砕蜂から迫られて困っています   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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君と共に巡る空は

こんなにも色付いている


Enclose Rainbow,Seven days

 世界が動き出す。

 

 朽木ルキアが現世に訪れ、黒崎一護が死神となった。

 それに伴い井上織姫と茶渡泰虎が特異な力に目覚め、滅却師である石田雨竜と共に戦い、ホロウから街を護る為に戦い――――そして尸魂界から朽木白哉と阿散井恋次が現れた。

 ルキアは二人に連れ戻され、一護は死神の力を失った。

 

 そして――――それでも彼は諦めない。

 

 尸魂界にて人間に死神の力を譲渡するのは重罪であり死刑だ。

 故に彼女を救う為に一護は再び歩き始める。

 浦原喜助の力を借りて、死神の力を取り戻す。

 レッスン1で魂魄の力を強化し、レッスン2で虚となる危険を冒し死神となり、レッスン3で喜助との殺し合いを経て始解に至る。

 これで、尸魂界へ赴く最低限。

 で、あれば。

 

「レッスン4―――ここからは俺が相手をしよう、一護」

 

 宵丸はさらなる高みに導くために、一護の前に立つ。

 

 

 

 

 

 

「宵丸さん!? アンタも死神かよ!?」

 

 浦原商店の地下、20年ほど前、宵丸と砕蜂が空座町に定住した後に、夜な夜な喜助が近所迷惑にならないように音を立てずに掘り進めた通称勉強部屋。勿論宵丸も手伝ったし、砕蜂も文句を言いながら手伝っていた。

 レッスン3を経て、始解に至った一護の霊圧はそこそこ大きいと、宵丸は判断する。この段階でも護廷十三隊の三席くらいまでなら相手になるだろう。

 が、それでは足りない。

 

「まぁな。シャオもな。ずっと義骸入ってたから気づかなかっただろうが」

 

「無論、我々は最初から気づいていたがな」

 

「おわぁ!? 砕蜂さん!? 背後から忍び寄るのやめてくれよ!」

 

「甘い甘い」

 

 死神となる前に二人の店に初めて訪れた一護だが、その後もちょくちょく通っていた。無論味がいいのも確かだが、

 

「って……宵丸さんとこのラーメン食った後、やたら体の調子がよかったのは……?」

 

「あぁ、お前に出すラーメンは霊力回復する特別仕様だからな。それのおかげだろう」

 

「マジかよ!? 道理で! ……って二人とも、その恰好は……」

 

「ん」

 

 一護が指した二人の死覇装。

 一護自身や阿散井が着ているベーシックなものや白哉の羽織付きとはまた少し違う。

 背中と肩が大きく露出した形状の上から、揃いの黒の半袖、短い裾の羽織を腰の位置で帯で結んでいる。

 刑戦装束と呼ばれるものの、ちょっとしたアレンジだ。

 

「死神は基本死覇装着てるけど自分で弄ってるのは珍しくないからな。戦闘スタイルに合わせてだ。俺もシャオも本気で動き時は上着も脱ぐし」

 

「ん? なんだダーリン、脱いでほしいのか。それなら死覇装と言わずに全部……」

 

「はい! レッスン4始めるよー!」

 

「このノリはいつも通りか……」

 

 げんなりする一護だが、

 

「いいぜ! さっさとやろう! こっから先はアンタってわけか!?」

 

「あぁ。元々は喜助さんがやる予定だったんだが……」

 

 横目でこちらを眺めていた喜助に視線を送る。

 先ほど、一護の斬撃により帽子に傷が入った彼はにんまりと笑い、

 

「あたしはどうも、ほら。――――人をイライラさせる天才らしいっすからねぇ」

 

「ほんとだよ!!」

 

「殺した方がよくないか?」

 

「やめとけやめとけ。……まぁ、そういうことだから、お前さんの精神衛生上を鑑みて、俺がやることになった」

 

「ありがてぇ……!」

 

 涙を浮かべながらの感謝である。

 この三日間、多大なストレスを抱えていたのだろう。

 宵丸は喜助のことを兄のように尊敬しているし、義理の兄になってほしいと思うが、それはそれとして彼の人格に問題があるのは否めない。

 

「さて」

 

 視線を一護に戻し、軽く首を鳴らす。

 

「レッスン4の説明を先にしよう」

 

 手を伸ばすのは腰の後ろに刷いた小太刀サイズの斬魄刀だ。

 

「レッスン3で始解に至った。なら後はそれを用いる戦闘経験の蓄積。勉強会のあと5日、ひたすら俺と戦ってもらおう」

 

「つまり……さっきまでの浦原さんとやってたことと同じってことっすか?」

 

「ま、そうだな」

 

「はぁ……砕蜂さんは見学?」

 

「まぁ私がやってもいいのだが」

 

 どうでもよさげに、砕蜂が言葉を零す。

 

「私の始解は暗殺特化だから、1日も持たずに一護が死ぬだろう」

 

「よぉし!!! よろしくお願いします宵丸さん!!!!」

 

「はいはい」

 

 焦り顔で巨大な出刃包丁染みた斬魄刀を構える一護に宵丸が改めて向き合う。

 そして、抜刀。

 右の逆手で握った小太刀を顔の前で緩く掲げ、左手は腰に添えながら掌を相手に向け、

 

「――――気を抜くなよ、一護」

 

 霊圧を解放する。

 

「っ……!」

 

 目に見えて一護の顔色が変わった。解放した霊圧はせいぜいが副隊長レベルであるが、それは今まで一護が出会ったことがないものだ。

 

「怖いか?」

 

「はっ! 誰が!」

 

 冷や汗を流しながら一護が吠える。

 

「それでいい。霊圧は段階的に上げていく。最終的に隊長格にも慣れてもらうぞ。じゃないと白哉を斃すなんて夢のまた夢だ」

 

「……? あんた、あいつのこと知ってるのかよ」

 

「友達さ、昔のな」

 

 一瞬過ぎるのは尸魂界で過ごした日々。

 だがそれはもう終わった過去で、

 

「行くぜ」

 

 斬魄刀を握る手に力を込める。

 そして、名前を呼ぶ。

 

「虹を巡れ―――七曜」

 

 四楓院宵丸の斬魄刀――七曜から七色の光が放たれ、霊圧が解放される。

 刀の形状に変化はなかった。変わったのは色。刀身が真紅に染まっている。

 

「おぉ―――!」

 

 解放と同時に一護が突進してきた。

 速度も勢いも悪く無い。だが、繰り出される斬撃を当然のように紅い刃で受け止め、

 

「鬼道解放―――赤火砲」

 

 一護が赤い爆炎に包まれて吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

「……」

 

「ご機嫌斜めっすかー砕蜂さん」

 

 大きな岩に腰かけつまらなそうにレッスンを眺める砕蜂に喜助が話しかける。

 しかし、彼女は一瞥すら向けず、レッスンを――宵丸だけを見ていて、

 

「そういえば尸魂界でも現世の番組が見れるテレビが完成しまして」

 

「何が聞きたい?」

 

 尋常ではない熱い掌返しだった。

 恐るべきは喜助の技術力か砕蜂のテレビへの愛か。

 

「つまんなそうっすね」

 

「面白いわけあるか」

 

 嘆息し、

 

「この訓練のせいで五日間はダーリンと二人きりになれないんだぞ? 常にあのオレンジがいるんだぞ? 私のダーリン成分が枯渇したらどうしてくれる」

 

「マジでキャラ変わりすぎっすよね!」

 

「……いや、待てよ? 一護に隠れながらイチャイチャするのはそれはそれで興奮するのでは……?」

 

「うわー、この人無敵っすか?」

 

 喜助が乾いた笑いを上げると同時。

 今度は一護が半身を凍らせながら地面を転がりまわる。

 かと思えば、雷撃が飛来し、慌てて飛び退くが避けきれない。

 

「宵丸さんの始解見るの久々っすね」

 

「それはそうだ」

 

 喜助の言葉に砕蜂が頷く。

 

「ダーリンは、始解してもしなくてもさほど戦闘力変わらんしな」

 

 

 

 

 

 

「シャオぉ! 余計なこと言うな! 七曜が泣くだろ!」

 

 手の中、斬魄刀がしくしく泣きだしたのに宵丸は焦った。

 それはもう焦った。

 ただでさえ十数年振りのまともな始解なのだ。

 砕蜂の言葉は事実なのだが、見たくない事実だってあるのだ。

 宵丸にとって始解があんまり意味がないこととか。

 砕蜂が完全に現世に染まって色ボケしているとことか。

 頭痛がしながら、

 

「おらぁ!」

 

「おっと」

 

 一護の斬撃を軽い動きで避ける。

 そして、切先を彼に向け、

 

「鬼道解放―――旋風枯らし」

 

 緑に染まった刃から、竜巻が吹きすさび一護をぶっ飛ばす。

 広い勉強部屋を二十メートルほど飛ばされて地面に転がった。

 

「がはっ! っ……なんだってんだよ……!?」

 

「鬼道ってんだ」

 

「っ―――!」

 

 背後、死神の高速歩法瞬歩で二十メートルの距離を一瞬で駆け抜け、一護の背後から語り掛ける。

 

「死神の戦い方は主に4つあって、これはそのうちの一つ。斬魄刀の能力はそれぞれ固有だが、鬼道は誰でも使える。得手不得手があるがな」

 

 だから、

 

「お前さんが慣れるまで俺は鬼道ぶっ放すだけのお仕事だ。頑張れよ。7種類しかないから」

 

 斬魄刀――――七曜。

 その能力は始解時に指定した自分が使える鬼道7種を完全詠唱の威力で、詠唱破棄して使用可能というものだ。

 今回装填しているのは炎熱系の赤火砲、流水系の雨垂れ、疾風系の旋風枯らし、氷雪系の雪下狼、雷電系の震雷衝、縛道の這縄と断空。

 七つの内六つは三十番台より前の、一番高くても三十一番の赤火砲と威力が比較的低いもの。

 断空だけは八十一と高位だが、如何せん便利過ぎるので基本オート装填である。

 本来詠唱をしないと威力や強度が著しく下がる鬼道だが、七曜の能力であればノータイムで完全詠唱の威力を使用することができる。

 状況に応じて使えば実際かなり便利な鬼道系斬魄刀なのだが、

 

「俺、基本50番台未満なら詠唱してもしなくても変わんないからなぁ」

 

「あぁ……?」

 

「いや別に」

 

 ぼやきながら一護の斬魄刀を捌き、合間に蒼く染まった七曜から高圧水流によるレーザー、雨垂れを放ち、ギリギリ防御が間に合った一護を吹き飛ばす。

 あまりこういうことを宵丸が言うと七曜が泣く。

 滅茶苦茶泣くし拗ねる。

 今の宵丸は50番台未満の鬼道は詠唱破棄だろうと完全詠唱の威力で使えるし、使用頻度の高い縛道の八十一番の断空と六十六番の六杖光牢も高位ながら詠唱要らず。

 逆に言えば50番台以上は詠唱した方がいいのだが、しかし完全詠唱が必要になるほどの相手はそれこそ護廷十三隊の隊長クラスでここ100年出会ってない。

 そもそもそんなのが相手なら卍解するのだから。

 

「ふっ……! やはり宵丸に必要なのはその七曜ではない! この砕蜂だァー!」

 

「シャオー! 余計なこと言うなぁー!」

 

 手の中で七曜がまた泣いた。

 そんなことないよ。俺には必要だよ。60番台からは詠唱あった方がいいし。卍解やその先には七曜は必要不可欠だし。

 鬼道を放ちながら割と必死で七曜に語り掛ける。

 その間に一護が燃えたり凍ったりずぶ濡れになったり感電したりしてるが、気にしてる余裕はなかった。

 

「シャオ! お前レッスン終わったら部屋いれねーからな!」

 

「なっ!?」

 

 砕蜂が絵にかいたように狼狽え、岩から転げ落ちた。

 

「な! なんてことを! ダーリンは私を殺す気か!? それじゃあ―――――どうやってダーリンの服や布団に枕をクンカクンカすればいいんだ!?」

 

「なにやってんの!?」

 

「こっちの台詞だよ! 真面目に戦えぶぼはぁ!?」

 

 ツッコミを入れた一護がまた吹き飛んだ。

 だが、砕蜂はそれを全く見ておらず、

 

「―――――これが、DV……?」

 

「んなわけねーだろ!」

 

「ダーリン、お前は結論を急ぎ過ぎる」

 

 急な真顔だった。

 痴話喧嘩をしながら片手間で一護が吹き飛ばされる。

 有体にいって滅茶苦茶だった。

 そんな光景を眺めながら、喜助はとりあえずデジカメを構え、

 

「うーん、夜一さんに見せたら笑い死にしそうですねぇ」




斬魄刀:七曜
解号:虹を巡れ
事前装填する鬼道7種類を詠唱破棄ながら威力劣化を起さずに発動可能。
装填する鬼道は宵丸が使用できる鬼道に限られる。

砕蜂が嫌い。とても嫌い。
具象化するとすぐに砕蜂と喧嘩する。
砕蜂も煽る。
要らない子扱いされる。


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