がっこうぐらし!RTA『オヤシロモード』覚醒素材生存ルート   作:シグアルト

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7.いきゃく(後)

 

 

 

 

 ────「おい、どうするんだよ! 先輩が、先輩が!!」

 

「お、落ち着いて恵飛須沢さん!」

 

「めぐねえも落ち着いて、落ち着いてったら!!」

 

「ゆきもな。あんた等全員焦り過ぎだって!」

 

 

「……なんじゃ、このカオスは」

 

 

 

 メンバー全員が狼狽状態のオヤシロRTAはーじまーるよー! 

 

 

 ひとまず全員を聖域から飛び出さない程度になだめた後、一番冷静(マシ)だったチョーカーネキに状況を聞きました。

 りーさんは『小学校の様子を見てきます』と書置きを残し出て行った事に夕食時になって気が付いたとの事。更に正気を取り戻した覚醒素材先輩も、くるみが離れた僅かな間に一緒にいなくなっていたという事らしいです。起き抜けでナチュラルにトラブルに混ざる先輩なんなん? ハーレム主人公? 

 

 しかし小学校かぁ……、これは『るーちゃん救出イベント』が強制発生したみたいですねぇ。

 りーさんには、隠された設定として小学生の妹がいるんですね。(隠すな)

 ルートによっては幼少期に不運な事故で命を落としているパティーンもあるようですが、多くの場合存命で元気に小学校ライフを送っています。

 

 ですが、りーさんはアウトブレイク時に発生した精神的ストレスにより、妹の事を忘れてしまいます。元々他の面々の半分くらいしかSAN値ない上に、屋上から見えるあらゆる建物が崩壊していく様を見せられているので、しょうがないです。誰も生きていないと絶望を抱え込み、闇堕ちするよりはマシと思いましょう。

 

 

 そんなりーさんですが、高SAN値を維持してると、この事実を思い出す場合があります。

 ですが試走では“あめのひ”みたいな大きなイベントの時しか起こらなかったので、完全に「気にしないでええやろHAHAHA☆」とか思ってました。

 まずいですよ、クォレハ! (盛大なガバ)

 

 とにかく救助隊を編成しましょう。NPCの独自行動は残SAN値に影響するので、りーさん一人じゃ(先輩)がいても無事に戻れる確率は低いです。

 

 

「……よし。とにかく助けに行くしかないか、まだ間に合う筈だ」

 

「大丈夫なの? たかえちゃん」

 

「心配しなさんなって。ゆきはいい子でお留守番してるんだね」

 

「むぅぅ。私、子供じゃないんだから」

 

「あはは、悪い悪い」

 

 

 チョーカーさんが救助隊に一番乗りです。

 前回の先輩放浪事件の時と言い、くるみに勝るとも劣らないゴリラぶりです。

 

 

「たかえ。私も行くから」

 

「くるみ。大丈夫なのか? 無理しなくてもいいんだぞ」

 

「大丈夫。少し怖いけど、先輩がいるなら待ってなんてらんない」

 

「……小学校は少し遠いんだ。へばるなよ、陸上部」

 

「ヘッ、そっちこそ!」

 

 おーっと、ゴリラ度では負けてられないとくるみも参戦です。

 これで現メンバーの2大戦力が揃いますね。勝ったな、これは(慢心)

 

 

「わかりました。柚村さん、恵飛須沢さん。では先生も……」

 

 

「「「ダメ(じゃ)」」」

 

 

 

 

 

 

 

「何で?!」(泣)

 

 

 当たり前だろ(慢心消失)

 

 

 

 

 ──────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 ────私、若狭悠里には妹がいる。

 

 名前は若狭瑠璃、愛称は「るーちゃん」。とても素直で賢い子だけれど少しだけお転婆で、私が作ったお菓子を冷ます為に机の上に置いていると、手を伸ばして取っていってしまう困った子だ。

 

 

 そして今、私はその子を迎えに小学校へ来た────私が犯してしまった罪と、犯してしまっている罪を自覚しながら。

 

 

 

「ハァ……、ハァ……、ハァ……」

 

 

 扉を閉め鍵をかける。

 

 胸が苦しい、胃の中のモノが逆流しようとするのを必死に抑える。こんなになるまで体を動かしたのは一体いつぶりだろう。

 

 だが私は、無事にるーちゃんの通う小学校へと潜入出来た。大通りを避け、瓦礫や沈下していない火で塞がれた道を迂回しながら進んだ為に、辺りはすっかり暗くなってしまったが。

 

 ふと、横を見る。今回の身勝手に付き合わせてしまった男性、葛城先輩。彼がいなければ今頃、私は外を徘徊する《かれら》の仲間になっていたかもしれない。

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 発端は今朝。ゆきちゃんの寝顔や神様の自由奔放な様子を見て、私の中の何かが騒ぎ立てた。《決して忘れたままにしてはいけない》と

 

 そして私は大切な家族の存在を忘れ去ろうとしていた事に気づいた。

 

 

 ……それからは地獄だった、何をしてもどんなに気を紛らわせようとしても駄目だった。

 

 

『大切な妹の事を見捨てたのね』

『忘れれば助けなくてもいいもの』

『なんて薄情な人なのかしら』

 

 

 頭の中で(だれか)を責め続けるだれか()。いても経ってもいられず、神様からるーちゃんの生存について聞いて見る事にした。

 

 るーちゃんが生きている! その可能性を示された私はもう自分を止める事は出来なかった。きっとこのまま何もしなければ、私は自分で自分自身を殺してしまう。そう思い、るーちゃんの通っている小学校へ向かう事にした。普段はバスを利用するが、徒歩でいけない距離じゃない事も後押ししたのかもしれない。

 

 でもそこで想定外の事態が起きた。簡易バリケードを出て行く所を葛城先輩に見られてしまった。更に押し問答の末、仕方なく理由を説明したせいで彼までついてきてしまった。彼は私とは違う、大切な人はすぐ傍にいるはずなのに……

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「よいしょ、っと。先輩、運びますね」

 

 

 私が逃げ込んだ先は用務員室だったらしい。葛城先輩を背負って部屋の奥へと運ぶ。垂れ下がった彼の手が私の体のあちこちに触れるが、気にしている場合ではなかった。

 

 

 ……そう、葛城先輩は気絶している。

 

 学校に到着するまでは、身を隠しながら進む事が出来た。しかし学校の入り口にたむろしていた小さな《かれら》は強行突破するしかなかった。学校から持ってきていたモップや先輩のシャベルで《かれら》を押し出し無事に校内に入ったかと思うと、先輩は糸が切れたかの様に気絶してしまった。

 

 考えてみれば先輩はほとんど食べておらず、体力も回復しきらないうちに私に付き合ってここまで来てくれた。むしろ、倒れない方がおかしかった。

 

 そんな先輩を引きずるように入り口のすぐ脇にあった用務員室にかけこみ、今の状況となっている。

 

 

 

 

「ふぅ、ようやく寝かせられたわ。男の人って本当に重いのね」

 

 

 部屋の中には布団が備え付けられており、なんとか葛城先輩を寝かせる事が出来た。その苦労を噛み締めていた時、ふと今朝のくるみと柚村さんとの会話を思い出す。

 

 

《「くるみは校舎裏で襲われたのか。助かってよかったよ」》

 

《「あぁ。私の場合は神様がいなきゃダメだったかもしれないな」》

 

《「でも、くるみの足なら奴等をふりきれるんじゃないか?」》

 

《「無理に決まってるよ。先輩だっていたんだぜ」》

 

《「くるみなら、いざとなったら先輩背負って屋上まで駆け上がったり位、出来るだろ」》

 

《「で、できるわけないだろ!? 先輩ってスリムだけど、足だけじゃなく腕やお腹まで筋肉があってすごく重いんだぞ!」》

 

《「ハイハイ、何で知ってるんだか。ごちそうさま~」》

 

《「た、たかえ~~~!!」》

 

 

「……フフフ」

 

 

 今朝の何気ない会話が私の疲れきった体に力を取り戻させてくれる。ここまで一緒に来てくれた先輩の為にも、そして先輩を一途に思う友人の為にも、私はるーちゃんを助け先輩を無事に送り届けなければならない。

 

 

 

 

 

 

 ……………………

 ………………………………

 ………………………………………………見つけた?! 

 

 

 先輩のいる用務員室の扉の鍵をかけ、私は一人るーちゃんを探す。

 

 この学校の一階は不審者が入らぬ様、全ての窓に格子がついている。あの部屋はある程度の防音性もあるので、葛城先輩の安全は確保されている。

 

 私は学校を徘徊する《かれら》の目をかいくぐり、るーちゃんが隠れそうな場所を探し回った。あの子はかくれんぼや怒られる様な事をした際に、戸棚の下によく隠れる。彼女の癖を良く知る私は目星をつけ探し回っていると一階の昇降口を挟んで奥の部屋、職員室の戸棚のひとつが僅かに空いており隙間からこの学校指定の上履きを履いた足がチラリと見えた。

 

 急かす心臓の鼓動を必死に抑えて職員室に一人いる、元は教師であろう《かれら》の様子を伺う。どうやら《かれら》はその子に気付いていない様だ。少し経つと生前の習慣によるものか、見回りへと出て行ってしまった。

 

 私はなるべく音を立てずに扉を開け、素早く体を滑り込ませ閉める。

 

 

(るーちゃん……、るーちゃんなの?)

 

 

 体勢を低くして慎重に一歩一歩戸棚へ近付いていく。

 

 

(まだ生きているの? いえ、そもそも別の子じゃないの?)

 

 

 あまりにも都合のいい妄想だ、と合理的な考えを紡ごうとする思考を必死に抑える。

 

 

(でも、もしかしたら……もしかしたら本当に)

 

 

 戸棚の前までやってくる、戸棚の隙間に手をかける。心臓の音が《かれら》に聞こえてしまうんじゃないかと思う程にうるさい。

 

 

 

(お願い、神様……!!)

 

 

 そして、悠里は戸棚を開き────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……ぁ)

 

 

()()()()()()()()、小柄な少女が眠っているのを見た。

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 ────みんな、いなくなっちゃった。

 

 

 きのう、いつものようにみんなでべんきょうしていたら先生がきゅうにやってきたこわい人にかまれた。

 

 そしたら、先生が先生じゃなくなっちゃった……。

 

 いっしょにべんきょうしていたみんなも、こわい人たちにかまれたらいなくなっちゃった。

 

 わたしの手をひいて教室からつれだしてくれた『せーちゃん』も、ここまでいっしょにいてくれた『まりー』も、『みんな』《みんな》いなくなっちゃった。

 

 

 もう、いいや……つかれちゃった。

 

 だってもう、みんないないんだもん。

 

 

 きっと、このままここにかくれていればこわい人に見つからないで『みんな』にあえるから────

 

 

 

 

「……ちゃん」

 

 

 

 んぅ? だれ? ……だれかの声がする

 

 

 

 

「……ーちゃん」

 

 

 だれだろう。だかれているのはわかるけど、なんだかすごく懐かしい気がする。

 

 

 

 

「……るーちゃん」

 

 

 だれなの? わたしをそうよぶのはいなくなっちゃった『みんな』だけなのに…………あれ、そうだったっけ? 

 

 たしか……だいすきな、とってもだいすきな人がいたような……

 

 

 

 

 

 

 

「るーちゃん!!」

 

 

 ……そうだ、おもいだした。

 

 わたしは、この人にあいたいからまりーやみんながたすけてくれたんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、()()()()

 

「ううん、るーちゃん。私の方こそごめんね」

 

 

 なんでりーねえがあやまるんだろう。悪いのはりーねえのことをわすれていたわたしなのに。

 

 ……あぁ、そっか。わたしがまちがっちゃったからだ。

 

 そうだよね、まずなによりも言わないといけないことばは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たすけてくれてありがとう、りーねえ」

 

「無事でいてくれてありがとう、るーちゃん」

 

 

 なみだがいっぱいでりーねえのかおが見れないや、わたしのほっぺにかかるお水のかんじからりーねえもいっしょだ。

 

 でも、見えなくてもべつにいいや。

 

 

 

 

 りーねえもわたしも、きっと今わらっているんだってわかってるから。

 

 

 




 


今回のるーちゃんパートでは『水色クッション』様と『木端妖精』様の

がっこうぐらし! 称号『しょうがっこうぐらし!』獲得ルート
【完結】がっこうぐらし!モールスタートめぐねえエンドSランク縛り【MGNEND】

に出てくるキャラを一部表現でお借りしています。問題あったらすぐさま作者様に土下座&修正を行う予定です。

追記:
お二方より使用許可を頂きました。ありがてぇ、ありがてぇ・・
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