がっこうぐらし!RTA『オヤシロモード』覚醒素材生存ルート 作:シグアルト
────体が動かない。
扉の向こうで必死に助けを求める男子生徒の叫び声が聞こえる。
────体が動かない。
扉の向こうで瀕死の友人を支えながら逃げ惑う女子生徒の助けを懇願する声が聞こえる。
────体が動かない。
だから仕方ない、あたしが助けに行くことが出来なくても仕方がないんだ!
「…………ぅん」
カーテンの隙間から差し込む月の光により意識が覚醒する。本来ならば何でもないこんなものでさえ睡眠の阻害をされてしまう程に気が滅入っていたらしい。
だが同時に、多少なりとも休めた頭が冷静に状況を分析してしまう。あたしは首元のチョーカーへと手を這わせ、心を落ち着かせようとする。
「助かったんだな、あたし」
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────はじまりは突然だった。
廊下が騒がしくなり、様子を見に行った生徒達が次々と赤く染まりながら倒れていった。
周囲の生徒達が呆然と立ち尽くしている中、あたしの行動は早かった。普段からゾンビパニックものの映画を好んで見ていたからか、他の奴等より状況を飲み込む為の時間が短くすんだ。
だけど、現実は映画の様に都合よくは行かなかった。
安全な場所を探して右往左往するも、どこにいっても《やつら》がいる。どんどん逃げ場が減っていく焦りの中、あたしが逃げ場所に選んだのは女子トイレ。袋小路の密室だった。
そこであたしに出来る事は、個室の隅でうずくまりただこの状況が変わるのをじっと待つだけだった。
……未だに助けを求めている多くの人々の声に、応えてしまわないよう体を抑えつけながら
《「そこにいるのはわかっておるぞ。もう安全じゃ、出て来てもよいぞ」》
時間の流れを思考が忘れようとした頃、場違いな小さな女の子の声が聞こえる。
あたしの友達にも小さな子供としか思えない様な同級生がいるが、明らかにそれより下……小学生位の子供の声だ
《「全く……。引き篭もるのは神のやる事ぞ、思うままに動こうとするのが人間の美徳じゃぞ。まぁよいわ」》
よくわからない事を言った後、少女の声は離れていく。
状況も言われた言葉も理解できないまま硬直したあたしが次に正気を取り戻したのは、その子供に連れられた
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「むにゃむにゃ……、おむすび食べたい」
あたしの寝袋に潜り込んだゆきの寝言が聞こえる。何も考えてないように思えるコイツだが、人の心の機微には聡いやつだ。
きっとあたしを心配して寄り添ってくれたんだろう、お陰で悪夢を見る事はなかった、良い夢を見る事も出来なかったが。
(あたしは────、たくさんの人を見殺しにしたんだな)
夢で見たあの時の記憶が蘇る。
一人トイレに篭ったあたしに聞こえた多くの助けを呼ぶ声、すぐに飛び出していればもしかしたら助けられる命もあったかもしれない。
だがあたしは見殺しにした
どうせ手遅れだ、見つかったら終わりだ、道連れにされるだけだ。際限なく沸きあがる言い訳に体が縛られ、あたしはその動かない体すら言い訳に利用した。
……どうせこんなのは「たられば」の話だなんて事はわかってる。でもあたしは、その罪悪感をどうしても心から拭えないでいた。
「……さ……! 起……く……さ……!!」
少し離れた場所で大きな声と叩くような音が聞こえる。方向は……確か、ゆきが「あーちゃん」とか呼んでた自称神様の寝室だ。
その音に気付いたのか若狭も驚いたように体を起こし、不安そうに自身の体を抱きしめる。
「な、何かあったのかしら……?」
「わからない。あたし、様子を見てくるよ。ゆきの事頼んだ」
「え、えぇ。わかったわ、気をつけてね」
警戒しながら廊下に出て通路を進む。アイツはあたし達とは反対側のバリケード前の部屋にいる筈だ。そちらへ向かう度に聞こえる声は大きくなり……、それがめぐねえの声だとわかった。
「どうしたのさ、めぐねえ。そんなに大声出して」
「柚村さん! 大変です! 私のせいで、私のせいで!!」
「わ、わかったわかった。ひとまず落ち着きなって。一体何があったのさ」
「葛城くんが、葛城くんがいなくなってしまったんです!」
「アイツが!?」
どういう関係なのかは……恵飛須沢の様子を見ればバレバレだった。気付いていないのはゆき位だ(いや、気付いてはいるが察してないだけか)
話を詳しく聞けばめぐねえが居眠りしてる隙に葛城先輩が目を覚まし部屋を抜け出し、それを恵飛須沢が見つけめぐねえを起こして知らせたらしい。
「マズいな……、恵飛須沢はどうしたんだ?」
「恵飛須沢さんは葛城くんを探しにいくって飛び出して、私は神様に手伝って貰おうと思って……」
「それで何度も部屋を叩いてるんだが、返事がないんだな」
「…………はい」
状況は予想以上に逼迫しているようだ。
あの子供に何が出来るのかは正直疑問だが、今は猫の手も借りたい状況だ。あいつがただの子供でも、安全地帯内を一緒に探す位は問題ないだろう。
「めぐねえは資料室に戻って若狭とゆきにも手伝ってもらう様言ってくれ。ここはあたしがやる」
「柚村さん…………、お願いしますね」
そう言ってめぐねえは走り去る。正直、先生にこれからやる事はあまり見せたくないからな。
アイツが篭っている場所は簡易倉庫、扉は1つしかないし鍵もかかっている。だが扉の前には、アイツが持っていたであろうシャベルがたてかけてあった。
「緊急事態だ、弁償とかは簡便してくれよ……なっ!!」
そのシャベルで扉を壊しにかかる。2度、3度とシャベルを振り下ろし続けた。
だが、その扉はまるで不思議な力に守られているように傷1つ付かない。最終手段と扉についている曇りガラスを殴ってみるもシャベルの方が弾かれてしまう始末だった。
「チッ……、全く強情な────」
「先輩──────!!」
「!!!」
恵飛須沢の声が響いてきた。明らかに切迫した声、即座にあたしは声のほうへと駆け出していった。
「恵飛須沢!!」
来た道を戻り、更に廊下を進み机を並べただけのバリケードを乗り越える。その階段を下りた先に────二人はいた。
地面に倒れ付す葛城、頭からはうっすらと血が見えるが《やつら》にやられた訳でなく頭をうっただけのようだ。そして、その葛城の体に覆いかぶさるように庇っている恵飛須沢と……迫りくる《やつら》
めぐねえや若狭達はモップをもって、同じく自分達と床に座り込むゆきに迫ろうとしている《やつら》を追い払うので精一杯のようだった。
《やつら》の手が恵飛須沢に迫る状況がまるでスローモーションの映像の様に流れていく。
────また、あたしは見殺しにするのか?
────あたしはこんな事を続ける為に生き残ったのか?
────ゆきや恵飛須沢に対してすら、言い訳を続けるだけで何もしないのか?
《「思うままに動こうとするのが人間の美徳じゃぞ」》
────手に持っていたシャベルの持ち主の言葉が、不思議と心の奥底に響いた気がした。
「あたしの友達に手出すんじゃ────ねぇ!!」
《やつら》の手を両断し、そのまま返す刀で体ごと吹き飛ばす。人だったモノを殺めてしまった事に対する嫌悪や罪悪感がのしかかろうとするが構う事はない。
あたしが友達を見殺しにする時に感じる“それ”と比べれば何てことはないから。
「恵飛須沢、葛城先輩を抱えて走れ! めぐねえはゆきを。若狭、こっちに来い。逃げるぞ!」
めぐねえ達に近寄る《やつら》も切り飛ばして声をあげる。
体と心を休めたお陰かあたしの言葉に全員素早く反応し、3階へと駆け上がる。
あたしはようやく……、他人を助けに動ける
「柚村さん、危ない!!」
「えっ?」
気付いた時には既に詰んでいた。
皆が3階にあがっていったのを確認し、その光景を見て安堵していた僅かな隙。その間に、シャベルを持つ手が捕まり《やつら》への攻撃が鈍った隙に、更に足を掴まれてしまった。この状況では《やつら》を振り払う事も逃げ出す事も出来ない。
「たかえちゃん!!?」
(これで終わり……、か)
思ったよりもすんなりと状況を受け入れる。心にのしかかっていた一番の澱みが解消できたからだろうか、それとも助けに行くと決めた時点で全員助かるなんてゆきが好きなアニメみたいな展開を期待していなかったからだろうか。
恵飛須沢、悪いけどあたしの分までゆきの事を────
「戯けめ。人間というものは生き汚さや諦めの悪さも美徳のひとつだと知るのじゃ」
「えっ?」
目の前に広がる光景に驚愕する。
一瞬のうちに目の前に現れたあの子供、そいつは私と《やつら》の間に割り込むように体を滑り込ませる。その衝撃で、あたしは拘束が解かれ後ろにしりもちを付くが……
「あ、アンタ。一体どうして……!!?」
頭、腕、足……体中を《やつら》に噛まれていた。あたしの身代わりに。
「あーちゃん!?」
「神様!?」
「オイ、嘘だろ……!?」
「そんな、どうして……!!」
各々が叫び、嘆き、戸惑う。当然だ、《やつら》に噛まれてしまったらそれで終わ……
「戯けめ。妾は神ぞ。人の業ごときで妾を染める事など到底叶わぬとしれ」
何でもない事の様にそいつは言い放った。
「……ゥ…………グ」
「グガ…………ァ」
「…………ゥゥ……」
「血が……、出ていない?」
よく見ると《やつら》が噛み付いている場所からは血の一滴も流れていない。いや、よく見ると
「いつまで妾に寄っているか。痴れ者め」
何でもない事のようにあたしが落としたシャベルを拾い直し《やつら》を一掃する。こいつ、もしかして本当に…………?
◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、ひとまずは戻るとするか。妾はもう寝るぞ、介抱はお主等に任せる」
資料室に戻り葛城の介抱を行っているあたし達にそう告げ、神様は部屋を出て行った。
「なぁ、アイツ……いや、あの人って本当に」
「うん、神様だよ!」「そうだな」「そうね」 「……やっぱりそうなのかしら」
若狭だけが半信半疑のようだったが他の3人は口を揃えて答える。
あいつはやっぱり神様なんだと。
それを理解したあたしは、あの人が去っていった方向に頭を下げる。
「ありがとう、ございました。神様」
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────はい。走者は今、全力でたかえちゃんに頭をこすり付けて感謝しています。
ありがとう、ございました。たかえちゃん様!!
危ねェェェェェェェェェェェ!!!! セーフセーフ!!
まさかここで『先輩放浪癖』イベントを引くとは思えませんでしたよ!
はい、これはアウトブレイク発生後『先輩が状況を理解せず一人にしている』と確率で発生するイベントです。確率というのは、目が覚めてから行動に至るまでに《かれら》以外のNPC含めたいずれかのキャラクターに出会えばイベントがキャンセルされるからです。
その上、先輩は『看病』の名目で原作キャラ達が頻繁に様子見に来ますし日中なら神様も見ていられるので安心していました。それがこの始末ですよ。
寝たのに暗転せず、イベントの発生を感知した神様はすぐに先輩の下へと向かいました。行動可能になる前に部屋の前から何か聞こえた気もしますが《かれら》が近寄っていただけでしょう。薄い扉なので何かあればすぐ聞こえますしね。
という訳で資料室横の資料倉庫室をガチャ。うん、いねェ!!
知ってたよ、途中でくるみの叫び声聞こえてたしな!!
◇◆◇◆◇◆◇◆
という訳で無事救出完了です。
途中、神様が噛まれましたが《神格パワー》(通称SP)に阻まれ《かれら》が神様に触れる事は出来ません。感染耐性じゃなくて噛み付き無効ってつくづくチートキャラやな。
なんだかんだありましたが、これにて無事一日目終了です。
そろそろ本気で寝ないと明日何も出来なくなるのでさっさと寝ますゾイ!
おやすみなさい~~~~
投稿日付設定が一日ずれていました(ガバ)
これにて一日目終了です。他者視点で話を進めようとするとどうしても文字数が増えてしまいますね。
次の話のUPは、少し日が空くと想います。