がっこうぐらし!RTA『オヤシロモード』覚醒素材生存ルート   作:シグアルト

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ようやくみーくん登場



11.へいはく

 

 

 

─────どうすればよかったのだろう。

 

 物置として使われている一室で私、直樹美紀(なおきみき)は膝を抱え答えの出ない問いの答えを考えていました。

 

 

 全ての始まりはたったの5日前。

 親友の祠堂 圭(しどうけい)と一緒に、リバーシティトロンに来ていた時に突然始まってしまいました。

 

 狂乱する人々、ただただ混乱するだけの状況に、私達は逃げ惑う事しか出来ませんでした。

 唯一褒められる事があるとすれば、外に出ようとせず籠城する事を選んだ私の判断くらいでしょう。落ち着いた後に圭から何度も褒められたのは、私のささやかな自慢でした──────────昨日までは。

 

 

 

 同じ考えを持つ人達が集まって、バリケードを作り安全地帯を確保して救助を待つ事数日。

 デパート内の物資を皆で交代して集め、生活基盤が出来上がりかけたと思ったその時に、大きな悲劇がまたやってきたのです。

 

 いつものように、とあるグループが物資収集のためバリケードの外で作業をしていると、これまでとは比べ物にならない程の《かれら》が突然リバーシティトロンに殺到してきました。

 同じ作業に慣れてきた頃の油断もあったのでしょう。一人が感染し、それに他の人が気づかないままバリケード内へ帰還。安全地帯が崩壊するのはあっという間でした。

 

 

 バリケード内でもまた逃げ惑い、圭と一緒に一つの部屋に閉じこもって丸一日。

 そんな圭も今朝方部屋を出て行ってしまい、私はついに一人ぼっちになってしまいました。

 

 

 

 

《「このまま部屋に閉じこもって、生きていればそれでいいの?」》

 

 

 何の勝算もないまま無暗に出歩くより、このまま救助を待つべきと考えた私と、そう言った圭の意見は対立。

 彼女は未知の可能性に賭ける事を選び、一人でも助けを求めに向かったのです。

 

 

 それは私には決してできない選択。

 その行動を取る1の理由を考える間に、取るべきでない10の理由が簡単にでてきてしまう。そんな私には『一緒に行く』と彼女の後ろ姿に声をかける事は出来ませんでした。

 

 でも、でも私は・・・・・大切な親友と─────

 

 

 

 

「─────ッ!? 物音?」

 

 

 突然ガタガタとバリケードのある辺りから聞こえる物音。

《かれら》のうめき声しか聞こえなくなった空間に、その音はやけに大きく響き渡りました。

 そして、話し声の様なささやくような音と共に近づく足音。

 

 

 

 ─────おかしい。

 救助に来たのなら、バリケードの内外には《かれら》が多くいる筈。にもかかわらずその足音は戦闘に止まる気配がほとんどありません。

 

 もしかして軍隊の人で銃でも持っているのでしょうか?

 でも、発砲音はサイレンサーをしていても少しは聞こえる筈。それがないという事は・・・

 

 

 

「・・・やらなきゃ」

 

 私は部屋に立てかけてあるスコップを手に、開かれるだろう扉の前に立ちます。

 剣道の面をする時のように両手で振りかぶり、《かれら》が入って来た瞬間に振り下ろせるよう大きく息を吸います。

 

 

 

(圭・・・・、力を貸して)

 

 目を瞑り一番信頼できる人物に祈りを捧げ、開かれるドアの向こう側にいる人物に向けスコップを振り下ろす。

 

 

「やあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「危なッ!? 落ち着けって!」

 

 スコップが何もない空間に振り下ろされる。

 目をあけても誰もいない。でも声はした筈と目線を奥に向けると、通路にポカンとした表情の小さな女の子が2人。

 あれっ? と思い状況を整理しようと頭を動かそうとした瞬間─────

 

 

「あ痛たたたたたたた!! 痛いです、痛いです!!」

 

 私は背後から覆いかぶさるように床に抑えつけられ、更には両手を後ろに固められ動けなくなってしまいました。私を制圧するその滑らかな動きに、恐怖や狼狽よりも、非現実的な驚きでいっぱいになりました。

 

 

 

「顔見せた瞬間、襲い掛かって来た乱暴者ならこれくらい平気だろ? ん?」

 

 何とか顔を後ろに向けた時に見えたのは、チョーカーを付けた女性が青筋を立てながら満面の笑みを浮かべている姿でした。

 

 

 

 《笑うという行為は本来攻撃的なものであり獣が牙をむく行為が原点である》

 

 圭、あなたが言っていた漫画の言葉。私、今ようやく理解できたよ。

 

 

 

 

 

 

 ……………………暫くたって。

 

 

「申し訳ありませんでした。」

 

 

 解放された私は、やって来た少女達に正座して謝罪しました。

 一人例外がいたとしても、年下の女の子()()に急に襲い掛かってしまった罪悪感を感じてしまいます。

 

「うむ。くるしゅうない!」

「くるしゅーない!」

 

 ドヤ顔で胸を張り鼻息を荒くするピンク髪の女の子と、それを楽しそうに真似する茶色の髪の女の子。

 今の状況にそぐわない天真爛漫なその様子に、釣られて笑みを浮かべてしまいました。

 

 そういえば、ピンク髪の子の来ている制服。うちのと色が違うけど似ている気が・・・・・そう思った瞬間「連れを連れてくる」と言ってその場を離れたチョーカーをした女性が別の人物を連れて部屋に戻って来た。

 先程は痛みで余裕がありませんでしたが、その女性と遅れてやって来た女性の服装に気づき声をあげてしまいます

 

「あっ」

 

「やっぱり屋上近くに人が残っていたのね・・・・あら、同じ制服?」

「ん? あぁ、そういえばそっか。同じ高校だったんだな」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「食料品は1階と地下、服なら2階にブティックがあります」

 

 リバーシティトロンの現状を説明し、私は皆と一緒に巡ヶ丘学院高校に行く事になりました。

 向こうではここよりインフラが整備され、理由は教えてもらえませんでしたが安全が保障されるものがあるとの事。ここに留まる理由はありません。

 

 

(ここで待ってても、圭が帰ってくる筈ないよね)

 

 一抹の寂しさを覚えつつ、もしかしたらと考えるも、彼女達は圭の事は知らないようでした。

 彼女がここを出たのが朝方なので、圭が運よく学校に辿り着いていたとしても、入れ違いになっているでしょう。

 

 

 今の私に出来る事は、彼女達の助けとなり物資補給の手伝いをする事だけです。なんですけど・・・

 

 

「ねーねー、おもちゃ売り場って何階? 何階??」

「おもちゃー、おかしー、りーねーにもいっぱいあげるのー」

 

「よーし、るーちゃん。どっちがいいお菓子とおもちゃを手に入れられるか勝負だ!」

「わーい、ゆきおねーちゃんにはまけないもん!」

 

 

 何なんでしょう、この2人は。

 大声出したり動き回ったりはしていませんが、雰囲気は完全に遊園地に来た子供のそれです。あと片方は先輩なんですよね? 本当に?

 

 

「あの・・・、いいんですか?」

 

 たまらず保護者のように2人を見守る貴依先輩と悠里先輩(自己紹介の時に名前で呼ぶように言われました)に声を掛けます。

 

 

「あー、いいんじゃないか? 《アイツら》も集まらないし、配慮はしてるみたいだ」

「えぇ、楽しそうならそれが何よりだと思うわ」

 

「そ、そうですか」

 

 額に汗を滲ませつつ、ゆき先輩たちの方に振り返る。

 だが彼女達が楽しそうに進む通路の影に、虚ろな目をしてたたずむ《かれら》の姿を目にした私は現実に一気に引き戻されたかのように息をのむ。

 

「先ぱッ─────!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッ!」「るーちゃん」

 

 だが背後から気合を入れるような息遣いと、冷徹な指揮官を感じさせるような声がしたかと思うと、引き戻された筈の現実感が霧散してしまいました。

 

 

「えっ・・・えっ?」

 

 次の瞬間には、背後にいた筈の貴依先輩が私の横をすり抜け《かれら》をスコップで首から肩にかけて袈裟斬りにし、瑠璃ちゃんとゆき先輩はその邪魔をしないよう素早く固まり、射殺す様な鋭い目をした悠里先輩がほぅっとため息をつき表情を戻していました。

 そんな光景を目にし、私はただただ茫然とするだけでした。

 

 

「あらかたいなくなったと思ったんだが、まだ残ってたんだな。ゆきるり、一応聞くが大丈夫か?」

「大丈夫だよ、たかえちゃん。ありがとう!」

「おねーちゃん、ありがとー」

「おう、任せとけ」

 

 笑顔で笑い合う彼女達を見て、私の心の中にはわずかなある思いが生まれていました。

 

 

「すごい・・・先輩たち」

 

 この人達と協力していけたなら、圭と同じように『可能性』を信じて進む事が出来るのかもしれない。

 圭を助けに行って・・・・・・、また圭と一緒にいれるかもしれない。

 

 

 私の中に生まれた希望。

 それは先輩たちに対する信頼と・・・・・・・・憧れ(信仰心)と呼べるものなのかもしれません。

 今はその気持ちを絶やさないように、立ち止まらないように進み続けたいと思います。その先に大好きな親友がいると信じて

 

 

 

──────────────────────────────────

 

 

 

(少し怖いくらい順調ね。これが神様の言う《権能》なのかしら)

 

 最初は慎重に慎重を重ね行動していた一行だったが、身体能力の向上に気付き駆使した結果《かれら》はどんどんと駆逐されていった。おかげで緊張がほぐれ視野が広くなり堂々と行動が出来ている。

 不安に思っていた人選ではあったが、ふたを開けてみればすべてが上手く進んでいる様な錯覚さえ思えた。

 

 

 悠里が脳内でマップを描いているので迷う事なく進み

 

 貴依の身体能力のおかげで《かれら》を素早く倒し

 

 ゆきの感知能力で不意打ちや潜んでいた《かれら》にも対応でき

 

 瑠璃が拾った小石で《かれら》の注意を引く場面もあった

 

 

 すべてが上手くいっている。これなら全てうまく──────────

 

(いけないいけない。気を引き締めないと)

 

 

 思わず緩めそうになる心を戒める。ここは学校と違う、神様のいない危険地帯なのだ。

 それに想定通りリバーシティトロンに残った要救助者を発見する事は出来たが、残念ながらコミュニティは崩壊していた。

 ならば当初の予定通り、必要な物資を回収したらすぐにここを離れるべきと考え、美紀の案内のもと必要な店から必要なものを購入していく。誰もいない店内に持っている所持金の一部を置いて。

 

 

 

「・・・るーちゃん?」

 

 そんな事を繰り返し、物資を持ちやすく軽く整理しているとゆきと瑠璃が目の前の玩具店から出てくる。

 有言実行でおもちゃ屋に突入した2人(と念のためついていく貴依)だったが、瑠璃は両腕でかかえるようにぬいぐるみを持って出て来た。

 

「へびの・・・お人形?」

「うん! かみさまのおそえなえー!」

 

 満面の笑みで言う瑠璃。お供えの事だろうか。

 確かに作りはしっかりとしており、かわいらしさを残しつつリアルな蛇の特徴も忘れずに表現できており悠里も思わず唸ってしまう。

 蛇はとぐろを巻いており、中には鏡が入っているのだろう。隙間から反射する光が漏れていた。

 

「・・・りーねー、持って帰っていい?」

 

 少し弱弱しい声で上目遣いで聞いて来る瑠璃。行動の邪魔にならないかと遠慮がちな声で聞く。

 僅かに逡巡する有利であったが、それ程悩まずに了承の言葉を上げる。顔が見えなくなる程大きくもないし、万一の時に瑠璃の盾になってくれるのではという下心もあった。

 

「えぇ、いいわよ。落とさないようにね」

「ありがとー!」

 

 そんな瑠璃の笑顔を見ながら、悠里は「そういえば今年の干支だったかしら?」と遠い過去を思い出すように、めぐねえの車に乗ってリバーシティトロンを後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────その頃、学校で何が起きているか想像すら出来ずに

 





幣帛(へいはく)→神社などで神へお供えをされる物。食べ物以外を差す事が多い



数日前の《かれら》の脳内(会話は捏造)

かれらA「あれ? 学校に入れないぞ」
かれらB「という事は、もしかして休みなのか?」
かれらC「マジかよ、ラッキー! どこか遊びに行こうぜ」
かれらD「じゃあとりあえずリバーシティトロンにいこうぜ!!」

他かれら「「「「「「「おう!!!!」」」」」」

だいたい《神域化》のせい
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