美しき城へ続く道:「大和姉妹の事情」編   作:Whiplash

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(疲労困憊)


夕焼けとともにフルスロットル

 10時から始まった「夏の偶像」2日目も7時間が経過し、機材準備も兼ねて、MCがつなぎつつの最後の休憩タイムに入っていた。15分くらい前までは控室にいたシンデレラバンドの面々も、設定等がゲネプロと同様に出来ているか最終チェックをするため、すでにステージへと移動済だ。

 そのシンデレラバンドについてだが、彼らは午前中関係者席にしれっと混ざって観覧しており、12:30の昼休憩に合わせて控室にやってきた。先のリハーサルでの麻弥の振る舞いでも分かる通り5人とも界隈では有名人であり、それを考慮すれば入室してきた麻弥がどうなったかについて、察するに余りあることだろう。ひとまずは、床の一角が緑茶まみれになったことだけを記しておく。

 

 16時からはドリームアウェイの出番となった。エブリデイドリーム、絶対特権主張します!、ギュっとMilky Wayの順で、いずれも2人での歌唱となった。

 エブリデイドリームについてはプロダクションの定期ライブ、外部のフェスを通じ、初めてまゆ単独以外での歌唱が行われた。ライトが点いてドリームアウェイが2人ともいると分かると客席はざわついていた。また、絶対特権主張します!については、歌詞の内容が特に佐久間まゆ側のイメージ戦略上問題となるため歌唱NGが出ている、という話が公然の秘密のように語られていた曲で、イントロが始まると同時に客席は騒然となった。いずれも後ほど、SNS等にて大いに話題となったという。ギュっとMilky Wayについてはまゆ・日菜子2人にある程度共通してある、甘ロリ風のイメージを強く押し出した曲になっており、先の2曲の強烈さを和らげるように2人の出番を締めくくるのであった。

 

 シンデレラバンドが準備から戻るとそのまま、彼らと一蓮托生となる炎陣、individualsとともに円陣が組まれる。ここからは休憩なし、ノンストップで1時間近くを駆け抜けることになる。気合の一つでも、しっかりと入れておきたくなるというものだ。

 

「シンデレラバンドの初陣、しっかりキメて行きましょう」

 

まずSHUNが、

 

「バンドの5人と……ドリームアウェイやパスパレに恥ねぇライブにしてくぞ!」

 

続いて拓海が、

 

「今日もウチらの個性……ぶつけていくぞ!」

 

そして美玲が順繰りに声かけをする。そして再度拓海からの号令で--

 

「シンデレラガールズ……アタシたち!」

「「「「ナンバーワン!!」」」」

 

先にパフォーマンスを終えていたドリームアウェイも交じって、全員で円陣を締めくくるのであった。シンデレラバンドに続いて控室を出る炎陣へ、Pastel*Paletteの5人、特に彩・麻弥・イヴが、一挙一頭足を逃すまいと熱視線を向けるのであった。……麻弥の視線は亜季と、シンデレラバンドへと向けられたものかもしれないが。

 

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 機材準備と場転のための休憩が終わり、17:20。

 

「And... Next Act is...」

 

「炎 陣」

 

 CDジャケットとしてもおなじみの、5人の腕組み仁王立ち画像が流れる。

 煽り映像が終わり、そのわずかな光さえも消えた暗がりの舞台上で、ゆらり、と数度人影が動く。

 

 まず、2本のギターが同時に鳴り始め、一方はリズムを刻み、もう一方はカッティングを駆使しながらリフをまずワンフレーズ、ボーカル抜きで奏でていく。そこからわずかに遅れ、下手側に向けてブルーのスポットライトが照らされていく。

 

「アタシの思い出の場所へこうして集まってくれたみんなに、聞いてほしいんだ、この歌を--」

 

そこには先の煽り映像で映されたものと同じ、青を基調とした炎陣指定の衣装「雷舞弩麗守-炎-」を着た涼の姿があり--

 

『探し続けてきた 自分だけの場所を 街に浮かぶ』

 

どこか、遠くを見つめながら、涼は歌唱へと入っていく。彼女のソロライブに通う者からすれば、それはこの曲における彼女のルーティンともいうべき動きだ。

 

 この一節を一息に歌い終えると、小さくシンバルの音が挟まりドラムとベースも演奏に参加し始める。

 

『しがらみとか すれ違いとか』

 

それは現在のプロダクションへやってくる以前のこと。実家を飛び出し、とあるアマチュアのバンドに所属していた時のことを思い返して、そして今の姿へと繋げていく歌、それがこの「One Life」であると、ファンの間ではまことしやかにささやかれている。当の本人はインタビュー等で当時のことを語ろうとはしないし、プロダクションの仲間内でも「ウチの事務所でも、アイツは特に昔話をしたがらないよな」ということで、当時の実態については不明なところが多いのだが。

 

『閉じてる目じゃ見えないさ』

 

ここでカウントを入れるようにハイハットが2度鳴り響き、下手側の一部だけ、明転。リードギターをはじめとして、全体的に少し音を上げつつも、リフや展開は最初と同様に流れていく。

 

『このままだと何も変わり映えしないだろう 気付いたハートを』

 

歌詞の内容と、楽器隊の音が上がったのに従い、涼も少し声の音量を上げる。

 

『開いてみて 叫んでみれば 世界に一つしかない』

 

それまでは身体を揺らす程度でおおよそ歌に専念していたが、『一つ』のところは右手を肩の前に掲げ、甲を客席に向け、人差し指を立てる。

 

『リズムが響き渡る それでいい』

 

今度は右手を握り拳にして、横に向けて胸の前に置く。それを『響き渡る』で解放して腕ごと前へ、音が広がるイメージを示す。

 

『心の声を ともに歌えば 進む先にも陽は昇るさ』

 

『陽が昇る』ところで右腕を一旦引き、サビに入ってからの握り拳のままに腕をゆっくりと突き上げる。

 

『夜明けに満ちた うす明かりには 期待も不安も映ってる』

 

掲げた握り拳をゆっくりと降ろし、顔の横に保持する。『期待も~』で、それまでやや下を向いていた顔を上げ、握り拳を解き、手のひらを客席に向けて、徐々に徐々に顔の前方へと運んでいく。歌いきるとそこから右腕は一気に腹の辺りまで引かれて--

 

『Only one life Just one life 行こうぜ』

人差し指を今度は立てた指が目立つよう、手の甲をステージ側に向けた状態で立て、一気に腕を突き上げる。指を立てたまま、腕ごと2度、手を回す。その勢いのまま、人差し指は観客席の方へ向けられ、手は再び顔の前に掲げられる。

 プロダクションの大型ライブでも鉄板の曲ということで、この会場を訪れた観客の中でも知名度は高い。イメージカラーの青味がかった紫や、曲およびジャケットのカラーである青のペンライトが振られている。サビが終わると、バンドサウンドも相まってか同時に大きな歓声が上がる。涼の

 

「声出してけよー!」

 

の煽りとともに、楽器の音に負けじと観客たちが「ッハイ!ッハイ!」と声を張り上げ、ボルテージを青天井に上げていく中、2番へと突入していく。

 

 さてこの曲についてであるが。今時珍しいくらいに、語るべきこともほとんどない直球のロックンロールである。変わったところといえば、アイドルの曲としては鳴っている音の数が随分と少なく感じられることだが、抽象的に語られる「アイドルらしさ」、例えば煌びやかで広い音域をカバーする音作り等を可能な限り排して、ロックとして仕上げたとするならば、そこまでおかしな話ではない。それでもCD等で音源を聞いてみると、サビでは3本目のギターと思われる音が鳴っていて、音の「スキマ」のようなものができにくいようにはなっているのだが。なお、今回のシンデレラバンドにおいては、この「3本目のギター」はシンセサイザーが鳴らしている。

 

 進行、流れというべきものは他のロック、ポップスと同様に1番から変化はない。振り付けは例えば『音で吹き飛ばそうぜ』で客席に手のひらを向けて腕を振り上げてみたり、サビでは『その手で捕まえればいいだろ』では掲げた手を、何かをつかむように閉じて腕をおろしてみたりと、いくつか異なる点はあったが。

 そしてサビが終わりを迎える。

 

『Only one life Just one life 走ろうぜ どこまでも』

 

1番同様の、人差し指を立ててそのまま腕ごと2度手を回す動作の後、右手を握り拳にして掲げるポーズを取り、ロングトーン。それに被せるようにリードギターのソロが奏でられ始める。ロングトーンを涼が切ると、2、3秒ほど歓声が響く。涼が今度は腕を振って煽ると、観客たちもそれに応えて「ッハイ!ッハイ!」と再び声を張り上げる。

 

『正解なんて決まらない 魂のせて贈ろう』

ギターソロが終わり、短いCメロに入る。今度は腕を肩の横へと振りながら、手を開く振り付けが入る。

 

『For you アツいステージの上から』

人差し指を立てて、まず客席へ、続いてステージを指してそこから腕を天に向かってゆっくりと振り上げていく。

 

 そして2度、ブレイクのリフがかき鳴らされると最後のサビへと突入する。鳴らされる音は一旦、リードギターと、シンセサイザーからのごく小さなピアノの音色のみになる。歌詞としては1番と同じであるが、顔は一旦うつむき加減になり、腕も降ろされる。そこから、手を開いたまま腕をゆっくりと突き上げると同時に、ドラムのフィルインが鳴り響き、通常の演奏に戻る。

 今度は歌詞が『視線を上げて』と続くのに合わせて前を向き、『期待や不安も背負ってさ』では手のひらを顔の前に掲げ、心の中で歌詞にある「期待や不安」と向き合う様を表現し--

 

『Only one life Just one life 行こうぜ 歌おうぜ』

手を頭の上に掲げ、人差し指を立ててそのまま腕ごと2度手を回す動作、続いて掲げた手を開く。最後はそのまま腕を素早く胸の前に引いて、そこからゆっくりと振り上げつつの、ロングトーン。

 

「ラストだぞー!」

 

の声とともに、「ッハイ!ッハイ!」と客席から飛ぶ。アウトロではマイクを持つ手まで、右手とともにエアギターのように動かす振り付けが加わる。そして裏では2回、4小節のギターリフが響くと最後にもう一音、ギターがサスティーンを効かせたものを鳴らし、余韻を残しつつの締めくくり。そのまま照明もすべて消灯されるのであった。

 

最後にもう一度、大きな歓声。

 

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 しかして、その余韻は上手側からの

 

「アタシを忘れちゃいねえだろうな!」

 

の一声とともにかき消される。赤い照明が上手側に灯されるとそこには、数か所ワンポイントで赤が入った「雷舞弩麗守-炎-」を着た拓海が、シングルジャケット同様の腕組み・仁王立ちで君臨していた。同時に、ドラムのツーカウントからギターと電子音がリードしてのイントロが始まる。

 そこから最初の5小節が終わると、腕を振りながら「ッハイ!ッハイ!」と2度ばかり、声でも煽る。それに応じる形で観客席からも「ッハイ!ッハイ!」との絶叫にも似た声が上がる。ギターによる、特撮作品を思起させるリードメロディがその掛け合いに華を添える。

 最初は上から左右へ2度、3度。続いて正面へ2、3度、客席への正拳突き。イントロの締めにはマイクを持つ左手を高々と突き上げる。

 

『全身を突き抜ける 想像を超えた衝動が アタシを動かす』

 

静かなAメロの入りとは対照的に、今度は右手を高く突き上げ、指差すように前方へと伸ばす。そのまま一瞬胸の前に手を移動させ、身体の横で腕を伸ばし、ひと回し、そしてツーステップ。

 

『轟音に包まれて 心臓が爆ぜ飛びそうに 激しく昂る』

肘を鋭角に曲げ、胸の前から徐々に引いていく。そこから腕は一旦脚の方まで降ろし、足を踏み鳴らすようなステップと同時に手のひらを前に突き出す。その後『激しく昂る』では音程の大きな跳躍に合わせて上を向く首の動き。

 

『真紅の決意(おもい) この身に纏い この世界の頂きへと 駆け上がるぜ』

 

肘から先を引き寄せながら、アロハのジェスチャー。そこから左を向いて手をほどきつつ前に出す。今度は右手を高々と掲げ、そして--

 

『覚悟決めろよ』

 

右足が自身の頭の辺りまでまっすぐに伸びる、きれいなヤンキー式ハイキック。着地後すぐに右前腕を前に出し、胸の前に握り拳を掲げる。

 

『Get Tough ぶちかますのさ Get Tough 暴走上等だろ』

 

観客たちも『Get Tough』を音源のバックコーラスに合わせてコールする。 振りとしては跳ねるように後ろを向きながら、胸の前にあった右腕を時計回りに大きく回し、下までたどり着き次第直ちに上へと突き上げる。右腕はもう一度時計回りに回転されると、左向きに半身の状態で前に突き出される。

 

『まだ見ぬ高み 今 確かめに行くぜ』

 

先の態勢のまま、右腕は煽るように前後へと4回突き出される。それに合わせて歌の裏では、観客席からの「ッオイ!」4連。それが終わると手が高々と頭上に掲げられる。

 

『Fire 空前絶後に Fire 最強の夢を見て』

 

身体ごとまず右を見て、今度は右手のひらを上に向けて開き、何かを掴もうとするかのように伸ばす。続いて同様に左を見て同じ動作。前に向き直って再び右腕を伸ばす。そこから、手はピースサインにして頭の横に掲げる。

 

『咲かせるのさ 炎の華を Wow Wow Haaah!』

 

掲げた手を胸の高さまで降ろしながら前に突き出し、腕をひと回しする。回し終えると同時に花開いたかのごとく手を、甲を前に向けて広げる。手の形を保ったまま、音程の跳躍に合わせて、肩を中心に回転させながら徐々に高く掲げる。

 

『Burning Soul 魅せてやるぜ』

 

跪きながら、斜めに切り裂くように、人差し指だけを立てた手を腕ごと降ろし、しゃがむことで連動して下がった顔を前に向ける、という一連の動作とともにサビ終わりのこのフレーズを歌う。

 

 そこからすっ、と立ち上がり、一旦観客席に背を向けて2歩、3歩、その間も腕で観客を煽ることを忘れない。煽りに応えて「ッハイ!ッハイ!」とコールが観客から飛び続ける。そこから向き直り、イントロと同様の正面への正拳突きからの振り付け。締めに鳴らされるギターはイントロの余韻をもたらすような音ではなく、ミュートがかかって2番へと突入していく。

 

 さてこの「炎の華」、作曲はいわゆる特撮作品の楽曲を数多く手がけていることで著名な、さるベテラン男性歌手によるものであり、楽曲自体も特撮ヒーローを思わせるロック調に仕上がっている。一方、歌詞については拓海が関わる他の楽曲にも提供しているとある女性作詞家が、拓海のパーソナリティや、アイドルになる前後の経緯に基づいて書き起こしたものであることを、取材等で明言している。

 この「拓海がアイドルになった経緯」については割合面倒な話だ。向井拓海は今となってはそれなりに珍しい「レディース上がり」のアイドルである。本人は肯定も否定もしないが、アイドルとして現在の担当プロデューサーにスカウトされたのもケンカ帰りだったという噂話が公然と語られるほどの、筋金入り・硬派だったとされている。レディースといってもこの10年のヤンキー・暴走族の類は、鉄の掟・服装・ケンカによって特徴づけられるものであり、バイクに跨ると基本的にツーリング勢とそう変わらず、交通法規も遵守している集団となっているのだが。(騒音については「タチの悪い」ツーリング集団レベルであることが多いが、拓海が頭を張っていたところはその辺ももう少し大人しかった)

 そんな人物がどのような経緯でアイドルとして成りあがっていくことを決めたのか?当の拓海はボカシながらも、スカウトを受けた直後に見学で訪れたライブにあることを、里奈とのユニット「ノーティギャルズ」結成時期の取材で語っており、「炎の華」のコンポーザーには担当プロデューサーを通じて、この「ライブ」にまつわるもう少し詳しいエピソードが伝えられているとのことだ。

 この「ライブ」以降、アイドルに対して感じた熱量を、バイクに跨り運転している時や、時にはレディース時代の光景と重ねながらぶつける、そのような歌詞が、先にも述べた通り、特撮ヒーローものを強く意識させるギターサウンドに乗せて歌われている。加えて、2番Bメロ、『アタマじゃなくて 心でわかる』からの歌詞のように、自身のアイドルとしての軌跡も、少なからず反映されているようだ。

 

 閑話休題。ライブの方に目を向けなおしてみると、

 

『コブシ掲げ 最高の果てへ Yeah Yeah Go!』

 

1番と同様の振り、展開から、最高音で5秒に渡るロングトーン。そこから歌詞は違えど1番と同様にサビを締めくくる。

 

「気合入れて叫べ!」

 

間奏に入ると拓海がさらなる煽りを入れ、それに応えて観客席からは「ッオイ!」と繰り返し飛びかう。実はわずか10秒とごく短い間奏を通し、リードギターからはソロが鳴り響き続ける。

 

『真紅の誇り 恥じないように この世界で咲き誇るさ 命掛けて』

間奏明け、最後のBメロ。2番までとはギター等が奏でるコードが変わり、緊張感・焦燥感を煽るものになっている。拓海の方はタイミングもあってか振りはカットし、ここでは歌うことに専念している。

 

『覚悟決めろよ』

ヤンキー式ハイキックも3発目。曲を通して大きな振りが続く曲であるにもかかわらず、まっすぐに、しなやかに伸びる脚のシルエットに陰りは見えない。

 

『Get Tough 燃え尽きるまで Get Tough 燃えさかるだけさ 本気の極みさあ確かめに行くぜ』

そこから最後のサビに入る。拓海の振り付けには変化がない一方で、最後ということで、最初の2小節ではしっかりサスティンのかかったギターが、1小節ずつ音を響かせる。2小節目ではスネアドラムがこの曲中一番の強さで叩かれ、もっとも音として目立つシーンになっている。そこから通常の演奏へと戻り、拓海の腕振りと連動した観客席からの「ッオイ!」4連もこれまで同様聞こえてくる。

 

『Fire 空前絶後に Fire 最強の夢だから 咲かせるのさ 炎の華を Wow Wow Haaah!』

1番では見るものだった「最強の夢」、向井拓海がアイドルとして「炎の華」となり咲くことが、ここでは己の意志として強調される歌詞に変わっていく。振りとしてはこれまでと大きくは変わらないが、締めくくりとばかりに顔までしっかりと上を向くようになっている。

 

『Burning Soul 魅せてやるぜ』

跪きながら、斜めに切り裂くように、人差し指だけを立てた手を腕ごと降ろす動作で締めくくる。そこから、イントロ同様の上下左右、正面への正拳突き。アウトロが終わると、締めくくりとばかりにギターから3度デッ、デッ、デッ、と同じ音が響き、それに合わせて拓海が腕組みをする。さらにとどめとばかりのドラムロールが開始されると、今度は腕組みを解いて、両腕を円状に、体の横を通るように回していく。頂点までたどり着いたところで、タイミングを図り--

 

「せぇの!」

 

最後のギター音とともに左下を向き、右腕の方は前腕を見せつける、いわゆるガッツポーズの形。ギター音がわずかばかりに余韻を残しながら、上手側が暗転していく。

 

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 それが消え終わるかどうか、というタイミングで今度はステージ中央部の照明が点灯する。そこにはスタンドマイクが3本。その裏には夏樹、里奈、そして亜季の3人が立っている。中央部が照らされたということで、後方には先ほどまでは見えていなかったシンデレラバンドの5人の姿もある。

 その瞬間、2本のギターが同時にリフを鳴り始め、3人は手拍子のモーション。それに応えての観客席からのクラップも会場内に響く。すぐには歌に入らず、しばらくはリフとクラップを続ける様子だ。

 

「今日は見ての通り、バンドが入ってのRockin' Emotion!いつにも増して、ロックに…」

「「「決めるぜ!(決めるじゃーん!)(決めます!)」」」

 

「Say!1、2、1、2、3、4!」

 

「Hey Boy!?」

 

と亜季が振り、『Rockin' Emotion』は観客席の男子たちが叫ぶ。

 

「Hey Yeah ついてこれるか!」

夏樹が一声、それに地鳴りのごとく「ウオオ!」と観客からの声が応える。

 

「Hey Girl!?」

 

と里奈が煽って、『Rockin' Emotion』は観客席の女子たちが叫ぶ。最近ではすっかりおなじみとなった、この曲でのコール・アンド・レスポンス。

 

『Hey Yeah』

夏樹が「行くぜ!」と、呼びかけるがごとく叫び、

 

『Shake it Now』

3人でのユニゾン。

 

『Let' Go! Let's Try! Let's Shout! Let's Rock!』

続けざまに3人と観客が一体となって、歌う。

 

『いつもどっかで感じてたNoise Volume 上げて掻き消して どってことないフリでかき鳴らす Heart Beat』

まずは夏樹がソロで歌う。観客席を指差すように人差し指を立てて、スタンドをつかみながら身体の正面、まっすぐに右腕を降ろしていく。続いて肘を支点にして手を胸の前まで引き上げて、音量を上げるさまを、そこから手を二度三度振って、最後は振り上げることで何かをかき消すさまを表す。最後は心臓の前に手を置いて、胸を2度叩き、心臓の動きを示す。

 歌の後ろではリズムギターのバッキングとバスドラムが響くだけとなっていて、それを埋めるように観客からのクラップが打ち鳴らされるのが、現在定着したこの部分のルーティンとなっている。今回もその御多分に漏れず、大きなクラップ音が響いている。

 

『ちょっとセツナイ恋みたいだね 今夜奇蹟に抱かれあふれ出す 高鳴る想いに飾りはいらない』

クラップが止んで亜季のパート。夏樹の方を向いて指差し1回。「高鳴る~」のくだりで亜季も2度胸を叩くような動作を行い、歌詞の通りの「胸の高鳴り」を表す。

 

『本当のアタシをごまかしたくないよ ハウリング止まらない』

次は里奈が歌う。はじめ両手を眼前に持ってきて目を覆い隠し、手を広げたまま同じ軌道で顔の横まで戻し、2度振る。そして体の前に、手のひらを下に向けて腕を伸ばしまた2度振る。

 

『見せてあげるよ 熱くなれ』

サビへ向けて急速に盛り上げんばかりのユニゾン。3人ともに腕を腹の横で伸ばし、そこから徐々に頭の上に向けて円状に持ち上げ、ここでも2度、「熱くなれ」のメロディに合わせて肘から先を振る。スタンドマイクとなったことで両手が空いていることを生かした振り付けとなっている。

 

『刻め!今を!もっと激しく 最高のボルテージに胸震わせ』

入りに合わせての強くサスティーンのかかったギターのストロークとともにサビへと突入する。ここからサビの間はずっとユニゾンのままとなる。入りでは両手が開いていることをさらに生かし、左手は親指人差し指を立てて顔の横に、右肩から手先はまっすぐ伸ばして頭よりやや高い位置へ掲げるポーズ。そこから右手は下まで降ろして、一旦振りかぶるように持ち上げ体の前に振り下ろす。もう一度持ち上げて、1回、2回と回す。そこから身体を大きく広げるように両腕を肩の横へ伸ばす。一旦胸に手を広げたまま置き、再び体の前へ腕を伸ばす。

 

『たったひとつ たったひとつの ダイヤモンドみたいな輝きを掴む日まで』

手のひらを返して身体ごと腕を降ろし、人差し指を立てて再度腕を頭上に掲げる。再度手を開きながら胸の高さまで腕を再度降ろし、何かをつかむように手を握りこむ。短めのロングトーンに合わせ、また腕を頭上に掲げる。

 

『逃げちゃ No No No! 醒めちゃ Song Song Song!』

再び手は人差し指を立てた状態にして、腕を降ろしながら「チッチッチッ」と3度指を振る。腕を降ろしきった再度胸の前に移動させ、カウントするように指を3度振る。『No No No!』と『Song Song Song!』は歌に合わせて観客からも声が飛ぶ。

 

『叫べRockin’ Emotion!』

また手を高く掲げ、身体の正面を通して腕を降ろしていく。ギターが3連符のリズムで2度鳴らされ、サビからの流れのままに2番へと突入していく。2小節ほど、歌以外の音がギターのみになるが、また元に戻って、1番と同様の展開となる。

 

 さてこのRockin’ Emotionについては、木村夏樹本人による作詞作曲となっている。夏樹自身はロックの範疇であればなんでも聞く雑食タイプということで、夏樹の、夏樹による、夏樹のための曲、ということでもっとラウドな曲が上がってきてもおかしくなかったところではあるが、割合にポップス寄りの、アイドルソングと言っても通用はしそうなテイストに仕上げられている。これについて、当の夏樹は「ライブで、みんなで一体になって盛り上がることを何よりも大事にしたかった」という趣旨のコメントをしている。

 普段、夏樹のソロライブでこの曲を歌う際には自ら一部リズムギターを演奏していたりする。しかし、事務所の大型ライブやアイドルフェスに出演する際は、カラオケ音源での歌唱なのもあってギターを持つ機会はこれまでなかった。この「夏の偶像」ではバックバンドが付くということで、ソロライブ以外で初めてギターを持っての歌唱を行うチャンスであったが、今回はステージ設備の問題、1人で歌うわけではないという事情、「アタシも一目置いてる頼もしい2人に任せたい」という本人の意向から手ぶらで出ることを選択したようだ。

 

さて曲の方は、2番のサビも終わりを迎えるところになったが、ここでは先ほどのコールアンドレスポンス含みの展開ではなく、

 

『ざわめく街で ざらつく日や泣きたい日は 祈るように空を仰ぎ また始めればいい』

 

それまでのパッション溢れる、ポジティブな言葉続きだった歌詞から一転、何か心に澱が生まれるような出来事があったかのような詞が挟まる。それに合わせて振りも、左手はマイクを掴んだまま、右手は手のひらを広げて胸の上に置き、歌い上げるような動作になる。そこからまず顔が上を向き、右手は開いた状態で徐々に頭上に向けて挙げられていく。

 

 間奏に入ると「Hey!」と腕を振りながら2度声を上げて煽る。それに応えて「ッハイ!」と観客からも声が飛ぶ。そこから3人は、スタンドを持って前後左右に、倒れたり動いたりしてしまわない程度に傾けたり、エアギターをしてみたり、と間奏の15秒ほど、裏ではリードギターを務めるJOEのソロが奏でられつつ、思い思いに暴れる。

 ギターソロが終わり、2度、ドラムがスネアとフロアタムで3連符を刻むタイミングで、3人は左手でマイクを掴み、視線はマイクを見つめるように下を向く。照明も全体を照らすものはほぼ消えて一旦薄暗くなる。

 

『いつもどっかで感じてたNoise』

まず里奈にスポットライトが当たり、同時に顔を上げる。右手を胸に置いたまま歌う。歌以外の音は一旦リズムギターとドラムだけになり、1番冒頭部と似た響きに変わる。

 

『気がついたら 消えてたんだ』

亜季の周りにも照明が灯され、それと同時に顔を上げて歌い始める。右手が肩の高さで2度振られる。

 

『未来にKiss投げて 見上げるよ True Sky』

夏樹も照明が当たると同時に顔を上げる。顔の前まで右腕を挙げると、肘を曲げて、投げキッスのように腕を振る。さらに観客へ向けての指差しをして、サスティーンのかかったJOEのギター音がミュートされると最後のサビに入り、2番までのサビと同様のポーズ。後の展開も2番までと同様になり、最後は1番サビと同様に観客とともに「Bye Bye Bye!」、「Burn Burn Burn!」と3回。そして--

 

『熱い Rockin’ Emotion!』

JOEのギターが高音域でビブラートを発しながら曲が締めくくられるのであった。

 

「「「センキュー!」」」

 

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 センキュー!の声が響いた直後に、一瞬消灯。歓声鳴りやまぬままに、改めてステージ全体が照らされる。

 

「みんなサンキューな!」

 

拓海の声とともに、一旦、3人がマイクスタンドからマイクを外して移動する。

 

「One Llfeと」

「炎の華」

「そして3人でのRockin' Emotion」

「3曲続けて聞いてもらったぞー!」

 

歓声。ダンダンダンと3連符のようにMAOが3連でドラムを打ち鳴らし、裏ではベースが1音鳴る、バンド形式のライブではよく見かけるルーティン。それが止むと再び歓声。両端にマイクスタンドが1本ずつ追加で置かれ、亜季と涼がその後ろに立つ。

 

「ところでー、アタシは宮城でのライブって初めてなんだけどー」

「アタシは事務所のライブで、このアリーナでやって以来だね。ちょうどソロでのシングル出したての時にやらせてもらってサ、よーく覚えてるよ。他はみんな初めてなんじゃないか?」

「そうだな、宮城でのライブ自体、その時くらいしかやってないはずだし」

「事務所には3人、宮城出身がいるようでありますな!」

「アレ、3人とも仙台からだった気がすっけど……?」

 

 

 

控室。

 

「駅の周りとかは他所からの人がすごくって……泉のアウトレットによく行ってました♪」

「ウチも一応青葉だ!だいぶ山寄りだケド……穂乃香ってどうなんだ?」

「ここが近い、とは言っていたけど……宮城野かしら?」

「合ってるってことでよさそうだな!」

 

 

 

「合ってるらしいとのことです!」

「そーか、良かった良かった、んで話戻すとよ、涼はここでやったっつーことで話聞きてえんだけど」

「事務所では散々話しただろうよ、まだ足んないってか?」

「それなりに前のライブだし、今改めてここに来て、あの時のことがどう思い出されるか、が大事なんじゃないか?」

「だねー☆」

「そうだな……」

 

そうして、涼はこのアリーナでの思い出を、短いながらに語る。One Lifeは自身のソロライブに先んじて、事務所の地方アリーナツアー、その開幕戦となるこの地で初披露だった。当日は全国的に、春の嵐と呼ぶべき大荒れの天気となり、公共交通機関で会場最寄りまでたどり着けるかが懸念されたり、物販や入場待機の列で観客が雨ざらしにされる光景が繰り広げられるなど、開演前はネガティブな意味で注目される有様であった。

 

「あの時は開演前から疲れてるだろうファンのみんなをちゃんと盛り上げられるか、プレッシャーが半端なかったけどさ」

「湿気を吹き飛ばす風になった、等々当時のSNSには書かれておりましたな!」

「ああ!自分の歌に、ちゃんとみんなを元気づける力があるとわかって、とてもうれしかったよ」

 

「さーて、楽しい時間ってやつは早いもんでよ、次の曲でラスト」

 

炎陣より前の、多くのユニットよりもひときわ大きい、えー、まだきたばっかー、という声が飛ぶ。

 

「……の前に、次のインディヴィの奴らはノンストップで駆け抜けるって話だそうだから、亜季!」

「はい!我々から、いくつかお知らせをさせていただきます!じゃあ1枚目どうぞ!」

 

後ろのモニターには、今日事務所を代表して参加している3ユニットのメンバーのソロ楽曲、そのジャケットが数枚表示されている。

 

「というわけで、今日披露されたOne Lifeに炎の華をはじめとして、我々や、ドリームアウェイ、individualsのメンバーが歌うソロ楽曲が、各配信サイト様にて販売中であります!是非とも!この機会にアイドル一人一人の個性が詰まった楽曲にも触れてもらえると幸いでありますよ!では続いて里奈殿!」

「は~い、今出てきたかな?」

 

モニターには、「SummerEnd Story」「LV一般販売実施中」と出ている。

 

「夏の締めくくり-ってことで事務所総出のライブを横浜アリーナでやるんだけど、全国30か所でライブビューイングもするから、今日初めてアタシら見て興味出たーって人は来てほしいなー。じゃーなつきちー」

「任されたよ!で、このライブについてなんだけど……」

 

「機材解放席追加決定!」の表示。歓声。

 

「現地の方もチケット追加されるってことで、続報を待っててくれな!んじゃ涼!」

「はいよ!このライブさらにさらに追加情報があるんだ!」

 

「バックバンド参加!」と、現在演奏している5人の集合写真が表示される。おー、っとどよめく観客席。

 

「というわけで今日アタシたちの曲を彩ってくれてる後ろの5人が、今度のライブにも出てくれるってことで、んじゃ紹介しようか!」

 

顔を見合わせて、せーの、とやや小さく声をかける。

 

「「「「「シンデレラバンド!」」」」」

 

シンデレラバンドの面々が手を振る。歓声。

 

「これから度々アタシらのサポートとして来てくれるってことらしいから、今日いるみんなは覚えて帰ってくれよ!」

「んで最後に!もう一つ!」

 

「ゲストアイドルが登場!」のスライド。歓声。

 

「このSummerEnd Storyにゲストが出てくれることになったんだ!今日はその紹介もしようと思う!ゲストで来るのはー……こいつらだ!」

 

Pastel*Palettesのロゴと、公式ページでよく見かける5人の集合写真。おおー、っと再びのどよめきが起きる。

 

「今日、ド頭で切り込み隊長として盛り上げてくれたPastel*Palettesの5人が、アタシらのライブにもやってくる!」

 

 

 

再び、控室。

 

「ついに発表になったわね……」

「思っていたより歓迎ムードみたいで良かったです!」

「うーん、ゲスト扱いって初めてだよね!るんっ!てくるライブにしたい!」

「うー、今日の出番は終わったのにもう緊張してきた……」

「今から緊張ってさすがに早すぎるっスよ……2曲やるうち、片方はまだレコーディングし終わったばかりのですから、不安になる気持ちはわかりますけど」

 

五者五様の反応をする中で、輝子が5人の方へと近づき、声をかける。

 

「私とはあっちでも共演だな……改めて、よろしく……フフ……」

 

 

 

「というわけで、お知らせは以上だ!さあテメーら!余力なんて残そうと思うんじゃねえぞ!最後まで盛り上がっていってくれよな!」

煽りに応じて、うおおおおお!、と地鳴りのような歓声。

 

-------------------------

 

ズンタタッタ、とMAOが小気味よくドラムを打ち鳴らし始める。2小節目からはスタンドマイクの後ろで5人が、ドラムに合わせた手拍子を始める。それに、観客席もクラップで応える。

 

「それじゃ最後に一言ずつ!まずは涼!」

「またここで歌えてよかった!次もあるとうれしいかな!じゃあ次は亜季!」

「牛タンは、いいぞ。*1次のindividualsまでしっかり楽しみきってくださいね!つづいて里奈殿!」

「みんなおいしいごはん食べて帰ってちょ♪ 次はなつきち!」

「こうしてバックバンドと合わせてのライブ、これからも楽しみにしててくれよ!んじゃ、後は隊長よろしく!」

「次にアタシらに会う時のために、まずはここで燃やし尽くしていけよ!」

 

ギターの音が入り、本格的に曲が始まる。

 

『ハンパな気持ちはいらねえ』

まずはセンターにして特攻隊長の拓海からボーカルが入る。

 

『どんな時でもガチが信条さ』

続いて、上手側2番目にいる夏樹のパート。

 

『仏恥義理義理 Yeah!』

もっとも上手側の亜季が夏樹に続く。右腕を振って煽り、観客も「Yeah!」と叫ぶ。

 

『落とし前ってやつ』

順番は下手側に移って里奈がのパートになる。

 

『C’mon! C’mon! Alright』

最後はもっとも下手寄りの涼のパート。右腕を高く掲げて2度回す。

 

『キッチリつけるぜ』

5人でのユニゾン。

 

 イントロに入ると、まず右手をスタンドの前まで突き出したポーズから、続いて両腕を広げ肘は直角に曲げ、両手は顔の横に、顔と高さに置いて、左、右と計8回上下に振る。4回ごとに左足、右足を振る。それが終わると握り拳のまま、水を掻くように手が前へと突き出される。彼女達の親世代よりも前であろう80年代、当時のとある流行曲群に合わせて全国各地で踊られていた「ダンス」を模したものと思われる振り付けだ。

 5人は腕の動きに合わせて「ッオイ!」と煽り、観客席からも「ッオイ!」と怒号のごとくレスポンスがある。

 締めには一度マイクを握りなおす動作をして、ボーカルへと入る……のであるが。

 

『闇を照らすテールランプ 連なり揺れる海岸線』

まずは夏樹の歌唱から始まる。もうこの時点でCD等の音源とは大きく異なる歌唱順である。右手で右を指差し、そのまま頭上へ。手を広げて顔の横へ。手のひらで顔を撫でるようになぞり、右へ、肘を支点に2度腕を回す。

 

『柄にもないね潮の香りに切なさが不意によぎる』

音源通りではAメロを最初に歌うはずの亜季はここを歌っている。人差し指を立て、顔の横で2度振って降ろし、左手をまっすぐ頭上まで挙げて、最後は両手を顔の横に広げる。

 

『覚悟なんてとっくに決まってんだろ?ついてきな』

次に歌うのは涼。腕を降ろしたところから、両腕を左右に振り、その後は親指を立てた右手を後ろへと振ってついてくるよう催促するさまを示す。

 

『女は度胸!不器用なりに 純な気持ちを見せてやるから』

Aメロの締めは里奈が務める。炎陣が出演するライブをよく見に行くファンにはよく知られたことであるが、ライブにおいてはこの歌唱順にすることが定番となっている*2。最後はマイクを握り締めて、Aメロを締める。

 

『煌めく星屑の海浮かぶ Lonely heart, Only night かっ飛ばして』

Bメロ前半は拓海のソロとなる。「Lonely heart, Only night」のところは歌よりも観客席を煽ること優先で、叫ぶような声になるのがライブでは恒例であり、観客もその煽りに応えて後拍で「ッオイ!」と4回叫ぶレスポンスを返す。

 

『研ぎ澄ませたこの想い 解き放つのさ Are you OK?』

マイクを握りしめたところから、右腕を右上に、左腕を左下に広げて何かを開けるかのような動作。そこから左手でマイクを掴み、右手は親指・人差し指・小指を立てるロッカースタイルの手つきで、2度観客席を指すように腕ごと振る。「OK?」から一拍遅れて「フッフー!」と観客からの声が飛んでくる。

 

『Midnight気合上等!夢に特攻Let’s Go!キメるぜ』

2度右腕を、観客席を煽るときと同じ要領で振る。振り終えた右手でマイクスタンドを掴み、左手はマイクを握ったまま、左斜め前方へ2度左足を踏み出すと、それに従ってマイクスタンドが大きく倒れる。元に戻して「夢に特攻」で1回、「Let’s Go!」で1回腕を振って煽る。腕の動きに観客が合わせて「ッオイ!」と2回。そこから親指・人差し指・小指を立てて右腕を振り下ろす。

 

『さあ限界なんて追い越して風を切ったその先で未来を見ようぜ』

肘を軽く曲げた状態で両腕を左右に振って上下させつつ、足はツーステップ。 左手はマイクを持ち、右腕を刀のように右斜め後方へ振り、続いて人差し指を立てて振り上げ、身体の前を通すように降ろし、歌詞の未来を切り開いていこうという意思を振り付けでも表し続けつつ、1番が終わりを告げる。

 

「まだまだ声足んねえぞ!エンジン全開で来い!」

「「「「「宮城ー!」」」」」

 

 この「純情midnight伝説」はもはや説明不要の、炎陣のフラッグシップたる楽曲といえよう。音作り、リフ、コード進行、歌詞、振り付け、いずれも80年代の流行として一定の地位を得たヤンキー、不良もののバンド・歌手を強く意識したものになっている。これは炎陣というユニットのコンセプト自体がそこにあるのと同時に、その中心たる拓海、そして真っ先にメンバー選出となったた里奈のイメージあってこそのものであるが、そこに上手く適応させられる3人を見つける、という作業は容易ではなかったことだろう。

 それと同時に、炎陣の各種ライブにおける(メタな意味での)役割が確立された楽曲でもある。曲調、多数あるコールアンドレスポンスの箇所、メンバーの存在感、いずれをとっても、この楽曲をやるならば、常にそのパフォーマンスをもって、観客ののテンションを最高潮に持っていくことが求められるようになっている。必然として、この楽曲は事務所主体のライブではライブ最終盤での演奏となることが大半であるし、ユニット単位でフェス出演する場合は今回のように締めで歌うのが常である。それだけ、この楽曲の立ち位置が出た当初から定まっていた証でもあるが。

 

 さて曲の方は展開が同様の2番も終わりに近づいている。控室の方は、次に間髪入れず登場するindividualsが既に移動した中で、Pastel*Palettesもドリームアウェイもあまり控室できっかけもなくはしゃぐタイプではない面々で、おおよそ静かなものであった。ただし、彩とイヴはずっと腕を振って小さい声でコールしているし*3、麻弥は何にかは不明だが、食い入るようにモニターを見続けている。

 

2番サビの終わりから、間奏に入る前にワンフレーズ。

『さみしがりの天使たちが 今日もまた』

前半は拓海がソロで歌う。右、左と腕を開き、手を顔の高さに運んで、1、2、3、4と徐々に腹の辺りまで降ろしていく、という振りが2度繰り返される。

 

『きわどいライン 攻め抜く命の炎燃やして』

後半は全員でのユニゾン。まず右手、続いて左手でスタンドをなぞる。両掌を開いてもう一度、今度は膝を軽く曲げる程度の高さから、スタンドを上になぞる。軽く飛んで足を開き、左手はマイクを持ち、右手はガッツポーズの形から下へ弾みをつけて頭上に高々と掲げて開く。

 

この曲、間奏が案外と長い。具体的には25秒ほどあり、この日炎陣として披露してきた3曲いずれもより長い。他の曲同様、その間はHEYによるギターソロが鳴り響き、ズンタタッタ、とMAOがイントロ同様のリズムを刻んでいる。そして5人は腕と声で観客席を煽り続け、観客もそれに応えて「ッオイ!」と繰り返し叫び続ける。

 

『Baby走志走愛 マブい感情純情ナメんな』

再び拓海が1人で歌う。マイクを左手で握りながら、右は手のひらを上に向けて腕ごと頭上から降ろしていく。それから右手で胸を1度叩き、両手を頭上に挙げ、右手を上にして手首同士を2度叩き合わせる。最後は両手を広げつつ、両腕を小さく円状に開く。

 

『もう全開バリバリ捧げば ハートは祭りさ楽しもうぜ』

4人、途中から拓海も合流して5人でのユニゾン。両手でマイクを握りしめた後、右手は離して、身体の前で人差し指を立てて2度回し、突き上げて最後のサビへと入っていく。

 

 そして最後のサビは1番と同様にマイクスタンドを倒してみたりもしつつ進んでいく。しかし、サビが終わってもすぐにはアウトロには入らない。ここからが最後にして最大の盛り上げどころだ。

 

「「Oi Oi Oi!」」 『そうさ今宵は』

絶叫も同然の「オイオイオイ!」が観客席から響き、炎陣の5人と会場一体となってのユニゾンが形成される。

 

「Ai Ai Ai!」『 愛の集会(つどい)さ』

先ほどは煽るように腕を突き上げていたが、ここでは両手で身体を仰ぐように手を振る。

 

「Boom Boom Boom!」 『胸のエンジン』

左手は左上に掲げ、右手を手首軸で回転させてタイヤが回転するさまを表す。

 

『今 うなりを上げて伝説になる』

裏で「Ban Ban Ban!」とコールする習慣もおおよそ浸透している*4ようで、歌がかき消えんばかりの勢いで観客席からのコールが響く。

 HEYのギターが鳴り響く中、アウトロでも5人はひたすらに腕を振り煽りつづける。それに応えて観客席も「ッオイ!」と叫び続ける。

 

そしてアウトロが終わり、最後まで鳴っていたピアノの音まで消えたところで、拓海からの

 

「センキュー!」

 

の声とともに全照明が消灯。炎陣のパフォーマンスは幕を降ろすのだった。

*1
食べに行く暇があったのかは不明。

*2
せいぜい、里奈と涼の順番が入れ替わることがあるくらい。

*3
声を大きくするのは千聖の目があるので難しそう。

*4
実際浸透してほしい。




次回投稿予定:6/6 17:00(執筆状況により繰り上げの可能性あり)

使用楽曲コード:22138927,23609958,71337024,71711112

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