美しき城へ続く道:「大和姉妹の事情」編   作:Whiplash

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大和姉妹式サバイバル指南(実践編)

 姉妹での買い物から11日後。すなわち、Pastel*Palettesの無人島ロケから8日後の夜。

 この日、亜季の姿は自宅ではなく、プロダクション側で用意している寮にあった。この寮は、元々バブル崩壊とともに運営コスト高で経営が立ち行かなくなったホテルを改装したもの、ということもあり、1階と最上階をはじめとして、いくつかの階層に「集会室」という名目でラウンジが設置されている。今回は亜季の相談を受けて、5人の中で唯一の寮暮らしをしている拓海が「集会室」のうち一つを押さえて、炎陣の面々を呼びだした形だ。

 

「おーっす」

「10分前ー、ちょーどいいタイミング?」

 

亜季がラウンジに入ると既に他の4人は揃っており、拓海と里奈が声をかける。

 

「お待たせしました!みんな揃っているようでありますな!」

「つまめるもの、ちゃんと買ってきたか?」

「あんまり変なの買って来られても困るよ」

「もちろん!この通りでありますよ~」

 

涼と夏樹の問いかけに亜季はそう応えて、ドサドサと、テーブルの上に置いたのは意外にもチョコレート……というか、ブラ〇クサンダーの詰め合わせだ。袋が次々と開かれて、ブラッ〇サンダーの山が出来上がる。

 

「お、おう」

「まあ、飽きにくい味だからいいけどサ……」

「こんな時間に甘いもんかぁ」

「やーん、お腹周りが気になっちゃうカンジー」

 

などと、ブツクサ言われてしまう評価ではあったが、みなそうは言いつつも、各自紙コップに飲み物を入れ、山のように積まれたブラック〇ンダーに手をかけていくのだった。

 

 そうこうしているうちに、時刻は21時。

 今回Pastel*Palettesの面々に割り当てられたのは、毎週金曜21時から2時間割り当てられている、いわゆる「単発特別番組枠」と呼ばれるものだ。プライムタイム*1の後ろ半分という、デビューから四半期程度のアイドルユニットが占有する番組枠としては、あまりに異例のものであった*2。これが実現したのは白鷺千聖の知名度が考慮されたのに加えて、別の大型企画が撮影途中の不祥事で没になったことで、その穴埋め企画として急ピッチで進められた、という噂もまことしやかにささやかれているが、炎陣やそのPの間でも、あくまで噂としてしか聞こえてこない、与太話の類とされている。

 

「お、9時だな、始まんぞ」

 

直前のCMが明けて--

 

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 『新人アイドル × 無人島サバイバル!?』という字幕とともに男声のナレーションが入る。

 

「今夜の金曜プライムショー*3!Pastel*Palettesが挑むのは新曲発売をかけた無人島でのサバイバルミッション!?」

 

麻弥の「もし遭難でもしたら……」という声をバックに『テレビの企画を超えた事態が発生!?』という字幕が画面に被せられる。

 

「番組の企画という枠を超えたガチンコサバイバルに発展かー!?」

 

島を見て回る5人。

 

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「あ、島に小屋とかあったんですね」

 

「急に難易度下がった気がすんぞ」

 

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「うぅ……私、も、もうダメ……かも……」

 

「だ、ダメです……彩さん。諦めちゃダメですっ!」

 

吊り橋の上でうずくまりそうになる彩と、そこに声をかける麻弥。字幕は『ミッション失敗の危機!?』と被せられ、

 

「そして道中では企画中止のピンチも!?」

 

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「やたらと麻弥がフューチャーされてる気がしますな……」

「たまたま切り出しやすいところに麻弥ちゃんがいただけだと思うケド……」

 

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5人の、目線の先にある光景に見とれているかような驚きの表情に、『ミッションの先にあるものとは一体!?』という字幕がかぶさる。

 

「探検の果てで、5人が見たものとはー!」

 

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「あ、ロケ地だいたいわかりましたね」

「マジでか?」

「みんなで何見てるのかも見当ついてますけど、バラしてしまうのは野暮でありますよー」

 

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「パスパレー!探検隊ィー!」

 

80年代を想起させるような赤色のフォントの『パスパレ探検隊~無人島を征くアイドル~』というタイトルで、画面が埋められる。*4

 

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「あっ、そーゆーノリ?」

「まあ、麻弥の報告聞いててそういう気はしてましたな……」

「もしかしてー、日帰りロケだった?」

「らしいですよ?」

 

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『8月某日』の字幕。

 

集合シーンなども特になく、「一行は日本の領海ギリギリに位置する、とある無人島へと向かっていた」というナレーションと、チャーターしたと思しきクルーザーで移動している映像が流れ、それが終わると今度は海岸に5人が立っている様子が映された。

 

「すっごくキレイな海だねー!人もいないしプライベートビーチって感じー。なんかるんっ♪ってしてきちゃった」

 

と、日菜が海の方を見ている一方、

 

「スタッフさんたちが用意したのは飲み水だけみたいね。他は現地調達……」

 

『ルール1:水以外は原則現地調達。』

 

「本州から赤道側に近づいただけあって、じめじめとまとわりつく感じが増してますね……」

 

と、状況確認をする千聖と麻弥。ふと麻弥が視線を別方向に向けると、挙動不審な彩を見つける。画面下部に『?』の字幕。

 

「って彩さん、さっきからそわそわしてますけど、どうしたんです?」

 

「あはは……ほら、さっきスタッフさん携帯預かりにきたでしょ?」

 

「そうでしたね」と頷く麻弥に向けて、彩が続ける。

 

「いつも持っているものを持ってないと、なんだか落ち着かなくって」

 

「そう、今回の企画では私物の持ち込みに制限がかけられているのであーる」と、ナレーション。画面下部に『ルール2:私物は一人1つだけ持ち込み可。』と字幕。

 

イヴが何やら尋ねると、千聖がブランケットを取り出す。その裏で「最初に持ち込んだものを取り出したのは白鷺千聖ォ。どうやらブランケットを持ち込んだ様子ゥ」とナレーション。

 

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「どうなんだこれ……」と拓海が亜季の方を向く。

 

「まあ、所詮TVの企画ということで持ち込む分にはそう悪くはないと思いますな……」

 

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「あたしはおねーちゃんの写真!」

 

苦笑いする麻弥を背景に、「氷川日菜が取り出すのは、まさかの1枚の写真ン~」というナレーション。

 

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 4人が唖然とする中、里奈の

 

「てかこれ、顔出しちゃってだいじょーぶなん?」

 

という妙に冷静なツッコミ。

 

「あー、姉もそれなりに名が知れ渡ってるしなぁ……さすがに許可も取ってると思うぞ」

 

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映像では少しばかり時間が飛んで。

 

「それで……無人島に到着したのはいいけど、これから私たち何をすればいいんだろ?」

 

「確か、スタッフさん達が用意したミッションをクリアしていくんですよね?」

 

『ルール3:新曲発売は次々と与えられるミッションのクリアが条件。』という字幕が画面下部に。

 

「ミッション……真剣白刃取り、などでしょうか?」

 

イヴの発言に、彩の顔が映し出され、その右上にやや小さく『!?』と字幕の表示。

 

「え、危険すぎない!?もし失敗したら……」

 

「さすがにそう無茶なものはないでしょうけど、この暑さだし、ある程度タフな事態に耐える覚悟はいりそうね」

 

彩と千聖の顔を映して、「不安の色を隠せないふたぁ~り~」というナレーション。「しかし丸山も気合を入れ直しィ……」

 

「みんな生きて帰ろうね!新曲発売のためにも私、頑張るからね!」

 

静寂。4人の顔を映しつつ、『?』と画面の3分の1ほどを覆う字幕がフェードイン。

 

「……あれ?みんなどうしたの?」

 

「……いえ。彩ちゃんは頑張らなくても大丈夫よ」

 

「千聖ちゃん、それどういう意味!?」

 

「ほら、彩ちゃんあれだし……」

 

「彩さん、何かあったらすぐジブンに相談してくださいね!不測の事態でも対応してみせますから!」

 

「私もです!アヤさんに何かあればこの木刀で守ります!」

 

「なんと若宮の持ち込んだ品は木刀であったァ~」木刀にフォーカスしながらの、ナレーション。

 

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炎陣一同、爆笑。

 

「ヒヒヒッ、木刀……サバイバルで木刀……」

「あーおなかいたーい!」

「これは……予想外ですありますな……!」

 

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彩の顔を映しつつ、「丸山が複雑な心境に陥る中ぁ、5人にカンペが提示されるゥ……と、その時!」と、ナレーション。

 

「ちょっといいでしょうか?ミッションの前に島を1周させてもらえるとうれしいです」

 

映像が手を挙げていた麻弥にフォーカスしつつ、ナレーションは「なんとミッションの前に島を見て回りたいと、大和からの提案ン~」。

 

5人が何やらスタッフから聞いている様子を映しつつ、「スタッフからもOKが出るゥ」とのナレーション。

 

「それじゃ、直射日光を避けて森を通っていきましょう」

 

5人が出発する後ろ姿。

 

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「あ、これ多分最初のミッションを潰してますな……」と亜季がこぼすと、それに

 

「マジか」「やっちまったなぁ麻弥ちゃん」

 

などと涼と夏樹がからかうような口調で応じる。

 

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ホームビデオの映像に切り替わり、森の外縁部を歩いている様子がしばらく映し出される。裏ではナレーションが「探検の一歩を踏み出した5人、果たしてこの島の外周はどれほどのものなのかァ」などとのたまう。

 

森の一角を定点的に映して、画面の下3分の1ほどを覆う『30分後』の字幕と、「そして30分後ォ……」というナレーション。

 

「ひとまずこれで一周……特に危険はなし、と。それじゃあ、今度は島の内側に入ってみましょう」

 

森の中を、今度は島の中央に向かって歩いている様子を映しつつの、「森の中へ分け入っていくこと数分……とその時ィ!」。

 

「あれ、みんな見て!」

 

彩が何やら指差している様子を映しながらナレーションが「何やら見つけた様子の丸山ァ。果たして見つけたものとは?」と発する。

 

木のプレハブ小屋。「なんとそれは無人島に似合わない小屋であったぁ……」とナレーション。5人が入っていった映像に「小屋の中を見て回るとォ……」とさらに被さる。

 

「少し前まで人が住んでたのかしら?」

 

「マヤさんの言う通り、ここなら拠点にできそうです!」

 

「そうですね……じゃあ、ここで休憩してこれからのことを……」

 

映像が『と、その時!』という字幕の裏で一瞬止まった後再度動き出し、ナレーションが「と、そこにスタッフが入ってくるゥ」と被さる。

 

「え、スタッフさんどうしたんですか?」と麻弥が言う中で、何やらスタッフが示した様子。それに千聖が

 

「あ、カンペ出てるわね」

 

と発する。

 

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「これはまた先回りされそうになってましたな……?」

「なんだか頼りねえ撮影スタッフだなあ」

 

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2度目くらいのCMを挟み。

 

カンペを見ている麻弥と千聖を映しつつ、「ここで提示されたのはぁ~、食糧集めェ~。ちょうど昼時ということもあってのミッションであろうかぁ~」というナレーションが被さる。

 

「まるで兵糧攻めみたいですね!」

「その例えはちょっと違うと思うわ……それにしても、飲み水以外は本格的に自力で何とかしないといけないのね」

 

またしても一瞬画面が止まり『その時!』という字幕、合わせて「ここで意外な人物が助け舟ェ~」というナレーション。

 

「ふっふっふ~、食べ物を集めるなら……じゃん!」

 

彩が取り出したのは1冊の本。

 

「私の持ってきた図鑑がきっと役に立つはず!」

 

麻弥達が中身をあらためる様子の裏で、「どうやら非常に役立ちそうな図鑑だァ~」とナレーションが挟まる。

 

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「いいチョイスだと思いますよ。キノコだけは別ですが」との亜季のコメントに、涼たちは

 

「キノコはアイツに任せるのが一番だよな……」

 

などと、ごく小柄な銀髪の、恐ろしくキノコに詳しい少女を思い浮かべつつ、ぼやく。

 

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「早速、調達に向かおうとする4人にぃ……ここでまたしても大和からの提案がァ~」というナレーションと、『大和の提案。』と字幕。

 

「それじゃ、取りに行くメンバーを決めましょうか」

 

「えー、みんなで採りに行かないのー?」

「みんなで行った方がたくさん食べ物みつかるんじゃ……」

 

「メンバーからは不満の声ェ~」とのナレーション。

 

「ジブンたちはこの島に着いたばかり、つまり誰もここへの土地勘がない」

「「土地勘」」

「そんな状況で全員で探索して……遭難でもしたら、それこそミッション達成どころじゃありません。ですから、待機班と捜索班の二手に分かれるのがよろしいかと」

 

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「これテレビの企画なの忘れてねーか?」

「ええ、私もそう思いますね」

「日菜ちゃんも彩ちゃんも乗せられちゃってるカンジ~?」

 

「のろしだの大声だの、本格的になってきたぞ」

「千聖サン、みんなして撮影なの忘れかけてるのに気づいてるな?」

 

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「大和の提案に乗せられる形で班分けに入るゥ~」と、ナレーション。

 

「それじゃ、早速班分けしよ!待機する人たちは誰にする?」

「ん~、彩ちゃんは残ってた方がいいと思うなー。なんとなくだけど」

「えっなんで!?」

「それなら私も彩ちゃんと一緒に残ろうかしら。何かあったら心配だから」

「アヤさん、たくさん食料を確保してくるので楽しみにしててくださいね!」

 

「なんか、みんなの中で私は待機班って決まってない~!?」

 

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炎陣一同、2度目の爆笑。

 

「いやー……彩ちゃんの普段の扱いがわかるよな……これ、アハハ」

「フェスでも噛んでましたし、そういうことなのでしょうな!」

 

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再び、映像がホームカメラに変わる。

 

「今こっちからるんって感じがした!きっと食べ物だー!」

「ヒナさん!あまり遠くへ行くとはぐれてしまいますよ!」

「大丈夫大丈夫!」

 

「と、ここで氷川の足が止まるゥ……」とナレーション。

 

「あ、この木変な形してる!麻弥ちゃーん!これはどう!?」

「これならばっちりです!……それじゃあ、次はこれにっと……」

 

「今回大和が持ち込んだナイフで、目立つ木へと傷をつけていくゥ……大和曰く、目印として覚えやすくするためとのことだァ」というナレーションとともに、画面右下に『※銃刀法など法令には充分配慮しております』の字幕。

 

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「あ、結局普通のナイフ持参になったんですね」

「普通じゃねえのも用意してたって口ぶりだな」

「実は、はじめ十徳ナイフを持ち込もうという算段だったんですが……さすがにNGがでたようですなあ」

「十徳って……それ認めたら何でもアリだな」

 

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ナレーションの「さらに森の中を西側へ歩いていく3人……とその時ィ」というセリフの終わりとともに、映像が一瞬止まり、画面中央に『とその時!』の字幕。

 

「ねえねえ、あそこの木見てみて!あそこに何か、るんってくる丸いものが見える!」

「あ、ホントですね!」

「ちょっと待ってくださいね!早速図鑑で調べてみます!」

 

「なにやら木の周囲に生っている果実を発見した3人ン……果たしてェ……」というナレーション。

 

「えーっと……おおっ!これ、食用で、しかもかなりおいしいらしいですっ!」

「やりましたね!あの果物を採ればミッション達成ですね!」

 

「なんと、見つかったのは熱帯で採れるキイチゴの仲間であったァ~。人数分の採取を行うとォ、3人は小屋へと戻っていくゥ」とのナレーション。

画面中央に『ミッション達成!!』、右下に『※法令には充分配慮して撮影を行っております』の字幕。

 

----------

 

「なかなかやるじゃねえかアイツら!」

「あの島、キイチゴ生ってるんですなぁ」

「見るとこはそこなのか……」

 

----------

 

場面は小屋に戻り、「待機組にも何やらあった*5様子だがァ、ひとまず、採ってきた果実を5人で分け合うゥ……」というナレーション。

 

「それでマヤさんが、帰りに迷わないよう木に印をつけてたりして、帰りも全く迷わず帰ってこれたんです」

「ねー、麻弥ちゃん大活躍の巻!ってかんじー」

「あはは……ちょっと、恥ずかしいですね」

 

食べ進めつつ話をしている5人の映像の裏で、「道中での様子を語りつつゥ、キイチゴの仲間だという果実を堪能しているとォ……」というナレーション。

 

「あら、またカンペね」

「えーっと、次のミッションは『この島にある、幻の花畑を探せ』?」

 

「どうやらァ、この島のどこかには開けた場所があり、そこは花畑になっているというゥ……」というナレーション。

 

「この島結構広いし、見つかるのかな……」

「はいはーい、ヒントくださーい!」

 

「氷川がヒントを要望するとォ、意外にもスタッフは快諾し、現在いる小屋から南方にあると伝えるゥ」とのナレーション。

 

----------

 

「昼時でありますから、影などで方角の推測をするのも難しい、さてどう切り抜けたのでしょうな」

 

----------

 

「南……」

「方角の把握もミッションの一部、ってわけね」

「あたしはあっちが南だとおもうなー!」

「日菜ちゃんの勘は頼りにしてるけど……もしも、で遭難してしまったらマズいわ、ここは慎重に行きましょう」

「……とりあえず外に出ましょうか、手がかりになるものがあるかもしれませんし」

 

玄関から出ていく5人を映しつつ、ナレーションは「外に出て、方角特定の手がかりを探そうとするがァ」。

 

「うーん……太陽ほぼ真上だし、これじゃ昇ってきた方角なんてわかんないね」

「収録前には、腕時計で方角を確認する方法*6も確認してて、それならこの時間でもわかるんです。ただ……」

「腕時計も持ち込みアイテム扱いだった、と」

「はい、そこは見落としてましたね……」

「うーん、木に南!とか西!とか書いてあれば楽なのになー」

 

『解決に導く意外な方法とは?』という字幕とともにCMへ。

 

----------

 

「全然わかんなーい。あっきー、何か知ってる?」

「はい。……恐らくは麻弥も、今の日菜殿の言葉で思い出されるかと」

「まじでー?」

 

----------

 

CM明け。

 

「うーん、木に南!とか西!とか書いてあれば楽なのになー」

 

画面が止まり、「この氷川の言葉を聞いた大和、どうやら方角の謎を解く手がかりにたどり着いた様子だがァ……」というナレーションが被さる。

 

「麻弥ちゃん、急に座り込んでどうしたの?」

「いえ、木の根元を確認したくて……」

「コケくらいしか生えてないと思うけど……」

「そう、コケなんです。コケが特にたくさん生えているところって、そこには陽がめったに射し込まない、つまり、その方角が……」

「……あっ、北、ですね!」

「はい!ただ、1、2本じゃ偶然かもしれませんからみなさんにもコケの生えている方向を確認してもらえれば、と」

 

散って、周囲の木を調べていく4人の映像に、「大和の言葉を受けてェ、周囲に生えている木をつぶさにチェックしていく4人ン……そしてェ」とのナレーションが被さる。

 

「この辺りの木は一通り見終わったね!」

「それで、南はどっちかわかったー?」

「はい、みなさんが調べてくれたコケの情報を踏まえれば……こっちが南、です!」

 

----------

 

「千聖サンだけ、なんか変な方向向いてないか?」

「アレ、スタッフの顔見てるやつだろ」

「め、メタ読みでありますか……」

 

-----------

 

坂道を登っている5人の映像とともに、「コケを元に方角を特定した5人は移動を続けるゥ」とナレーション。

 

「だいぶ登ったしそろそろ……あっ!」

 

何かを指差す日菜とともに「そこにはァ」というナレーションと、『目線の先には!?』という字幕。

そして今度は反対側にカメラが向く。止まった映像は谷と吊り橋が映り、SEとともに『謎の吊り橋!』という字幕。

 

「うわ……この先向かうには吊り橋を渡るか、一旦下りて川を渡るか、ですけど」

「下りるなら、またどこかから上らなきゃいけないんでしょ?それはキツイかも……」

「それなら、これを渡るしかないわね……」

 

そのまま編集点なく映像を流しつつ、「そこで吊り橋を確認する5人だがァ、明らかにボロボロな橋を見てさすがに怖気づいた様子ゥ……」というナレーションだけが被さる。

 

「隙間から川が見えてる……やっぱり他のルート探したほうが……」

「そこまで行くと、ちょっと危険そうですね……それじゃあ……」

 

「迂回路を探そうとするパスパレの面々にスタッフからカンペがァ……」というナレーション。

 

「え、花畑に向かう途中なのに!?」

「緊急ミッション、ですか……?」

 

『緊急ミッション:吊り橋を渡れ!』という字幕と「そんなわけでェ、道中で緊急ミッションが追加ァ……」とのナレーション。

 

-----------

 

「こりゃあ……」

「アドリブで追加ってやつー?」

「ちょっと、念には念を入れるなら避けるべきなんですが……」

「撮れ高が足りないって?」

「そのようですな-……」

 

-----------

 

橋の入口から数歩。

 

「わぁ~いいじゃん、彩ちゃん、早く渡ろ!」

「あっ日菜ちゃん、腕を引っ張らないで~」

「いいじゃん一緒に渡ろうよ~」

「心の準備が~」

 

嫌がる彩をバックに「さすがにィ、心の準備ができていない様子の丸山ァ……」のナレーション。

 

-----------

 

「いやー、これは彩ちゃんの反応が普通だと思うけど」

「踏み板の配置がベタな隙間の開き方をしてるの以外、老朽化は見当たらないので、橋が丸々落ちることはなさそうですが……」

「踏板のせいで全部危なく見えるよな……」

 

-----------

 

「その後ようやく移動を始めた一行だったがァ……」のナレーション。

 

「うわわわ、いやあああああ!なんかすっごいゆれてるぅ~!」

 

 

まず「どうやら先を行く氷川が跳ねるように移動してるせいかァ、橋全体が揺れている様子ゥ……後ろからくる3人も怯え気味だがァ……」

そして『決してマネをしないでください』の字幕とともに「氷川は気にせず進んでいくゥ……」とのナレーション。

 

画面が止まり、さらに続けて、字幕とナレーションで『そしてついに』と。

 

「もうダメかも……これ以上進めない……みんなごめんねぇ」

 

「とうとう止まってしまった丸山の足ィ……果たして運命やいかにィ……」というナレーションと、『撮影中止か!?』との字幕でCMへ。

 

-----------

 

「時間的にもいよいよクライマックスという感じですな……」

「日菜ちゃんはこれを見越し……てはなさそうだな」

「どー見ても天然だろアレ」

 

-----------

 

CM明け。

「このミッションだけは……ごめんね……」

 

「今にも泣きだしそうな丸山ァ……撮影継続の危機であったがァ……その時ィ!」とのナレーションの終わりに合わせて『と、その時!』の字幕。

 

「ダメです彩さん……諦めちゃダメです!」

 

「揺れないよう気を使いながら、丸山の近くへと出ていく大和ォ……」とのナレーション。

 

「しっかりしてください!こんなところで立ち止まってちゃダメです!」

「麻弥ちゃん……?」

「彩さんは今まで、この吊り橋なんかより険しい道を、諦めずに進んできたじゃないですか!こんなところで止まったら、彩さんのこれまでを否定することになりますよ!」

 

「大和の様子に驚く一行ゥ……」とのナレーション。

 

「ジブンの腕につかまってください!1人で進めないなら、ジブンが彩さんの背中を押します!」

 

「そのまま丸山の腕を掴み移動を開始する大和ォ……」とのナレーション。

 

「……そうだよね、何があっても諦めないのが『丸山彩』、だもんね!ありがとう……」

 

「歩を進めること数分……」とのナレーション。

 

「やった~!渡り切った、渡り切ったよぉ~!」

 

-----------

 

「よかったぁ~」

「帰ってきたときの麻弥の様子から切り抜けはしたんだろうなとは思いましたが……ひやひやしましたな」

 

-----------

 

「そしてさらに歩くこと15分ほどォ」とのナレーション。5人が何かを見ているさまを映しながらCM。

 

そのCM明け。

「え……みんな見て……この景色」

「花びらもヒラヒラ舞っていて、カブキみたいです!ここがミッションのお花畑ですね!」

「見渡す限りお花お花お花だぁ~、るるるるんってきちゃったー」

「ふふ、これほどの景色を見せられたら……」

「今までの疲れも吹き飛んでしまいますね!」

 

『ミッション達成!』の字幕に、「見渡す限り花ばかりの絶景ィ……」とのナレーション。

 

-----------

 

「これが噂の花畑でありましたか」

「そういや、この島のこと知ってる様子だったな」

「ええ、雑誌で見たきりではありますが……」

 

----------

 

しばらく花畑と、その手前で談笑する5人の様子が流れつつ「そう、今回は専門家監修の元、ここを最終目的地としてミッションが組まれていたのだァ……大和らの機転により、人知れず達成されたり、回避されたものもあったがァ、番組としても一定の盛り上がりを提供できていれば何よりであるゥ……」とのナレーション。

そして画面が5人を中心としたものに変わり、『最後のカンペ。』との字幕に「と、ここで最後のカンペがァ……」とナレーションが被さる。

 

「特別ミッションですか!?えーっと」

「山頂で新曲の告知を叫ぶ……?」

 

「なんと、代表で一人、花畑をバックに新曲「SURVIVOR ねばーぎぶあっぷ!」の告知を叫ぶことになるというゥ……」

 

「一人で叫ぶ姿を想像するとなかなか恥ずかしそうですね……さて誰が行ったものか……」

「こういうときは……ねー!」

 

全員ある一点……というか彩の方を見る。

 

「ちょっとー!なんで私を見てるのー!」

「「「「お願いね(おねがーい!)(お願いします!)」」」」

「んもー!さっき私の苦手なことの話聞いてたでしょー!」

 

右下に『※渡り切った後の雑談で「本番が苦手」というコメントをしていた』との字幕。

 

彩が仕方なしに花畑に背を向けて立ち、他の4人は一旦カメラの後ろへと下がる。

 

そして--

 

----------

 

「いやーよかったなー……しっかし麻弥ちゃん随分と大活躍だったな!」

「私仕込みの技術でありますからな!しっかりと教えたことを実践できていてなによりでした!」

 

麻弥の「強みを生かせるようになる」という目標への一歩を踏み出した様子に、亜季がひとまずの安堵を覚える裏で、「SURVIVOR ねばーぎぶあっぷ!」をバックにしたエンディングが流れていくのだった。

*1
19:00~23:00にわたる時間帯で、各局の看板番組が並ぶ。特に19:00~21:00は俗にゴールデンタイムと呼ばれる。

*2
VelvetRose、miroirといった、亜季たちの事務所肝いりの後発組でもさすがに無理だったほどには。

*3
テレビ局側が単発特別番組枠に便宜的につけている名称。

*4
筆者注:どのようなフォントだったかはベースになっているイベントのバナーを探してみてください。

*5
著者注:[本気・パニック]白鷺千聖のエピソードを参照。

*6
恐らくはhttps://www.keishicho.metro.tokyo.jp/smph/kurashi/saigai/yakudachi/mamechishiki/950962348243615746.html のこと。




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