がっこうぐらし!RTA『オヤシロモード』覚醒素材生存ルート   作:シグアルト

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10.れいげん

 

「りーさん。そろそろリバーシティトロンが見える筈だぜ」

 

「えぇ、わかったわ」

 

 

 休日の昼間の大通り。

 いつもなら多くの車が行きかい、学生達が談笑しながら歩道を歩く場所。そんな通りを無人の野を行くが如くめぐねえの車に乗った悠里は眺めていた。

 

 時折、車体全体を揺らす振動と小さくない激突音。それが《なにか》を確かめる事なく車は進み続けていく。

 なぜならそんな理由は道路の両脇に強引にどかされている車の残骸たちと、それに付着する赤黒い液体の跡が表しているからである。

 助手席から眺める代わり映えしない光景に軽くため息をつくと、顔を逆に向け運転手へ声をかける。

 

 

「ところで()()()()。初めての運転だけど、大丈夫そう?」

 

「あぁ、なんとかな。くるみの奴、意外と教えるの上手くて助かったよ」

 

 そう。今回運転手役となっているのは恵飛須沢胡桃ではなく柚村貴依。通称チョーカーさんである。

 今朝方行われた『えんそく』に向かう部員の選定。それに胡桃を押しのけて立候補したのが彼女だった。

 

 

 

《「私が留守番?! 冗談だろ、たかえ!」》

 

《「マジもマジ、大マジだよ。お前、昨日の晩の暴走忘れたのかよ」

 

《「ぐっ! い、いやあれはお前が変な事言うから・・・」》

 

《「そんぐらいで動揺するお前が悪い。皆の命を預かるんだ、お前じゃ不安」》

 

《「ぐぅぅぅぅぅぅ・・・・・」》

 

 

 そんなやり取りを思い出した悠里は、いたずらを思いついた様な小悪魔的な微笑を浮かべる。

 

 

「そう。それはよかったわ。折角あなたが先輩と二人っきりになれるようにお膳立てしてくれたのに、私達が『えんそく』をきちんと終えられなかったら困るもの」

 

 

 彼女は大きく動揺するようなタイプではない。

 でもこうやって直接的な言い方をすれば頬を染める位はしてくれるかしらと、彼女の横顔を伺う。

 

 しかし彼女の横顔は、どこまでも真剣だった。

 

 

「無事にとまで大げさに言わないけど、今日中に帰れる保証はないんだ。─────後悔はないようにしてほしいさ」

 

 

 悠里はハッとした顔になり、正面を向きなおすとそのまま俯く。

 彼女は当初から神様に保護された面々と異なり、僅かながらとはいえ過酷な時間を過ごしている。その上、自分は一度その大切な人物を危険に晒してしまった身なのだ。

 場を盛り上げようとかけてみた軽口だったが、明らかな失敗だったと気付き悠里は猛省する。だが、その謝罪を口にする前に別の明るい声達がその雰囲気ごと上書きしてしまう。

 

 

「そうだね! はじめての『えんそく』なんだから私達も後悔しないように見て回らないとね!!」

 

「るーちゃんもえんそくたのしみー!」

 

 ゆきと瑠璃のあっけらかんとした声で重苦しくなりかけた空気が霧散する。

 その声に二人は微笑を浮かべ「ええ、そうね」「そうだな」と朗らかに答える。

 

 

 悠里・貴依・ゆき・瑠璃。

 この4人が話し合いの末、決まった『えんそく』のメンバーであった。

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

「反対です!!!」

 

 

 メンバーが決まった直後、当然のようにめぐねえが声を張り上げた。

 しかしめぐねえ以外のものでも納得はしかねる人選だと、悠里自身も思う。振る舞いはともかく大人であるめぐねえ、戦闘において頼りになる胡桃、唯一の男手葛城。彼等を差し置き、小さなゆきや幼い瑠璃を連れて行く理由がない。

 

 だが、そんなめぐねえの横で胡桃は─────

 

 

「いいんじゃないか? ゆきなら大丈夫だし、瑠璃ちゃんはりーさんが付いてるだろ」

 

 実にあっけらかんとしていた。

 ちなみに彼女の横の席には、5日目にして昏睡からようやく目覚めた葛城が頷いている。役に立ちたい気持ちはあれど、回復したばかりの上勝手がわからない自分がしゃしゃり出るべきではないという判断だった。

 

 

 

「─────恵」

 

 そんな二人に更なる援護射撃が飛んでくる。見かけは幼女にしか見えない、豪族衣装を改造したような衣服を纏う少女。

 

「・・・神様」

「心配する気持ちはわかる。だが前に進もうとする思いを止めさせるのは教師(指導者)として失格じゃ」

 

「・・・・・・はい」

 

 葛藤する気持ちを隠し切れない表情に出しつつも、了承の言葉を上げるめぐねえ。

 彼女も昨晩、貴依と悠里に言われた言葉を思い出していた。

 

 そんな彼女を諫めるような真剣な顔から、急に表情を崩しいたずらが成功した子供のような笑みを浮かべる神。

 

 

 

 

 

「それに心配はいらぬ。妾の権能によって、彼女達の安全は保障されたも同然! とくとごろうじろじゃ!」

 

 少女が権能と呼ぶ《神域》や《神格》の力を見ていためぐねえは、結局その言葉に自分を納得せざるを得なかった。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 そんな理由から異色なメンバーによる探索となった一行。

 だが悠里は内心、自分の思い通りの人選になった事に対し、よく見る神様とまだ見ぬ神への感謝を思った。

 

 

 一人目である貴依。

 彼女は神様を除けば、学園生活部メンバーにおいて胡桃との2大戦力。胡桃が行かない事を考えると、彼女の助力は必須事項となる。

 というのも胡桃は葛城関連の騒動が続き、体力的にも精神的にも不安定になっている。謝罪の意味を込めて、今回是非とも休んで欲しかった。

 幸い彼女も同じ事を考えていたらしく、協力して胡桃に休んでもらう事が出来てほっとした。

 

 二人目はゆき。

 彼女には周囲への気配りや心遣いといった面で、何度となくお世話になった。

 どんな状況でも場を明るく盛り上げてくれるムードメーカーぶりは、たとえどんな状況になったとしても助けてくれる。

 それに子供っぽく思えても、自分から危ない所へ行ったりする心配もない。

 

 

 三人目は瑠璃。

 これに関しては、完全に悠里のわがままだった。

 彼女を助け出してからまだ数日。まだ彼女と遠く離れて何かをするには不安が残ってしまう。今も頻繁に彼女の存在を確かめようと後部座席に目をやってしまう。

 

 

 自分を入れて4人になってしまったが、ゆきと瑠璃の体格のおかげで持ち帰る積み荷を入れても、後一人乗る余裕は十分にある。

 悠里はこれが自分達の力で進む第一歩だと、目の前に見えるショッピングモール「リバー・シティ・トロン」を見据えるのだった。

 

 

 

──────────────────────────────────

 

 

 

  L E V E L  U P ! 

 

 

 長いなが─────い夜が明けて、5日目となるがっこうぐらしはーじまーるよー。

 

 

 私は元気でーす!

 

 

 はい。という事でりーさん一行を見送った神様のだらだらライフRTAです(開幕矛盾)。

 というのも『えんそく』などの外出イベントには『オヤシロモード』では基本縁遠いイベントになってしまいます。その土地に縛られているからシカタナイネ。

 その制約を限定解除するスキルもあるそうですが華麗にスルーし、このたび新たな専用スキルを取得したあーちゃん神なのでした、まる。

 

 

 そして今回取ったスキルは『霊験(れいげん)』。効果は『指定した人・団体に対して信仰心に応じた能力ボーナス付与』という効果になります。

 このスキルの対象を【学園生活部】に指定し取得しました。これで今後対象を再設定するまで、面々にバフがかかり続けます。

 

 これがどの位すごいかというと、信仰心マックスで非覚醒キャラが覚醒状態と同等の力を発揮できるようになる程です。既に覚醒したキャラであれば、いわずもがなって事ですね。

 

 さらにさらに、追加効果として『対象が取得した経験値を共有で取得できる」という効果までついている有能ぶりです。先程出たレベルアップは、この効果によるものですね。おそらくリバーシティトロンでチョーカーさんが無双ゲーばりに雑兵の様な《かれら》2000人斬りをしているのでしょう。

 

 さて、こんな有用なスキルですがここまで聞いて真っ先に取ってしまい、頭ワザップジョルノになっても困るのでデメリットもお伝えします。

 このスキルは取る時期を間違えると、対象人物が真っ先に《かれら》化してしまいます。

 

 

 だって考えてみてくださいよ。

 覚悟も覚醒もしてない人物がいきなり《かれら》に対して蹂躙できるようになるんですよ?

 わかりやすくいうと『無双ゲー初心者がいきなり最強武器を手に入れた状態』になるんです。そして敵キャラは全員即死攻撃持ちです。

 

 はい。

『体が軽い。こんなの初めて! もう何もこわくない!』ってなりますよね。

 

 そんな理由から、このスキルの取得は《かれら》の脅威を知り、皆が慎重さをしっかりと身に着けてからの取得推奨です。

 

 

 

「さて、妾はどうするかのう?」

 

 

 りーさん一行はそんな感じで心配無用なため、『あめのひ』二日前として何かしたい所です。

 といっても、やる事は決まってるんですけどね。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 「そ、そんな・・・・・これって」

 

 

 職員棚に閉まってあった一つの書類。

『緊急避難マニュアル』と呼ばれるそれを眺め、絶望の顔を浮かべるめぐねえがそこにいました。

 

 これは7日目。最初の『あめのひ』までに必ず起こるイベントです。

 イベント後のめぐねえはわかりやすい程に挙動不審になるので、今朝まで起きていなかった事を確信していました。起こるとしたら今日か明日ですが、メンバーのほとんどいない今日でしょ! と思ってめぐねえの後をつけてたら案の定発生してくれました。

 

 誰もが予想だにしなかったパンデミック。それが想定内の災害として対処法が記載されていた。つまり自分も黒幕側の人間だったのではないかという不信に加え、生徒達被害者への罪悪感と混乱で一杯です。

 知らない、聞いてない、自分のせいじゃない。そう責任転嫁しない優しさがめぐねえのいい所だよね! その絶望する顔も大好き!(愉悦部員)

 

 

「─────ッ!? 神、様・・・・」

 

 おっと、めぐねえがこちらに気付きました。

 混乱と焦燥が消え、泣きそうな・・・っていうかボロボロと涙を流しながら泣き始めました。

 

 

「ご、ごめ・・・ごめんなさ・・・わ、私・・・・・・教師なのに、こんな・・・・! こんな事ってぇ!」

 

 たどたどしい謝罪から、必死に否定する言葉を繰り返すめぐねえ。

 あー、『教師として生徒達を正しく導こう』と神様を見て決意してたのに、否定された気持ちなんでしょう。

 

 めぐねえがここまで気持ちをぶつける事は生徒には絶対しません。

 同僚キャラか、今回のように信仰する神様相手でないと見れない表情なのでスクショ取りつつ、膝をつき泣き崩れた彼女を抱きしめて落ち着かせましょう(前半の最低発言)。

 

 

 

 

「─────ありがとうございます、神様」

 

 

 しばらくすると落ち着いためぐねえが神様の抱擁から離れ立ち上がります。

 その顔は今まで以上に決意に満ちた顔。いわゆる《覚醒めぐねえ》ですね。

 

 

「私は生徒達を護って見せます。絶対に」

 

 そう言った後にめぐねえは『緊急避難マニュアル』の中身を教えてくれます。

 そりゃあ既プレイ民じゃないと、何で泣いたのかわからないもんね。助かるぅ~~~!

 

 

「─────つまりこの学校には地下室があり、そこに避難先として指定されています。そこには物資や薬・・・・・抗生剤や実験薬もあるそうです」

 

 懺悔する様な顔を浮かべ説明するめぐねえ。でも説明する言葉に淀みはありません。こんな教師に習いたかった(願望)

 

 とまぁこれでイベントも完了し『学園地下室』の探索が可能になりました。ここを《聖域化》できれば学園は完璧に安全地帯です。まだ5日目やぞ?!

 通常プレイではまず出来ない爆速攻略ですが、これが俺のRTAって奴の力なんだ(自画自賛)

 

 という事で、めぐねえの案内により地下室の探索へ、れっつら─────

 

 

 

 

「話は聞かせてもらったぜ」

 

「え、恵飛須沢さん?! あ、あの・・・これは・・・」

 

「いーっていーって、何もいうつもりはないさ。でも探索するなら私もついてくからな」

 

 

 なんかおまけ(くるみ)が付いて来る事になったけど、変わらないか。れっつらごー!!

 

 





霊験(れいげん)→祈りに対して現れるごりやく。

お留守番
神様、めぐねえ、くるみ、覚醒素材先輩


一般通過人間さん、bookman17さん
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