麻弥はゲストとしての出番の後、まだウェイティングルームにいた姉から受けた言葉を反芻していた。
「今日まで麻弥もしっかり頑張ってきて、その成果も目に見える形で現れてきて、たぶん麻弥の中にもしっかりとした手ごたえが生まれてきてると思う。だから……これからも切磋琢磨していきましょうな!」
そう、この日から、亜季と麻弥の関係は少しばかり変化を見せる。単なる姉妹、そしてアイドルとしての先輩・後輩というだけでなく、同じ道に踏み込んだライバルともなるのだ。
「それではー、最後はいつも通り、この曲で終わりたいと思いまーす!せーのっ」
『お願い!シンデレラ』
それぞれに、心境を整えているうちに、最後の曲が幕を開けていた。
「では、ゲストのみんなにももう1度出てもらいましょう」
そんな、楓の言葉とともに舞台上に再び現れる5人。観客席が沸く。
「それでは改めまして」
「「「「「Pastel*Palettesです!」」」」」
そこからは2番の割り当てられた部分を歌いつつ、舞台の端から端まで移動して観客への挨拶をしていくことになる。5人も、舞台各所での声援に応えつつ舞台を周っていく。どれくらいの人が自分たちを覚えて帰ってくれるだろうか、などと考えているのだろうか。
「今日私たちと一緒にライブを盛り上げてくれた、ダンサーさんとシンデレラバンドのみなさんでーす!」
舞台を回り終えて再び所定の位置に戻ると、この「お願い!シンデレラ」も最終盤となる。ダンサーと、シンデレラバンドが舞台の一段高いところに立って挨拶して、声援に応える。
Pastel*Palettesの5人は、レギュラーの演者たちが並ぶ列の裏に回り、混じって歌い続ける。最後のサビは2回繰り返しとなっており、1回目の締めとなる『動き始めてる 輝く日のために』のところでは演者・観客全員で「もう1回!」という合いの手を入れていく。同時に、舞台上にはテープが飛び出してくる。
『お願い!シンデレラ 夢は夢で終われない』
『叶えるよ 星に願いをかけたなら』
『みつけよう! My Only Star 探し続けていきたい』
『涙のあとには また笑って スマートにね でも可愛く 進もう!』
ああ願わくば、今日5人が拓いた道が、美しき城へ続かんことを。
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夢のような1日が終わり、ステージが解体されていく様子をPastel*Palettesの5人が見学している。
5人の表情は、自分たちの力を出し切り、それを観客に受け止め、しっかりと声援をもらえたことへの充実感に満ちている。
その5人を、亜季と担当プロデューサーが見つけて、足を止める。5人を見つめる亜季たちの表情はなぜか、渋面である。
「……亜季、パスパレのみんなについてはどう思う?」
「……5人は徐々に一体となって、栄光へと突き進み始めていると思います。ただ……」
「あーみなまで言わなくてもいい。そもそも、あの話から下っ端が1人だけ送り込まれてる時点で、あそこの担当者たちが相変わらずなのはわかりきってたし」
5人がライブに参加している間、Pastel*Palettesのスタッフと称して送り込まれた女性について、手の空いていた何人かのスタッフとプロデューサーでその行動を追跡していた。その結果案の定、Pastel*Palettesの5人とは控室で分かれて以降全く合流しないまま、ライブ運営側の様子ばかり見学していたり、それも行く先が尽きれば、関係者席に出向いて営業をかけようとしてみたり(トラブルになりかけたので止めたが)、と一体何しに来たのか、と言わざるを得ない様子であった。事務所の人間が、人を管理するところを見ずに一体何を見ようというのか、追跡班は呆れるばかりであったという。
あんまりな様子にその女性を捕まえて問いただすと、どうも直属の上司--すなわち、担当者からろくに指示もないまま送り込まれたのだという。マスコミには新人に「とにかく質問してこい」とだけ言って送り出す習慣があり、毎年春になると、各社芸能部からの新人への対応に頭を悩ませる、というのが恒例なのだが、まさか事務所側でそのようなことがまかり通っていようとは。
事務所は、あるいは担当者は、Pastel*Palettesを一体どう扱いたいのか。事務所の上層部と担当者の間でも食い違いがあるように思える。正当に評価ができず、足並みも揃えられないまま仕事だけ割り振って、苦労するのは当の麻弥達だというのに。聞くところではこの夏を区切りとして、Pastel*Palettes自体の活動は縮小し、個々人の活動を優先するような動向があるのだという。今、5人が人気を得ているのはPastel*Palettesあってこそだと、全く分かっていない手合いの所業だ。本当にそれを実行しようものなら、直近は(確かに内定が出ている案件も多数あるので)上手くいくだろうが、その先はどうか?早々に先細りすることはまた目に見えている。
亜季たちとしては、5人にまた要らぬ負担がかかることを思うと心苦しくて仕方ないが、さりとて、提携しているとはいえ所詮は同業他社。深く立ち入ることはできないだろう。
夏の終わり、輝ける道を拓いたはずの5人の行く先に嵐が待つことを、亜季たちは予感していた。
--「その時」まで、あと3週間ほど。
It will continue to the 2nd chapter of Pastel*Palettes "もういちど ルミナス"
AND after that...
Here will come the latter tale
"二人の臨時講師"
of the crossover story
"美しき城へ続く道"